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ピッチイベント「Catapult」を経て世界に展開するケベック・シティーのゲーム

カナダのケベック州ケベック・シティーで2018年4月5日、市内のインディーゲーム開発者を対象としたピッチイベント「Catapult」が開催された。当日は5団体がプレゼンテーションを行い、動画共有サイトのTwitchと連携する新機軸の3Dスパイゲーム『Deceive Inc.』(Sweet Bandits Studios)が優勝した。ケベック・シティーのインディーゲーム開発者の登竜門ともいえる本イベントの模様をレポートする。


厳選された5作品が壇上でプレゼンテーション

Catapultはケベック・シティーを筆頭に、自治体・企業・大学などが産官学連携で実施する複合イベント「Digital Week」(2018年4月5日~15日)の一環として行われ、今年で4回目を迎える。優勝賞金は現金5万5000カナダドル(約489万円)で、これ以外に大手スタジオによる開発コンサルタントやマーケティング支援など、合計1万カナダドル(約890万円)相当の支援が受けられる。

本作は国際企業Deceive Inc.に所属するエージェントとして、さまざまな建築物に潜入し、他のエージェントを出し抜いてミッションを遂行するスパイアクションだ。もっとも、対戦相手は他のプレイヤーだけとは限らない。各々のゲーム画面はTwitch上でリアルタイムにストリーミングされ、多くの視聴者の目にさらされる。視聴者側もブラウザ経由でゲームに関与することが可能で、まったく新しいゲーム体験が味わえる予定だ。

Catapultの審査員の一人で、UBIケベックでマネージングディレクターを務めるPatrick Klaus氏は「革新的なゲームデザインとユニークなアートスタイル、そしてプレイヤーと視聴者とのインタラクション」を顕彰理由に挙げた。このように、ゲーム画面の内外にわたるハイブリッドなマルチプレイヤー体験を実現するため、本作ではゲームエンジンにAmazonのLumberyardが採用されている。

Sweet Bandits Studios代表のPhilippe Pelletier-Baribault氏

Sweet Bandits Studiosは、代表のPhilippe Pelletier-Baribault氏をはじめ、アクティビジョンのBeenoxスタジオから独立した3名の開発者によって、2016年に設立された。同社は現在、4人まで対戦可能なアクションシューティングゲーム『Coffence』を先行開発中で、すでにSteamで早期アクセス版をリリース済みだ。『Deceive Inc.』は同社の第2弾で、2019年の発売が予定されている。

もっとも、1万カナダドルは『Deceive Inc.』開発費用の一部にすぎない。他にカナダ産デジタルコンテンツのプロトタイプ制作に最大50%の助成を行う「CANADA MEDIA FUND(CMF)」を活用し、24万700カナダドル(約2140万円)を資金調達している。このように自己資金を含む、複数の資金調達を組み合わせて(その中にはパブリッシャーからの支援や、銀行からの直接融資も含まれる)発売に至る流れが一般的だ。

他にも下記4作がプレゼンテーションされた(カッコ内は会社名)。このうちSFダークファンタジーRPG『Hellpoint』はKickstarterで2017年5月に6万3553カナダドル(約565万円)の資金調達にも成功している。すでにKickstarter上でプレアルファ版が公開されており、Steamグリーンライトも通過済みだ。11人のスタッフで開発が進められており、Catapultでの結果にかかわらず、2018年にリリースが予定されている。

Cloundette(ALTKY)https://www.altkey.ca/
AR技術を活用したスマートフォン向け戦略ボードゲーム。スマートフォンをかざして、現実空間内にゲーム画面を投影してプレイする


Akimo(BryoStudio)https://www.bryostudio.com/projets
5~8歳向けの言語障害を持つ子どもたちを対象とした教育ゲーム。ゲームを進めながらビジュアルと言語の関係性を自然に習得していく

Hellpoint(Cradle Games Game)http://www.cradlegames.com/
ブラックホールの影響で構造が自在に変化する宇宙ステーションが舞台のSFダークアクションRPG。画面分割で2人までCO-OPプレイもできる

Guards!(Mirum Studio Game)http://www.mirumstudio.com/
ファンタジー世界が舞台のマルチプレイアクションゲーム。最大4人まで同時プレイが可能で、プレイヤーは街にはびこる悪漢を退治していく


PixelChallengeからCatapultへの流れ

Catapultは非営利組織のケベック・インターナショナルとDigital Arts and Interactive Entertainment niche of excellence(ANDI)が、地元金融機関のLa Caisse Desjardins de Québecの協力のもと、2014年に始まった取り組みだ。第一回目の受賞作となったオンライン対戦アクション『Knight Squad』(Chainsawesome Games)は2015年にPCとXbox Oneで発売され、140万ダウンロードの大ヒットを記録している。

本作のプロトタイプは第1回PixelChallenge(2014年)で制作されたことでも知られる。Chainsawesome Gamesは2012年に3名の開発者で設立されたインディーで、48時間でゲームを作る本イベントに参加。見事優勝の栄誉に輝いたのだ。その後、開発メンバーは継続開発を行い、第1回Catapultにも挑戦し、ここでも優勝。賞金を元手に本開発を続け、リリースにこぎつけた。

このように同社は瞬く間にケベック・シティーを代表するインディーに成長した。現在の社員数は11名で、3vs3で戦う新作アクションゲーム『Aftercharge』の開発を進めている。透明装置が搭載されたロボット同士で争い、敵陣地のジェネレーターを先に破壊するという内容で、すでにSteamでゲームのイメージが公開済みだ。2018年の夏リリースが予定されている。

Knight Squad(Chainsawesome Games)https://store.steampowered.com/app/294000/Knight_Squad/

ケベック・シティーでは2000年代より、ゲーム・CGスタジオの起業が始まった。そこからUBIケベックやアクティビジョンなどの外資企業の誘致を経て、次第に地元のインディーゲームスタジオが育ってきた。PixelChallengeやCatapultといった産業支援政策が始まったのは2014年前後のことだ。その後、わずか5〜6年で市内に約30社のインディーゲームスタジオが誕生したという。市の人口約80万人の街で、この成長率は驚異的だ。

ケベック・シティーのインディーゲームは海外のイベントにも出展しており、ビットサミットや東京ゲームショウでも常連になっている。ビットサミット2018ではCatapult2015で優勝し、2018年5月にSteamでリリースが始まったアクションゲーム『Light Fall』(Bishop Games)などがプレイアブル出展する予定だ。世界のゲーム産業クラスターの一つとして、さらなる成長が期待される。

Light Fall(Bishop Games) https://store.steampowered.com/app/416830/Light_Fall/
歴代Catapultの受賞者たち


■関連URL
Le Programme CATAPULTE
https://catapultequebec.ca/
Sweet Bandits Studios
http://www.sweetbanditsstudios.com/
Digital Week|Semaine Numérique de Québec
https://semainenumerique.com/


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