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LJL 2018 Spring Split 最終決戦、DetonatioN FocusMe vs PENTAGRAMの試合を振り返る

リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)』の日本リーグ、「LJL 2018 Spring Split」を10-0とつけいる隙を見せずに走り抜けたDetonatioN FocusMe(DFM)と、徐々に調子を上げてきたPENTAGRAM(PGM)のFinal。DFM有利という大方の予想を覆し、PGMが3-0と完勝で4連覇を成し遂げた。タワーを1本も破壊させない、まさに完全勝利だった。

この劇的なアップセットは、なぜ起こったのだろうか。現地で集めた話を交えて、その背景を探ってみる。




Detonation FocusMeの戦略とPENTAGRAMのプラン

2018年のDFMの戦略を考えると、2つの軸が浮かび上がる。
一つが、Midを押し込んでSteal選手にゲームメイクの選択肢を渡すこと。
もう一つが、Evi選手のスプリットプッシュ。
当然相手チームは対策を練るのだが、それも簡単ではない。
Midにバンを割いてもCeros選手の広大なチャンピオンプールに阻まれてプッシュを止められず、Topも並大抵の相性ではEvi選手相手に明確な有利をつけられない。戦略を個人の能力が支えていたのだ。

じつはRound10でDFMから1ゲームをもぎとったUnsoldStuffGaming(USG)は、この二つの軸を潰すことに全力を注いで成功している。
DFMのTopガングプランク、Jgセジュアニ、Midヴェル=コズに対して、USGはTopルシアン、Jgオラフ、Midカルマ。Evi選手を1対1で抑え込み、Midを押し勝ち、Jg同士の1対1で確実に勝てる組み合わせなことがわかる。
かなりピーキーで安定感のない構成だが、そこまでやらないと今シーズンのDFMから1ゲームを取ることは難しかったのだ。

では、PGMはFINALに向けてどんな回答を用意したか。

まずSteal選手のゲームメイクに制限をかけるために、ジャングルの周回速度、1対1マッチアップを重視してオラフを優先的に確保する。
タリヤを空けてCeros選手に取らせたうえで、Ramune選手がシンドラ・エコーでカウンターを狙う。
TopでEvi選手のカミール・フィオラを消したうえで、3戦ともナーの先出しを成功させたことも効果的だった。Paz選手が集団戦の安定感を犠牲にしてまで1対1に特化したアイテムを選択したのも、確実にEvi選手を苦しめていた。

ちなみに、DFMはRound6からRound10までサイドを問わず全試合でタリヤをバンしており、使いたくも使われたくもないピックだったのではないだろうか。たしかにMid主導でゲームを動かすタリヤはSteal選手にゲームメイクを託すプランと相性が良くないうえに、使われた場合は逆にDFM側のゲームメイクが制限されやすい。
それでもFinalでは、スウェインやYutoriMoyasi選手へのバンを優先した。PGMのBotレーンの存在感によって、DFMはタリヤをめぐる駆け引きに引きずり込まれた、と言えるかもしれない。
DFMはカイ=サも3試合続けてバンorファーストピックしており、YutoriMoyasi選手の存在がDFMの戦略にかなり大きな影響を与えていることがわかる。

全体のゲームプランについて34コーチは「Once選手にSteal選手より早く成長できるチャンピオンを渡して、あとはゆっくり試合を進めれば大丈夫。BO5だからメンタルもしっかり持って、相手が先にきつくなるようにしたかった」と表現してくれた。

そしてそのプランを、選手たちが最高の形で実現した。
Paz選手がTopを押し込み、Once選手は常に先手を取り、Ramune選手はゲーム全体に巨大な影響力を発揮し、YutoriMoyasi選手とGaeng選手はバンをものともせずにずっと勝っていた。
そして各レーンでの優位を相手ジャングル内の視界確保につなげ、Steal選手を徹底的に封殺。
何より「この日の調子」という点で、PGMはDFMを単純に上回っていた。
DFMに「第3の戦略」があれば展開はまた変わったはずだが、3試合のあいだにその可能性を見せることはできなかった。



試合後にPGMのメンバーと話す機会があったので、ここで紹介しよう。


――おめでとうございます、PGM強かったです。いいチームですね。

YutoriMoyasi
:今年はメンバーが替わってまたイチからだったけど、34コーチが日本語も韓国語もほぼ完ぺきだから間に入ってくれて、みんなでコミュニケーション取れたのがほんとよかった。

Gaeng
:PGMはみんな上手いし、いいヤツばっかり。あとRamuneがかわいい。

Once
:Ramuneとは部屋が一緒だから、すごい気楽。

Ramune
:え、なんか嬉しい(笑)。

――チームの雰囲気はシーズンを通じて右肩上がりだったんじゃないですか?

Paz
:でも昨日は最悪だったよね、練習試合でボコボコにされて。

YutoriMoyasi
:うん、オレが完全にメンタルやられてた(笑)。でも1回寝て切り替えてね。

Paz
:切り替わってたかなぁ。

Once
:PGMの雰囲気はいつもうるさくて動物園みたい。……ってGaengが言ってたよ。


34コーチは選手間の距離を縮めることを大切にしているというが、現チームでもその方針が成功していることが一瞬で伝わってきた。
BO5という長期戦は、メンタル面がものを言う戦いでもある。リードして勝ち切る場面でも、ビハインドから立て直す場面でも、この空気感は大きな武器になるに違いない。

最後に、これは筆者が直接目にしたわけではないのだけれど、近くにいた人が教えてくれたCeros選手のエピソードを1つ紹介したい。

敗戦直後のまだ心の整理もついていないであろう状態で、Ceros選手はRamune選手のもとへ歩み寄り、そして柔らかい表情で「MSIがんばって」と声をかけたそうだ。
だから何だ、という話をするつもりはない。ただそういうことがあったのだと、どちらのチームのファンにも知っておいてほしかった。

DFMを破ってLJL 2018 Springの王者となったPGMは、ドイツで5月3日から始まるMSIに出場することになる。出場チームの中に弱い相手は一つもないが、LJL代表の力を見せてくれることを期待している。


■LJL 2018 Spring Split 戦績(ラウンド6〜10、SEMI FINAL、FINAL。カッコ内は獲得ゲーム数)
Round 6
RJ(0)vs USG(2)
7h(0)vs DFM(2)
V3(1)vs PGM(2)

Round 7
USG(2)vs 7h(1)
RJ(1)vs V3(2)
DFM(2)vs PGM(1)

Round 8
DFM(2)vs RJ(0)
PGM(2)vs 7h(0)
V3(0)vs USG(2)

Round 9
V3(0)vs DFM(2)
USG(0)vs PGM(2)
RJ(2)vs 7h(1)

Round 10
PGM(2)vs RJ(1)
DFM(2)vs USG(1)
7h(2)vs V3(1)

セミファイナル
PGM(3) vs USG(1)

ファイナル
DFM(0) vs PGM(3)

■LJL 2018 Spring Split トッププレイヤー(ラウンド10終了時点)
平均KDAランキング
1 Ceros(DFM) 9.5
2 Yutapon(DFM) 9.3
3 Gaeng(PGM) 7.9
4 Gango(USG) 7.5
5 Steal(DFM) 6.3

平均KILLSランキング
1 Yutapon(DFM) 5.5
2 Gango(USG) 5.1
3 YutoriR(RJ) 4.6 
4 NoA(RJ) 4.4
5 Fanxy(RJ) 3.3

平均ASSISTSランキング
1 viviD(DFM) 9.4
2 Gaeng(PGM) 8.5
3 Enty(RJ) 8.2
4 Steam(USG) 7.6
5 Steal(DFM) 7.3


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