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エレコムがゲーミング業界に本格進出! 新ゲーミングブランド「ELECOM GAMING V custom」キーボード&マウスレビュー

目次
  1. 高速操作が特徴の2.4GHz対応ワイヤレスマウス「VM600PE」
  2. “普通のマウス”の皮を被った“本気のゲーミングマウス”
  3. 必要十分でシンプルさが好印象な設定ツール「EG Tool」
  4. 高級感と独自のキー形状で「V custom」のオリジナリティを生み出した有線キーボード「VK310S」
  5. ゲームやタイピング作業でも検証。ゲームジャンルによって印象が変わる
    1. リーグ・オブ・レジェンド
    2. オーバーウォッチ 2
    3. 原稿執筆などの作業
  6. 総評:エレコムという庶民派ブランドイメージをどう払拭するか

エレコム株式会社が、新たなゲーミングブランド「ELECOM GAMING V custom」を立ち上げた。発表されたのは「東京ゲームショウ2022」の会場で、スポンサードしているFAV gamingVALORANT部門の選手たちによるエキシビションマッチやデバイスの印象なども語られた。

エレコムといえば、PCユーザーならば読者の誰もがどこかで目にしたことがあるだろう。言わずと知れたPC周辺機器の総合的なメーカーで、ケーブルからヘッドホンまで幅広く手がけている。

実はこれまでも、「ELECOM GAMING」というレッドをイメージカラーとしたゲーミングブランドがあったのだが、やや見劣りしてしまう部分は否めなかった。しかし今回の「V custom」は、製品はもちろん、ロゴやイメージグラフィックに至るまでかなり力を入れて開発してきたことが見て取れる。

レビューさせていただいたのは、無線マウスの最上位モデル「VM600PE」と、テンキーレスサイズで銀軸を採用した有線メカニカルキーボードの「VK310S」。いい意味でこれまでの同社のイメージを覆される、他社と異なる個性をしっかり持った本気のゲーミングデバイスとなっていた。

▲「V custom」のロゴは書道家の古川司裕氏が、パッケージデザインはマンガ家の赤津豊氏が担当。サイバーでクールなイメージに


高速操作が特徴の2.4GHz対応ワイヤレスマウス「VM600PE」


まずはマウスの「VM600PE」から見ていこう。今回発売された「ELECOM GAMING V custom」のマウスは2モデルをラインナップしている。


上位モデルの「VM600PE」は100〜26000DPIの分解能を持ち、トラッキングスピードは最大650IPS、最大検出加速度は50Gまで。「VM500」は100〜12000DPIまでで、300IPS、35Gとなっている。数値としてはかなり違うが、もはや体感できないレベルだ。

接続方式は、2.4GHz帯の無線か、USBケーブルをつないだ有線の2方式。本体重量は充電池を含めて約75gと、他社製品と比べてもかなり軽量と言っていい。

ラインナップで異なるのはセンサーと付属品で、「VM600PE」にのみ滑りを調整するための底面のソール(交換用予備)と、手で触れる面に貼り付け可能なグリップシートなどが付属している点。他社では別売りになっているカスタマイズパーツが同梱されているのはお得感が高い。

▲VM600PEの付属品。ソールやグリップシールでカスタマイズできるほか、ブランドステッカーなども入っている。USBケーブルも丈夫なタイプだ

デザインは右手の親指側がややくぼんだ左右非対称で、親指の位置に2つのサイドボタン、ホイールの手前に2つのボタン、さらに底面にDPI変更ボタンと全部で8つのボタンを搭載。これらのボタンはすべて専用ユーティリティアプリ「EG Tool」で変更が可能だ。

▲デザイン自体はオーソドックス。ライティングはブランドマークのみ。バッテリー警告ランプもある

重量約75gと軽量なのは、外からは見えない内部骨格が徹底的に肉抜きされているため。最近はメッシュ形状の軽量マウスも増えているが、ホコリなどを考えるとやはりカバーされている方が安心だ。手のひら全体で包み込むように持つ「かぶせ持ち」派の人でも、指の先だけでつまむように持つ「つかみ持ち」派の人でも、どちらにもオススメできる形状となっている。

最も重要な左右クリックのスイッチには、耐久性が高く反応速度も早い光学式スイッチを採用。クリック音は大きめだがストロークは浅く、なおかつ反発力も強いため、クリック操作が速くなった印象を受けた。


“普通のマウス”の皮を被った“本気のゲーミングマウス”


ぱっと見は他社の軽量マウスとそれほど違いを感じないと思うが、実際にゲームをプレイしてみて一気に印象が変わったのは、マウスを動かしたときの物理的な速さだ。

「VM600PE」の底面のソールはかなり滑りがいい。マウスパッドに触れるのは、5つの小さな丸と中央のセンサーを囲む円状の部分のみだが、いずれも角がないラウンド形状になっているため、引っ掛かりが極限まで抑えられ、接地面積の小ささも相まって操作が速く感じられる。

▲底面は5つの丸いパッドと、中央のセンサーを囲む楕円形のパッドのみ。そもそも接地面積がかなり狭い

FPSでのエイムや振り向きなどの物理的なスピードは確実に上がる。筆者がこれまで使ってきたゲーミングマウスの中でも最速クラスだ。

もしかすると、滑りすぎて思い通りにマウスを止めるのが難しく感じる人もいるかもしれない。そんな人に向けて追加パッドが付属しており、接地面積が広くなるぶん摩擦が増え、コントロールしやすくなる。それでも他社と比べれば圧倒的に滑らかだ。止めたいところでうまく止まらない可能性も出てくるが、そこはマウスパッドとの組み合わせで調節できるだろう。

▲パッドを追加した様子。両面テープで貼るだけと装着も簡単

もうひとつの付属品である、マウス全体を覆うように貼れる「フルカバーグリップシート」は表面に凹凸があり、指とマウスの吸い付き度が向上する。全体に貼ってもいいが、左右クリックや側面のつまむ部分だけに貼るなどのカスタマイズも可能。この手のシートは他社では別売されているが、最初から入っているのはうれしい。

▲フルグリップカバーシートの表面に注目。ところどころに「ELECOM」と「V custom」の文字も刻まれている

底面の動きに関してはエレコム自身も特筆していないが、筆者個人はこの操作スピードが一番魅力的に感じた。好みもあると思うので、店頭で実際にプレイできる環境で試してみてほしい。


必要十分でシンプルさが好印象な設定ツール「EG Tool」


マウスの設定は、専用ユーティリティアプリの「EG Tool」で行う。ボタン設定ではクリック、ホイール、物理ボタンを含め、8つのボタンすべてに操作を割り当てられる。

DPI設定は最大5つまでで「DPIステージ切替」ボタンを押すたびに切り替わる。「ポーリングレート」は有線接続時は4つ、無線接続時は2つから選べる。バッテリーの持ちにも関係するが、PCゲームで使うなら1000Hz一択でいいだろう。

▲ボタン設定

▲DPI設定とポーリングレート

RGBライティングは手元の「ELECOM」マーク部分のみ。明るさ調整はできないが、光量は控えめなので、プレイングを邪魔することはない。

▲ライティングは点滅やウェーブなどの表示方法も選べる

プロでもうなるこだわり! 
上位モデルの「V600PE」のみの機能として、「リフトオフ距離」の設定がある。これは、マウスをどれくらい持ち上げたらセンサーが反応しなくなるかの高さで、低〜高までスライダーで6段階の設定が可能。実際の距離としてはほぼゼロ〜約1.5mmとなっており、かなりこだわりのあるプレイヤー向けの設定ではある。

「リフトオフ距離」はスライダーで調節。「マウスパッド最適化」でマウスパッドの素材などに合わせて微調整してくれる

試しに、自分の環境でマウスを持ち上げながら、どれくらいの高さまでカーソルが動くかを確認してみてほしい。距離があるはずだ。この距離は人によってかなりクセがあり、高い方が好みの人もいれば、低い方が好みの人もいる。それらを調整できるのがこの機能だ。ローセンシでマウスを持ち上げて操作するタイプのプレイヤーほど、この設定の意味を実感できるだろう。

これらの機能ひとつひとつは、他社のマウスでも設定はできる。ただ「EG Tool」のいいところは、プレイヤーが必要とするこだわりの機能だけしかさわれるようになっていないところだ。機能がたくさんありすぎても使いこなせないしいらない機能も多いので、割り切りも好印象だ。

正直、「VM600PE」の第一印象としてはインパクトや個性はあまり感じられなかったし、特徴もわかりにくかった。しかし使い込むことでこれほど印象が変わったマウスもない。

ソールの滑り具合とその操作性にしっくりくる人ならば、きっとゲームの戦績が上がるほどの効果をもたらしてくれるだろう。


高級感と独自のキー形状で「V custom」のオリジナリティを生み出した有線キーボード「VK310S」


続いて、「ELECOM GAMING V custom」シリーズのゲーミングキーボード「VK310S」を見てみよう。テンキーレスでカーソルキーなどを備え、スイッチには銀軸を採用した最速クラスの製品だ。


ラインナップは、テンキーを廃した「テンキーレスサイズ」と、カーソルキーなども廃した「65%サイズ」に加え、それぞれRGBライティングの有無、青軸/茶軸/銀軸の3種類のメカニカルスイッチを組み合わせた全12種類になっている。

見分け方は、末尾の100の位が「3」ならRGBあり、「2」ならRGBなし、10の位はサイズを示し「0」が65%サイズ、「1」がテンキーレスだ。そして末尾の英字によって「B」が青軸、「S」が銀軸、「T」が茶軸をそれぞれ表す。購入時には注意してほしい。


キー配列は日本語JISキーボードをベースとしながらも、「無変換」キーをなくして「Space」キーをやや左に伸ばし、右にある「変換」キーは独自の「ELECOM GAMING」キーに置き換えている。FPSなどのジャンプ操作になる「Space」キーを左側に伸ばすメリットは意外と大きい。

最大の特徴は、キートップのフチを高くすることで操作ミスを防ぐ「ネオクラッチキーキャップ」だ。具体的には、PCゲームのWASD操作で頻繁に使う数字キーと左手で操作するキーを左右対称はラウンド形状に、Z〜Mキーと左Altキーは上辺と左辺のフチを高めた非対称な形状にしている。

▲PCゲーマーが頻繁に操作するキーにのみ凹凸がある。下段キーはやや形状が異なる

最初のうちはキーの上側が出っぱっているという印象だったが、慣れてくるとフィットする押し方ができるようになってくる。キーを押す際の収まりが良いというか、押し間違いが減る印象だ。

ただ、WASDのホームポジションからあまり動かさずにカチッとした操作感が欲しい人には最適だが、キーの上でも微妙に指を滑らせたりするクセがある人にはかえって違和感が強いかもしれない。

そんな人は、付属するグリップシールを貼ると凹凸の高さが緩やかになり、普通のキーとほぼ同じように操作できる。引っ掛かりが多少強くなるものの、ほとんどの人が貼っても違和感なく操作できるだろう。

▲シールのアップ。マウスと同様に表面が加工され、触り心地はかなり変わる

ゲーミングモード
「space」キーの右にある「ELECOM GAMING」キーを押すとゲーミングモードとなり、「EG Tool」の「ゲーミングモード」で無効にするコマンドなどを指定できる。

ゲーム中に「Windows」キーや「半角/全角」キーを使えなくするほか、半角/全角のデフォルト値を切り替える「Shift+Tab」や、ゲーム中でも別のアプリに切り替える「Alt+Tab」なども大事な試合を台無しにしなくて済む。キーひとつひとつのオンオフではなく、ありがちな組み合わせのオン・オフができるのはわかりやすくていい。

▲「ゲーミングモード」で無効にできる機能は9つ。Shift+Tabなどはつい押してしまいがちなので助かる

ゲーミングモードのオン/オフには別のボタンを配置しているメーカーも多いが、「ELECOM」キーはゲームを終えてウェブを検索したい時などに瞬時に切り替えられるところがいい。モードのオン・オフをランプやライティングで確認できたらなおよかった。

▲ライティングの設定はキーひとつひとつを選択可能だが、色は個別には指定できない

メカニカルスイッチは、多くのゲーミングキーボードが採用しているCherryMXを採用。銀軸は最も動作が軽くレスポンスもいいため、一瞬の遅延も許せない人におすすめ。それを受け止める本体の剛性も高く、その点「VK310」は重量も剛性もあるので不安感は一切感じなかった。

ゲームやタイピング作業でも検証。ゲームジャンルによって印象が変わる


最後に、「VM600PE」と「VK310S」の組み合わせで2週間ほど、普段遊んでいるゲームもプレイしてみた。ちなみに、筆者のマウスはSteelSeriesの「Rival 3」を中心に、ロジクールGの「G Pro Wireless」 も、キーボードはロジクールGの「G913」(赤軸)を愛用している。


リーグ・オブ・レジェンド


リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)では、プレイ中のカメラ移動とチャンピオンの移動や攻撃のすべてをマウス操作で行う。

筆者は普段は2400dpiに設定しており、遠くのジャングルやレーンの確認を素早く行えるようにしている。「VM600PE」は滑りがいいため、2200dpiくらいまで落とすとちょうどよく感じた。それでいて、チャンピオンへの攻撃のように狭い範囲で移動させる際にも動かしすぎるようなこともなく、気持ちよくプレイできる。

『LoL』のキーボード操作は、スキルがQWER、アイテムが1〜7の数字で、コミュニケーション関係でH・Z・Vなども使うが、素早く押したい時にネオクラッチキーキャップが引っかかりすぎる時があった。そのためシールをQWERとTab、Shiftなどに貼ってちょうどいい印象だった。

オーバーウォッチ 2


基本プレイ無料の最新FPS『オーバーウォッチ 2』(OW2)をはじめ、FPSのマウス設定は800dpiでプレイしているが、700dpi程度でちょうどよくなった。こちらも、普段使っているよりも少し低めの設定がいい印象だ。ウィンストンやゲンジが突っ込んできた時などに、ジャンプしながら振り向くことも多いが、75gという軽さとソールの速さも相まって快適に操作できた。

キーボードのネオクラッチキーキャップは、たしかに指が引っかかるのだが、WASD操作に関してはかえって違和感を感じてしまった。ここはかなり人を選びそうだ。しかし、グリップシールをWASDと同時に使うShift、Control、Tabなどに貼ってみると、小指で押さえる際の正確性が増してしっくりくるようになった。

銀軸の打鍵スピードについてはいまさら語る必要もないだろう。普段赤軸を使っているが問題なく使用でき、打鍵ミスもほとんどなかった。

原稿執筆などの作業


最後に、この原稿の執筆にも「VM600PE」と「VK310S」を使ってみた。

マウス操作は1600dpi程度に落として使っているが、キーアサインを変更して「dpi設定変更」をホイール手前のボタンに割り当てることで、ゲームプレイ時と原稿等執筆時で簡単に切り替えられるところが便利だった。

銀軸は認識するまでが軽すぎて、頻繁に「っっっっっっっっっっd」などと文字が勝手に入力されてしまうことがあった。タッチタイピングだけを考えると銀軸は少し軽すぎるので、自分にとっては茶軸くらいがちょうどいいのだろう。キーキャップに関しては、長年使い慣れてきたフラットな方がやはり操作性はいい。個人的には、ネオクラッチキーキャップはあくまでゲームに特化した機能だと感じた。

トータルで考えると、頻繁にWASDの操作を行うゲームよりは、じっくり出がかりを待ち受けたり右クリックでスコープを使ってエイムするようなFPSには向いているように思う。『OW2』や『フォートナイト』のように戦闘時の移動が頻繁なゲームより、『PUBG』『VALORANT』『レインボーシックス シージ』のような待ち時間が長いタイトルが向いているのではないだろうか。


総評:エレコムという庶民派ブランドイメージをどう払拭するか


「V custom」シリーズのキーボードもマウスも、PCゲーマーのニーズを満たし特徴もあるレベルの高い製品になっていた。マウスの操作速度は、他社の製品と比較してもかなり突出した個性と言えるし、ネオクラッチキーキャップも相性がいいユーザーには圧倒的な支持が得られる可能性がある。

ただし、ライバルはロジクールG、Razer、SteelSeries、ASUSと、歴戦のゲーミングデバイスブランドたちだ。「V custom」というブランドがエレコムという名前の持つ親しみやすさや安価さ、手軽さを超えて、プレミアムなイメージを作れるかどうかはここからのマーケティングの腕の見せどころだろう。

前提となる製品のつくり自体は、お世辞抜きに本当に頑張っていると思う。底面がプリントではなくテカテカなシールになっており、やや質感を損ねている印象もあるものの、こういった部分はいま以上にプレミアム感を演出することも技術的には不可能ではないはずだ。販売網としてもヨドバシカメラやヤマダ電機といった大手量販店の店頭にも置かれており、手にとって試せるところもありがたい。

V custom第1弾となるこれらの製品の売れ行き次第で、第2弾のゲーミングデバイスではさらにチャレンジすることもできるはず。今後の展開にも期待したい。


V custom by ELECOM
https://www.elecom.co.jp/pickup/v-custom/
ELECOM GAMING
https://www.elecom.co.jp/pickup/contents/00042/


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