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第2回 全国高校eスポーツ選手権 『リーグ・オブ・レジェンド』部門、N高等学校「KDG N1」が劇的な初制覇!

12月29日(日)、「第2回 全国高校eスポーツ選手権」の『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)部門が、東京・EBiS 303にて開催された。2度目の開催となる最強の高校チームを決めるこの大会は、全国119校から勝ち抜いた4校によるオフライントーナメント。試合は準決勝がBo1方式(1ゲーム先取)、決勝がBo5(3ゲーム先取)で、バン&ピックも国際大会と同様のルールで行われた。

司会は前日に続いてOooda氏、応援サポーターを声優アイドルグループ「22/7」(ナナブンノニジュウニ)の白沢かなえさん、帆風千春さんが務めた。実況はeyes氏、解説はRevol氏という「LJL」と同じコンビ。アナリストは元プロ選手のiSeNN氏、スペシャルサポーターとして自らも『LoL』をプレイしているケイン・コスギ氏が登場した。


今大会に参加するにあたって、開発元のライアットゲームズからすべての選手に10体のチャンピオン(アーゴット、パンテオン、マスター・イー、シン・ジャオ、アカリ、アニー、ミス・フォーチュン、カイ=サ、ユーミ、ブリッツクランク)がプレゼントされた。『LoL』自体は無料で遊べるゲームだが、新たに使えるチャンピオンを増やすためには、プレイすることで貯まる「ブルーエッセンス」もしくは課金(ゲーム内通貨の「ライアットポイント」)が必要だ。部活動として新たにメンバーを集めて、初心者段階から高校生が練習するうえでは、これらの代表的なチャンピオンが最初から使えることは大きなメリットと言える。


eスポーツとしての『LoL』は、世界最大の規模を誇るタイトルのひとつ。世界各国に地域リーグがあり、日本でも「LJL」(League of Legend Japan League)がプロチームによるリーグ戦方式で開催されている。世界大会「World Championship」は毎年10月〜12月頃に開催され、2019年はパリで決勝が開催された。2020年には中東にもリーグが増える見通しだ。


今大会の観戦は、Twitchでの配信のほか、事前登録により無料で観戦可能。会場では『LoL』オリジナルグッズの物販も行われており、各学校の関係者や選手の家族、同級生のほか、一般の『LoL』ファンも来場していたのが印象的だった。



準決勝第1試合:学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校 ネット学習コース「KDG N1」 vs 横浜市立南高等学校「The Grateful Feed」

第1試合は、第1回大会でともにベスト4まで進出している実力者同士の戦い。沖縄県のN高「KDG N1」と、第1回大会で優勝した東京学芸大学附属国際中等教育学校「ISS GAMING」に準決勝で破れた、神奈川県の「The Grateful Feed」がぶつかり合う。どちらもエースがボットレーンで、ADCを育てて試合を動かすのが基本戦略だ。


試合開始直後は、「KDG N1」は相手のトップサイド、「The Grateful Feed」はボットサイドにそれぞれ入り込み、ワーディングを行う。しかし互いにバッティングせずキルが発生しない静かなスタート。序盤のファームは全体的に「KDG N1」が押し気味の時間が続くが、徐々にどのレーンも「KDG N1」がプッシュしてラインを押し上げ、視界を広げながらマウンテンドレイクを獲得。「KDG N1」は2度のリフトヘラルドも獲得し、ボットレーン、トップレーンのタワーを破壊してADCのmarimo選手を強化していく。

序盤の有利を広げた「KDG N1」は、全体的に視界を確保しながら攻め立て、「The Grateful Feed」のミッドのアウタータワーも破壊。「KDG N1」は4つ目まですべてのドラゴンを獲得し、集団戦では4-1トレードで「KDG N1」が有利を取り、そのままバロンナッシャーも獲得。最後は全レーンのインヒビタータワーに同時にプッシュをかけ、ミッドのインヒビター付近の集団戦で「The Grateful Feed」をねじふせた「KDG N1」が、そのまま試合を終わらせた。

「The Grateful Feed」の選手はいずれも2年生だが、進学校ということもあり2020年は『LoL』に打ち込むことが難しいとのこと。1年生以下の後輩もクラブには所属していないため、2020年以降の参戦の見通しは立っていない。しかし、全国119校の中からベスト4まで進出できた実力があることもたしか。「できることなら(来年も)このメンバーで試合には出たい」とリーダーのcalamity選手も語っていたが、彼らの後を継ぐ後輩にもぜひ登場してほしい。

準決勝第2試合:クラーク記念国際高等学校 秋葉原ITキャンパス「Yuki飯食べ隊」 vs 豊田工業高等学校「豊工LOL組」

第2試合は、いずれも準決勝には初進出の2校。「Yuki飯食べ隊」は名前のとおり、元Rascal JesterのYuki選手をコーチに据えて優勝を狙う。対する「豊工LOL組」は中学からの『LoL』経験者に初心者を加えたチームながら、ここまで勝ち上がってきた猛者ぞろいだ。


「Yuki飯食べ隊」は、近接攻撃が得意なミッドのUniguri選手の得意チャンピオンをバン。対して「豊工LOL組」はボットレーンで強力なチャンピオンをバンした。

序盤はミッドレーンでの1vs1から開戦。「豊工LOL組」のuniguri選手のライズが、遠距離からNagabito選手のレネクトンにダメージを与えていくが、一瞬のスキをついてNagabito選手が一気に近づき1キル。さらに戻ってきたところで再度キルを獲得し、ミッドレーンで大きく差をつける。トップレーンでは、ぽんこつ選手のモルデカイザーがMerio選手のオーンを1vs1で落として3-0にリードを広げる。

「Yuki飯食べ隊」はここからミッドを攻め立てつつ、リフトヘラルドをトップレーンに召喚し、ファーストタワーを獲得。一方、ボットレーンは互いに0キルで、CSはほぼ同じままだ。

次に試合が動いたのは、インファーナルドレイクをクラークが獲得したあと。「豊工LOL組」が集団戦を挑むが、逆に全員が返り討ちにあってしまう。トップのモルデカイザー、ジャングルのオラフがしっかり成長し、「Yuki飯食べ隊」がバロンナッシャーのバフと2回目のリフトヘラルドを持ってミッドから攻め込み、そのまま勝負を決めた。

「豊工LOL組」は、不慣れなメンバーを経験者が支えながら、チームワークで強豪を倒してベスト4までのぼり詰めることができた。それこそが、全国高校eスポーツ選手権のアマチュアゆえの面白いところでもある。「豊工LOL組」は全員が3年生で「思い出づくりのために出場した」とリーダーのAjillo選手も強調していたが、「全国高校eスポーツ選手権があったことで、仲間との絆が深まった」とも笑顔で語ってくれた。2020年はそれぞれの道に進む彼らにとって、勝ち負け以上に仲間とともに『LoL』に打ち込んだ日々は、きっとかけがえのない財産になるだろう。

決勝戦:クラーク記念国際高等学校 秋葉原ITキャンパス「Yuki飯食べ隊」 vs 学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校 ネット学習コース「KDG N1」

全国119の高校の中から頂点を決める戦いも、残すところ決勝戦のみ。決勝戦は2試合先取のBo3のため、1戦目の戦いのあとのインターバルで対策を寝ることも可能だ。

「Yuki飯食べ隊」はYuki氏、「KDG N1」は元Rascal Jesterのリールベルト氏がコーチを務めている。奇しくもRascal Jesterでは、リールベルト氏が初代、Yuki氏が2代目のサポートということで、元同僚・サポート・コーチ同士の代理戦争という意味合いもあった。また、いずれも通信制の高校ながらクラーク記念国際は通学が基本、N高は通信が基本と、学習スタイルにも違いがある。自分のペースで学習できるN高の方が『LoL』の練習時間を取りやすいとも言われており、このあたりがどう試合に影響するのかにも注目が集まった。

予選からの幾度もの戦いで、お互いの手の内は見せ合っている。どちらが勝ってもおかしくない、文字通りの日本最強を決める戦いとなった。

ゲーム1:「KDG N1」がメンバーチェンジで「Yuki飯食べ隊」の出鼻をくじく

そんな注目の1試合目、「KDG N1」は今大会唯一の女性選手であるshakespeare選手をサポートに投入し、サポートのPrimo選手がミッドに移動して、相手の情報を撹乱させる戦略に出る。大会数週間前にメンバー入りしたというshakespeare選手の情報は非常に少なく、まさに意表をつく展開だ。


いよいよ始まったゲーム1、両チームともに、マップ全体の把握能力が高く、常に視界の取り合いをしながら、甘い動きをすると一瞬で倒しにいくような、緊張感のあるプレイが続く。


「KDG N1」は序盤からドラゴンを重視し、4つのドラゴンによる試合中永続する強力なバフを得る。「Yuki飯食べ隊」は強力だが時間で切れるエルダードラゴンを獲得して、一時的ながら勝負ができる体制を整えていく。


しかし、「KDG N1」はエルダードラゴンのバフが切れるまで待ち、「Yuki飯食べ隊」がバロンナッシャーを狙っている間に、ボットレーンからカウンターアタック。常にネクサスの破壊を意識した「KDG N1」がゲーム1を勝利。47分もの長時間の試合を制して、王手をかけた。

第2ゲーム:集団戦で勝ち切った「KDG N1」が2連勝!


第2ゲームは、またまた「KDG N1」がメンバーチェンジ。抜けていたWhiteandPink選手が再びミッドに入り、Primo選手がサポートに戻った。


「KDG N1」はスタート直後、相手陣地内に潜んで有利をつかもうとする。しかし逆に「Yuki飯食べ隊」の返り討ちにあい、最序盤で2キルを取られてしまう。その後も、「Yuki飯食べ隊」が押し気味の試合が続くが、集団戦ではなかなか「KDG N1」に勝てない。


試合が動いたのは22分すぎ。攻撃力のバフを受けられるインファーナルドレイク前の攻防で、「Yuki飯食べ隊」はミッドのインナータワーに狙いをシフトし、タワー重視の戦略に切り替えていく。ただ、その後のドラゴンを狙う集団戦では「KDG N1」が勝利し、その後の集団戦も「Yuki飯食べ隊」はあと一歩のところで倒しきれない。


最後はボットのインナータワーを狙う「KDG N1」を「Yuki飯食べ隊」が囲んだものの、勝利したのは「KDG N1」。そのままネクサスを破壊し、「KDG N1」が全国高校eスポーツ選手権初優勝を成し遂げた。


優勝した「KDG N1」には、日清カップヌードル1年分、ライアットゲームズからゲーム内通過のライアットポイント(RP)5万ポイント、サードウェーブ株式会社からノートPCが贈呈された。

世界最大のeスポーツタイトルに、高校生から触れられる意義

優勝した「KDG N1」の強さは、個々の選手の努力の賜物であったことは疑いようがない。それ以外に、元プロ選手からのコーチングを受けたこと、練習時間が他校と比べて十分に取れることなど、条件面がよかったことも確かだ。

ただ、いずれの選手に聞いてみても『LoL』の経験年数は3年程度だ。つまり、全国高校eスポーツ選手権は、中学生時代もしくは高校に入ってからでも十分に間に合う。これは、ベスト4まで残ったチームではほぼ同様で、中には数カ月〜1年程度しか経験がない選手もいた。フィジカルスポーツのように幼少期からやらなければ才能や努力が実らないスポーツではない。

その一方で、選手権で優勝を狙おうと考えると、やはり個人個人の実力差・知識差が現れやすいタイトルでもある。今回優勝した「KDG N1」は、サポートメンバーを含めてマスタークラス以上の選手が3人存在しており、他のチームと比べても実力の高い選手が揃っていた。そして、その選手が的確な指示や判断を下せることが、試合を勝利に導く上では大きなポイントとなる(余談だが、Sengoku Gamingに加入して話題になった、元SKT T1のBlank選手がプロ初出場したのは17歳。今回優勝したN高校の選手たちと同じ年の時だ)。

全国高校eスポーツ選手権が今後も定着していけば、若くて実力のある選手がどんどん育っていく。それは国内リーグの活性化にもつながり、世界で活躍できる日本人選手の育成という観点からも意義深いことだ。若い才能を発揮でき、eスポーツのさらなる発展と人材育成につながる全国高校eスポーツ選手権が、2020年以降も長く継続し、新たな選手を発掘する場となってくれることを願ってやまない。



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第2回 全国高校eスポーツ選手権 リーグ・オブ・レジェンド部門
https://www.ajhs-esports.jp/final/lol_final.html
全国高校eスポーツ選手権のTwitchチャンネル
https://www.twitch.tv/ajhs_esports
リーグ・オブ・レジェンド
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