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【PAXオーストラリア2016リポート】インディーならではの挑戦にあふれたVRゲーム群

主要デバイスが出そろい、いよいよ普及期をむかえたVRゲーム。年末商戦を迎えて、全世界でユニークなタイトルが続々と発売されている。中でも市場を牽引しているのがインディーゲーム開発者たちだ。11月4日から6日までメルボルンで開催された「PAXオーストラリア2016」でも、インディーコーナーの「PAXライジング」で、オーストラリアとニュージーランドのゲームを中心に、約10作品がデモ展示された。その中から注目のゲームを紹介する。

HTC Viveでの出展が中心だった「PAXライジング」エリア

VRゲーム自体のデモは大手ゲーム会社やPCベンダーのブースでも見られた。しかし、その多くは発表済みタイトルのデモや、ハードウェアのデモ用途としての出展だった。そのため、もっとも先進的なタイトルが並んだのは、PAXライジングだったといえる。また、大学や専門学校のブースでも、学生が制作したVRゲームの展示に力が入れられていた。

歩行型VRデバイス「オムニ」もHTC Viveでデモが行われていた

RazerブースではオープンソースのVR HMD「OSVR HDK2.0」のデモも見られた

会場では約9割のデモがHTC Viveで行われていた。製品が比較的入手しやすいのと、主要ゲームエンジンに対応したSDK(開発キット)が公開されており、開発しやすいのが原因だという。ただし、デモの中には他機種への移植を容易にするため、あえてHTC Viveの特徴であるルームスケール機能を使用しないものも見られた。

オンラインマルチプレイヤーVRゲーム『A Township Tale』の衝撃

クライアントはUnity、ネットワークエンジンは自社開発だ


出展作の中でも世界中のメディアから絶賛されたのが『A Township Tale(ア・タウンシップ・テイル)』(ALTA、シドニー)だ。いわゆるVRアバターチャットで、最大20人規模でのオンラインマルチプレイ体験ができるという。VRゲームはちょっとしたラグやフレームレートの低下が「VR酔い」につながるため、オンラインゲームに向きにくい題材だ。こうした中、いち早くデモを出展した点が高評価に繋がったといえる。

ゲームはHTC Vive専用で開発されており、プレイヤーはファンタジー世界の住人になってアバターを操作し、さまざまなアクティビティができる。つるはしや斧をふるう、弓矢で射る、石を拾い上げて投げる、お手玉をする、盾をつけるなどだ(何に使うか不明だが、カラオケのマイクもあった)。村は海岸、草原、山、鉱山などで構成されており、ワープ方式の移動によって丘に登り、村を見下ろすと、その眺望に達成感すら覚えるほどだ。

ブラジル出身でクライアント担当のプログラマー

デモでは会場内の別のPCとインターネットで結ばれ、スタッフとゼスチャーによるインタラクションができた。製品版ではボイスチャットも可能になる予定で、狩人や鉱山夫など、さまざまな職業が選択できるという。現状のVRゲームはデバイスの装着感などの問題から、長時間プレイには向かないとされがちだ。しかし、本作がオンラインゲームの新たな地平を切り開くのは確実なように感じられた。

VRゲームによるストーリー体験の可能性『Kept』

ゲームエンジンにはUnreal Engine 4が使用され、幻想的な世界観が演出されている

ファミコンの普及にRPGが必要だったように、VRゲームにもストーリー要素が必要だ。実際にVRならではのストーリー体験や、そのための文法とは何か、全世界で模索が続いている。こうした中、社名にまで「ストーリーが1番、技術が2番」を掲げて開発が続けられているのが、HTC Vive専用ゲーム『Kept(ケプト)』(S1T2、シドニー)だ。

デモではアドベンチャーゲームなどによく見られる、森の中にある古い祭壇での夜間イベントが体験できた。はじめに蛍のように夜空を飛び回るパーティクルを瓶に入れる。次に祭壇の周りにある4つの石碑を瓶で触れ、起動させていく。すべて起動させると床の模様に従って縦穴が開くので、瓶を落下させる。すると底から大量のパーティクルが噴出し、夜空に向かって舞い上がる・・・というものだ。

このように文字で書くと「よくあるイベントの一つ」となってしまうが、実際にVR世界で体験すると鳥肌ものの感動が味わえた。これにはチュートリアルや文字などの情報が一切なく、すべてプレイヤーの行動に委ねられていたにもかかわらず、自然にクリアできた点も大きかったといえる。ゲームは1本25分程度のエピソード単位で販売され、第1弾は2017年に配信が予定されている。

瓶を掲げてパーティクルを収集しているところ。後ろにケーブルを持つ開発者が見える

1950年代のアメリカをパロディにした『The American Dream』

アメリカ風のディストピアな世界をテーマパークのライドで体験するという設定だ

会場で数少ないOculus Rift(オキュラス・リフト)を使用したデモで、異彩を放っていたのが『The American Dream(ジ・アメリカン・ドリーム)』(Samurai Punk、メルボルン)だ。ゲームはテーマパークのアトラクションを楽しむようなスタイルで、自動的に移動するライドに乗り、それぞれのエリアで「算数の問題を解く」「ドーナツ工場で働く」などのミッションをこなしていく。唯一現実と違うのは、すべて二丁拳銃をぶっ放しながら行うことだ。

デモはOculus Touch(オキュラス・タッチ)を用いて行われた

拳銃はコルトガバメント風の外観で、算数の問題は答えを打ち抜く、ドーナツ工場では拳銃で素材の穴を開けるといった具合。ベビールームでは銃口の先についたベビーフードを、実際に顔を近づけて食べるなど、かなり皮肉の効いた内容になっている。アメリカでトランプ政権が発足する中、本作の描くディストピアなVR体験はさらに注目を集めそうだ。

開発スタジオのSamurai Punkは4画面分割対戦FPSの『Screencheat』で一世を風靡したインディーだ。現在Oculus Rift(要Oculus Touch)、HTC Vive、PlayStation(プレイステーション)VRの3デバイス向けに開発が進んでいる。

©ALTA
©S1T2 2016
Copyright Samurai Punk 2016. All rights reserved.

■関連リンク
ALTA
http://altavr.io/
『A Township Tale』
http://townshiptale.com/
Unity内での紹介ページ
https://madewith.unity.com/games/a-township-tale

S1T2
https://www.s1t2.com.au/
『Kept』
https://www.s1t2.com.au/our-work/virtual-reality/kept-vr
開発者ブログ
https://www.s1t2.com.au/blog/virtual-reality/kept-virtual-reality

Samurai Punk
http://samuraipunk.com/
『The American Dream』
http://samuraipunk.com/the-american-dream/
Screencheat
http://store.steampowered.com/app/301970/

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