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【特別対談】ALIENWAREがCYCLOPS athlete gamingをスポンサードする理由とは?
9月4日、ALIENWAREとプロゲーミングチーム、CYCLOPS athlete gamingのスポンサーシップ締結が発表された。ALIENWAREとしては、社会人プロゲーマーとして有名なネモ選手を長らくサポートしてきたが、ゲーミングチームへのスポンサードは今回が初となる。
デル株式会社 ALIENWAREマーケティングシニアマネージャーを務める柳澤真吾氏と、CYCLOPS athlete gamingを運営するeスポーツコネクト株式会社 代表取締役の伊草雅幸氏に、スポンサーシップ締結のきっかけやお互いのブランドの印象、今後eスポーツ業界で両者がどのように活動していくのかといったお話を伺った。
デル株式会社 ALIENWAREマーケティングシニアマネージャーの柳澤真吾氏(右)と、eスポーツコネクト株式会社 代表取締役の伊草雅幸氏
柳澤真吾氏(以下、柳澤):実はスポンサードを考える以前から、CYCLOPS athlete gaming……というよりは、伊草さんの会社のビジネスとして持たれている「ゲームに対する方向性」について、一方的に共感していたんですよ(笑)。ゲーム大会プラットフォームの「JCG」を持たれていたり、ゲームメディアの「SHIBUYA GAME」を始められたり。特にSHIBUYA GAMEは、ALIENWARE ZONEと同じようなサイトができたと思って気にしていたんです(笑)。
CYCLOPS athlete gamingに関しても、ゲーミングハウスにイベントスペースを持っていたり、チームに所属する選手の在り方として、日頃の発言を含めてみなさんしっかりされていて、どれもこれも共感できると思っていました。
というのも、ゲームやeスポーツをこれから発展させていくために必要な要素として、私は2つの考えを持っているんです。
ひとつは、ゲームを「憧れるもの」として親御さんに認められるようなものにしなければならないということ。昔からよく言われていますが、ゲームがちゃんとした文化になれるようにしていきたい。
もうひとつは、「ユーザー側の目線に立って進めていく」ことです。今の足元を形成しているのはゲームをしているユーザーですし、少なくともその中にいる人たちが活性化しないと未来があるわけがないんですよね。1メーカーなので力は大きくはないですが、このふたつはちゃんとやらなきゃいけないなと考えています。
そう考えると、マネジメントとチーム運営をしながら成績を残しつつ、大手メディアではやりにくいような部分で、ユーザーが興味を持つ話題をプロの手で編集して発信するというやり方も、ゲームそのものやeスポーツに対する向き合い方が、すごく弊社の考えに近いと思ったんです。
「ALIENWARE ZONE」で、ゲームに「勝つ」ことをテーマにしたり、「ALIENWARE STORE AKIBA」のイベントスペースを使ってゲームを「観る」文化を促進できるような形を作ったのも、できるだけユーザーと触れ合えるところを中心に、ALIENWAREとしてマーケティングも仕掛けることを意識したから、でした。
前置きが長くなりましたが(笑)、今回のスポンサードのきっかけは「(CYCLOPS athlete gamingに)共感できるな」っていうところが一番大きかったと思います。会社として出資を考えた時、eスポーツコネクトという会社がこれだけ大きいチームを育て上げているということも重要ですが、それ以上に理念が合致しているところが、ALIENWAREというブランドを正しく認知・拡大していくという中においてはすごく重要なことだと思っています。
CYCLOPS athlete gaming 伊草雅幸(以下、伊草):大変に恐縮です(笑)。
伊草:一言で言わせていただくと大変光栄ですし、身が引き締まる思いです。
CYCLOPS athlete gamingを運営するeスポーツコネクト株式会社という会社には、先ほど柳澤さんも仰っていた「eスポーツを通じて日本のゲーム文化を再定義したい」ということや、「eスポーツというコンテンツを使い、日本の若者をもっと熱狂させて元気にしたい」という経営理念があるんです。これはJCGやビットキャッシュ株式会社など、私がやっている会社に関してはすべて共通しています。
日本の若者って、自己主張もしなければ何も欲しがらないんですよね。そういうことをひっくるめて、私は「元気がない」と申し上げているのですが、では彼らは何に対してなら熱狂・熱中するんだろうと考えた時、「ゲーム」は大きなコンテンツだなと思ったんです。
正直、私自身はゲームに打ち込んだゲーマーというわけではありません。ただ、そんな中で「eスポーツ」という言葉を3年ほど前に聞き、「これだ!」と一気に投資を始めました。最初にやったのがCYCLOPS athlete gamingというチームの組成と、オーナー会社であるeスポーツコネクト株式会社の設立なんですが、実は最初は『オーバーウォッチ』のチーム組成からスタートしているんです。
eスポーツを勉強するためにアメリカ、韓国、中国、台湾などに行ったんですが、みなさんもご存じの通り、海外ではPCゲームが中心です。LANパーティーのような場所にPCを頑張って運ぶのが当たり前っていう世界に触れて、世界で戦う上でPCゲームを第一に考えるというのが、CYCLOPS athlete gamingのスタートだったんです。『オーバーウォッチ』も最初は弱かったんですが、今では日本代表になるほどの一番のチームを作り上げることができました。
そういった意味で、PCゲームに対するこだわりは持っていまして、『オーバーウォッチ』しかり『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』しかり、PCゲームタイトルの選手をコアにしていくことは、もともと考えていた発想なんです。
また、「世界に向けて発信していきたい」という思いもあって、世界で戦うことを大前提にしています。「大阪で強くなったから東京に出て勝とう」っていう発想ではなく、「大阪で強くなったらその次はどんどん世界に出ていこう」と。世界はPCゲームが中心ですから、当然その文脈からもPCゲームを選択するということは会社として重要な視点です。オーナーがゲーマーではないチームは珍しいかもしれませんが、そういった意味では事業として経営理念を持って、しっかりやっていこうと。
今までゲーマーと呼ばれてた人たちって、「プロ」だとか「eスポーツ」という言葉と一緒に「関係ない人たちが近寄ってきた」っていう違和感を持っているんですよね。ゲーマーっていうのはどちらかというと日向より日陰に近い存在で、一般的には「変な人」っていう見られ方や表現をされていますが、それじゃいけないと思っているんです。日本でもゲーム文化を再定義するという意味では、「ゲームばっかりやってると怒られる」ではなく「もっとゲームをやりなさい」と親御さんが背中を押したり、あるいはプロゲーマーがもっと認知されて「憧れの存在になる」っていう流れを作らないといけない。そのために何が必要かというと、会社としてしっかりやることなんです。
うちの選手は、プロである以前に社会人なんですよ。たとえば立ち居振る舞いであったり、インタビューを受ける時は「ちゃんとマスクを取りなさい」と伝えたり、細かいところで指導しているんです。ファンの方に対するサービスやアピール、スポンサーさんに対する感謝の気持ちと向き合うこともすごく大事にしています。ですから、Twitterで変なことを呟いていないか、Facebookでわけのわからない投稿をしていないか、過去を洗ってからプロ契約を結ぶことを大切にしています。社会人である前にひとりの人間としてちゃんとしなきゃダメだよっていう教育もするのが、当社のこだわりですね。
そんな中で、世界を相手に戦っていくためにはPCゲームが不可欠であるということで、PCのワールドワイドマーケットでブランド力があり、かつ製品としてもクオリティが素晴らしいALIENWAREを僕らが手にできるようにご支援いただくっていうのは、嬉しいに決まってますし、ありがたいお話です。
柳澤:こちらこそ。そんなふうにおっしゃっていただいて、ありがとうございます。
各国でチームをスポンサードする際に、本社から「世界的に戦えるチームを選んでくれ」と言われています。CYCLOPS athlete gamingの場合は、『オーバーウォッチ』で日本一のチームというところ、対戦格闘ゲームでは『ドラゴンボール ファイターズ』で準優勝されたGO1選手をはじめ、世界有数の選手を抱えているところが魅力として大きいなと思っています。
伊草:ありがとうございます。まだまだ頑張らなきゃいけないんですけどね。
柳澤:その中でも今回、「CYCLOPS athlete gamingはこういうチームなんです」ということを本社に説明したとき、ゲーミングを担当している女性社員から「女性プロがいるチームをALIENWAREがスポンサードしているチームで初めて見た。すごく良いことだと思う。たぬかな選手について説明してほしい」と聞かれるばかりで。もっとチーム全体の話を聞いてもらいたいと思ったくらいなんですよ(笑)。
伊草:ははは(笑)。たしかに女性プロは世界的にも珍しいですよね。彼女は日本のトップというわけではないですが、今でも実力が徐々に上がっていってますし、気持ちもまだまだ前向きです。
僕はこれまで選手によく、「プロなんだから強くなりなさい」と言っていたんですが、ゲーマーの子たちって、楽しいから、好きだからそのゲームをやっているんですよね。なので、「強くなれ」「1位になれ」「なんで負けたんだ」ってプレッシャーをかけられることに対して弱い子もいる。最近は「勝て」ってあまり言わないようにしているんです(笑)。
ただ、勝たないとカッコよくないし、ファンがついてこない。あくまでも競技・スポーツですから。
この1年、メディアからの取材を受ける回数や、Twitterのフォロワー数もグッと増えていて、「一般の方々に自分がどう見られるべきなのか、何をお伝えするべきなのか」ということを選手たち自身が意識し始めているなと感じています。実力があるけどぶっきらぼうな選手もいるかもしれませんが、ファンの方々からの視線が常に向けられているという姿勢とともに、「だから自分が強くならなきゃいけないんだ」って腑に落ちると思うんですよね。少なくとも、私から「勝て勝て」と言われるよりは。なので、ある意味すごくいい感じで回ってきているなと実感しています。
でも、そこがまさにCYCLOPS athlete gamingならでは、なところですよね。日本のプロチームはプロゲーマーからのスタートが大半を占めていますが、伊草さんのようにきちっとしたキャリアのある方が主導することによってプロゲーミングチームはビジネスとしても成立するし、どうやったら社会に対して向き合えるのかを考えられている点は、CYCLOPS athlete gamingの魅力だと思います。
我々が日本のローカルで初めてプロ契約したネモ選手も、社会人プロゲーマーということで、人としてきっちりしているのが信用できましたし、スポンサードさせていただいてから成績がグッと上がり、振る舞い方もさらに変わっていきました。気がついたら手の届かないところに行っちゃったとも思ったんです(笑)。でも、そういう下地があるといろんな人に受け入れられますし、“憧れられる”選手になっていけるのかなと。
伊草:ネモ選手のお話はまさにおっしゃるとおりですね。プロゲーマーになるっていうのはある意味、勇気がいることだと思うんです。
今でこそALIENWAREさんをはじめ、いろんな業界の方々が盛り上げてくださっているので、eスポーツに目を向けて「ゲームを本気でやってみよう」っていう若者は確実に増えていると思うんです。その一方で、本当にプロとしてとことんゲームしかやらない生活を選ぶかどうかというと、そこは悩ましい若者が多いのも事実なんですよね。
「最終的にはどこかの会社に入るんでしょ? だから学生時代は好きなことをやりなさい」と親御さんが線を引いているケースもありますし、選手本人も「プロとしてある程度まで行ったら、勉強して学校に入って就職する」というように、プロゲーマーというキャリアプランに対して不安を持っています。これは当然だと思うんですよね。プロゲーマーっていう職業そのものが社会的に認知されていませんし、「所詮はゲーム」と考えている方もまだまだ多いですから。
なので、私どもは会社としてしっかりやる上で、選手のキャリアプランをしっかり考えています。たとえば、『オーバーウォッチ』チームのレギュラーから漏れてしまい、脱退せざるを得なくなってしまった選手がいたとしたら、プロとしてやってきた視点を活かしてスポンサーさんの会社への就職を勧めたり、「SHIBUYA GAME」のライターや取材スタッフ、JCGの企画・運営スタッフ、大会での実況・解説、チームのコーチ・マネージャーになるなど、セカンドキャリアを準備できる環境を整えようと取り組んでいます。
柳澤:私もプロゲーマーのセカンドキャリアっていうのは気にしてきました。ネモ選手のモデルが理想的だと思ったのは、もともとの発想がそこにあったからなんですよね。
以前はスポンサーをつけたり、賞金を稼いでいたプレイヤーがセカンドキャリアを見つけられなくて、苦労しているという話を何度か聞いたことがありました。
「ゲームをやっていたらお金をもらえていた」という状況が終わった時、ちゃんとした基礎や振る舞い方を叩き込まれてきた方は、それによって再雇用につながっていると思うんです。そういう例を見せることによって、いい形でのセカンドキャリアが回ってくる構想は理想的ですよね。
伊草:そうですね。でも、正直まだまだ足りていません。とはいえ、そういう姿勢でやっていきたいですし、うちの選手やスタッフの将来は気になりますから、なんとかしてあげたいなと思いますよ。
――ちなみに、伊草さんご自身が所属プロゲーマーと直接触れ合うこともあるんでしょうか?
伊草:加入時には必ず面接をすることを大前提に、今は人数も増えてスタッフの層も厚くなってきたので、監督、コーチ、マネージャーが選手を含めてトライアウトや話をしたうえで、「この子だったら一緒にできるね」というお墨付きや評価のもと、私が「いいよ」と承認していますね。
最初にチームを作った時は全員を面接しました。大阪の喫茶店で(笑)。たぬかな選手がいたのも覚えていますよ。「あなたは何のゲームをやっているんですか?」と聞いたら「『鉄拳』です」と言うので、「強いの?」と聞き返したところ「強いです!」って即答していました(笑)。
伊草:チーム運営という観点でいうと、スポンサーさまからの収入や、大会に出場して賞金を得るといったことがあり、お金のことばかりを考えているわけではないのですが、会社を回すために必要な最低限の部分はあります。プレイヤー人口が少なくて大会もあまりないようなタイトルを選定することはないですね。
ただ、これはeスポーツの難しいところだと思いますが、今まで流行っていたものが来年にはどうなっているかわからないことや、今までになかったものが急に伸びてくるケース、同じゲームタイトルでもバージョンアップによってほぼ別のゲームになるケースなどがありますよね。タイトルに関しては日々確認していきますが、人気があってプレイヤー人口が多いゲームや、パブリッシャーの本気度、実際のユーザーがどれぐらいの規模で増えようとしているのか、といったところでタイトルの選定をしています。
柳澤:なかなか難しいですよね。3カ月で天下を取ってしまうようなゲームもあったりしますから。
伊草:そうですね。特にスマホのゲームはそういう傾向が強いと思っています。中国でもスマホのゲームが伸びているという事情がありますし、日本も伸びしろがまだまだありますよね。
スマホのゲームタイトルも無視しているわけではないのですが、世界を考えた時、PCゲームが圧倒的なマーケットですので、そういったところに打って出ていくのがメインになると思います。『レインボーシックス シージ』もそういった視点でやっていますので。
柳澤:今の流れは、我々ゲーミングPC業界にとってはすごく前向きな流れになっていると思いますね。eスポーツが流行ることで世界がだんだん身近になっていますし、本当に世界的なタイトルとなると、対戦格闘ゲームを除くとほぼPCゲームが占めています。我々にとっては大きなビジネスチャンスです。日本独自というよりは、世界の潮流という注目度は必ず出てくると思うので。
――逆に、ALIENWAREとして「これからこの分野に関して力を入れたい」というゲームタイトルやジャンルはありますか?
柳澤:今、足元で流行っているゲームにはもちろん力を入れていくんですが、「このジャンルが流行るだろう」っていう予測は正直言うと難しいですね。我々はあくまでもPCメーカーなので、ユーザーが求めているゲームこそ「我々が一番力を入れるべきゲーム」とシンプルに考えています。
気にかけているのは、変にバイアスをかけず、その流れをフェアに受け止めていくこと。ゲーマーとしてこのジャンルは苦手だけど、栄えているのであればビジネスとして見ていかないといけないし、力を入れないといけない、というフェアさは気にしています。「自分が好きなジャンルに偏る」というのは、ゲーマーから仕事をスタートした私のような人間が一番気をつけないといけない黄金パターンだと戒めています(笑)。ついそこにバイアスをかけてしまうので。
柳澤:第一の目的として、CYCLOPS athlete gamingというチームを通して我々のブランディングを行い、CYCLOPS athlete gamingのご活躍でより多くのeスポーツファンやゲームファンにリーチすることですね。もちろん、CYCLOPS athlete gamingのファンに対してもリーチしていくのも重要と考えています。
具体的には、ユニフォームや公式サイトにロゴを出していただくっていう基本的なところを踏まえつつ、「ALIENWARE Aurora」と「ALIENWARE AW2518H」をご提供し、実際のプレイや配信で使用していただくところからスタートします。
また、コンソール勢や格ゲー勢の選手に対しては、ALIENWAREのノートブックを追加で準備して、活躍をサポートしていけるように調整しています。細かい話としてはALIENWAREのバッグなど、使っていただけるものはどんどん使っていただきたいなと(笑)。
伊草:あのバッグ、私も欲しいです。通勤に使いますよ(笑)。
柳澤:ありがとうございます(笑)。あとは先ほど申し上げたとおり、ビジネスとしても売り上げを作り出さないといけないので、我々が持っているセールスのプロモーションに対して選手の方々にご協力いただくという形ですね。
たとえば、使った製品をプロならではの観点でレビューしてもらうことで世の中に伝えてもらう、といったことです。世間で売れ筋と呼ばれているのは、「プロが愛用している」または「プロがオススメしている」もので、特にデバイス系がよく売れているというお話を聞きます。同じ形で、我々はPCやモニターといったコアビジネスを中心に広められればなと思っています。
あと、選手の方々に「ALIENWARE STORE AKIBA」へお越しいただき、イベントスペースで配信していただくという形でのつながりや、CYCLOPS athlete gamingさんがファンに還元していく場としてのファンミーティングを支援したり、新しい取り組みに関してもご協力させていただきたいと思っている次第です。
伊草:ありがとうございます。私どもとしては、CYCLOPS athlete gamingというチームや選手をいろんな形でご活用いただければと思っています。先ほどのお話にもあったファンミーティングのようなものを拡大し、ALIENWAREのプロモーションという意味も含め、「PCでゲームをやったことがない」あるいは「PCでゲームをちょっとやってみたい」人たちに対するイベントや企画をご一緒にできたらいいなと思ってます。
特に、日本にはまだeスポーツをやる場がほとんどありません。そういった場がこれから増える時に「ALIENWAREを使ってみよう」「ALIENWAREで遊んでみよう」ということをプロがうまく発信していくことで、選手側の発信力も強化しなきゃいけないという話は今もしているんですよ。複合的な観点で協力関係ができればいいなと思っています。
――実際に現在、大阪の方で実施しているイベントとしてはどんなものがあるんでしょうか?
伊草:大きくふたつに分かれます。ひとつは大阪に持っているゲーミングハウスの地下にあるイベントスペースで、ほぼ毎日いろんなゲームをやっています。もうひとつは大阪の企業や自治体から「こういうイベントの中でeスポーツを取り入れたい」「eスポーツのミニイベントをやりたい」とか、いろんなお引き合いがある中に、ファンをいかに呼び込んでいくかという活動はしています。
柳澤:企業や自治体からの引き合いがある時には、我々も協力できるところは協力したいですね。
伊草:ぜひお声がけさせていただきます。これからそういう取り組みはますます増えていきますので。
柳澤:まずは、ネモ選手と竹内ジョン選手、どぐら選手やGO1選手が一緒に絡むイベントをしていただきたいです(笑)。
柳澤:日本のALIENWAREとしては、ネモ選手のような個人のプロゲーマーにサポートしたケースはあったんですが、プロチームを支援するというのは今回が初めてのケースなんです。
ALIENWAREとCYCLOPS athlete gamingが組むことで、ユーザーからは「お互いのブランドが良くなった」という認識が作れると思いますし、ネモ選手をサポートしていた時も社内的に見ても数字がきちっと上がっていたので、スポンサードによって売上も上がるしブランディングとしての認知度も取れると考えています。ちょうど今関西での販売に力を入れたいとも考えています。そういった形で、ユーザーにとっても弊社にとってもWIN-WINな関係を作り出せることが目標ですね。ブランディングと売り上げの両方が揃ってくる形ができれば、我々はさらに投資額を増やすことができますし、ユーザーに還元できるとも思っています。
伊草:CYCLOPS athlete gamingとしては、「スポンサードして良かった」と思っていただけるようになりたいですし、半年や1年という短いプランではなく、たとえば3年後や5年後に「一緒にやってきて良かった」と仰っていただけるのが目標ですね。それはもちろん、僕らだけ、ALIENWAREさんだけという話ではなく、「お互い一緒にやれてよかった」っていう関係性になれたらいいなと。
そのために必要なこととして、しっかりとした戦績を残すことや、選手の立ち居振る舞いを含め、スポンサーさんやファンの方々に対してきちんとコミュニケーションが取れることが大事です。最終的には、CYCLOPS athlete gamingのファンが増えることで「ファンもALIENWAREが好き」ということがセットになるように、スポンサーさんのことも発信していかなければいけません。あまり嫌味たらしくならない程度には積極的にやりたいなと(笑)。
柳澤:やりすぎるとお互いに良くないですからね(笑)。自然な形で「CYCLOPS athlete gamingに協力しているALIENWAREが好きになった」というところや、「ALIENWAREが協力することによってCYCLOPS athlete gamingの選手といろんなところで会えるようになった」というプラスの影響が生まれたり。理想としては、CYCLOPS athlete gamingの選手たちが「ALIENWAREのマシンを提供いただいて強くなりました」っていう話になってくれたらいいなと思います。
※※※※※
スポンサーシップの話が始まる以前からお互いの取り組みや考え方について共感していたというALIENWAREとCYCLOPS athlete gaming。PCゲームの分野で世界を見据えて活躍するという共通点がある両社だけに、今回のスポンサーシップによって生まれるシナジーは、きっと日本のeスポーツ業界にも大きなインパクトを与えるだろう。
世界中を席巻する「宇宙人」と、神話に登場する「伝説の巨人」──ともにその分野でトップに立つ者同士の異色のコラボレーションに、大いに期待したい。
■関連リンク
ALIENWARE
https://www.dell.com/ja-jp/gaming
CYCLOPS athlete gaming
http://cyclops-osaka.jp/
デル株式会社 ALIENWAREマーケティングシニアマネージャーを務める柳澤真吾氏と、CYCLOPS athlete gamingを運営するeスポーツコネクト株式会社 代表取締役の伊草雅幸氏に、スポンサーシップ締結のきっかけやお互いのブランドの印象、今後eスポーツ業界で両者がどのように活動していくのかといったお話を伺った。
デル株式会社 ALIENWAREマーケティングシニアマネージャーの柳澤真吾氏(右)と、eスポーツコネクト株式会社 代表取締役の伊草雅幸氏
CYCLOPS athlete gamingへの「共感」がスポンサードのきっかけ
――まずは、ALIENWAREとCYCLOPS athlete gamingのスポンサーシップ締結、おめでとうございます。おそらくファンとしては、今回のコラボが実現したきっかけを知りたいと思うのですが、まずはそのあたりから伺えますか?柳澤真吾氏(以下、柳澤):実はスポンサードを考える以前から、CYCLOPS athlete gaming……というよりは、伊草さんの会社のビジネスとして持たれている「ゲームに対する方向性」について、一方的に共感していたんですよ(笑)。ゲーム大会プラットフォームの「JCG」を持たれていたり、ゲームメディアの「SHIBUYA GAME」を始められたり。特にSHIBUYA GAMEは、ALIENWARE ZONEと同じようなサイトができたと思って気にしていたんです(笑)。
CYCLOPS athlete gamingに関しても、ゲーミングハウスにイベントスペースを持っていたり、チームに所属する選手の在り方として、日頃の発言を含めてみなさんしっかりされていて、どれもこれも共感できると思っていました。
というのも、ゲームやeスポーツをこれから発展させていくために必要な要素として、私は2つの考えを持っているんです。
ひとつは、ゲームを「憧れるもの」として親御さんに認められるようなものにしなければならないということ。昔からよく言われていますが、ゲームがちゃんとした文化になれるようにしていきたい。
もうひとつは、「ユーザー側の目線に立って進めていく」ことです。今の足元を形成しているのはゲームをしているユーザーですし、少なくともその中にいる人たちが活性化しないと未来があるわけがないんですよね。1メーカーなので力は大きくはないですが、このふたつはちゃんとやらなきゃいけないなと考えています。
そう考えると、マネジメントとチーム運営をしながら成績を残しつつ、大手メディアではやりにくいような部分で、ユーザーが興味を持つ話題をプロの手で編集して発信するというやり方も、ゲームそのものやeスポーツに対する向き合い方が、すごく弊社の考えに近いと思ったんです。
「ALIENWARE ZONE」で、ゲームに「勝つ」ことをテーマにしたり、「ALIENWARE STORE AKIBA」のイベントスペースを使ってゲームを「観る」文化を促進できるような形を作ったのも、できるだけユーザーと触れ合えるところを中心に、ALIENWAREとしてマーケティングも仕掛けることを意識したから、でした。
前置きが長くなりましたが(笑)、今回のスポンサードのきっかけは「(CYCLOPS athlete gamingに)共感できるな」っていうところが一番大きかったと思います。会社として出資を考えた時、eスポーツコネクトという会社がこれだけ大きいチームを育て上げているということも重要ですが、それ以上に理念が合致しているところが、ALIENWAREというブランドを正しく認知・拡大していくという中においてはすごく重要なことだと思っています。
CYCLOPS athlete gaming 伊草雅幸(以下、伊草):大変に恐縮です(笑)。
見据える先は常に世界、そのためにALIENWAREの力を借りたい
――今度はCYCLOPS athlete gamingの立場から、ALIENWAREとスポンサードという形でタッグを組むことについて、どう考えていますか?伊草:一言で言わせていただくと大変光栄ですし、身が引き締まる思いです。
CYCLOPS athlete gamingを運営するeスポーツコネクト株式会社という会社には、先ほど柳澤さんも仰っていた「eスポーツを通じて日本のゲーム文化を再定義したい」ということや、「eスポーツというコンテンツを使い、日本の若者をもっと熱狂させて元気にしたい」という経営理念があるんです。これはJCGやビットキャッシュ株式会社など、私がやっている会社に関してはすべて共通しています。
日本の若者って、自己主張もしなければ何も欲しがらないんですよね。そういうことをひっくるめて、私は「元気がない」と申し上げているのですが、では彼らは何に対してなら熱狂・熱中するんだろうと考えた時、「ゲーム」は大きなコンテンツだなと思ったんです。
正直、私自身はゲームに打ち込んだゲーマーというわけではありません。ただ、そんな中で「eスポーツ」という言葉を3年ほど前に聞き、「これだ!」と一気に投資を始めました。最初にやったのがCYCLOPS athlete gamingというチームの組成と、オーナー会社であるeスポーツコネクト株式会社の設立なんですが、実は最初は『オーバーウォッチ』のチーム組成からスタートしているんです。
eスポーツを勉強するためにアメリカ、韓国、中国、台湾などに行ったんですが、みなさんもご存じの通り、海外ではPCゲームが中心です。LANパーティーのような場所にPCを頑張って運ぶのが当たり前っていう世界に触れて、世界で戦う上でPCゲームを第一に考えるというのが、CYCLOPS athlete gamingのスタートだったんです。『オーバーウォッチ』も最初は弱かったんですが、今では日本代表になるほどの一番のチームを作り上げることができました。
そういった意味で、PCゲームに対するこだわりは持っていまして、『オーバーウォッチ』しかり『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』しかり、PCゲームタイトルの選手をコアにしていくことは、もともと考えていた発想なんです。
また、「世界に向けて発信していきたい」という思いもあって、世界で戦うことを大前提にしています。「大阪で強くなったから東京に出て勝とう」っていう発想ではなく、「大阪で強くなったらその次はどんどん世界に出ていこう」と。世界はPCゲームが中心ですから、当然その文脈からもPCゲームを選択するということは会社として重要な視点です。オーナーがゲーマーではないチームは珍しいかもしれませんが、そういった意味では事業として経営理念を持って、しっかりやっていこうと。
今までゲーマーと呼ばれてた人たちって、「プロ」だとか「eスポーツ」という言葉と一緒に「関係ない人たちが近寄ってきた」っていう違和感を持っているんですよね。ゲーマーっていうのはどちらかというと日向より日陰に近い存在で、一般的には「変な人」っていう見られ方や表現をされていますが、それじゃいけないと思っているんです。日本でもゲーム文化を再定義するという意味では、「ゲームばっかりやってると怒られる」ではなく「もっとゲームをやりなさい」と親御さんが背中を押したり、あるいはプロゲーマーがもっと認知されて「憧れの存在になる」っていう流れを作らないといけない。そのために何が必要かというと、会社としてしっかりやることなんです。
うちの選手は、プロである以前に社会人なんですよ。たとえば立ち居振る舞いであったり、インタビューを受ける時は「ちゃんとマスクを取りなさい」と伝えたり、細かいところで指導しているんです。ファンの方に対するサービスやアピール、スポンサーさんに対する感謝の気持ちと向き合うこともすごく大事にしています。ですから、Twitterで変なことを呟いていないか、Facebookでわけのわからない投稿をしていないか、過去を洗ってからプロ契約を結ぶことを大切にしています。社会人である前にひとりの人間としてちゃんとしなきゃダメだよっていう教育もするのが、当社のこだわりですね。
そんな中で、世界を相手に戦っていくためにはPCゲームが不可欠であるということで、PCのワールドワイドマーケットでブランド力があり、かつ製品としてもクオリティが素晴らしいALIENWAREを僕らが手にできるようにご支援いただくっていうのは、嬉しいに決まってますし、ありがたいお話です。
柳澤:こちらこそ。そんなふうにおっしゃっていただいて、ありがとうございます。
世界と戦える日本人、プロとして認められる人材を育てたい
柳澤:今のお話の中で、「世界に向かっている」という点はすごく重要だと感じました。ユーザーや視聴者が憧れるところって「世界と戦う日本人」「世界で勝つ」なんですよね。この文脈の構図ってすごく面白いですし、我々も大切にしたいです。何よりもグローバルでも言われていることなんです。各国でチームをスポンサードする際に、本社から「世界的に戦えるチームを選んでくれ」と言われています。CYCLOPS athlete gamingの場合は、『オーバーウォッチ』で日本一のチームというところ、対戦格闘ゲームでは『ドラゴンボール ファイターズ』で準優勝されたGO1選手をはじめ、世界有数の選手を抱えているところが魅力として大きいなと思っています。
伊草:ありがとうございます。まだまだ頑張らなきゃいけないんですけどね。
柳澤:その中でも今回、「CYCLOPS athlete gamingはこういうチームなんです」ということを本社に説明したとき、ゲーミングを担当している女性社員から「女性プロがいるチームをALIENWAREがスポンサードしているチームで初めて見た。すごく良いことだと思う。たぬかな選手について説明してほしい」と聞かれるばかりで。もっとチーム全体の話を聞いてもらいたいと思ったくらいなんですよ(笑)。
伊草:ははは(笑)。たしかに女性プロは世界的にも珍しいですよね。彼女は日本のトップというわけではないですが、今でも実力が徐々に上がっていってますし、気持ちもまだまだ前向きです。
僕はこれまで選手によく、「プロなんだから強くなりなさい」と言っていたんですが、ゲーマーの子たちって、楽しいから、好きだからそのゲームをやっているんですよね。なので、「強くなれ」「1位になれ」「なんで負けたんだ」ってプレッシャーをかけられることに対して弱い子もいる。最近は「勝て」ってあまり言わないようにしているんです(笑)。
ただ、勝たないとカッコよくないし、ファンがついてこない。あくまでも競技・スポーツですから。
この1年、メディアからの取材を受ける回数や、Twitterのフォロワー数もグッと増えていて、「一般の方々に自分がどう見られるべきなのか、何をお伝えするべきなのか」ということを選手たち自身が意識し始めているなと感じています。実力があるけどぶっきらぼうな選手もいるかもしれませんが、ファンの方々からの視線が常に向けられているという姿勢とともに、「だから自分が強くならなきゃいけないんだ」って腑に落ちると思うんですよね。少なくとも、私から「勝て勝て」と言われるよりは。なので、ある意味すごくいい感じで回ってきているなと実感しています。
プロゲーマーになる不安、その先のセカンドキャリアも見据えて
柳澤:伊草さんのお話って、ビジネス的に成功されていることはもちろんですが、「ゲーマーの視点」をちゃんと持たれているところがすごいなと思いました。私自身は自分がゲーマーっていう文脈からスタートしている発想なんですが、非ゲーマーでありながらゲーマーの発想をされている方って珍しいので。でも、そこがまさにCYCLOPS athlete gamingならでは、なところですよね。日本のプロチームはプロゲーマーからのスタートが大半を占めていますが、伊草さんのようにきちっとしたキャリアのある方が主導することによってプロゲーミングチームはビジネスとしても成立するし、どうやったら社会に対して向き合えるのかを考えられている点は、CYCLOPS athlete gamingの魅力だと思います。
我々が日本のローカルで初めてプロ契約したネモ選手も、社会人プロゲーマーということで、人としてきっちりしているのが信用できましたし、スポンサードさせていただいてから成績がグッと上がり、振る舞い方もさらに変わっていきました。気がついたら手の届かないところに行っちゃったとも思ったんです(笑)。でも、そういう下地があるといろんな人に受け入れられますし、“憧れられる”選手になっていけるのかなと。
伊草:ネモ選手のお話はまさにおっしゃるとおりですね。プロゲーマーになるっていうのはある意味、勇気がいることだと思うんです。
今でこそALIENWAREさんをはじめ、いろんな業界の方々が盛り上げてくださっているので、eスポーツに目を向けて「ゲームを本気でやってみよう」っていう若者は確実に増えていると思うんです。その一方で、本当にプロとしてとことんゲームしかやらない生活を選ぶかどうかというと、そこは悩ましい若者が多いのも事実なんですよね。
「最終的にはどこかの会社に入るんでしょ? だから学生時代は好きなことをやりなさい」と親御さんが線を引いているケースもありますし、選手本人も「プロとしてある程度まで行ったら、勉強して学校に入って就職する」というように、プロゲーマーというキャリアプランに対して不安を持っています。これは当然だと思うんですよね。プロゲーマーっていう職業そのものが社会的に認知されていませんし、「所詮はゲーム」と考えている方もまだまだ多いですから。
なので、私どもは会社としてしっかりやる上で、選手のキャリアプランをしっかり考えています。たとえば、『オーバーウォッチ』チームのレギュラーから漏れてしまい、脱退せざるを得なくなってしまった選手がいたとしたら、プロとしてやってきた視点を活かしてスポンサーさんの会社への就職を勧めたり、「SHIBUYA GAME」のライターや取材スタッフ、JCGの企画・運営スタッフ、大会での実況・解説、チームのコーチ・マネージャーになるなど、セカンドキャリアを準備できる環境を整えようと取り組んでいます。
柳澤:私もプロゲーマーのセカンドキャリアっていうのは気にしてきました。ネモ選手のモデルが理想的だと思ったのは、もともとの発想がそこにあったからなんですよね。
以前はスポンサーをつけたり、賞金を稼いでいたプレイヤーがセカンドキャリアを見つけられなくて、苦労しているという話を何度か聞いたことがありました。
「ゲームをやっていたらお金をもらえていた」という状況が終わった時、ちゃんとした基礎や振る舞い方を叩き込まれてきた方は、それによって再雇用につながっていると思うんです。そういう例を見せることによって、いい形でのセカンドキャリアが回ってくる構想は理想的ですよね。
伊草:そうですね。でも、正直まだまだ足りていません。とはいえ、そういう姿勢でやっていきたいですし、うちの選手やスタッフの将来は気になりますから、なんとかしてあげたいなと思いますよ。
――ちなみに、伊草さんご自身が所属プロゲーマーと直接触れ合うこともあるんでしょうか?
伊草:加入時には必ず面接をすることを大前提に、今は人数も増えてスタッフの層も厚くなってきたので、監督、コーチ、マネージャーが選手を含めてトライアウトや話をしたうえで、「この子だったら一緒にできるね」というお墨付きや評価のもと、私が「いいよ」と承認していますね。
最初にチームを作った時は全員を面接しました。大阪の喫茶店で(笑)。たぬかな選手がいたのも覚えていますよ。「あなたは何のゲームをやっているんですか?」と聞いたら「『鉄拳』です」と言うので、「強いの?」と聞き返したところ「強いです!」って即答していました(笑)。
世界に目を向けて対象ゲームをセレクト
――ここからは、CYCLOPS athlete gamingの今後の展望について伺います。まず、今後チームとして力を入れたいタイトルや分野はありますか?伊草:チーム運営という観点でいうと、スポンサーさまからの収入や、大会に出場して賞金を得るといったことがあり、お金のことばかりを考えているわけではないのですが、会社を回すために必要な最低限の部分はあります。プレイヤー人口が少なくて大会もあまりないようなタイトルを選定することはないですね。
ただ、これはeスポーツの難しいところだと思いますが、今まで流行っていたものが来年にはどうなっているかわからないことや、今までになかったものが急に伸びてくるケース、同じゲームタイトルでもバージョンアップによってほぼ別のゲームになるケースなどがありますよね。タイトルに関しては日々確認していきますが、人気があってプレイヤー人口が多いゲームや、パブリッシャーの本気度、実際のユーザーがどれぐらいの規模で増えようとしているのか、といったところでタイトルの選定をしています。
柳澤:なかなか難しいですよね。3カ月で天下を取ってしまうようなゲームもあったりしますから。
伊草:そうですね。特にスマホのゲームはそういう傾向が強いと思っています。中国でもスマホのゲームが伸びているという事情がありますし、日本も伸びしろがまだまだありますよね。
スマホのゲームタイトルも無視しているわけではないのですが、世界を考えた時、PCゲームが圧倒的なマーケットですので、そういったところに打って出ていくのがメインになると思います。『レインボーシックス シージ』もそういった視点でやっていますので。
柳澤:今の流れは、我々ゲーミングPC業界にとってはすごく前向きな流れになっていると思いますね。eスポーツが流行ることで世界がだんだん身近になっていますし、本当に世界的なタイトルとなると、対戦格闘ゲームを除くとほぼPCゲームが占めています。我々にとっては大きなビジネスチャンスです。日本独自というよりは、世界の潮流という注目度は必ず出てくると思うので。
――逆に、ALIENWAREとして「これからこの分野に関して力を入れたい」というゲームタイトルやジャンルはありますか?
柳澤:今、足元で流行っているゲームにはもちろん力を入れていくんですが、「このジャンルが流行るだろう」っていう予測は正直言うと難しいですね。我々はあくまでもPCメーカーなので、ユーザーが求めているゲームこそ「我々が一番力を入れるべきゲーム」とシンプルに考えています。
気にかけているのは、変にバイアスをかけず、その流れをフェアに受け止めていくこと。ゲーマーとしてこのジャンルは苦手だけど、栄えているのであればビジネスとして見ていかないといけないし、力を入れないといけない、というフェアさは気にしています。「自分が好きなジャンルに偏る」というのは、ゲーマーから仕事をスタートした私のような人間が一番気をつけないといけない黄金パターンだと戒めています(笑)。ついそこにバイアスをかけてしまうので。
CYCLOPS athlete gamingの選手とより身近に触れ合えるようになる?
――ALIENWAREとCYCLOPS athlete gamingの協力関係については、今後具体的にどのように進んでいく予定なのでしょうか?柳澤:第一の目的として、CYCLOPS athlete gamingというチームを通して我々のブランディングを行い、CYCLOPS athlete gamingのご活躍でより多くのeスポーツファンやゲームファンにリーチすることですね。もちろん、CYCLOPS athlete gamingのファンに対してもリーチしていくのも重要と考えています。
具体的には、ユニフォームや公式サイトにロゴを出していただくっていう基本的なところを踏まえつつ、「ALIENWARE Aurora」と「ALIENWARE AW2518H」をご提供し、実際のプレイや配信で使用していただくところからスタートします。
また、コンソール勢や格ゲー勢の選手に対しては、ALIENWAREのノートブックを追加で準備して、活躍をサポートしていけるように調整しています。細かい話としてはALIENWAREのバッグなど、使っていただけるものはどんどん使っていただきたいなと(笑)。
伊草:あのバッグ、私も欲しいです。通勤に使いますよ(笑)。
柳澤:ありがとうございます(笑)。あとは先ほど申し上げたとおり、ビジネスとしても売り上げを作り出さないといけないので、我々が持っているセールスのプロモーションに対して選手の方々にご協力いただくという形ですね。
たとえば、使った製品をプロならではの観点でレビューしてもらうことで世の中に伝えてもらう、といったことです。世間で売れ筋と呼ばれているのは、「プロが愛用している」または「プロがオススメしている」もので、特にデバイス系がよく売れているというお話を聞きます。同じ形で、我々はPCやモニターといったコアビジネスを中心に広められればなと思っています。
あと、選手の方々に「ALIENWARE STORE AKIBA」へお越しいただき、イベントスペースで配信していただくという形でのつながりや、CYCLOPS athlete gamingさんがファンに還元していく場としてのファンミーティングを支援したり、新しい取り組みに関してもご協力させていただきたいと思っている次第です。
伊草:ありがとうございます。私どもとしては、CYCLOPS athlete gamingというチームや選手をいろんな形でご活用いただければと思っています。先ほどのお話にもあったファンミーティングのようなものを拡大し、ALIENWAREのプロモーションという意味も含め、「PCでゲームをやったことがない」あるいは「PCでゲームをちょっとやってみたい」人たちに対するイベントや企画をご一緒にできたらいいなと思ってます。
特に、日本にはまだeスポーツをやる場がほとんどありません。そういった場がこれから増える時に「ALIENWAREを使ってみよう」「ALIENWAREで遊んでみよう」ということをプロがうまく発信していくことで、選手側の発信力も強化しなきゃいけないという話は今もしているんですよ。複合的な観点で協力関係ができればいいなと思っています。
――実際に現在、大阪の方で実施しているイベントとしてはどんなものがあるんでしょうか?
伊草:大きくふたつに分かれます。ひとつは大阪に持っているゲーミングハウスの地下にあるイベントスペースで、ほぼ毎日いろんなゲームをやっています。もうひとつは大阪の企業や自治体から「こういうイベントの中でeスポーツを取り入れたい」「eスポーツのミニイベントをやりたい」とか、いろんなお引き合いがある中に、ファンをいかに呼び込んでいくかという活動はしています。
柳澤:企業や自治体からの引き合いがある時には、我々も協力できるところは協力したいですね。
伊草:ぜひお声がけさせていただきます。これからそういう取り組みはますます増えていきますので。
柳澤:まずは、ネモ選手と竹内ジョン選手、どぐら選手やGO1選手が一緒に絡むイベントをしていただきたいです(笑)。
互いのブランド認知とイメージを高め合える関係に
――最後に、今後の意気込みや目標をお聞かせください。柳澤:日本のALIENWAREとしては、ネモ選手のような個人のプロゲーマーにサポートしたケースはあったんですが、プロチームを支援するというのは今回が初めてのケースなんです。
ALIENWAREとCYCLOPS athlete gamingが組むことで、ユーザーからは「お互いのブランドが良くなった」という認識が作れると思いますし、ネモ選手をサポートしていた時も社内的に見ても数字がきちっと上がっていたので、スポンサードによって売上も上がるしブランディングとしての認知度も取れると考えています。ちょうど今関西での販売に力を入れたいとも考えています。そういった形で、ユーザーにとっても弊社にとってもWIN-WINな関係を作り出せることが目標ですね。ブランディングと売り上げの両方が揃ってくる形ができれば、我々はさらに投資額を増やすことができますし、ユーザーに還元できるとも思っています。
伊草:CYCLOPS athlete gamingとしては、「スポンサードして良かった」と思っていただけるようになりたいですし、半年や1年という短いプランではなく、たとえば3年後や5年後に「一緒にやってきて良かった」と仰っていただけるのが目標ですね。それはもちろん、僕らだけ、ALIENWAREさんだけという話ではなく、「お互い一緒にやれてよかった」っていう関係性になれたらいいなと。
そのために必要なこととして、しっかりとした戦績を残すことや、選手の立ち居振る舞いを含め、スポンサーさんやファンの方々に対してきちんとコミュニケーションが取れることが大事です。最終的には、CYCLOPS athlete gamingのファンが増えることで「ファンもALIENWAREが好き」ということがセットになるように、スポンサーさんのことも発信していかなければいけません。あまり嫌味たらしくならない程度には積極的にやりたいなと(笑)。
柳澤:やりすぎるとお互いに良くないですからね(笑)。自然な形で「CYCLOPS athlete gamingに協力しているALIENWAREが好きになった」というところや、「ALIENWAREが協力することによってCYCLOPS athlete gamingの選手といろんなところで会えるようになった」というプラスの影響が生まれたり。理想としては、CYCLOPS athlete gamingの選手たちが「ALIENWAREのマシンを提供いただいて強くなりました」っていう話になってくれたらいいなと思います。
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スポンサーシップの話が始まる以前からお互いの取り組みや考え方について共感していたというALIENWAREとCYCLOPS athlete gaming。PCゲームの分野で世界を見据えて活躍するという共通点がある両社だけに、今回のスポンサーシップによって生まれるシナジーは、きっと日本のeスポーツ業界にも大きなインパクトを与えるだろう。
世界中を席巻する「宇宙人」と、神話に登場する「伝説の巨人」──ともにその分野でトップに立つ者同士の異色のコラボレーションに、大いに期待したい。
■関連リンク
ALIENWARE
https://www.dell.com/ja-jp/gaming
CYCLOPS athlete gaming
http://cyclops-osaka.jp/