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『エースコンバット7』初開催となる大会の様子は? 「Red Bull Friday Night Streaks」レポート
目次
RedBullは6月14日に、バンダイナムコエンターテインメントのフライトシューティングゲーム『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』の大会を、金曜夜に開催する賞金制ゲームイベント「Red Bull Friday Night Streaks」の第一弾タイトルとして、東京・中野にあるeスポーツ施設「Red Bull Gaming Sphere Tokyo」で開催した。
『エースコンバット』シリーズは過去作において対戦モードが搭載されてきたものの、今まで公式な大会は実施されたことはなく、今回の「Red Bull Friday Night Streaks」が初めての公式大会となる。
開催までの経緯は、5月17日に告知されるとともに募集を開始。抽選で選ばれた32名が6月7日に予選を実施(会場で対戦。諸事情から2名出場辞退)。そして予選を勝ち抜いた8名が賞金9万9999円と優勝を目指し6月14日の本戦を戦うというものだ。
予選では実況と解説がなかったが、本戦ではプロデューサー下元学氏を筆頭に、実況にふーひ氏と解説に航空自衛隊OB TACネーム“KID”氏が加わった。さらに、マルチプレイディレクターの廣田慎也氏、リードメカニックデザイナーの川瀨覚氏も登壇し、本戦で使う兵装や機体の解説が行われた。大会の模様はTwitchにて配信されており、大会後もアーカイブが残されているため、参加者がどのように戦ったかを確認できる。
Red Bull Friday Night Streaks エースコンバット7 スカイズ・アンノウン 決勝
https://www.twitch.tv/videos/438856147
なお、最後に、今後のeSports展開を語ったインタビューを掲載しているので、こちらも合わせて読んでほしい。
準決勝には、タクキチ選手、まいくろもぐ選手、えすつー選手、egret選手、オルカ選手、シノ選手、ころりあな選手の7名が出場(1名諸事情により出場辞退)。
準決勝第1試合は、タクキチ選手とまいくろもぐ選手、えすつー選手、そしてegret選手の4名だ。
対戦の傾向としては、EML(レールガン)が搭載できるF/A-18FやSu-33がスコアを伸ばす傾向にあり、第3マッチまでに、まいくろもぐ選手とえすつー選手、egret選手がそれぞれ4ポイントを獲得。F/A-18Fを筆頭とした西側機はあまり多く使われておらず、フランカーシリーズを中心とした東側機体が多くを占めていた。
EMLはロックオンが効かないため照準が難しいものの威力が高く、敵機をほぼ1撃で破壊できる性能を持っているため、熟練プレイヤーには人気の兵装だ。
最後の第3マッチは、まいくろもぐ選手のSu-47がQAAM(空対空ミサイル)でポイントを稼いだものの、EML装備のえすつー選手が首位に到達し勝利。このため、決勝はまいくろもぐ選手とえすつー選手の2名が進出した。なお、QAAMは、高威力と長時間誘導から一撃離脱戦法がとりやすく得点を稼ぎやすい兵装だ。
準決勝第2試合では、オルカ選手とシノ選手ところりあな選手の3名が出場。3人でのバトルロイヤルとなり、EMLとQAAMが駆使される戦場となったが、第2マッチでオルカ選手がSu-34のHCAAを扱うという珍しい機体を使っての試合が展開された(また、第1マッチでオルカ選手はMiG-29Aを使用)。第3マッチの時点でポイントはシノ選手が8ポイント、オルカ選手が5ポイント、そしてころりあな選手が4ポイントとなり、シノ選手とオルカ選手の2名が決勝へと出場した。
なお、シノ選手は、インシー渓谷の奇岩地帯を悠々飛びながらドッグファイトを行う様子を映した『エースコンバット7』「第1回動画投稿キャンペーン」の入賞者で、マルチプレイではEML兵装を使いこなすプレイヤーとして知られている。
『AC7』マルチのコスト面でも低い機体だがMGP(マシンガンポッド)を装備し、運動性もそれなりに良く、低速域でのドッグファイトで銃弾の雨を浴びせられるのが特徴だ。しかしながら、MiG-21を使用したえすつー選手とオルカ選手のリザルトをみると、上位に入れなかったようで、EML装備のシノ選手が首位を取っていた。
第2マッチは、シノ選手がSu-47へと乗り換えQAAMを使った戦い方に切り替え、一方でえすつー選手はMiG-21からSu-33へと機体を変更しEMLを用いた戦術に変えた。視界が開けた「Roca Roja」マップでの戦闘は、えすつー選手が着実にEMLで撃墜してスコアを伸ばして首位を獲得し、第1マッチでの遅れを取り戻した。
最終マッチは、シノ選手が再びEMLを装備したSu-33へ、オルカ選手がHCAA(空対空ミサイル)を装備したSu-34へと乗り換え、EML装備機体が2機存在する試合となった。マッチ開始時にSu-47を使うまいくろもぐ選手は、EMLの狙撃対策か不規則な機動を取りながら交戦区域へ接近しQAAMを発射。しかしながら、戦闘に参加するのが遅くシノ選手と1万5000点以上の差が出てからの戦いとなってしまった。
シノ選手とえすつー選手は、機体のハイGターンとポストストールマニューバ(PSM)を駆使しEMLの照準を確実に敵機へと合わせて撃墜する姿が目立ちつつ、最終的にシノ選手が最後に敵機を撃破すると共に首位へと上り詰め勝利。これによってシノ選手が優勝を収めた。
なお、この決勝戦後には開発陣チームと上位4名によるエキシビションマッチ(チームデスマッチ)を実施。このマッチでは、開発チームのTLS(対地対空両用兵装)によるレーザー攻撃が目立ち、火力が低いと言われる兵装を最大限使いこなしていた。
しかしながら、大会自体は決して見られない内容ではなく、各選手最大限の力を出し切って戦っているようにも感じられた。このまま何らかの形で公式大会が定期化され、選手たちの腕前がより向上していくのなら、今回以上に面白く白熱した試合になるのでは? という期待は持てる。
今回試合を観戦していて感じたのが、『エースコンバット』シリーズは空戦をテーマにした作品であるが、FPSの特に『Call of Duty』シリーズに代表されるようなEsports大会を見ているような感覚に近く、盛り上げるために十分な実況と「誰が何の機体を使っているか」という部分をより強調していけば、試合も見やすくなると思えた。
ゲーム内表記では、誰の視点かを説明するのは難しいかもしれないが、配信用のオーバーレイを使って誰の視点かを画面隅に表示してくれるだけでも、かなり見やすくなるのではないだろうか。
『エースコンバット7』大会の観戦の面白さは、ヘッドオン(正面からのすれ違い)時のミサイルキルや接近戦からのガンキル、そして一瞬の隙を見逃さずにミサイルや機銃で撃破する瞬間だろう。
特にEMLやMGP等の無誘導機銃系兵装は、扱いの難しい特性からプレイヤーのスキルが大きく反映されやすいことに加え、発射音とレティクルによって確実に倒したことがわかることで大きく盛り上がりやすい。特に今回の試合では、相手の見せた一瞬の隙を突いてEMLを使い撃破する瞬間に観客から驚きの声が上がったからだ。
実況についても触れておきたい。今回の実況では、初めての大会ということもありプロデューサーの下元氏を筆頭とした“豪華ゲスト”が登壇すると共に解説に入っていたため、実況よりもシステムや実機現象での解説がメインとなってしまっていた。そのため、盛り上がるところを言語化しテンションを上げる様子があまり見られなかったのは残念だ。
このことから、『エースコンバット』のEsports展開の盛り上がりは今後の魅せ方の改善次第だが、十分にそのポテンシャルを持っており、今回の試合は実況と解説含め小さな改良点があるもののほぼ完成形に近いと言えるだろう。
――今回の大会でEsportsとしての『エースコンバット』の可能性について感じたことを教えてください。
下元氏:『エースコンバット』の楽しみ方の一つとして、Esportsの可能性はあると思っていました。今回大会をやってみて、今後の取り組みの一つとして現実味が増したと思います。ルールやシステム面だけでなく、「観せる」と「魅せる」の課題もわかりましたしね。
廣田氏:初めて大会を開いた時に下元が言っていたように「魅せる」ところや、一般環境のユーザーさんも気軽にプレイできるように大会用のレギュレーションを設定したりする下地の整理という改善は必要なのかなと思いました。
川瀬氏:絵的に小さいもの同士が遠くでミサイルを撃ち合う様は「Esportsというショービジネス化するには地味な絵になるのではないかな」と思っていたら、実際に2機や3機が同じ画面に大写しになってガンファイトする姿が見えましたので、「結構これ、やるじゃん!」と思いました。
――今回の大会で印象的だった戦い方や機体は何でしょうか?
下元氏:機銃好きのユーザーさんがいることは知っていましたが、MiG-21 フィッシュベットのMGPをこのハイレベルな対人戦で使うのは予想外で、決勝にまで上がってくる腕前もそうですし、機体への愛や、自分らしさ、戦い方へのこだわりというのを感じられたのが良かったですね。そういったこだわりを表現できる良い環境を作れたのかなと思っています。
廣田氏:優勝されたシノ選手のEMLを使ったプレイや、Su-34を選んだユーザーさんのプレイなどを観て、単に勝利するだけでなく「自分のこだわりの方法で戦おう!」という思いを強く感じました。
河野氏:今回、東側機が多かったね。
川瀬氏:不思議ですよね。予選だと片羽カラー(ピクシーカラー)のF-15Cがいて「さすがや!」と思いました。F-15Cの積んでいるSASM(空対空ミサイル)は割と強い武器ではあるのですが、決勝で使う人はいるかなと思いましたが、あえなく皆フランカーになりましたね。得てして、出場キャラクターが偏ってしまうのは対戦ゲーム特有ではありますが、均等を目指して僕らはバランス調整をしていましたので、力及ばずなところが悔しいですね(笑)
河野氏:まさかここまで、皆様の前で配信までされるゲームになるとは思っていなかったね。
川瀬氏:KIDさんが言っていた位置エネルギーと運動エネルギーをもうちょっと取り入れて、テクニックが関与するところを増やしていくと、より競技性が高まるような気がしますが、やりすぎるとフライトシムの領域に踏み出してしまう危ういバランスなので「山は高いぞ!」「ハードルは高いぞ!」というところはありますね。
――今回の大会を受けて、今後も大会も続けて行くにあたって、どんな施策が必要だと思いましたか?
下元氏:そうですね、大前提としてシリーズの魅力は一人プレイでのエースパイロット体験です。ただ、本作に限らずこれから先、シリーズを展開していくなかで、多くの人に『エースコンバット』を知ってもらう必要があります。その認知してもらう方法の一つとして、こういった大会を行うことは大事だとあらためて思いました。
今回は『エースコンバット』をプレイしているユーザー向けの放送内容だったので、これからはプレイしたことがない人にわかる、魅力的に思えるような内容にしていくことが、今後のブランドの課題かなと思っています。
河野氏:観客に向けてまでは今作は作っていなかったね
下元氏:『7』を作っている間にEsportsの波が来て、そこまでの部分は拾いきれなかったですから。
普段からRedBullさんにご協力をいただいて、『鉄拳』や『ソウルキャリバー』の大会を実施していただいているのですが、今回は「『エースコンバット』を題材に」というところで話をいただきました。ちょうど観戦してもらう楽しみ方を試したいと考えていて、両者の想いが一致して今日の実施に至りました。大会やそれを観戦するという楽しみ方もこれからは力を入れていきたいと思います。
川瀬氏:他のEsportsタイトルと比較したりすると、バランスを常に揺らし続ける半運営的な感じになりますからね。バランス調整を月に1度か2度くらいでアップデートし続けると大変になりますね。
下元氏:一人プレイでのエースパイロット体験とは違う楽しみ方なので、従来の楽しさと新しい楽しさ、それぞれに対応できるようなタイトルの作り方を考えていかなきゃいけないというのが課題ですね。
河野氏:面白いよね、『エースコンバット』の新たな一面が始まった感じがして。やっぱり人に見せるとなるとこうなるんだと1人の観客として見ていて思いました。
――なるほど。先ほど川瀬氏が「月に1度か2度のバランス調整」と言われましたが、2018年までPS3でF2Pタイトルとして展開していた『エースコンバット インフィニティ』の時はどれくらいの頻度で調整していたのでしょうか?
川瀬氏:『エースコンバット インフィニティ』の場合、1~2カ月に一度配信していた大型アップデートが調整のタイミングでした。特に家庭用タイトルは、スピーディーな調整を適宜行えるように開発段階で十分な仕組みを構築する必要があると考えています。
――今回はPS4版でしたが、PC版の大会についてはどうですか?
下元氏:そうですね! 今回のような機会をいただけるのであればぜひやりたいなと。また、お誘いいただけないかなと(笑)。
――今後の大会展開はどうでしょうか? より全国的にオンラインでトーナメントを開催して「東京ゲームショウ」で真のエースを決める大会などを構想したことはありますか?
下元氏:もちろんありますが、『7』のオンラインの仕組みが大会機能を有しているわけではないのです。実施のためにはそのような機能を実装していく必要がありますし、整備することも非常に多いですね。
ただ、やりたいという気持ちはより強くなったので、今後のシリーズでは実現を目指したいと思います。
河野氏:実際、うちのプロダクションは、『鉄拳』がワールドワイドで世界大会を展開していく様子、オンラインで予選をやって、それを段取りして、最終的に世界王者を決めるという年間の取り組みに、規模とコストがどれだけ掛かるかを目の当たりにしていて、さらにそれを『ソウルキャリバー』が追いかけている最中です。『エースコンバット』はさらにその後ろを飛んでいることになるので、いつかできるといいですけれど『鉄拳』を見ているとまだまだ課題も多いし、そうなるために『エースコンバット』ブランドがやらなきゃいけないことは多いなと思います。
それに下元も言っているように、そちらの方向性だけが『エースコンバット』ではありませんから。『7』をリリースして、いろいろな可能性の伸ばし先が見えてきて、これからゲームのあり方や環境も大きく変わっていく波を迎えそうですし。まあ、ブランドにとってありがたい挑戦の時期が来ていて、その機会を作っていただいたファンや周りの皆様に感謝している次第です。
――ありがとうございました。
■関連リンク
エースコンバット7 スカイズ・アンノウン
https://ace7.acecombat.jp/
Red Bull Friday Night Streaks エースコンバット7 スカイズ・アンノウン 決勝(Twitch)
https://www.twitch.tv/videos/438856147
『エースコンバット』シリーズは過去作において対戦モードが搭載されてきたものの、今まで公式な大会は実施されたことはなく、今回の「Red Bull Friday Night Streaks」が初めての公式大会となる。
開催までの経緯は、5月17日に告知されるとともに募集を開始。抽選で選ばれた32名が6月7日に予選を実施(会場で対戦。諸事情から2名出場辞退)。そして予選を勝ち抜いた8名が賞金9万9999円と優勝を目指し6月14日の本戦を戦うというものだ。
予選では実況と解説がなかったが、本戦ではプロデューサー下元学氏を筆頭に、実況にふーひ氏と解説に航空自衛隊OB TACネーム“KID”氏が加わった。さらに、マルチプレイディレクターの廣田慎也氏、リードメカニックデザイナーの川瀨覚氏も登壇し、本戦で使う兵装や機体の解説が行われた。大会の模様はTwitchにて配信されており、大会後もアーカイブが残されているため、参加者がどのように戦ったかを確認できる。
Red Bull Friday Night Streaks エースコンバット7 スカイズ・アンノウン 決勝
https://www.twitch.tv/videos/438856147
なお、最後に、今後のeSports展開を語ったインタビューを掲載しているので、こちらも合わせて読んでほしい。
試合展開をレポート!EML搭載機体が目立つもSu-34など予想外の機体で攻める選手も
ここからは準決勝の試合の流れを紹介しよう。準決勝には、タクキチ選手、まいくろもぐ選手、えすつー選手、egret選手、オルカ選手、シノ選手、ころりあな選手の7名が出場(1名諸事情により出場辞退)。
準決勝第1試合は、タクキチ選手とまいくろもぐ選手、えすつー選手、そしてegret選手の4名だ。
対戦の傾向としては、EML(レールガン)が搭載できるF/A-18FやSu-33がスコアを伸ばす傾向にあり、第3マッチまでに、まいくろもぐ選手とえすつー選手、egret選手がそれぞれ4ポイントを獲得。F/A-18Fを筆頭とした西側機はあまり多く使われておらず、フランカーシリーズを中心とした東側機体が多くを占めていた。
EMLはロックオンが効かないため照準が難しいものの威力が高く、敵機をほぼ1撃で破壊できる性能を持っているため、熟練プレイヤーには人気の兵装だ。
最後の第3マッチは、まいくろもぐ選手のSu-47がQAAM(空対空ミサイル)でポイントを稼いだものの、EML装備のえすつー選手が首位に到達し勝利。このため、決勝はまいくろもぐ選手とえすつー選手の2名が進出した。なお、QAAMは、高威力と長時間誘導から一撃離脱戦法がとりやすく得点を稼ぎやすい兵装だ。
準決勝第2試合では、オルカ選手とシノ選手ところりあな選手の3名が出場。3人でのバトルロイヤルとなり、EMLとQAAMが駆使される戦場となったが、第2マッチでオルカ選手がSu-34のHCAAを扱うという珍しい機体を使っての試合が展開された(また、第1マッチでオルカ選手はMiG-29Aを使用)。第3マッチの時点でポイントはシノ選手が8ポイント、オルカ選手が5ポイント、そしてころりあな選手が4ポイントとなり、シノ選手とオルカ選手の2名が決勝へと出場した。
なお、シノ選手は、インシー渓谷の奇岩地帯を悠々飛びながらドッグファイトを行う様子を映した『エースコンバット7』「第1回動画投稿キャンペーン」の入賞者で、マルチプレイではEML兵装を使いこなすプレイヤーとして知られている。
HCAAやMGPも用いて各選手が全力を出した決勝戦
シノ選手とオルカ選手、まいくろもぐ選手、えすつー選手が出場する決勝第1マッチは、Su-33とSu-47の定番機体がいたほかにも、MiG-21が2機使用された。MiG-21は1950年代に初飛行した古い機体で、現在でも世界各国で改良されながら使われているクラシックな戦闘機。『AC7』マルチのコスト面でも低い機体だがMGP(マシンガンポッド)を装備し、運動性もそれなりに良く、低速域でのドッグファイトで銃弾の雨を浴びせられるのが特徴だ。しかしながら、MiG-21を使用したえすつー選手とオルカ選手のリザルトをみると、上位に入れなかったようで、EML装備のシノ選手が首位を取っていた。
第2マッチは、シノ選手がSu-47へと乗り換えQAAMを使った戦い方に切り替え、一方でえすつー選手はMiG-21からSu-33へと機体を変更しEMLを用いた戦術に変えた。視界が開けた「Roca Roja」マップでの戦闘は、えすつー選手が着実にEMLで撃墜してスコアを伸ばして首位を獲得し、第1マッチでの遅れを取り戻した。
最終マッチは、シノ選手が再びEMLを装備したSu-33へ、オルカ選手がHCAA(空対空ミサイル)を装備したSu-34へと乗り換え、EML装備機体が2機存在する試合となった。マッチ開始時にSu-47を使うまいくろもぐ選手は、EMLの狙撃対策か不規則な機動を取りながら交戦区域へ接近しQAAMを発射。しかしながら、戦闘に参加するのが遅くシノ選手と1万5000点以上の差が出てからの戦いとなってしまった。
シノ選手とえすつー選手は、機体のハイGターンとポストストールマニューバ(PSM)を駆使しEMLの照準を確実に敵機へと合わせて撃墜する姿が目立ちつつ、最終的にシノ選手が最後に敵機を撃破すると共に首位へと上り詰め勝利。これによってシノ選手が優勝を収めた。
なお、この決勝戦後には開発陣チームと上位4名によるエキシビションマッチ(チームデスマッチ)を実施。このマッチでは、開発チームのTLS(対地対空両用兵装)によるレーザー攻撃が目立ち、火力が低いと言われる兵装を最大限使いこなしていた。
『エースコンバット』のEsportsの可能性――今回の大会から見えてきたこと
今回の大会は、シリーズで初めて開催される公式の対戦大会であるため強敵となる機種や兵装への対策が万全ではなく、各選手が最大限自身の力を発揮できる兵装と機種を選択していたようにも見えた。しかしながら、大会自体は決して見られない内容ではなく、各選手最大限の力を出し切って戦っているようにも感じられた。このまま何らかの形で公式大会が定期化され、選手たちの腕前がより向上していくのなら、今回以上に面白く白熱した試合になるのでは? という期待は持てる。
今回試合を観戦していて感じたのが、『エースコンバット』シリーズは空戦をテーマにした作品であるが、FPSの特に『Call of Duty』シリーズに代表されるようなEsports大会を見ているような感覚に近く、盛り上げるために十分な実況と「誰が何の機体を使っているか」という部分をより強調していけば、試合も見やすくなると思えた。
ゲーム内表記では、誰の視点かを説明するのは難しいかもしれないが、配信用のオーバーレイを使って誰の視点かを画面隅に表示してくれるだけでも、かなり見やすくなるのではないだろうか。
『エースコンバット7』大会の観戦の面白さは、ヘッドオン(正面からのすれ違い)時のミサイルキルや接近戦からのガンキル、そして一瞬の隙を見逃さずにミサイルや機銃で撃破する瞬間だろう。
特にEMLやMGP等の無誘導機銃系兵装は、扱いの難しい特性からプレイヤーのスキルが大きく反映されやすいことに加え、発射音とレティクルによって確実に倒したことがわかることで大きく盛り上がりやすい。特に今回の試合では、相手の見せた一瞬の隙を突いてEMLを使い撃破する瞬間に観客から驚きの声が上がったからだ。
実況についても触れておきたい。今回の実況では、初めての大会ということもありプロデューサーの下元氏を筆頭とした“豪華ゲスト”が登壇すると共に解説に入っていたため、実況よりもシステムや実機現象での解説がメインとなってしまっていた。そのため、盛り上がるところを言語化しテンションを上げる様子があまり見られなかったのは残念だ。
このことから、『エースコンバット』のEsports展開の盛り上がりは今後の魅せ方の改善次第だが、十分にそのポテンシャルを持っており、今回の試合は実況と解説含め小さな改良点があるもののほぼ完成形に近いと言えるだろう。
開発者インタビュー:大会の感想&今後のEsports展開
ここでは、終了後ギリギリの時間を使って、「E3」から帰ってきたばかりのブランドディレクター河野一聡氏と、実況解説に上がった下元学氏、廣田慎也氏、川瀬覚氏の4名に、今後のEsports展開を中心に話を聞いてみた。――今回の大会でEsportsとしての『エースコンバット』の可能性について感じたことを教えてください。
下元氏:『エースコンバット』の楽しみ方の一つとして、Esportsの可能性はあると思っていました。今回大会をやってみて、今後の取り組みの一つとして現実味が増したと思います。ルールやシステム面だけでなく、「観せる」と「魅せる」の課題もわかりましたしね。
廣田氏:初めて大会を開いた時に下元が言っていたように「魅せる」ところや、一般環境のユーザーさんも気軽にプレイできるように大会用のレギュレーションを設定したりする下地の整理という改善は必要なのかなと思いました。
川瀬氏:絵的に小さいもの同士が遠くでミサイルを撃ち合う様は「Esportsというショービジネス化するには地味な絵になるのではないかな」と思っていたら、実際に2機や3機が同じ画面に大写しになってガンファイトする姿が見えましたので、「結構これ、やるじゃん!」と思いました。
――今回の大会で印象的だった戦い方や機体は何でしょうか?
下元氏:機銃好きのユーザーさんがいることは知っていましたが、MiG-21 フィッシュベットのMGPをこのハイレベルな対人戦で使うのは予想外で、決勝にまで上がってくる腕前もそうですし、機体への愛や、自分らしさ、戦い方へのこだわりというのを感じられたのが良かったですね。そういったこだわりを表現できる良い環境を作れたのかなと思っています。
廣田氏:優勝されたシノ選手のEMLを使ったプレイや、Su-34を選んだユーザーさんのプレイなどを観て、単に勝利するだけでなく「自分のこだわりの方法で戦おう!」という思いを強く感じました。
河野氏:今回、東側機が多かったね。
川瀬氏:不思議ですよね。予選だと片羽カラー(ピクシーカラー)のF-15Cがいて「さすがや!」と思いました。F-15Cの積んでいるSASM(空対空ミサイル)は割と強い武器ではあるのですが、決勝で使う人はいるかなと思いましたが、あえなく皆フランカーになりましたね。得てして、出場キャラクターが偏ってしまうのは対戦ゲーム特有ではありますが、均等を目指して僕らはバランス調整をしていましたので、力及ばずなところが悔しいですね(笑)
河野氏:まさかここまで、皆様の前で配信までされるゲームになるとは思っていなかったね。
川瀬氏:KIDさんが言っていた位置エネルギーと運動エネルギーをもうちょっと取り入れて、テクニックが関与するところを増やしていくと、より競技性が高まるような気がしますが、やりすぎるとフライトシムの領域に踏み出してしまう危ういバランスなので「山は高いぞ!」「ハードルは高いぞ!」というところはありますね。
――今回の大会を受けて、今後も大会も続けて行くにあたって、どんな施策が必要だと思いましたか?
下元氏:そうですね、大前提としてシリーズの魅力は一人プレイでのエースパイロット体験です。ただ、本作に限らずこれから先、シリーズを展開していくなかで、多くの人に『エースコンバット』を知ってもらう必要があります。その認知してもらう方法の一つとして、こういった大会を行うことは大事だとあらためて思いました。
今回は『エースコンバット』をプレイしているユーザー向けの放送内容だったので、これからはプレイしたことがない人にわかる、魅力的に思えるような内容にしていくことが、今後のブランドの課題かなと思っています。
河野氏:観客に向けてまでは今作は作っていなかったね
下元氏:『7』を作っている間にEsportsの波が来て、そこまでの部分は拾いきれなかったですから。
普段からRedBullさんにご協力をいただいて、『鉄拳』や『ソウルキャリバー』の大会を実施していただいているのですが、今回は「『エースコンバット』を題材に」というところで話をいただきました。ちょうど観戦してもらう楽しみ方を試したいと考えていて、両者の想いが一致して今日の実施に至りました。大会やそれを観戦するという楽しみ方もこれからは力を入れていきたいと思います。
川瀬氏:他のEsportsタイトルと比較したりすると、バランスを常に揺らし続ける半運営的な感じになりますからね。バランス調整を月に1度か2度くらいでアップデートし続けると大変になりますね。
下元氏:一人プレイでのエースパイロット体験とは違う楽しみ方なので、従来の楽しさと新しい楽しさ、それぞれに対応できるようなタイトルの作り方を考えていかなきゃいけないというのが課題ですね。
河野氏:面白いよね、『エースコンバット』の新たな一面が始まった感じがして。やっぱり人に見せるとなるとこうなるんだと1人の観客として見ていて思いました。
――なるほど。先ほど川瀬氏が「月に1度か2度のバランス調整」と言われましたが、2018年までPS3でF2Pタイトルとして展開していた『エースコンバット インフィニティ』の時はどれくらいの頻度で調整していたのでしょうか?
川瀬氏:『エースコンバット インフィニティ』の場合、1~2カ月に一度配信していた大型アップデートが調整のタイミングでした。特に家庭用タイトルは、スピーディーな調整を適宜行えるように開発段階で十分な仕組みを構築する必要があると考えています。
――今回はPS4版でしたが、PC版の大会についてはどうですか?
下元氏:そうですね! 今回のような機会をいただけるのであればぜひやりたいなと。また、お誘いいただけないかなと(笑)。
――今後の大会展開はどうでしょうか? より全国的にオンラインでトーナメントを開催して「東京ゲームショウ」で真のエースを決める大会などを構想したことはありますか?
下元氏:もちろんありますが、『7』のオンラインの仕組みが大会機能を有しているわけではないのです。実施のためにはそのような機能を実装していく必要がありますし、整備することも非常に多いですね。
ただ、やりたいという気持ちはより強くなったので、今後のシリーズでは実現を目指したいと思います。
河野氏:実際、うちのプロダクションは、『鉄拳』がワールドワイドで世界大会を展開していく様子、オンラインで予選をやって、それを段取りして、最終的に世界王者を決めるという年間の取り組みに、規模とコストがどれだけ掛かるかを目の当たりにしていて、さらにそれを『ソウルキャリバー』が追いかけている最中です。『エースコンバット』はさらにその後ろを飛んでいることになるので、いつかできるといいですけれど『鉄拳』を見ているとまだまだ課題も多いし、そうなるために『エースコンバット』ブランドがやらなきゃいけないことは多いなと思います。
それに下元も言っているように、そちらの方向性だけが『エースコンバット』ではありませんから。『7』をリリースして、いろいろな可能性の伸ばし先が見えてきて、これからゲームのあり方や環境も大きく変わっていく波を迎えそうですし。まあ、ブランドにとってありがたい挑戦の時期が来ていて、その機会を作っていただいたファンや周りの皆様に感謝している次第です。
――ありがとうございました。
■関連リンク
エースコンバット7 スカイズ・アンノウン
https://ace7.acecombat.jp/
Red Bull Friday Night Streaks エースコンバット7 スカイズ・アンノウン 決勝(Twitch)
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