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【E3レポート】「IndieCade」と「MIX」:2つのインディーイベントに見る2017年の注目作

アメリカ・ロサンゼルスで開催された世界最大級のゲーム見本市「E3」において出展されるのは、AAAタイトルのゲームだけではない。業界関係者が一堂に集まる機会を活かし、会場の内外でさまざまなインディーゲームの紹介や売り込みが行われている。ここでは「IndieCade」「MIX」の注目タイトルを紹介する。

もうひとつの「E3」~「IndieCade」


「IndieCade」は2005年に創立されたインディーゲームのコミュニティで、毎年秋に「IndieCade Festival」というイベントを主催している。これは新作ゲームのデモや講演、ワークショップ、アワードなどが行われるインディーゲームの祭典で、2017年度は10月6日から8日までアメリカ・ロサンゼルスの「Japanese American National Museum」「Japanese American Cultural & Community Center」「National Center for the Preservation of Democracy」の各地で開催が予定されている。

これらイベントのほかにも、「IndieCade」は毎年「E3」でも特設ブースを出展している。今年も34作品(うち6作品は協力企業タイトル)がデモ展示され、「もうひとつのE3」として存在感をアピールしていた。展示された大半がPCゲームで、参加者もアメリカからだけでなく台湾やエクアドルからなど、世界中に及んでいた(残念ながら日本からの参加者は見られなかった)。


『Delphyq』(Beyond Red Wave Arts)


『Delphyq』はリアルタイムストラテジーの要素を取り入れたタクティカルゲームだ。プレイヤーは特殊部隊の隊長となり、任務にあわせて隊員を選択し、パーティを組んでミッションを遂行していく。移動指示はマウスで行い、任意に時間を止めたり、進めたりできる。これにより最適なポジションをとりながらマップ上を移動し、敵を攻撃して殲滅していく仕組みだ。

開発者によると「『XCOM』『バルダーズ・ゲート』そしてオリジナル版『レインボーシックス』などに影響を受けた」という。「非常にニッチだが、それだけに熱心なファンがいるジャンルで、彼らが本当に好むゲームを届けたい」という思いで開発が進行中だ。また、MMORPGやCO-OPプレイが全盛の中、シングルプレイに特化することであらためて1人用の良さを提示したいという。


本作において、こだわりのひとつとして挙げられるのが世界観とストーリーだ。具体的には、三大勢力に分割支配された近未来の地球で、プレイヤー率いる特殊部隊はそのどれにも所属しない独立勢力として、さまざまなミッションをこなしながらストーリーを進めていくという。STEAMではGreenlightに選ばれており公式サイトではプレアルファ版のデモを公開中だ。


『BORDERS』(Macua Studios)


メキシコ=アメリカ間の国境のうち、約1/3の以上を占めているのが国境の壁である。一続きの構造物ではなく、比較的短距離の物理的な壁の総称であり、アメリカ国境警備隊によって監視されるセンサーとカメラによる仮想フェンスの間に設置されている。2017年現在、アメリカ大統領 ドナルド・トランプ氏の政権により、「通過不可能な具体的な障壁」の建設計画が進められている。

これをテーマとしたアクションゲームが『BORDERS』で、本作の背景にあるのがメキシコからの不法移民問題だ。本作を制作したのは、GONZALO ALVAREZ氏。彼の両親はメキシコから米国へ移住しており、両親が彼に伝えた話が本作に影響を与えているという。


プレイヤーは主人公の移民を操作して、国境巡回兵をかいくぐりつつ、国境を越えようとめざしていく。ただし、そのままでは体がひからびてしまうので、ステージ上に配置された水アイテムを適時、取得する必要がある。シンプルな内容ながら、何度も繰り返して遊んでしまうのは、ゲームの背後に自分(製作者)のルーツを知りたいというメッセージ性が感じられるからだろう。本作は現在ドネーション(寄付)ウェアとして公式サイトで配布中だ。


『返校(Detention)』(Red Candle Games)


台湾は日本人にとって、異国ながらもどこか懐かしさを感じさせる不思議な国だ。それだけに、台湾インディーによるホラーゲームは日本人にとって特別な意味を持ちうる。それが1960年代の戒厳令下が舞台となると、なおさらだ。『返校(Detention)』はそんな、日本人にとって特別な意味を持つゲームになっている。

制作者みずから『クロックタワー』『サイレントヒル』といった国産ホラーゲームに影響を受けたという本作は、オーソドックスな横スクロールのポイント&クリックアドベンチャーだ。プレイヤーは女子高生となって悪霊の徘徊する学校を探索し、脱出をめざしていくのだが、台湾の文化や怪談がそこかしこに散りばめられており、独特の魅力を放っている。


ゲームの主要な舞台である高校は日本統治下に建築された建物だ。他にも黒電話や机・椅子など、見慣れたアイテムが登場する。その一方で漢字だらけのポスターや独特な記号が並ぶ視力検査表など相違点も多い。そしてゲーム中に見え隠れする「先の大戦」の影。日本人だからこそプレイしたい内容だ。

現在STEAMにおいて英語版と中国語版が配信中だが、日本語ローカライズも企画されている。もっとも構文は比較的シンプルで、パズルの難易度も低めなので、英語の勉強のつもりでプレイしてみるのもいいだろう。


インディーゲーム開発者向けのデモパーティ~「MIX」


全世界で星の数ほどもあるインディーゲーム。優れたゲームでもタイトル群の中で埋もれてしまい、なかなか光が当たらないのが実情だ。

こうした現状を打開するために、2012年にスタートしたイベントが「MIX(The Media Indie Exchange)」だ。タイトルどおりメディアとインディーゲーム開発者をマッチングするデモパーティで、第1回は海外ゲームメディア大手の「IGN」によって主催された。その後、全米の主要イベントに時期をあわせて開催され、2015年からは「E3」版もスタートした。

「MIX」の特徴はインディーゲーム関係者の交流やコミュニティ作りが重視されていること。会場にはゲームに加えてアルコールや軽食なども用意されており、参加者はカジュアルな雰囲気でゲームが楽しめる。もちろんメディアも多数参加しており、会場のそこかしこでインタビューやプレイ取材が行われていた。


『Aegis Defenders』 (GUTS Department)


『風ノ旅ビト』陳星漢氏らをはじめ、数々の名作インディーゲームの苗床となってきた南カリフォルニア大学。『Aegis Defenders』を開発中のGUTS Departmentもまた、同校の学生が中心になって作られたインディースタジオだ。ゲームはバートとクルーのコンビが主人公の2Dプラットフォーマーで、操作キャラクターを適時切り替えながら敵を攻撃したり、パズルを解いたりしつつ、ゲームを進めていく。




本作の特徴はゲーム内容もさることながら、ジブリアニメを彷彿とさせる世界観やグラフィック、そしてキャラクターだ。ゲーム画面ではわかりにくいが、イメージボードやイベントシーンでは「少女と中年男性が古代文明の遺跡を探索する」という、おなじみのモチーフが確認できる。


ゲームデザイナー兼アーティストのBryce Kho氏いわく「子どもの頃から日本アニメを見て育ったので、日本は特別な国。ぜひリリースしたら遊んで、感想を聞かせて欲しい」とのこと。2017年の発売をめざして、現在開発が進められているところだ。

『Riverbond』(Cococucumber)


『Riverbond』はすべてがボクセルで表現された俯瞰視点の3Dアクションアドベンチャーだ。本作の世界はブロックの組み合わせでデザインされており、マップ上のオブジェクトは原則としてすべて破壊できる。ゲームシステムは移動・近距離攻撃・遠距離射撃・特殊攻撃からなるオーソドックスなもので、オブジェクトをつかんで投げることもできる。開発はカナダ・トロントに拠点を置く2人組のインディーユニット、Cococucumberだ。


シングルプレイだけでなく、最大4人までのCO-OPプレイにも対応している。武器を振り回して敵やオブジェクトを破壊したり、息の合った連携プレイで強敵を倒していったりするのは純粋に楽しい。開発者曰く『Bastion』や『Castle Crashers』などに影響を受けたとのことで、詳細は明かされなかったが、ナラティブを意識したストーリー要素も存在するという。

また、本作は2017年5月に京都市勧業館みやこめっせで開催された「A 5th of BitSummit」にも出展しており、「日本のゲーマーにもよろしく」と挨拶された。リリースは2018年を予定しており、今後の完成度向上やイベント出展などに期待したいタイトルだ。


『Golf for Workgroups』(Cryptic Sea)


最後に紹介するのは未来のゴルフゲーム『Golf for Workgroups』だ。パブリッシャーは2Dジャンプアクション・シューティングゲームの『Downwell』で知られるデボルバーデジタル。ユニークかつハイクオリティなゲームを好んで扱う同社のタイトルだけに、本作もまた一筋縄ではいかない怪作となっている。

本作の特徴を一言で説明すると「ロボットを操作してプレイするゴルフゲーム」だ。最初に断っておくと、ロボットを操作する必然性はどこにもない。一応オンラインで最大4人まで対戦できる機能がある。ただし、デモ版では飛距離に応じてクラブを変えるオプションがないので、戦略性は通常のゴルフゲーム以下だともいえる。しかし、それらを差し引いて余りある「味」があるのだ。


そして、本作のポイントは「ロボットの奇妙な動きと、それによって生まれるおかしさ」だ。開発チームによるとゴルフゲームが作りたかったわけではなく、物理空間でロボットの動きを再現したかったのだという。そうして作り上げていくうちに、気がつくとゴルフゲームになっていたというわけだ。なるほど、その説明ですべてが腑に落ちた。自分たちの好きを突き詰めた結果誕生した、実にインディーらしいゲームになっている。

本作はすでにSTEAMで早期アクセスタイトルとして公開中だ。ぜひチェックして、制作者の「ロボット愛」を感じて欲しい。


日本の「A 5th of BitSummit」や「デジゲー博」などと同じく、世界中でこうしたインディーゲームの展示イベントが開催されている。今回紹介した「IndieCade」や「MIX」も氷山の一角にすぎない。ただひとつ残念なのは、ほとんどの海外イベントで日本のインディーの姿が見られないことだ。インディーゲーム開発者にとって、共通言語は英語ではなくゲームだ。開発中のタイトルを互いに見せ合うことができるのは、インディーゲームならではの特権でもある。ぜひ1作でも多くのインディーゲームが海を越えて、こうしたイベントに出展してほしいと願っている。

■関連リンク
IndieCade
http://www.indiecade.com/
『Delphyq』
http://www.delphyq.com/
『BORDERS』
https://gonzzink.itch.io/borders
『返校(Detention)』
http://redcandlegames.com/detention/?lang=jp
Steam『返校(Detention)』のページ
http://store.steampowered.com/app/555220/Detention/
MIX
http://www.mediaindieexchange.com/
『Aegis Defenders』
http://www.aegisthegame.com/
『Riverbond』
https://cococucumber.co/home/riverbond/
Steam『Golf for Workgroups』のページ
http://store.steampowered.com/app/572160/Golf_for_Workgroups/

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