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「Rainbow Six Japan League 2021」の常設リーグ化を選手はどう感じたのか? REJECT・GUTS・CAGインタビュー
『レインボーシックス シージ』のプロシーンは、2021年からガラっと変わった。それまで日本に常時開催される公式リーグはなく、国際大会に出場するためのAPAC(アジアパシフィック)地域の予選などを目標として、国内プロチームは切磋琢磨を続けてきた。
しかし、2021年からはNTTドコモが主催するeスポーツブランド「X-MOMENT」として、「Rainbow Six Japan League 2021」が発足。賞金総額は3200万円、8つのプロチームによる全14節の総当たりリーグ戦が、3月~9月にかけて土日に開催されてきた。同時に、参加者はプロアマ問わず、「RJL」への入れ替え戦も目指せるオープン大会「Rainbow Six Japan Open 2021」と「Rainbow Six Japan Championship 2021」もある。
プロチームに対しては、ファイトマネーのようなかたちで年間最大2100万円もの報酬が支払われる。選手としての日々の練習やスクリム、大会への参加自体が「仕事」となり、戦績に応じた賞金というかたちでの「インセンティブ」が得られる、ビジネスとしての『R6S』のeスポーツの基盤がやっと整った。これは、eスポーツを職業として生きていきたい者にとっては理想的なかたちだろう。
一方で、当然ながらプロには責任と成績が問われる。3月〜9月という長期にわたって戦い抜く体力と精神力も必要だ。そんな半年以上に及ぶ「RJL」の最初のシーズンは、CYCLOPS athlete gaming(CAG)の全勝優勝という伝説を残して終了した。
そこで今回は、久々にオフラインで開催された「RJL」第14節の9月26日(日)にチームへのインタビューを実施。「RJL」の長いシーズンを戦い抜いた選手たちに、初めて経験する長期のリーグ戦、さらに同時期に重なって開催された「APAC North」についても感想を聞いてみた。
※試合進行の都合上、REJECT、GUTS Gamingは全試合終了後、CYCLOPS athlete gaming(CAG)は最終戦のSengoku Gaming戦前にインタビューしている。
──「RJL」というリーグの仕組みで戦ったのは今年が初めてですが、参戦してみてどうでしたか?
solty:リーグを通して、個人のスキルや自分のeスポーツ選手としての立ち位置は確立できたかなと思います。1部リーグの「RJL」リーグに出ているプロの中でも結構上のほうだと思うんですよ。後半から順位も上げられたし、成績もよかったので、プロとしての価値を上げられたかなと思っています。
──第14節まで毎週のように試合がありましたね。
solty:初めてこんなに大規模な大会のリーグ戦を毎週やっていたので、正直すごく疲れました。毎回の緊張感であったり、背負っていたものであったり、勝ったらどこどこへ行け、負けたらこうなってしまう、というのが毎試合あったので。
tadaNiki:自分は途中からチームに参加できたことで、1部リーグの日本のトップチームと戦う機会が増えて、以前のチームのときから練習していたことが1部リーグでも通用し、「自分が磨いてきたスキルは間違っていなかったんだ」という自信には繋がりましたね。
──tadaNiki選手は入る前のREJECTのイメージと、ご自身が入ってからのイメージは何か変わりましたか?
tadaNiki:やっぱり外側から見える部分とは大きく違う部分はたくさんありましたね。でも強いチーム、残留できるチームだなとは思いました。
──VaNiSh選手は参戦してみていかがですか?
VaNiSh:僕はリーグを通して成長したところもあったし、個人的な反省点や改善するところもたくさん出てきたので、それに気づけてよかったと思います。
──今までのペースでの戦いと比べて、期間的な余裕はどうでしたか?
VaNiSh:前半戦と後半戦で1カ月間期間があったので、そこでガッツリ修正できたかなと思います。リーグを通して成長もしましたけど、どちらかというとまだ課題がいっぱい残っているので、これから次のシーズンに向けて完璧になれればと思います。
──課題があるということは、直すところを直せば強くなれるということですもんね。Window選手はどうですか?
Window:僕はREJECTに最初からいますが、リーグが始まる前と一段落した今と比べたら、成長が格段に違うなと。こんなに短いスパンでかなりの試合数があって、しかもそれがトップリーグで、日本トップのチームと戦い続けるという中で、チームはかなり成長したのかなとは思います。
──明らかに「RJL」全体、日本の『シージ』全体が強くなっているように感じられました。
Window:そうですね。やっぱりずっとみんな同じ状態で、トップ対トップで戦っているわけじゃないですか。相手の戦術であったり撃ち方であったり、そういうのを全部やって、試合の中でも吸収できたりする。しかもそれに間に合うように練習するようになると、結果的にどんどん技術が上がっていって、リーグが終わった頃にはかなり差ができていると感じました。
──成長を感じられたんですね。途中から加入したTaka選手はいかがでしょうか?
Take:最初はサブロースターとしてREJECTに入った身なんですけど、途中からメンバーになりました。勝ててはいたんですけど、途中から一気に調子を崩したときに結構へこむことがありました。そのときの課題が結構残っているので、ちょっと心残りがありますね。来年までにいい方向に持っていけられたらなと思います。
──REJECTとしては次回の残留も決まりましたが、来年以降もリーグが続くことの安心感みたいなものもありますか?
Take:残留が決まったときは安心しましたけど、安心したから(目の前の)「次の試合はもういいや」とは思わなかったです。全部勝ちたかったので。
Window:それこそ「RJL」でリーグ落ちしてしまうと、そこからまた上がれるチャンスが1年くらい空くんですね。上がれなかった場合はもちろん解散もありうるし、チームを手放す人もいると思うので。そういう点では、在留が決まった時点でそれなりのアドバンテージというか、まだ戦える場所があるだけでも違います。不安定な状態で戦うよりは、ちゃんとした環境があって、1部リーグでずっと戦っていられるというのはかなりすごいことなのかなと思います。
──NoTimeGG選手は「RJL」で半年間戦ってみてどうでしたか?
NoTimeGG:こういう長期的なリーグ戦が今までになかったので、やっぱり戦い方も簡単ではないです。僕らはリーグの前半で成績がよくなかった時期が続いたんですけど、どうしても気張って結構硬くなってやっていたところがあったので、これはまずいと目標を「降格して入れ替え戦までにチームを仕上げる」という方向性に変えたんですよ。そうしたら練習もいい意味でリラックスできてコツコツと身について、結果的にだんだん勝てるようになってきました。
今は、5位という正直いいのか悪いのか微妙なラインなんですけど、前半戦の負け越しの分を考えればだいぶよくなってきたのかなと。長期的に見て成長につながるいいリーグだなと思いました。
──来年以降に向けて、この先の目標はありますか?
NoTimeGG:やっぱり当初の目標だった「入れ替え戦までにチームを仕上げたい」ですが、来年1年間の猶予がせっかく与えられたので、来期の「RJL」までには日本1位を目標に練習していきたいですね。
途中のAPAC Northも全部勝ちたいですけど、長い目で見て僕は結構このリーグが好きですし重要視しているので。この日本の「RJL」でまず日本一になってから、その次にAPAC、世界に続きたいなと思っています。
Window:直近だけで言ったら、APACの世界戦で勝って、リーグにも出たいというのはあります。でも「RJL」で日本一になることで、長期的に見てAPAC Northにも出られるので。結果がともなってそれこそ「Six Invitational」や「Six Major」など、いろいろ出られればいいなと思ってます。
tadaNiki:目標という話でいえば、上を見るのは大事ですけど、それこそ時間がかかる目標で。僕たちが「Six Invitational」とか世界大会に出るには、少なくとも1年くらいはどう頑張ってもかかるんですよね。なので、練習をもっと深めていかないといけないのかなって。
例えば固定報酬も最低ラインはあるわけで、あそこのチームには財力でかなわないといった環境でかなわないなんてこともないですし、ほかの国のノウハウがあるとかでもない。ある程度の同じ環境がある日本人同士で挑む中で、もっと差を埋められるような努力を1年間続けないといけないと思っています。
メンバー変更によるチームの再構成、「APAC north」と「RJL」の順位の違いなど、大きな変化を経験する1年となったようだ。
──ではJoghurtコーチから。「RJL」に参戦してみてどうでしたか?
Joghurt:戦ってみて、やっぱりどのチームも強くて。僕たちはAPACにも出ているんですけど、APACで試合をしたマップをそのまま研究されたり、強いチームはこちらのことを研究して対戦してくる。そこからいろいろ方針転換して、今のシーズンはいい感じで戦えているんですけど、かなりしんどい戦いでした。結局1回見せた作戦は研究されて、そのままカウンターされたりとかもあったので。
──それはリーグとして14週続いていくから、だったんでしょうか? コーチとしては戦略をひたすら練り直さなきゃいけないシーズンだった?
Joghurt:そうですね。試合数が多いので、そういう機会が多くなればなるほどそういうことが起こってきつい思いをしてきました。サブのCloudとも話しながら、いろいろな作戦を組み直したりしてきました。
──良かった面はどうですか?
Joghurt:良かった面でいうと、試合数が多いのは嫌っちゃ嫌なんですけど、自分たちの成長にもつながるので、その分「自分たちが世界で戦えるようなチームになるにはどうしたらいいんだろう?」と考える機会も多くなり、その点で言えば間違いなく良かったと思います。
──Lily.GG選手は実際に14週戦ってみて、印象に残ったことはありますか?
Lily.GG:どのチームも強かったんですけど、僕たちは途中でメンバー変更があったり、自分たちの調整がまだできていない中で戦っていたので苦戦しました。今は結構いい方向に向かっていると思います。
──14週はつらかったですか?
Lily.GG:いや、楽しかったです。
Li9ht:昨年の「RJL」が始まる前は、リーグ戦はAPACだけで週1回か2回でした。そのときから僕は火曜日に試合があると木曜日にバテてしまうような人だったので、今回「RJL」が始まって最大で週5回、5マップ試合があり、最初は「疲労で自分を出しきれていない」とつらいこともありました。
でも、シーズン後半になるにつれて、多少は自分の中で解決策を生み出せたのが成長につながったのかなと思っています。体力的につらかったので、しっかり休むようにもしました。
JJ:僕はAPAC Northと平行して戦うのはしんどかったです。特に印象に残っているのは、6月くらいにストレスもあって、試合に追われる日々の中で盲腸になってしまって……。大会も思うような成績を出せず、メンタル管理や体調管理が難しいことをすごく感じました。
今まで週に多くて2日しか試合がなかったのでなんとかなっていたんですけど、そこにもう1試合が組み込まれたことによってここまで変わるとは思っていなかったので、この1年はすごく大変な思い、悔しい思いをしたシーズンでした。
──「RJL」とAPAC Northが平行することで戦う相手も変わりましたよね。そのあたりの影響はありましたか?
JJ:海外のチームはオーストラリアだったり韓国だったり、やっぱりその地域柄の戦術があるので、日本特有の戦術──日本は日本ですごく独特なものを持っているチームなので、最初の頃はそれに翻弄されました。本領発揮できなくて負けたりもしたんですけど、ここ最近はミーティングの仕方や方針を変えたりして、ギヤが回りつつあって。結果的に今はうまく回っていていいんじゃないかなと思いますね。
でも、「RJL」はうまく回っていなかったです。思ったような実力が出せていなくて、自分たちのラインが4位というのも不服に思っているので。上位のCYCLOPS athlete gaming(CAG)やSengoku Gamingがいる中でも、優勝が狙えると思っていたのですごく悔しかったです。
──その「つらかった部分」が成長につながったわけですか?
JJ:そうですね。チームとして見えていないものが最近見えてきて、まとまりができてきました。まだ「チャンピオンシップ」もあるので、そこにあわせてみんなでまたいちから頑張って勝ちたいと思います。
──Merieux選手はシーズン途中からの復帰でしたね。いかがでしたか?
Merieux:自分は戻ってきたのが後半戦からだったので、ほかのメンバーと比べて半年分「RJL」の雰囲気もわからなかったですし、最初はやっぱり馴染むのがちょっと難しくて。なおかつ、自分は今まで1つのチームでずっとやってきたので、ほかのチームに入る不安もありましたね。
ただ、入りたての頃の「RJL」の試合は結構いい感じだったんですけど、やっぱり中期から後期くらいにかけてだんだんボロが出始めて、苦しむ時期もありました。いろいろと方向性を変えたりしたんですけど、一番大きく変わったのが、8月頃に1度メンバーの役割を変えたことですね。
──役割を変えた?
Merieux:自分が入ったときは、前メンバーのCrazyPapiyoNさんの代わりで、彼がやっていたことをそのまま自分がやる感じだったんですけど、もともと昔やっていたポジションとやっぱりどうしても噛み合わなくて。チーム自体は勝ててはいたんですけど、今ほどチーム全体が噛み合っている、という実感はなくて。1回新しく全員の動きを変えようという話になり、練習はかなりいい感じになっていきました。
でも実際、CAG戦で負けてしまって。かなり自信があったのに負けたのはなぜかと話し合った結果、「コミュニケーション面が普段と違う」という結論に至り、そこを改善したらその後のAPACや「RJL」も含めて、チームがいい調子になってきているので、負けたことによって世界で戦えるチームに成長したのかなと思います。CAG戦は駄目だったけど、原因がコミュニケーション面だということにも気づけて、改善したあとはかなりいい感じにまとまっています。
──リーグとして毎週継続して戦えたことで、改善したことがそのまま次に生かせる強みは感じましたか?
JJ:本音は、時間がもっとあったらいろいろな作戦をつくって相手チームの対策をして、ってできるんですけどね。やっぱり週3の試合はコーチやほかの選手はプレイ時間もすごく負担が大きいので。できれば時間はあるだけ欲しいです。
Merieux:でも、練習ではかなりうまくいっていても、本番でうまくいくかは試合をやってみないとわからないので、試合数が多いことで試せるチャンスが増えたのはいいことなのかなと。
JJ:多分、練習や大会の雰囲気も全然違うから、場数が増えたことは素直にありがたいです。
チームの結束は固く盤石に見えたCAGだが、長いシーズンの間には8月の「Six Major Mexico」が挟まり、すでに出場権はあったとはいえ「APAC north」では苦戦も強いられた。半年に及ぶ戦いの中で、どんなことが起きていたのか。
──「RJL 2021」で半年戦ってみて、リーグというかたちで毎週戦えるようになったその環境の変化についてお伺いできればと思います。
SuzuC:大会が1週間おきにあることで忙しくはなったんですけど、その分みんな練習もするし、試合も得られるものが多いので、チーム全体のレベルアップにはつながっていたと思います。リーグ全体として結構伸びているチームもいたので。
──逆に、今までのペースと比べると違うなと感じることはありますか?
SuzuC:試合が詰まりすぎていたので、1回マネージャーに「みんなの練習量をちょっと減らしてほしい」と言ったことはありましたね。選手はきついスケジュールすぎると死んでしまうので、少しゆるめにと。
Anitun:自分は「大会=楽しい」と思っているので、毎週のようにあることはいいことだと思います。
──Anitun選手はつらさはあまりなかったですか?
Anitun:そんなに。練習の日は結構長く『シージ』をやりますが、試合の日は2マップで終わったら夜は時間が空くので、逆にいいと思っていました。以前までは毎週昼夜に練習時間を当てていましたが、今は大会が終わったら解散といった感じなので。
Ayagator:自分は、やっぱり試合に勝る経験はないので、個人的にも全体的にもチーム自体に安定感が増したかなと思っています。みんなが言っている通り、結構ギチギチなときもあったので。
試合自体は楽しかったので、今は我慢というか頑張りどきかなと思っていて、「Six Major Mexico」を終えてちょっと改善して、さらに今は心に余裕を持てています。休みの日、オンとオフがしっかりあることがすごく大事だと思っているので。
──「Six Major Mexico」の話が出ましたが、世界で戦ってきたあと「RJL」に戻ってきて、日本もレベルが上がっているとはいえ世界との違い、差も感じられたと思いますが、そのあたりはどうでしたか?
Ayagator:やっぱり違いは感じますね。日本だけじゃなくてAPAC、世界との違いは感じます。
──そんな中で、日本公式リーグがあることのプラスとマイナスを挙げるとしたら?
Ayagator:もちろんAPAC、日本でリーグがしっかりあることによって、自分らもAPACのレベルが上がってきていると感じるし、日本自体もレベルが上がってきていると思っています。やっぱり競技シーンが(コロナの影響で開催できずに)2年分くらい遅れてしまっているので、APAC地域としてもここで世界との差を埋めるしかない。ここから世界を追い越していこうという気持ちではあります。
BlackRay:リーグ戦に関しては、自分は”オフライン慣れ”ができる場と思っていて。コロナ禍でオフライン大会が少ない中、少しでもあるのはありがたいと思っています。ただ、APACとか世界大会が終わったあとに、APACと「RJL」が重なっていると、スケジュールとしてきつく感じますね。
──戦い方や戦略で、頭を切り替えないといけない部分もありますか?
BlackRay:APACが週1なら大丈夫なんですけど、後半は週2になって、さらに週末に「RJL」となると、何かあったときに対策や修正する時間がなさすぎる。1回悪い方向に流れてしまうとその週は全部無理になってしまう、という心配はあります。スケジュールのせいではないと思いますけど、今後の心配ですね。
──gatorada選手は「RJL」に参加してみてどう感じましたか?
gatorada:過ぎてしまったら短いですね。オフライン試合が多かったので、みんなと会えて楽しいなって感じです。住んでいるところが違うと全員集まる機会があまりないので、試合の日に集まれて嬉しいです。会話量も増えますし、相手に対しての対策の話し合いとかもできますし、会ったほうが戦略が練れますから。
──ゲーミングハウスに集まって練習したいとは思われます?
gatorada:いや、思わないですね。ゲーミングハウスはプライベートの時間がないのでストレスになっちゃって。単純にイライラするのでそれはやめたほうがいい。
Anitun:月に1度とか会って「お前の顔見るの、やっぱり好きだ」みたいな(笑)。
BlackRay:遠距離すぎっしょ(笑)。
──会えない時間がチームワークを育む、みたいな感じですかね(笑)。Fuji3コーチは「RJL」での全勝という結果についてはどうですか?
Fuji3:もう1戦ありますけど、正直、今無敗で1位というのはまずまず順当で、あるべきところに収まった。そこを外さずにこの子たちを連れてこれたのはよかったと思います。
ただ、さっきほかのチームの選手とも話したんですけど、「RJL」というものが出来て、ある程度競技に集中して――給与も出てというかたちで集中して全力投球できる環境ができたことで、日本全体の実力そのものも上がっているし、実力が上がるポテンシャルというか、環境全体の潜在能力が今育っているところなのかなと思っていて。そういう意味では、本当にできてよかったと思っています。そのせいでかなり選手たちも忙しいんですけど、その分競技シーン全体の底上げというか、ポテンシャルが活性化されましたね。
──忙しさの面で、APAC northと「RJL」が重なったこと、「RJL」の全勝に対してAPACでは思うような成績が出せなかったこともありましたよね。Twitterに書かれていた「撃ち合い」のことなどは、「RJL」、「APAC north」、「Six Major Mexico」と世界と交じり合う中で、自分たちの強みや弱点・課題になっている部分が見えながら改善する時間が取れないもどかしさを、あのツイートを見て感じたんですけど。
Fuji3:やっぱり世界の一番上のレベルと「RJL」とでは、結構勝ち方、負け方が変わってくると思っていて。それで多少苦しむところはありますよね。日本では通じる戦略が、世界ではそこまで刺さらないどころか逆効果になることもあったりして。そこを短期間で修正するのは難しいと感じますね。
実際に現地でスクリムしてみても、短期間だと感じ取れないところもあって。撃ち合いに関しては世界の上位チームともやりあえると実感できました。でも、わずかな違いが結果に出ますね。
今回インタビューできたのは3チームだけだったが、年間を通して強者たちが集い切磋琢磨できる「RJL」が、確実に日本の『R6S』シーンを1ステップ上へと引き上げてくれたことには疑いはないだろう。
eスポーツプロチームと選手の収入面での安定、世界一を目指せるチームと選手の育成、入れ替え戦による新興チームや若手実力派選手の発掘などなど、2年目となる「RJL 2022」は、日本の『R6S』ファンと選手たちにとって、大きな意義のある大会に成長するに違いない。
Rainbow Six Japan League 2021
https://x-moment.docomo.ne.jp/r6s/rjl/
しかし、2021年からはNTTドコモが主催するeスポーツブランド「X-MOMENT」として、「Rainbow Six Japan League 2021」が発足。賞金総額は3200万円、8つのプロチームによる全14節の総当たりリーグ戦が、3月~9月にかけて土日に開催されてきた。同時に、参加者はプロアマ問わず、「RJL」への入れ替え戦も目指せるオープン大会「Rainbow Six Japan Open 2021」と「Rainbow Six Japan Championship 2021」もある。
プロチームに対しては、ファイトマネーのようなかたちで年間最大2100万円もの報酬が支払われる。選手としての日々の練習やスクリム、大会への参加自体が「仕事」となり、戦績に応じた賞金というかたちでの「インセンティブ」が得られる、ビジネスとしての『R6S』のeスポーツの基盤がやっと整った。これは、eスポーツを職業として生きていきたい者にとっては理想的なかたちだろう。
一方で、当然ながらプロには責任と成績が問われる。3月〜9月という長期にわたって戦い抜く体力と精神力も必要だ。そんな半年以上に及ぶ「RJL」の最初のシーズンは、CYCLOPS athlete gaming(CAG)の全勝優勝という伝説を残して終了した。
そこで今回は、久々にオフラインで開催された「RJL」第14節の9月26日(日)にチームへのインタビューを実施。「RJL」の長いシーズンを戦い抜いた選手たちに、初めて経験する長期のリーグ戦、さらに同時期に重なって開催された「APAC North」についても感想を聞いてみた。
※試合進行の都合上、REJECT、GUTS Gamingは全試合終了後、CYCLOPS athlete gaming(CAG)は最終戦のSengoku Gaming戦前にインタビューしている。
REJECT
「NRG」から移行するかたちでスタートしたREJECT。その実力は誰もが知るところであり、しっかり結果も残したものの、あと一歩上位には及ばない悔しいシーズンとなった。心機一転、新たなスタートを切った2021年シーズンは、彼らの目にどのように映ったのか。──「RJL」というリーグの仕組みで戦ったのは今年が初めてですが、参戦してみてどうでしたか?
solty:リーグを通して、個人のスキルや自分のeスポーツ選手としての立ち位置は確立できたかなと思います。1部リーグの「RJL」リーグに出ているプロの中でも結構上のほうだと思うんですよ。後半から順位も上げられたし、成績もよかったので、プロとしての価値を上げられたかなと思っています。
──第14節まで毎週のように試合がありましたね。
solty:初めてこんなに大規模な大会のリーグ戦を毎週やっていたので、正直すごく疲れました。毎回の緊張感であったり、背負っていたものであったり、勝ったらどこどこへ行け、負けたらこうなってしまう、というのが毎試合あったので。
tadaNiki:自分は途中からチームに参加できたことで、1部リーグの日本のトップチームと戦う機会が増えて、以前のチームのときから練習していたことが1部リーグでも通用し、「自分が磨いてきたスキルは間違っていなかったんだ」という自信には繋がりましたね。
──tadaNiki選手は入る前のREJECTのイメージと、ご自身が入ってからのイメージは何か変わりましたか?
tadaNiki:やっぱり外側から見える部分とは大きく違う部分はたくさんありましたね。でも強いチーム、残留できるチームだなとは思いました。
──VaNiSh選手は参戦してみていかがですか?
VaNiSh:僕はリーグを通して成長したところもあったし、個人的な反省点や改善するところもたくさん出てきたので、それに気づけてよかったと思います。
──今までのペースでの戦いと比べて、期間的な余裕はどうでしたか?
VaNiSh:前半戦と後半戦で1カ月間期間があったので、そこでガッツリ修正できたかなと思います。リーグを通して成長もしましたけど、どちらかというとまだ課題がいっぱい残っているので、これから次のシーズンに向けて完璧になれればと思います。
──課題があるということは、直すところを直せば強くなれるということですもんね。Window選手はどうですか?
Window:僕はREJECTに最初からいますが、リーグが始まる前と一段落した今と比べたら、成長が格段に違うなと。こんなに短いスパンでかなりの試合数があって、しかもそれがトップリーグで、日本トップのチームと戦い続けるという中で、チームはかなり成長したのかなとは思います。
──明らかに「RJL」全体、日本の『シージ』全体が強くなっているように感じられました。
Window:そうですね。やっぱりずっとみんな同じ状態で、トップ対トップで戦っているわけじゃないですか。相手の戦術であったり撃ち方であったり、そういうのを全部やって、試合の中でも吸収できたりする。しかもそれに間に合うように練習するようになると、結果的にどんどん技術が上がっていって、リーグが終わった頃にはかなり差ができていると感じました。
──成長を感じられたんですね。途中から加入したTaka選手はいかがでしょうか?
Take:最初はサブロースターとしてREJECTに入った身なんですけど、途中からメンバーになりました。勝ててはいたんですけど、途中から一気に調子を崩したときに結構へこむことがありました。そのときの課題が結構残っているので、ちょっと心残りがありますね。来年までにいい方向に持っていけられたらなと思います。
──REJECTとしては次回の残留も決まりましたが、来年以降もリーグが続くことの安心感みたいなものもありますか?
Take:残留が決まったときは安心しましたけど、安心したから(目の前の)「次の試合はもういいや」とは思わなかったです。全部勝ちたかったので。
Window:それこそ「RJL」でリーグ落ちしてしまうと、そこからまた上がれるチャンスが1年くらい空くんですね。上がれなかった場合はもちろん解散もありうるし、チームを手放す人もいると思うので。そういう点では、在留が決まった時点でそれなりのアドバンテージというか、まだ戦える場所があるだけでも違います。不安定な状態で戦うよりは、ちゃんとした環境があって、1部リーグでずっと戦っていられるというのはかなりすごいことなのかなと思います。
──NoTimeGG選手は「RJL」で半年間戦ってみてどうでしたか?
NoTimeGG:こういう長期的なリーグ戦が今までになかったので、やっぱり戦い方も簡単ではないです。僕らはリーグの前半で成績がよくなかった時期が続いたんですけど、どうしても気張って結構硬くなってやっていたところがあったので、これはまずいと目標を「降格して入れ替え戦までにチームを仕上げる」という方向性に変えたんですよ。そうしたら練習もいい意味でリラックスできてコツコツと身について、結果的にだんだん勝てるようになってきました。
今は、5位という正直いいのか悪いのか微妙なラインなんですけど、前半戦の負け越しの分を考えればだいぶよくなってきたのかなと。長期的に見て成長につながるいいリーグだなと思いました。
──来年以降に向けて、この先の目標はありますか?
NoTimeGG:やっぱり当初の目標だった「入れ替え戦までにチームを仕上げたい」ですが、来年1年間の猶予がせっかく与えられたので、来期の「RJL」までには日本1位を目標に練習していきたいですね。
途中のAPAC Northも全部勝ちたいですけど、長い目で見て僕は結構このリーグが好きですし重要視しているので。この日本の「RJL」でまず日本一になってから、その次にAPAC、世界に続きたいなと思っています。
Window:直近だけで言ったら、APACの世界戦で勝って、リーグにも出たいというのはあります。でも「RJL」で日本一になることで、長期的に見てAPAC Northにも出られるので。結果がともなってそれこそ「Six Invitational」や「Six Major」など、いろいろ出られればいいなと思ってます。
tadaNiki:目標という話でいえば、上を見るのは大事ですけど、それこそ時間がかかる目標で。僕たちが「Six Invitational」とか世界大会に出るには、少なくとも1年くらいはどう頑張ってもかかるんですよね。なので、練習をもっと深めていかないといけないのかなって。
例えば固定報酬も最低ラインはあるわけで、あそこのチームには財力でかなわないといった環境でかなわないなんてこともないですし、ほかの国のノウハウがあるとかでもない。ある程度の同じ環境がある日本人同士で挑む中で、もっと差を埋められるような努力を1年間続けないといけないと思っています。
GUTS Gaming
CRAZYPAPIYONを中心として、APAC northで活躍してきたGUTS Gaming。6月には一時『R6S』から遠ざかっていたMerieuxも加入し、「RJL」と同時開催されていたAPAC northではCAGを超えて日本チーム最上位となった。メンバー変更によるチームの再構成、「APAC north」と「RJL」の順位の違いなど、大きな変化を経験する1年となったようだ。
──ではJoghurtコーチから。「RJL」に参戦してみてどうでしたか?
Joghurt:戦ってみて、やっぱりどのチームも強くて。僕たちはAPACにも出ているんですけど、APACで試合をしたマップをそのまま研究されたり、強いチームはこちらのことを研究して対戦してくる。そこからいろいろ方針転換して、今のシーズンはいい感じで戦えているんですけど、かなりしんどい戦いでした。結局1回見せた作戦は研究されて、そのままカウンターされたりとかもあったので。
──それはリーグとして14週続いていくから、だったんでしょうか? コーチとしては戦略をひたすら練り直さなきゃいけないシーズンだった?
Joghurt:そうですね。試合数が多いので、そういう機会が多くなればなるほどそういうことが起こってきつい思いをしてきました。サブのCloudとも話しながら、いろいろな作戦を組み直したりしてきました。
──良かった面はどうですか?
Joghurt:良かった面でいうと、試合数が多いのは嫌っちゃ嫌なんですけど、自分たちの成長にもつながるので、その分「自分たちが世界で戦えるようなチームになるにはどうしたらいいんだろう?」と考える機会も多くなり、その点で言えば間違いなく良かったと思います。
──Lily.GG選手は実際に14週戦ってみて、印象に残ったことはありますか?
Lily.GG:どのチームも強かったんですけど、僕たちは途中でメンバー変更があったり、自分たちの調整がまだできていない中で戦っていたので苦戦しました。今は結構いい方向に向かっていると思います。
──14週はつらかったですか?
Lily.GG:いや、楽しかったです。
Li9ht:昨年の「RJL」が始まる前は、リーグ戦はAPACだけで週1回か2回でした。そのときから僕は火曜日に試合があると木曜日にバテてしまうような人だったので、今回「RJL」が始まって最大で週5回、5マップ試合があり、最初は「疲労で自分を出しきれていない」とつらいこともありました。
でも、シーズン後半になるにつれて、多少は自分の中で解決策を生み出せたのが成長につながったのかなと思っています。体力的につらかったので、しっかり休むようにもしました。
JJ:僕はAPAC Northと平行して戦うのはしんどかったです。特に印象に残っているのは、6月くらいにストレスもあって、試合に追われる日々の中で盲腸になってしまって……。大会も思うような成績を出せず、メンタル管理や体調管理が難しいことをすごく感じました。
今まで週に多くて2日しか試合がなかったのでなんとかなっていたんですけど、そこにもう1試合が組み込まれたことによってここまで変わるとは思っていなかったので、この1年はすごく大変な思い、悔しい思いをしたシーズンでした。
──「RJL」とAPAC Northが平行することで戦う相手も変わりましたよね。そのあたりの影響はありましたか?
JJ:海外のチームはオーストラリアだったり韓国だったり、やっぱりその地域柄の戦術があるので、日本特有の戦術──日本は日本ですごく独特なものを持っているチームなので、最初の頃はそれに翻弄されました。本領発揮できなくて負けたりもしたんですけど、ここ最近はミーティングの仕方や方針を変えたりして、ギヤが回りつつあって。結果的に今はうまく回っていていいんじゃないかなと思いますね。
でも、「RJL」はうまく回っていなかったです。思ったような実力が出せていなくて、自分たちのラインが4位というのも不服に思っているので。上位のCYCLOPS athlete gaming(CAG)やSengoku Gamingがいる中でも、優勝が狙えると思っていたのですごく悔しかったです。
──その「つらかった部分」が成長につながったわけですか?
JJ:そうですね。チームとして見えていないものが最近見えてきて、まとまりができてきました。まだ「チャンピオンシップ」もあるので、そこにあわせてみんなでまたいちから頑張って勝ちたいと思います。
──Merieux選手はシーズン途中からの復帰でしたね。いかがでしたか?
Merieux:自分は戻ってきたのが後半戦からだったので、ほかのメンバーと比べて半年分「RJL」の雰囲気もわからなかったですし、最初はやっぱり馴染むのがちょっと難しくて。なおかつ、自分は今まで1つのチームでずっとやってきたので、ほかのチームに入る不安もありましたね。
ただ、入りたての頃の「RJL」の試合は結構いい感じだったんですけど、やっぱり中期から後期くらいにかけてだんだんボロが出始めて、苦しむ時期もありました。いろいろと方向性を変えたりしたんですけど、一番大きく変わったのが、8月頃に1度メンバーの役割を変えたことですね。
──役割を変えた?
Merieux:自分が入ったときは、前メンバーのCrazyPapiyoNさんの代わりで、彼がやっていたことをそのまま自分がやる感じだったんですけど、もともと昔やっていたポジションとやっぱりどうしても噛み合わなくて。チーム自体は勝ててはいたんですけど、今ほどチーム全体が噛み合っている、という実感はなくて。1回新しく全員の動きを変えようという話になり、練習はかなりいい感じになっていきました。
でも実際、CAG戦で負けてしまって。かなり自信があったのに負けたのはなぜかと話し合った結果、「コミュニケーション面が普段と違う」という結論に至り、そこを改善したらその後のAPACや「RJL」も含めて、チームがいい調子になってきているので、負けたことによって世界で戦えるチームに成長したのかなと思います。CAG戦は駄目だったけど、原因がコミュニケーション面だということにも気づけて、改善したあとはかなりいい感じにまとまっています。
──リーグとして毎週継続して戦えたことで、改善したことがそのまま次に生かせる強みは感じましたか?
JJ:本音は、時間がもっとあったらいろいろな作戦をつくって相手チームの対策をして、ってできるんですけどね。やっぱり週3の試合はコーチやほかの選手はプレイ時間もすごく負担が大きいので。できれば時間はあるだけ欲しいです。
Merieux:でも、練習ではかなりうまくいっていても、本番でうまくいくかは試合をやってみないとわからないので、試合数が多いことで試せるチャンスが増えたのはいいことなのかなと。
JJ:多分、練習や大会の雰囲気も全然違うから、場数が増えたことは素直にありがたいです。
CYCLOPS athlete gaming
日本最強チームとして君臨し続け、「RJL」では驚異の全勝優勝という偉業を成し遂げたCAG。チームの結束は固く盤石に見えたCAGだが、長いシーズンの間には8月の「Six Major Mexico」が挟まり、すでに出場権はあったとはいえ「APAC north」では苦戦も強いられた。半年に及ぶ戦いの中で、どんなことが起きていたのか。
──「RJL 2021」で半年戦ってみて、リーグというかたちで毎週戦えるようになったその環境の変化についてお伺いできればと思います。
SuzuC:大会が1週間おきにあることで忙しくはなったんですけど、その分みんな練習もするし、試合も得られるものが多いので、チーム全体のレベルアップにはつながっていたと思います。リーグ全体として結構伸びているチームもいたので。
──逆に、今までのペースと比べると違うなと感じることはありますか?
SuzuC:試合が詰まりすぎていたので、1回マネージャーに「みんなの練習量をちょっと減らしてほしい」と言ったことはありましたね。選手はきついスケジュールすぎると死んでしまうので、少しゆるめにと。
Anitun:自分は「大会=楽しい」と思っているので、毎週のようにあることはいいことだと思います。
──Anitun選手はつらさはあまりなかったですか?
Anitun:そんなに。練習の日は結構長く『シージ』をやりますが、試合の日は2マップで終わったら夜は時間が空くので、逆にいいと思っていました。以前までは毎週昼夜に練習時間を当てていましたが、今は大会が終わったら解散といった感じなので。
Ayagator:自分は、やっぱり試合に勝る経験はないので、個人的にも全体的にもチーム自体に安定感が増したかなと思っています。みんなが言っている通り、結構ギチギチなときもあったので。
試合自体は楽しかったので、今は我慢というか頑張りどきかなと思っていて、「Six Major Mexico」を終えてちょっと改善して、さらに今は心に余裕を持てています。休みの日、オンとオフがしっかりあることがすごく大事だと思っているので。
──「Six Major Mexico」の話が出ましたが、世界で戦ってきたあと「RJL」に戻ってきて、日本もレベルが上がっているとはいえ世界との違い、差も感じられたと思いますが、そのあたりはどうでしたか?
Ayagator:やっぱり違いは感じますね。日本だけじゃなくてAPAC、世界との違いは感じます。
──そんな中で、日本公式リーグがあることのプラスとマイナスを挙げるとしたら?
Ayagator:もちろんAPAC、日本でリーグがしっかりあることによって、自分らもAPACのレベルが上がってきていると感じるし、日本自体もレベルが上がってきていると思っています。やっぱり競技シーンが(コロナの影響で開催できずに)2年分くらい遅れてしまっているので、APAC地域としてもここで世界との差を埋めるしかない。ここから世界を追い越していこうという気持ちではあります。
BlackRay:リーグ戦に関しては、自分は”オフライン慣れ”ができる場と思っていて。コロナ禍でオフライン大会が少ない中、少しでもあるのはありがたいと思っています。ただ、APACとか世界大会が終わったあとに、APACと「RJL」が重なっていると、スケジュールとしてきつく感じますね。
──戦い方や戦略で、頭を切り替えないといけない部分もありますか?
BlackRay:APACが週1なら大丈夫なんですけど、後半は週2になって、さらに週末に「RJL」となると、何かあったときに対策や修正する時間がなさすぎる。1回悪い方向に流れてしまうとその週は全部無理になってしまう、という心配はあります。スケジュールのせいではないと思いますけど、今後の心配ですね。
──gatorada選手は「RJL」に参加してみてどう感じましたか?
gatorada:過ぎてしまったら短いですね。オフライン試合が多かったので、みんなと会えて楽しいなって感じです。住んでいるところが違うと全員集まる機会があまりないので、試合の日に集まれて嬉しいです。会話量も増えますし、相手に対しての対策の話し合いとかもできますし、会ったほうが戦略が練れますから。
──ゲーミングハウスに集まって練習したいとは思われます?
gatorada:いや、思わないですね。ゲーミングハウスはプライベートの時間がないのでストレスになっちゃって。単純にイライラするのでそれはやめたほうがいい。
Anitun:月に1度とか会って「お前の顔見るの、やっぱり好きだ」みたいな(笑)。
BlackRay:遠距離すぎっしょ(笑)。
──会えない時間がチームワークを育む、みたいな感じですかね(笑)。Fuji3コーチは「RJL」での全勝という結果についてはどうですか?
Fuji3:もう1戦ありますけど、正直、今無敗で1位というのはまずまず順当で、あるべきところに収まった。そこを外さずにこの子たちを連れてこれたのはよかったと思います。
ただ、さっきほかのチームの選手とも話したんですけど、「RJL」というものが出来て、ある程度競技に集中して――給与も出てというかたちで集中して全力投球できる環境ができたことで、日本全体の実力そのものも上がっているし、実力が上がるポテンシャルというか、環境全体の潜在能力が今育っているところなのかなと思っていて。そういう意味では、本当にできてよかったと思っています。そのせいでかなり選手たちも忙しいんですけど、その分競技シーン全体の底上げというか、ポテンシャルが活性化されましたね。
──忙しさの面で、APAC northと「RJL」が重なったこと、「RJL」の全勝に対してAPACでは思うような成績が出せなかったこともありましたよね。Twitterに書かれていた「撃ち合い」のことなどは、「RJL」、「APAC north」、「Six Major Mexico」と世界と交じり合う中で、自分たちの強みや弱点・課題になっている部分が見えながら改善する時間が取れないもどかしさを、あのツイートを見て感じたんですけど。
うちのチームは「撃ち合いの強さ」が、普段は優位性として働いていると思っていて。
— Fuji3 / CAG (@Fuji3_R6) September 22, 2021
その環境に慣れきっていて、撃ち合いの優位性があるのが、わりと”硬い前提”として戦術も構成されているところがある。
スクリムにしろ、大会にしろ、普段は問題にならないのですが…(1/4) https://t.co/cUMYf1PKSm
Fuji3:やっぱり世界の一番上のレベルと「RJL」とでは、結構勝ち方、負け方が変わってくると思っていて。それで多少苦しむところはありますよね。日本では通じる戦略が、世界ではそこまで刺さらないどころか逆効果になることもあったりして。そこを短期間で修正するのは難しいと感じますね。
実際に現地でスクリムしてみても、短期間だと感じ取れないところもあって。撃ち合いに関しては世界の上位チームともやりあえると実感できました。でも、わずかな違いが結果に出ますね。
まとめ
どのチームも「RJL」という安定したリーグが設立されたことのありがたみを感じている一方、試合のペースに関しては選手それぞれのこれまでの経験と比べて、うまくハマったり修正が難しかったりと試行錯誤が続いていたことが伝わってきた。今回インタビューできたのは3チームだけだったが、年間を通して強者たちが集い切磋琢磨できる「RJL」が、確実に日本の『R6S』シーンを1ステップ上へと引き上げてくれたことには疑いはないだろう。
eスポーツプロチームと選手の収入面での安定、世界一を目指せるチームと選手の育成、入れ替え戦による新興チームや若手実力派選手の発掘などなど、2年目となる「RJL 2022」は、日本の『R6S』ファンと選手たちにとって、大きな意義のある大会に成長するに違いない。
Rainbow Six Japan League 2021
https://x-moment.docomo.ne.jp/r6s/rjl/