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プロゲーマーからPC房まで~PCゲームが生活に根付く韓国ゲーム事情

PCオンラインゲーム大国として知られる韓国。モバイルゲーム市場も急成長しているが、PCゲーム市場の約半分というのが実情だ(PCゲーム市場約7200億円、モバイルゲーム市場約4100億円、2017年市場予測、韓国コンテンツ振興院調べ)。その象徴がプロゲーマーで、連日さまざまな試合が行われ、動画配信が行われている。PCオンラインゲーム大手のネクソングループが運営する「NEXON ARENA」で最前線を取材した。

ビルの地下1F・2Fにe-sports専用施設が作られている

NEXON ARENAはソウルの江南(カンナム)地区で2013年12月28日にオープンした、ゲーム会社が運営する世界初のe-sports専用施設だ。中央に大型スクリーンと実況席が配置され、左右に選手のプレイルームを設置。500名の観客が収容でき、e-sportsジャンルで韓国最大級の施設となっている。年間200回以上の試合が行われ、累積賞金総額は約4億円(リーグ平均で約970万円)にのぼる(2016年12月末時点)。

韓国向け実況(向かって左側)と共に、英語による海外実況(向かって右側)も行われている

地下2階に設置されたスタジオに足を踏み入れると、『StarCraft II (スタークラフトII)』によるリーグ戦「SSL(StarCraft II StarLeague) Series 2017」の試合が行われていた。試合は1対1で行われ、先に2本先取した方が勝ちとなる。本リーグは2014年12月から韓国で開催され、韓国の有料テレビ局「SPOTV」で配信されている。試合の模様は同局の番組「eSportsTV」公式サイトなどで視聴できる。

NEXON ARENAでは他に『EA SPORTS™ FIFA Online 3』『カートライダー』などの試合が行われており、2014年3月8日に開催された『EA SPORTS™ FIFA Online 3』チャンピオンシップ決勝戦では歴代最多となる1680人の観客数を記録した。プロゲーマーの定義はまちまちだが、プロチームに所属し、給料を得て生活している選手は韓国全体で200~300人とされる。試合終了後は選手がファンと気さくに交流する姿も見られた。

サインや記念写真などでファンと交流する選手

韓国では「e-sports学科」を擁する大学も増加している。韓国でトップクラスの位置づけにある中央大学校のe-sports学科はその一つで、中堅以下の大学にも多くのe-sports学科がある。選手のスキルに限らず、ゲーム全般の知識や概念を教えることが狙いだ。ネクソンでは「韓国e-sports協会(KeSPA)」を通じて、ネクソンの大会で好成績を残した2名の高校生に対し、大学宛に推薦入試のための推薦状を発行したこともあるという。

大型モニタとゲーミングPCが並ぶ店内。ほとんどの客がPCゲームを楽しんでいた

こうしたPCゲーム文化を草の根で支えるのが全国にあるPC房だ。韓国ではPC房をインフラとしてブロードバンドが普及した経緯があり、PCオンラインゲームはキラーコンテンツとなった。PCの世帯普及率が上昇した昨今でも、「最新のゲーミングPCで遊べる」「学校と塾の間に友達間で集まれる」「会社帰りに立ち寄る」など、PC房は若者の安価な娯楽として定着している。

ネクソンコリアをはじめ、数十社のICT企業が集積する板橋(パンギョ)エリア。商業施設の3階にある「3pop PC cafe」を訪問した。コーヒーショップのような洒落た店内には数十台のPCが並び、使用料は1時間あたり約140円。子供から大人まで多彩な客層がみられたが、夕方から夜にかけて会社帰りの社会人が多く来店するという。日本の漫画喫茶のような個室は存在せず(シャワー施設もない)、すべてオープン席になっている点が特徴だ。

「3pop PC cafe」は全国に10100店あるネクソン加盟店の一つだ。ビジネスモデルはサーバ課金で、客がプレイしたゲームの時間に応じてライセンス料金が徴収される。その一方で店はネクソン公認の特典アイテムを提供できる仕組みだ。アイテムには「経験値の追加ボーナスがもらえる」など、さまざまな種類がある。軽食も提供しており、一番人気はとんかつ定食だという。ゲームをプレイしながら夕食をとる姿もみられた。

アイテムは現金で購入し、ICカードにチャージされる。クレジットカードがない低年齢層にも優しい施策だ

料理は約500~700円で、一番人気はとんかつ定食だという。

日本のゲーム産業はスマートフォンの普及で大きな影響を受け、モバイル中心の市場に変化した。しかし韓国では今もなお、社会にPCゲームがしっかりと根付いている。その背景にあるのが、プロゲーマーから子供にいたるまでの幅広いゲーマー層と、それを支えるe-sports施設からPC房にいたる幅広いインフラにあるように感じられた。このエコシステムに対して大学が今後、人材教育の面でどのように貢献できるか注目したい。

■関連リンク
NEXON ARENA
http://arena.nexon.com/
SPOTV
http://www.spotv.net/app/index.asp?ch=spotvg
eSportsTV
http://www.e-sportstv.net/

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