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【WePlay2017】中国で急速に盛り上がるインディーゲーム熱、その震源地をレポート

オンラインゲーム大国という印象が強い中国ゲーム業界。しかし、ここ1、2年でインディーゲームのムーブメントが急速に高まってきた。2017年10月28日・29日に上海で開催された「WePlay Game Expo」(主催:中国独立遊戯連名/China indie Game Alliance/CiGA)では、国内外から様々なインディーゲームが展示され、その象徴ともいえるイベントとなった。

「WePlay」2017会場ではPS4の試遊台が目立った

コンソール機とSteamで育った中国インディーゲーム開発者たち

「WePlay」を主催するCiGAは、2015年に北京で設立されたインディーゲーム開発者のための業界団体だ。年に1度、展示会を主催するだけでなく、各地の大学などと連携し、ゲームジャム(参加者が即席チームを組み、数十時間でゲームを開発するイベント)を開催するなどして、開発力の底上げを行っている。会場にもゲームジャムで制作されたゲームが出展され、着実な成長が感じられた。

もっとも、中国でオンラインゲームが急成長したのは、国策で家庭用ゲームの販売が禁止されていたことと、海賊版市場の存在で、オンラインゲームしかビジネスが成立しなかったからだ。しかし2014年から2015年にかけて、PS4とXbox Oneの国内発売が認可されたことで、風向きが変わってきた。「大学生や20代のゲーマーがとびつき、パッケージゲームへの関心が高まってきた」のだという。

ただし、ゲーム機と違い、ソフトの発売には当局の審査が必要で、タイトル不足が続いている。この隙間を埋める形で急成長したのが、PCゲーム配信プラットフォームのSteamだ。中国において、現状ではSteamを介したゲームの売買はグレーゾーンで、規制は存在しない。そのためゲームに飢えたユーザーがSteamでPCゲームをプレイ。その中からインディーゲーム開発者が生まれてきたというわけだ。

17名のうち7名が北米からのゲスト講演者

「WePlay」に先立ち、参加者300名前後を集めて10月27日に開催されたゲーム開発者会議「CiGA Developers Conference」でも、その熱気は感じられた。国内外から17名のインディーゲーム開発者が登壇し、ゲーム開発のふり返りやノウハウの共有が行われた。登壇者のうち7名は北米からのゲストで、インディーゲーム先進国・地域にあたる北米の事例を学ぼうという姿勢が感じられた。
事実上の基調講演をつとめたのは、新作VRゲーム『LUNA』の開発事例を紹介したロビン・ハニッケ氏だった。『LUNA』はプレイヤーが神様となり、星座から創り出した動植物を配置して箱庭世界を作り上げていくという内容。過去に『風ノ旅ビト』の開発にも参加したロビンは、『LUNA』の開発に5年間をかけたと語り、折り紙を用いたプロトタイプ制作からスタートしたとあかした。

福建省廈門市にスタジオを構えるVeewo GamesのYop氏による講演も興味深いものだった。同社はスマホゲーム『Super Phantom Cat』シリーズでブレイクしたインディゲーム会社だ。Yop氏は同じ横スクロールアクションゲームである『スーパーマリオ』シリーズとの比較を通して、ゲームのオリジナル性について自説を述べ、コピーや海賊版制作を批判した。

台湾からの講演者も1名みられた。1950年代の台湾を舞台としたホラーアドベンチャーで、世界的なヒットを記録した『返校(Detention)』の開発元、RedCandleGamesで宣伝広報を担当するティフ・ルイ氏だ。講演テーマは「中文ゲームの英語ローカライズ事例」で、自分たちのゲームをワールドワイドで展開したいという、主催者側の意欲が透けて見えた。

CiGA Developers Conference会場とVeewo GamesのYop氏

中国の歴史や文化をもとにしたゲームも登場

翌日から開催された「WePlay」も熱気に包まれた内容だった。会場のEVER BRIGHT CONVENTION & EXPO CENTERの敷地面積は、およそ幕張メッセの1ホール分といったところで、奧に巨大なイベントステージを設置。その周囲を中国ゲームメディアやパブリッシャーのブースが囲み、PCゲームや家庭用ゲームの試遊が行われた。展示はPS4が主流で、発売前のニンテンドースイッチもみられた。

外縁部を取り囲んだのは国内外のインディーゲームブースで、京都で開催されるインディーゲームの祭典「BitSummit」から、日本のインディーゲーム開発者による出展もみられた。他にVRゲームの体験コーナー、インディーゲームのアワード受賞タイトル53作品を展示紹介するエリア、ゲーム系出版社の書籍・グッズ販売コーナー、さらにはアナログゲームの即売会&試遊スペースもあった。

このほか、ゲームクリエイターのサイン会や握手会が行われるコーナーでは、日本からヨコオタロウ氏・五十嵐孝司氏・山岡晃氏が登壇。会場には数多くのファンが詰めかけ、人気ぶりを感じさせた。初日のラストにはファミコンゲーム『忍者龍剣伝』シリーズをプレイしながら、BGMをギタリストが演奏するパフォーマンスも行われ、中国ゲーム文化の成熟ぶりが感じられた。

『忍者龍剣伝』シリーズのデモプレイとBGM演奏で盛り上がるステージ

驚かされたのは、中国インディーゲームのクオリティの高さだ。特に学生作品やゲームジャム発祥タイトルは、日本のクオリティを凌駕していた。また、日本のゲームがそうであるように、多くのタイトルはSFやファンタジーを題材としており、言われなければ中国産タイトルと気づかないほどだった。その一方で台湾作品『返校』と同じく、中国本土やアジア圏を題材とし、文化を掘り下げたタイトルもみられた。

中でも興味を惹かれたのが日本占領下のアジアを舞台とした2人用アドベンチャーゲーム『Whispers From The Strawdog』だ。1人は日本人の憲兵、もう1人はアジア人の女性囚人を操り、ストーリーを進めていく。キャラクターが操り人形になっており、人形劇のようなスタイルが特徴だ。米ロサンゼルスで活動中の中国系学生ユニット、Pet Me Gamesによって開発されており、リリースが期待される。

『Whispers From The Strawdog』(開発中のスクリーンショット)

外資系企業への規制は繰り返されるのか?

主催者側は参加者総数をあきらかにしていないが、会場を見る限り大成功に終わったと感じられた「WePlay」。未定ながら、主催者側では2018年度も開催を予定しているようだ。前述のように中国におけるインディーゲーム熱はSteamの存在が大きい。周知の通りGoogle、Facebook、Twitterなどの使用が規制されている中国で、Steamは欧米ゲーム文化を伝える数少ないチャネルのようにも感じられる。

一方、会場内で聞かれたのが、Steamと同様の機能を持つ中国産デジタル流通プラットフォームの成長だ。その筆頭が中国最大手のパブリッシャー、テンセントが運営する「Tencent WeGame」だ。90タイトル以上のゲームを配信し、登録ユーザー数は2億人、DAUは3300万人以上を数える。日本からもセガゲームスがシミュレーションRPG『戦場のヴァルキュリア』供給を表明している。

中国では当局の規制がビジネスに大きな影響力を持ち、Steamの中国展開も将来性は不透明だ。実際、中国では国内事業者の産業育成を名目として、これまで何度も外資系企業の規制が行われてきた。しかし、こうしたチャネルを閉鎖すると、中国のインディーゲーム開発者にとっても、海外展開の手段が失われることになる。国内事業者と外資系企業が競い合い、産業の成長に繋がることを期待したい。

中国本土そして台湾の若いインディーゲーム開発者たち。今後の成長と国際的な活躍が期待される

■関連リンク
WePlay Game Expo
http://en.weplaymore.com/
『Whispers From The Strawdog』 
https://connect.unity.com/p/whispers-from-the-strawdog
ブログ「【ゲーム開発】中国人のsteamユーザーにゲームを買わせる方法とは。」
http://gamesaved.hateblo.jp/entry/howto-sell-steam-game-for-chinese

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