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LJL唯一の日本人コーチ・Lillebeltが語る引退と転身のすべて【Rascal Jesterインタビュー・前編】
eSportsという言葉もよく耳にするようになり、プロゲーマーを目指す選手も着実に増えつつあります。
しかしここへきて不足ぶりが目立ってきたのが、コーチでしょう。
『League of Legends(LoL)』の日本最高峰リーグ「League of Legends Japan League(LJL)」に参戦する6チームの中でも、日本人がヘッドコーチを務めているのは1チームしかありません。
その人物こそ、Rascal Jester(以下、RJ)のLillebelt(リールベルト)コーチです。2014年のLJL開幕以前からRJで選手として活躍し、2016年の春をもって引退、1年の充電期間を経て2017年からRJのコーチとしてチームをまとめています。
リールさん(そう呼ばせてください)が育てたチームは、2017年にLJLで「最も成長したチーム」と呼ばれ、選手たちのポテンシャルとともにリールさんのコーチとしての手腕を証明しました。そこで今回はリールさんに、プロゲーマーという仕事、そしてコーチという仕事についてお話を聞いていこうと思います。
Lillebelt:『LoL』は7年前、一緒にFPSをやっていたメンバーに「面白いゲームがあるよ」って誘われてはじめました。最初は相手が格上ばっかりで、一方的にやられるだけで全然面白くなかったんですけど(笑)、だんだん「自分がうまくなる瞬間」みたいなのがわかってきたんですよね。そしたら一気にハマりました。
――たしかに、『LoL』は上達の手応えを細かく感じやすいゲームですよね。そこからプロまではどんな経緯だったんでしょう。
Lillebelt:レートも上がってきたころに、今もUnsold Stuff Gaming(USG)でプレーしているapaMENとかが、チームを作ろうって誘ってくれたのがRJの最初の形です。そのチームでいろんな大会で成績を残していたら、LJLに招待チームとして参加させてもらえることになって、プロという形になりました
――プロゲーマーになる、というのは当時を思い出すとどういう感覚だったんですか?
Lillebelt:「LJL」で僕らはプロとして尊重してもらっていたんですけど、最初はまだみんな働きながらという状況で、実感がなかったのが正直なところですね。そこから徐々にゲームに専念できる状態が整って、やっと自分たちはプロなんだな、と。
――プロとしてやっていこう、という決断は迷いましたか?
Lillebelt:年上のメンバーには迷っていた人もいましたけど、僕は結構前向きでした。将来的に長く生きていけるとは思わなかったけど、1年でも2年でもそれだけでやっていけるならありなのかな、って。
――そして、もう5年くらい経ったわけですね(笑)。あの時プロになってよかったと思いますか?
Lillebelt:いま考えてもすごくいい決断でした。物事に対する考え方もそうだし、何かをグループでやることもそうだし、本当にいろんなことを学べたので。一時期、日中は会社員として働きながらプロゲーマーをしていました。企業で働くことで身に付いたことも多いので、自分の基本はあの時期にできたと思います。
――会社員として働くことが、プロゲーマーの世界で役に立ったりするんですか?
Lillebelt:めっちゃ役立ちますよ。特に印象に残っているのは当時の上司で、アルバイトが多い部署を効率的に上手に回していた方ですね。プロゲーマーも言っちゃえば自制心が弱い選手も多いから(笑)、若い人たちをまとめるというところが共通しているのもあって、その時の仕事の進め方なんかは今も参考にしています。僕が話し合いとかをまとめるようになって、だいぶマシになったとは思いますね。
――会社員も経験したうえで、プロゲーマー特有の楽しいところってどんなところだと思いますか?
Lillebelt:これは僕個人の意見ですけど、実は楽しい部分は普通のプレーヤーの方と同じだと思っています。楽しい瞬間ってだいたい、勝てたときか、成長を実感できた時。去年のRJを見てもらったらわかる通り、10回のうち2、3回くらいしか勝てていません。でもそれはリーグが始まる前から覚悟していたことで、そのぶん「どう成長するのか」というゴールを常に出すことを意識していました。
――たしかに、2017年を通じてRJの変化は他のチーム以上のインパクトがありました。
Lillebelt:一個一個クリアできるレベルを設定して、それを乗り越えてきたつもりです。だから負けていても雰囲気は悪くなかったんですよ。自分たちは成長している、勝ちに近づいているっていう実感があれば、モチベーションは上がるんです。自分がプレイヤーだった頃に、成長する方法も勝つ方法もわからない状況をガッツリ経験しているので、どうなるとチームが崩れるか、というのもわかりますし。
Lillebelt:それもあります。ただそれ以上に大きかったのが「コーチって大事だな」と思ったことです。僕も現役だったころに韓国人コーチがチームについたことがあって、そのときは選手とし充実していたし、成長も感じられたんですよね。でも彼らがいなくなった時に、じゃあ僕がやるしかない、と。選手とコーチを兼任するのは絶対に無理だとわかっていたので、専任という形で。
――そして1年間解説者として活動したあとに、現場へ戻って来た、と。
Lillebelt:コーチって本当に、いるだけで全然違うんですよ。コーチの中にもレベルとかクオリティとかもちろんあると思うんですけど、いるかいないかの違いは本当に大きい。「面倒だけど役に立つこと」ってゲームに限らずあるじゃないですか。それを選手に実行させるのが仕事の人が入るので。
――選手生活に未練はありませんでしたか?
Lillebelt:いまも練習で現役選手たちに混ざることもあるんですけど、レーニングだけなら勝つんですよ(笑)。でも、復帰はさすがに考えていません。モチベーション的にも実力的にも、さすがにトップシーンで戦うのはしんどいですね。ただ……。
――ただ……?
Lillebelt:もう少し遅く生まれていたらどうなっていたかな、と思うことは正直あります。僕らが選手になった時期よりも今はずいぶん環境が整ってきましたし、5年後ならもっと選手にとっていい環境になっているはずですよね。考えても仕方ないですけど、そういう気持ちはなくはないです。でもまぁ、あの時期だったから経験できたこともありますし、それを今後に生かしていこうかなと思います。
後編では、コーチとしての仕事、そしてLillebeltさんが考える今後のキャリアについて伺います。
<後編に続く>
■関連リンク
Rascal Jester
http://rascaljester.com/
Rascal Jester Lillebelt プロフィール
http://rascaljester.com/teams/lillebelt/
League of Legends
https://jp.leagueoflegends.com/ja/
League of Legends Japan League(LJL)
https://jp.lolesports.com/
しかしここへきて不足ぶりが目立ってきたのが、コーチでしょう。
『League of Legends(LoL)』の日本最高峰リーグ「League of Legends Japan League(LJL)」に参戦する6チームの中でも、日本人がヘッドコーチを務めているのは1チームしかありません。
その人物こそ、Rascal Jester(以下、RJ)のLillebelt(リールベルト)コーチです。2014年のLJL開幕以前からRJで選手として活躍し、2016年の春をもって引退、1年の充電期間を経て2017年からRJのコーチとしてチームをまとめています。
リールさん(そう呼ばせてください)が育てたチームは、2017年にLJLで「最も成長したチーム」と呼ばれ、選手たちのポテンシャルとともにリールさんのコーチとしての手腕を証明しました。そこで今回はリールさんに、プロゲーマーという仕事、そしてコーチという仕事についてお話を聞いていこうと思います。
会社員としての経験が自分の基本に
――少し時間をさかのぼったところからはじめたいと思うのですが、リールさんが『LoL』と出会ったのはどういうきっかけだったんですか?Lillebelt:『LoL』は7年前、一緒にFPSをやっていたメンバーに「面白いゲームがあるよ」って誘われてはじめました。最初は相手が格上ばっかりで、一方的にやられるだけで全然面白くなかったんですけど(笑)、だんだん「自分がうまくなる瞬間」みたいなのがわかってきたんですよね。そしたら一気にハマりました。
――たしかに、『LoL』は上達の手応えを細かく感じやすいゲームですよね。そこからプロまではどんな経緯だったんでしょう。
Lillebelt:レートも上がってきたころに、今もUnsold Stuff Gaming(USG)でプレーしているapaMENとかが、チームを作ろうって誘ってくれたのがRJの最初の形です。そのチームでいろんな大会で成績を残していたら、LJLに招待チームとして参加させてもらえることになって、プロという形になりました
――プロゲーマーになる、というのは当時を思い出すとどういう感覚だったんですか?
Lillebelt:「LJL」で僕らはプロとして尊重してもらっていたんですけど、最初はまだみんな働きながらという状況で、実感がなかったのが正直なところですね。そこから徐々にゲームに専念できる状態が整って、やっと自分たちはプロなんだな、と。
――プロとしてやっていこう、という決断は迷いましたか?
Lillebelt:年上のメンバーには迷っていた人もいましたけど、僕は結構前向きでした。将来的に長く生きていけるとは思わなかったけど、1年でも2年でもそれだけでやっていけるならありなのかな、って。
――そして、もう5年くらい経ったわけですね(笑)。あの時プロになってよかったと思いますか?
Lillebelt:いま考えてもすごくいい決断でした。物事に対する考え方もそうだし、何かをグループでやることもそうだし、本当にいろんなことを学べたので。一時期、日中は会社員として働きながらプロゲーマーをしていました。企業で働くことで身に付いたことも多いので、自分の基本はあの時期にできたと思います。
――会社員として働くことが、プロゲーマーの世界で役に立ったりするんですか?
Lillebelt:めっちゃ役立ちますよ。特に印象に残っているのは当時の上司で、アルバイトが多い部署を効率的に上手に回していた方ですね。プロゲーマーも言っちゃえば自制心が弱い選手も多いから(笑)、若い人たちをまとめるというところが共通しているのもあって、その時の仕事の進め方なんかは今も参考にしています。僕が話し合いとかをまとめるようになって、だいぶマシになったとは思いますね。
――会社員も経験したうえで、プロゲーマー特有の楽しいところってどんなところだと思いますか?
Lillebelt:これは僕個人の意見ですけど、実は楽しい部分は普通のプレーヤーの方と同じだと思っています。楽しい瞬間ってだいたい、勝てたときか、成長を実感できた時。去年のRJを見てもらったらわかる通り、10回のうち2、3回くらいしか勝てていません。でもそれはリーグが始まる前から覚悟していたことで、そのぶん「どう成長するのか」というゴールを常に出すことを意識していました。
――たしかに、2017年を通じてRJの変化は他のチーム以上のインパクトがありました。
Lillebelt:一個一個クリアできるレベルを設定して、それを乗り越えてきたつもりです。だから負けていても雰囲気は悪くなかったんですよ。自分たちは成長している、勝ちに近づいているっていう実感があれば、モチベーションは上がるんです。自分がプレイヤーだった頃に、成長する方法も勝つ方法もわからない状況をガッツリ経験しているので、どうなるとチームが崩れるか、というのもわかりますし。
「コーチって大事だな、じゃあ、僕がやるしかない」
――リールさんが引退した時、正直に言えば「ちょっと早い」と感じました。モチベーションの難しさもあったんですか?Lillebelt:それもあります。ただそれ以上に大きかったのが「コーチって大事だな」と思ったことです。僕も現役だったころに韓国人コーチがチームについたことがあって、そのときは選手とし充実していたし、成長も感じられたんですよね。でも彼らがいなくなった時に、じゃあ僕がやるしかない、と。選手とコーチを兼任するのは絶対に無理だとわかっていたので、専任という形で。
――そして1年間解説者として活動したあとに、現場へ戻って来た、と。
Lillebelt:コーチって本当に、いるだけで全然違うんですよ。コーチの中にもレベルとかクオリティとかもちろんあると思うんですけど、いるかいないかの違いは本当に大きい。「面倒だけど役に立つこと」ってゲームに限らずあるじゃないですか。それを選手に実行させるのが仕事の人が入るので。
――選手生活に未練はありませんでしたか?
Lillebelt:いまも練習で現役選手たちに混ざることもあるんですけど、レーニングだけなら勝つんですよ(笑)。でも、復帰はさすがに考えていません。モチベーション的にも実力的にも、さすがにトップシーンで戦うのはしんどいですね。ただ……。
――ただ……?
Lillebelt:もう少し遅く生まれていたらどうなっていたかな、と思うことは正直あります。僕らが選手になった時期よりも今はずいぶん環境が整ってきましたし、5年後ならもっと選手にとっていい環境になっているはずですよね。考えても仕方ないですけど、そういう気持ちはなくはないです。でもまぁ、あの時期だったから経験できたこともありますし、それを今後に生かしていこうかなと思います。
後編では、コーチとしての仕事、そしてLillebeltさんが考える今後のキャリアについて伺います。
<後編に続く>
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