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写真で振り返る“夢の始まり”の2日間。「DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA」レポート
目次
スウェーデン発祥の巨大LANパーティーイベント「DreamHack Japan 2023」が、2023年5月14日〜15日に幕張メッセで開催された。
熱心なゲームファン以外は「DreamHack」という名称を耳にする機会もなかったかもしれないが、もともとはゲームコミュニティが自ら主催する手作りイベントからスタートし、現在は世界中で開催される巨大なイベントプラットフォームとなっている。そのため、巨大なLANパーティーと例えられるものの、最近では規模もイベントの内容も単にPCを持ち寄って遊ぶオフラインイベント、というイメージとはまったく違う。
そんな日本初開催の「DreamHack Japan」は、5つのエンタメ要素を盛り込んだ複合イベントとされている。
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①BYOCは「Beyond your own computer」の略で、PCなどのゲーム機器を自ら持ち込んで遊ぶスタイルのイベントのこと。②EXPOはゲーム関連企業などの展示や試遊を楽しめるブースイベントだ。③GAMESはその名の通りゲームを使った大会やエキシビションといった見て触れて楽しめるイベント。④MUSICは日本のゲームやアニメといったカルチャーに密接につながる音楽フェス。そして⑤はコスプレ、アート、インディーゲーム、フリープレイ、コミュニティ大会など、玉石混交の日本のゲームカルチャーてんこ盛りのイベントだ。
これだけを見ると「東京ゲームショウ」や「超会議」などのゲームイベントと同じでは? と思われた方もいるかもしれない。たしかにひとつひとつの展示やイベントだけを見れば、同じような出展企業・ブランドもあり、どこかで見たことがあるイベントに似てもいる。しかし、ゲームの見本市としてメーカーや業界が出資して開催する「東京ゲームショウ」とは大きく異なる。
「DreamHack Japan 2023」が他のイベントと異なる点に注目しながら、2日間の現地フォトレポートをお届けしたい。
一般的なLANパーティー、特に海外のものは破天荒で自由だ。参加者は「スペース利用枠」を購入し、自前のPCやゲーム機などを持ち込んで思い思いに遊ぶ。デスクやチェアは用意されているが、その他の装飾は自由であり、その個性的な演出こそが醍醐味とも言える。
ただ、日本ではLANパーティーという文化自体がそれほど知られてはいない。それは、巨大なデスクトップPCよりも、高性能でコンパクトなノートPCを用いたり、日本発祥のさまざまなゲーム専用機が普及しているという事情もあるだろう。また、BYOCはあくまでユーザー主体のイベントであり、海外では現地のユーザーが集まるからこそあのような光景が生まれる。日本は当然日本のユーザーが作るものなので、「DreamHack」だからといって何かがガラッと変わるものでもない。
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特に今回は、幕張メッセという会場の制約上、24時間プレイし続けることができなかったり(一般的なLANパーティーは夜通しで遊ぶことが多い)、クルマの所有率が低く会場に直接PCを持ち込める参加者ばかりではないため、郵送する必要があるといった環境面での難しさもあったようだ。
ただし、そんな日本ならではの事情も踏まえて、協賛企業に名を連ねるゲーミングPCの「GALLERIA」やソニーのゲーミングブランド「INZONE」などがレンタル機材を提供して、より気軽に参加できる環境も整えられていた。フリープレイ会場での機材も同様だ。
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BYOCブースは有料のスペースを購入しなければならないが、有料スペースのゲートの外にも、来場者が誰でも気軽にPCゲームをプレイできるスペースも用意され、雰囲気を共有できる工夫がされていた。さらに、BYOC参加者限定のプレミアムな体験として、未発売の新作FPS『Counter-Strike 2』の試遊スペースも日本で初めて用意されていた。
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今回は日本初開催ということもあり、言ってみれば「DreamHack JAPAN」流のBYOCを示したとも言える。今回の参加者の声や参加できなかった方たちの要望などを踏まえて、次回以降でより日本にマッチしたBYOCのかたちが出来上がっていくだろう。
今回の幕張メッセの会場は、国際展示場9-11ホールを「アクティビティエリア」、通路を隔てたコンサートホールを「ライブエリア」として、2つの会場を行き来できるようになっていた。
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BYOCをはじめとしたゲームコンテンツを楽しみたい人たちは「アクティビティエリア」がメイン。試遊やブース、eスポーツ大会など、アクティブに参加できるものはこちらのエリアに集約された。
「ライブエリア」の方は、基本的にイベントホールの指定席チケットを購入するかたちで(自由席スペースもあり)、2日間の音楽ライブやゲームライブを楽しめるようになっていた。こちらのチケットの方がライブも楽しめる分だけ割高にもなっており、特定のアーティストのライブを目的にチケットを購入したファンも多かったようだ。
そして、朝から夜までのスケジュールには、本格的なミュージックライブと、アーティストとプロゲーマーやインフルエンサーが交流するゲームイベントが入れ替わるように設定され、アーティストを応援するファンが、そのアーティストが参加するゲームで違った一面を見られるといった、まさに音楽とゲームが融合するかたちとなっていた。
例えば、『VALORANT』のファンがアイドルやVTuberのイベントを見たり、逆にアーティストのライブ目当てのファンが『Apex Legedns』で戦う姿を初めて目にするといった、「ライブエリア」と「アクティビティエリア」での交流が多く見られた。アーティストをきっかけにゲームに出会ったり、あまり知らなかったゲーミングPCに触れたり、昔懐かしいゲームに興じたりできることこそ、「DreamHack Japan」が提供したいさまざまなコンテンツの融合のかたちでもある。
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「DreamHack」というイベント自体、時代の変化や国ごとのカルチャーに合わせて、それぞれの地域に最適化されている。ステレオタイプに「BYOCこそ至高!」と思い込みすぎることも「DreamHack」の趣旨とは少しずれていってしまうということが、会場を訪れてみてわかった。
前述のとおり、「DreamHack Japan 2023」ではライブに出演するアーティストやアイドルなどが、ゲームコンテンツ側にも登場していたが、一昔前とはそのガチ度合いがまったく変わった印象がある。
「VALORANT女性プレイヤーエキシビションマッチ」では、ZETA DIVISIONのプロ選手たちとともに、坂道グループの乃木坂46 吉田綾乃クリスティーと岩本蓮華、日向坂46 丹生明里、歌手のCHiCO、ゲーマータレントで元フィロソフィーのダンスに所属していた十束おとは、グラビアアイドルのyunocyらが参戦。中でも坂道グループの3人は、2022年に行われた「THE GAMING DAYS」でもプロの指導を受けて参加し、準優勝にも輝いた実力者なので、ご存じの方も多いだろう。
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「スプラトゥーン3 坂道グループ対抗戦」や「FIFA 23 影山優佳チーム vs 岡崎体育チーム」などでも、普段ゲームをプレイする姿を見る機会が少ないアイドルやアーティストが楽しむ姿は、ファンにとってもゲームを知ってみたいと思うきっかけになっただろう。
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また、ライブパフォーマンスも行った7ORDERのメンバーは、インテルブースにてそれぞれが理想とするカスタムPCをさまざまなPCメーカーの協力で製作し、そのパーツ構成や実際にどのように組み上げるかを紹介するブースを展開。単にゲームが遊べるPCを安価に作るということではなく、ライティングやデザインなども含めて好みのカスタムPCを作るという楽しみ方を提案してくれていた。
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一番のポイントは、彼らが皆ゲームを仕事としてだけでなく、真剣に楽しんでいることが伝わってきたことだ。一般的なイメージとしてアイドルはちやほやされがち、ゲームを知らなくてもいい、という風潮は昔はあったが、嵐の二宮和也やHey! Say! JUMPの山田涼介のように、現在はゲーマーコミュニティも認めるほどの実力者も多い。今回選ばれた吉田、岩本、丹生、十束、yunocyらもまさに実力派だ。
ゲーマーコミュニティの集大成イベントのような「DreamHack Japan」だからこそ、今回のような大規模な音楽とゲームのコラボが実現できたとも言えるだろう。
eスポーツの大会もこの2日間で開催された。最も大きなものは『ブロスタ』の世界大会「Snapdragon Mobile Masters」。賞金総額20万ドルで、モバイルオープンを突破したチームが4つの地域(北米、欧州・中東・北アフリカ、アジア太平洋、インド)から勝ち上がった8組により世界一を決める戦いだ。
会場の中でもこのスペースは圧倒的な“本物感”にあふれ、日本の他の大会ではお目にかかれないような配置だった。円形のステージ中央に選手が円座で対面し、ファンはその外側の席から選手を見守る。通りすがりの来場者には、大きなモニターとその下に選手たちが戦っている姿が見えた。日本からもCrazy RaccoonとHelp Meという2チームが参戦し善戦した。
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実は『ブロスタ』はZETA DIVISIONが世界一に輝くなど、日本では比較的メジャーなタイトルではあるものの、他のタイトルと比べると決して多いとは言えない。しかし世界規模では人気の高いスマホタイトルだ。DreamHackの親会社はESLゲーミングだが、この会社が扱っているタイトルであったというやりやすさもあっただろう(ちなみに、あつかっているタイトルは『アスファルト9』『クラッシュロワイヤル』『クラッシュオブクラン』『FREE FIRE』『モバイルレジェンド: BANG BANG』など、アジアで人気のタイトルが多い)。
さらに、『レインボーシックス シージ』の日本代表チームDONUTS VARRELと韓国チームDplus KIAによる「R6S Dream Showdown 2023」、『リーグ・オブ・レジェンド』の日本リーグ「LJL」への若手登竜門としての大会「LJL 2023 Scouting Grounds」なども行われた。
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オフィシャルなeスポーツ大会が、会期中に同じ会場で行われたことの意義は大きい。それはつまり、プロもアマチュアも、興味がある人もない人も、同じ会場に集うということだからだ。
日本のeスポーツはまだまだ理解度も浅く、プレイヤーも観客も少ない。きっかけはどのようなかたちでも、eスポーツに触れるチャンスがあることは、ゲーム業界にもeスポーツ業界にも意義がある。
「DreamHack」という名称のイベントともなれば、嫌が応にも世界的に注目される。そして世界が注目するのは、やはり日本ならではのゲーム文化だ。
日本のゲーマーコミュニティで言えば、eスポーツという言葉が流行する前からあったアーケードゲーム文化が最も印象が強いだろう。いまやeスポーツの一大ジャンルとなった対戦格闘ゲームにおいては、日本は発祥の地であり聖地でもあるからだ。
そして、今回の「DreamHack Japan」では、2つのタイトルの大会が「アクティビティエリア」でそれぞれ丸1日かけて行われていた。13日(土)は「第18回クーペレーションカップ」。今もなお開催され続けている『ストリートファイターIII 3rd Strike』の大会だ。もうひとつは、14日(日)の「第18回VFR ビートトライブカップ」。『バーチャファイター5 ファイナルショーダウン』による3on3の対戦だ。
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この2つの大会はとにかく熱かった。アーケード筐体を持ち込み、台ごとに戦う選手の仲間が後ろから声援を送る姿は、1990年代のアーケードゲーム全盛期を思わせた。
おそらく「東京ゲームショウ」の会場では、20年以上前に発売され、新たな売上が見込めないこれらのゲームの大会を行うことは難しい。「DreamHack」だからこそ実現したとも言える。
この大会のもうひとつの特徴は、プロゲーマーに取り立てて注目するわけではなく、あくまで実力主義のアマチュアたちが主役の大会であったことだ。有名なeスポーツプレイヤーのチームを参加させたり、ゲストに招いて解説させたりせずに、18回の歴史の中で生まれた実力者たちにフィーチャーした、例年どおりのコミュニティ大会だったところに好感が持てた。
近年、ゲーム業界でアイドルやタレント以上にゲームを生業としているのが、インフルエンサーやVTuberといった存在だ。どのイベントにも必ずと言っていいほど登場し、ゲームや会場を盛り上げてくれている。
彼らの経歴も、元プロゲーマーもいれば、純粋なゲームファンとして配信を始めたなど、ひとりひとり境遇は異なるが、純粋に好きなゲームに対して集まって遊べるというだけで、ファンはそこに集まってくる。
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中でも日本独自の進化を遂げているのがVTuberだろう。顔出しで自分をアピールする動画が多い海外と違い、日本ではバーチャルYouTuberや、読み上げソフトによる人工音声の動画が当たり前のように存在し、ゲーム配信などでも使われている。TSMに所属する渋谷ハルや、「ぶいすぽっ!」のようにVTuberによるeスポーツタレントも登場しており、もはや独自のジャンルと言ってもいい
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エキシビションマッチ自体もインフルエンサーやVTuberの存在はもはや欠かせない。個人個人が持っているフォロワー=ファンの数もとてつもないことになっている。さらに、コスプレイヤーたちもイベントに華を添えてくれていた。
アーティストやアイドル、タレントに加えて、これらのゲームが得意なインフルエンサー、VTuber、コスプレイヤーなど、日本独自の進化を遂げた存在たちが、「DreamHack Japan」の特徴とも言えるだろう。
正直なところ、普段からさまざまなゲームイベントに参加しているファンからすれば、これぞ「DreamHack Japan」という雰囲気はあまり感じられなかったかもしれない。
しかし、これは海外からやってきた「DreamHack」というイベントと日本が邂逅した最初のイベントでしかなく、初開催の今回だけを見て評価してしまうのはあまりにもったいない。見たいもの、遊びたいゲーム、会いたいアーティスト、欲しいレアグッズがあり、思い思いの楽しみ方で2日間を過ごせる満足感は高かったはずだ。
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印象的だったのは、「東京ゲームショウ」では整理券をもらっても1日に数十分しか遊べなかったゲームが、この会場ではかなり自由に遊べたことだ。もちろん、来場者数の違いはかなり大きいが、巨大すぎるイベントよりも手作りイベント感の残る「DreamHack Japan」の方が楽しめたのではないかと思う。
「DreamHack Japan」の歴史はまだ始まったばかり。次回はきっとさらに日本ならではの楽しみ方をファンに提供してくれるはずだ。
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DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA
https://www.dreamhackjapan.com/
ⒸDreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA
熱心なゲームファン以外は「DreamHack」という名称を耳にする機会もなかったかもしれないが、もともとはゲームコミュニティが自ら主催する手作りイベントからスタートし、現在は世界中で開催される巨大なイベントプラットフォームとなっている。そのため、巨大なLANパーティーと例えられるものの、最近では規模もイベントの内容も単にPCを持ち寄って遊ぶオフラインイベント、というイメージとはまったく違う。
そんな日本初開催の「DreamHack Japan」は、5つのエンタメ要素を盛り込んだ複合イベントとされている。
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①BYOCは「Beyond your own computer」の略で、PCなどのゲーム機器を自ら持ち込んで遊ぶスタイルのイベントのこと。②EXPOはゲーム関連企業などの展示や試遊を楽しめるブースイベントだ。③GAMESはその名の通りゲームを使った大会やエキシビションといった見て触れて楽しめるイベント。④MUSICは日本のゲームやアニメといったカルチャーに密接につながる音楽フェス。そして⑤はコスプレ、アート、インディーゲーム、フリープレイ、コミュニティ大会など、玉石混交の日本のゲームカルチャーてんこ盛りのイベントだ。
これだけを見ると「東京ゲームショウ」や「超会議」などのゲームイベントと同じでは? と思われた方もいるかもしれない。たしかにひとつひとつの展示やイベントだけを見れば、同じような出展企業・ブランドもあり、どこかで見たことがあるイベントに似てもいる。しかし、ゲームの見本市としてメーカーや業界が出資して開催する「東京ゲームショウ」とは大きく異なる。
「DreamHack Japan 2023」が他のイベントと異なる点に注目しながら、2日間の現地フォトレポートをお届けしたい。
(1)日本向けにカスタマイズされた「BYOC」
一般的なLANパーティー、特に海外のものは破天荒で自由だ。参加者は「スペース利用枠」を購入し、自前のPCやゲーム機などを持ち込んで思い思いに遊ぶ。デスクやチェアは用意されているが、その他の装飾は自由であり、その個性的な演出こそが醍醐味とも言える。
ただ、日本ではLANパーティーという文化自体がそれほど知られてはいない。それは、巨大なデスクトップPCよりも、高性能でコンパクトなノートPCを用いたり、日本発祥のさまざまなゲーム専用機が普及しているという事情もあるだろう。また、BYOCはあくまでユーザー主体のイベントであり、海外では現地のユーザーが集まるからこそあのような光景が生まれる。日本は当然日本のユーザーが作るものなので、「DreamHack」だからといって何かがガラッと変わるものでもない。
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BYOCエリア
特に今回は、幕張メッセという会場の制約上、24時間プレイし続けることができなかったり(一般的なLANパーティーは夜通しで遊ぶことが多い)、クルマの所有率が低く会場に直接PCを持ち込める参加者ばかりではないため、郵送する必要があるといった環境面での難しさもあったようだ。
ただし、そんな日本ならではの事情も踏まえて、協賛企業に名を連ねるゲーミングPCの「GALLERIA」やソニーのゲーミングブランド「INZONE」などがレンタル機材を提供して、より気軽に参加できる環境も整えられていた。フリープレイ会場での機材も同様だ。
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フリープレイでは数十台のGALLERIAが並ぶ
BYOCブースは有料のスペースを購入しなければならないが、有料スペースのゲートの外にも、来場者が誰でも気軽にPCゲームをプレイできるスペースも用意され、雰囲気を共有できる工夫がされていた。さらに、BYOC参加者限定のプレミアムな体験として、未発売の新作FPS『Counter-Strike 2』の試遊スペースも日本で初めて用意されていた。
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BYOCエリア内に設けられた『Counter-Strike 2』の試遊スペースにもGALLERIA
今回は日本初開催ということもあり、言ってみれば「DreamHack JAPAN」流のBYOCを示したとも言える。今回の参加者の声や参加できなかった方たちの要望などを踏まえて、次回以降でより日本にマッチしたBYOCのかたちが出来上がっていくだろう。
(2)音楽×ゲームという親和性の高いコンテンツの共存
今回の幕張メッセの会場は、国際展示場9-11ホールを「アクティビティエリア」、通路を隔てたコンサートホールを「ライブエリア」として、2つの会場を行き来できるようになっていた。
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エリアはイベントホールの「ライブエリア」と、イベント会場の「アクティブエリア」に分かれていた
BYOCをはじめとしたゲームコンテンツを楽しみたい人たちは「アクティビティエリア」がメイン。試遊やブース、eスポーツ大会など、アクティブに参加できるものはこちらのエリアに集約された。
「ライブエリア」の方は、基本的にイベントホールの指定席チケットを購入するかたちで(自由席スペースもあり)、2日間の音楽ライブやゲームライブを楽しめるようになっていた。こちらのチケットの方がライブも楽しめる分だけ割高にもなっており、特定のアーティストのライブを目的にチケットを購入したファンも多かったようだ。
そして、朝から夜までのスケジュールには、本格的なミュージックライブと、アーティストとプロゲーマーやインフルエンサーが交流するゲームイベントが入れ替わるように設定され、アーティストを応援するファンが、そのアーティストが参加するゲームで違った一面を見られるといった、まさに音楽とゲームが融合するかたちとなっていた。
例えば、『VALORANT』のファンがアイドルやVTuberのイベントを見たり、逆にアーティストのライブ目当てのファンが『Apex Legedns』で戦う姿を初めて目にするといった、「ライブエリア」と「アクティビティエリア」での交流が多く見られた。アーティストをきっかけにゲームに出会ったり、あまり知らなかったゲーミングPCに触れたり、昔懐かしいゲームに興じたりできることこそ、「DreamHack Japan」が提供したいさまざまなコンテンツの融合のかたちでもある。
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7ORDER
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ホロライブの角巻わためと獅白ぼたん
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日向坂46
「DreamHack」というイベント自体、時代の変化や国ごとのカルチャーに合わせて、それぞれの地域に最適化されている。ステレオタイプに「BYOCこそ至高!」と思い込みすぎることも「DreamHack」の趣旨とは少しずれていってしまうということが、会場を訪れてみてわかった。
(3)実力を持つアイドルやアーティストの参戦
前述のとおり、「DreamHack Japan 2023」ではライブに出演するアーティストやアイドルなどが、ゲームコンテンツ側にも登場していたが、一昔前とはそのガチ度合いがまったく変わった印象がある。
「VALORANT女性プレイヤーエキシビションマッチ」では、ZETA DIVISIONのプロ選手たちとともに、坂道グループの乃木坂46 吉田綾乃クリスティーと岩本蓮華、日向坂46 丹生明里、歌手のCHiCO、ゲーマータレントで元フィロソフィーのダンスに所属していた十束おとは、グラビアアイドルのyunocyらが参戦。中でも坂道グループの3人は、2022年に行われた「THE GAMING DAYS」でもプロの指導を受けて参加し、準優勝にも輝いた実力者なので、ご存じの方も多いだろう。
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乃木坂46の吉田綾乃クリスティー
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乃木坂46の岩本蓮華
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日向坂46の丹生明里
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十束おとは
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yunocy
「スプラトゥーン3 坂道グループ対抗戦」や「FIFA 23 影山優佳チーム vs 岡崎体育チーム」などでも、普段ゲームをプレイする姿を見る機会が少ないアイドルやアーティストが楽しむ姿は、ファンにとってもゲームを知ってみたいと思うきっかけになっただろう。
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スプラトゥーン3 坂道グループ対抗戦は5人×4チームでの総当たり戦
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FIFA 23 影山優佳チームvs 岡崎体育チームはトラブルにより1戦だけの開催で岡崎チームが勝利
また、ライブパフォーマンスも行った7ORDERのメンバーは、インテルブースにてそれぞれが理想とするカスタムPCをさまざまなPCメーカーの協力で製作し、そのパーツ構成や実際にどのように組み上げるかを紹介するブースを展開。単にゲームが遊べるPCを安価に作るということではなく、ライティングやデザインなども含めて好みのカスタムPCを作るという楽しみ方を提案してくれていた。
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7ORDER 萩谷慧悟のオリジナルPC
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展示の裏側にあるブースでは、カスタムPCに使われたパーツによる組み立て体験も
一番のポイントは、彼らが皆ゲームを仕事としてだけでなく、真剣に楽しんでいることが伝わってきたことだ。一般的なイメージとしてアイドルはちやほやされがち、ゲームを知らなくてもいい、という風潮は昔はあったが、嵐の二宮和也やHey! Say! JUMPの山田涼介のように、現在はゲーマーコミュニティも認めるほどの実力者も多い。今回選ばれた吉田、岩本、丹生、十束、yunocyらもまさに実力派だ。
ゲーマーコミュニティの集大成イベントのような「DreamHack Japan」だからこそ、今回のような大規模な音楽とゲームのコラボが実現できたとも言えるだろう。
(4)eスポーツ大会は公式・コミュニティの両方を開催
eスポーツの大会もこの2日間で開催された。最も大きなものは『ブロスタ』の世界大会「Snapdragon Mobile Masters」。賞金総額20万ドルで、モバイルオープンを突破したチームが4つの地域(北米、欧州・中東・北アフリカ、アジア太平洋、インド)から勝ち上がった8組により世界一を決める戦いだ。
会場の中でもこのスペースは圧倒的な“本物感”にあふれ、日本の他の大会ではお目にかかれないような配置だった。円形のステージ中央に選手が円座で対面し、ファンはその外側の席から選手を見守る。通りすがりの来場者には、大きなモニターとその下に選手たちが戦っている姿が見えた。日本からもCrazy RaccoonとHelp Meという2チームが参戦し善戦した。
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Snapdragon Mobile Mastersのステージ。中央に優勝カップが鎮座しており、選手が戦う姿も見られた
実は『ブロスタ』はZETA DIVISIONが世界一に輝くなど、日本では比較的メジャーなタイトルではあるものの、他のタイトルと比べると決して多いとは言えない。しかし世界規模では人気の高いスマホタイトルだ。DreamHackの親会社はESLゲーミングだが、この会社が扱っているタイトルであったというやりやすさもあっただろう(ちなみに、あつかっているタイトルは『アスファルト9』『クラッシュロワイヤル』『クラッシュオブクラン』『FREE FIRE』『モバイルレジェンド: BANG BANG』など、アジアで人気のタイトルが多い)。
さらに、『レインボーシックス シージ』の日本代表チームDONUTS VARRELと韓国チームDplus KIAによる「R6S Dream Showdown 2023」、『リーグ・オブ・レジェンド』の日本リーグ「LJL」への若手登竜門としての大会「LJL 2023 Scouting Grounds」なども行われた。
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LJL スカウティンググラウンズには、LJLのプロやコーチも見守り、アドバイスした
オフィシャルなeスポーツ大会が、会期中に同じ会場で行われたことの意義は大きい。それはつまり、プロもアマチュアも、興味がある人もない人も、同じ会場に集うということだからだ。
日本のeスポーツはまだまだ理解度も浅く、プレイヤーも観客も少ない。きっかけはどのようなかたちでも、eスポーツに触れるチャンスがあることは、ゲーム業界にもeスポーツ業界にも意義がある。
(5)日本独自のゲーセン文化
「DreamHack」という名称のイベントともなれば、嫌が応にも世界的に注目される。そして世界が注目するのは、やはり日本ならではのゲーム文化だ。
日本のゲーマーコミュニティで言えば、eスポーツという言葉が流行する前からあったアーケードゲーム文化が最も印象が強いだろう。いまやeスポーツの一大ジャンルとなった対戦格闘ゲームにおいては、日本は発祥の地であり聖地でもあるからだ。
そして、今回の「DreamHack Japan」では、2つのタイトルの大会が「アクティビティエリア」でそれぞれ丸1日かけて行われていた。13日(土)は「第18回クーペレーションカップ」。今もなお開催され続けている『ストリートファイターIII 3rd Strike』の大会だ。もうひとつは、14日(日)の「第18回VFR ビートトライブカップ」。『バーチャファイター5 ファイナルショーダウン』による3on3の対戦だ。
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クーペレーションカップ
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VFR ビートトライブカップ
この2つの大会はとにかく熱かった。アーケード筐体を持ち込み、台ごとに戦う選手の仲間が後ろから声援を送る姿は、1990年代のアーケードゲーム全盛期を思わせた。
おそらく「東京ゲームショウ」の会場では、20年以上前に発売され、新たな売上が見込めないこれらのゲームの大会を行うことは難しい。「DreamHack」だからこそ実現したとも言える。
この大会のもうひとつの特徴は、プロゲーマーに取り立てて注目するわけではなく、あくまで実力主義のアマチュアたちが主役の大会であったことだ。有名なeスポーツプレイヤーのチームを参加させたり、ゲストに招いて解説させたりせずに、18回の歴史の中で生まれた実力者たちにフィーチャーした、例年どおりのコミュニティ大会だったところに好感が持てた。
(6)インフルエンサー、VTuberなどの存在感
近年、ゲーム業界でアイドルやタレント以上にゲームを生業としているのが、インフルエンサーやVTuberといった存在だ。どのイベントにも必ずと言っていいほど登場し、ゲームや会場を盛り上げてくれている。
彼らの経歴も、元プロゲーマーもいれば、純粋なゲームファンとして配信を始めたなど、ひとりひとり境遇は異なるが、純粋に好きなゲームに対して集まって遊べるというだけで、ファンはそこに集まってくる。
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GALLERIAブースには『LoL』のストリーマー、インフルエンサーに加え、海外挑戦中のEvi選手も登場
中でも日本独自の進化を遂げているのがVTuberだろう。顔出しで自分をアピールする動画が多い海外と違い、日本ではバーチャルYouTuberや、読み上げソフトによる人工音声の動画が当たり前のように存在し、ゲーム配信などでも使われている。TSMに所属する渋谷ハルや、「ぶいすぽっ!」のようにVTuberによるeスポーツタレントも登場しており、もはや独自のジャンルと言ってもいい
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「ぶいすぽっ!」のエキシビションマッチはキャラクターパネルのみの登場ながら、立ち見も埋め尽くす人気に
エキシビションマッチ自体もインフルエンサーやVTuberの存在はもはや欠かせない。個人個人が持っているフォロワー=ファンの数もとてつもないことになっている。さらに、コスプレイヤーたちもイベントに華を添えてくれていた。
アーティストやアイドル、タレントに加えて、これらのゲームが得意なインフルエンサー、VTuber、コスプレイヤーなど、日本独自の進化を遂げた存在たちが、「DreamHack Japan」の特徴とも言えるだろう。
日本をハックする夢のイベントはこれから
正直なところ、普段からさまざまなゲームイベントに参加しているファンからすれば、これぞ「DreamHack Japan」という雰囲気はあまり感じられなかったかもしれない。
しかし、これは海外からやってきた「DreamHack」というイベントと日本が邂逅した最初のイベントでしかなく、初開催の今回だけを見て評価してしまうのはあまりにもったいない。見たいもの、遊びたいゲーム、会いたいアーティスト、欲しいレアグッズがあり、思い思いの楽しみ方で2日間を過ごせる満足感は高かったはずだ。
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公式グッズには、日本の芸術文化を意識した手ぬぐいや花札、浮世絵などをあしらったものも
印象的だったのは、「東京ゲームショウ」では整理券をもらっても1日に数十分しか遊べなかったゲームが、この会場ではかなり自由に遊べたことだ。もちろん、来場者数の違いはかなり大きいが、巨大すぎるイベントよりも手作りイベント感の残る「DreamHack Japan」の方が楽しめたのではないかと思う。
「DreamHack Japan」の歴史はまだ始まったばかり。次回はきっとさらに日本ならではの楽しみ方をファンに提供してくれるはずだ。
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DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA
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