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Logicoolの最新フライトスティック「X56 H.O.T.A.S.」レビュー ─フライトシマーにマストな1本



フライトシムや航空機が登場するゲームなどで使用するフライトスティック。今回は、ロジクールから2018年3月1日に国内で発売されたスロットル&スティック式シミュレーションコントローラー「X56 H.O.T.A.S.」をレビューする。

このフライトスティックは、元々Saitek(サイテック)を買収したマッドキャッツ(Mad Cats)より、2016年3月末に「X-56 Rhino H.O.T.A.S.」として販売されていたものだ。マッドキャッツの1ブランドとして存在していたSaitekを、2016年9月に米Logitech社(ロジクールの米国法人)が買収したことで国内でも改めてロジクールから発売された。基本的には、前モデルの「X-55 Rhino」とカラーリングが異なる以外に大きな違いはない。


「X56 H.O.T.A.S.」は、同ブランドが展開しているスロットル付きフライトスティックの最新モデルで、旧モデルの「X52 PROFESSIONAL H.O.T.A.S」や「X52 H.O.T.A.S.」も国内でも並行して販売されている。Saitekのフライトスティックは、可動式のものだけでなく2010年には、現用機F-16やF-22、そしてF-35と同じ方式で操作できる感圧式フライトスティック「X-65F Combat Control System」も販売していた(感圧式は、スティックが垂直に固定された状態において前後左右に入力する力によって操作量を決める方式)。

またSaitekは、民間機タイプのフライトコントローラーとして「FLIGHT YOKE SYSTEM」や複数エンジンスロットル操作の「FLIGHT THROTTLE QUADRANT」なども販売している。

十分なボタン数が設けられたスティック/スロットル

ここからは実際にフライトスティックを箱から出しながら紹介しよう。


内容物を出すと、スロットルとスティック基部、スティック、そしてスティックの反発を調整する3種類のスプリング(短、中、長)が入っている。保証書以外に用紙はなくマニュアルは公式サイトからダウンロードする方式となっている。スティックは組み立てが必要だが、スティックとスティック基部の取り付けは基部のロゴ正面にスティックを合わせるだけだ。



「X56 H.O.T.A.S.」の特徴はスロットル部に設けられた各種スイッチだ。「H.O.T.A.S.」とは“Hands On Throttle and Stick”の略で、操縦桿から手を離すことなくレーダーや無線、トリムなどの各種アビオニクスを操作することができることが強みだ。また、トグルスイッチなどにLEDライトが仕掛けられており、スイッチの視認性も向上させることができる。

スティック部のボタンは、基本的なトリガーとPOVハットスイッチに加え、ミニアナログスティックや2つのサムハット、ヘッドボタン、スティック裏にピンキーとフライングピンキーがある。スティックを握ってみると、手が小さい筆者にはトリガーを握ることはできても、ハットスイッチやヘッドボタンに触れるには大きく動かさないと難しい。手を据える上下位置を変えることができないため、完全に手を離さずに操作するのは少し困難だ。しかし、このハットスイッチの多さはレーダーやトリム操作に応用できるので、操作が難しくとも重要な要素である。また、スティックには回転軸があるためラダー要素も備えているのが使いやすいところだ。

スロットル部は、左右のエンジン操作に対応できるように分割されており、左スロットルにはフラップ操作に最適な上下ボタンに加え、ジョグダイヤル式のボタンが存在。右スロットルには裏面に中指と人差し指に対応したボタンや押し込みボタン付きスロットルロータリー2つ、2位置スライダー、ハットスイッチ2つと新たに追加されたミニアナログスティック、サムボタンが設けられている。

▲左スロットル下の留め具を外すことでスロットルは左右独立可動する

特にハットスイッチ2つとミニアナログスティックがあるため、スティックかスロットルのどちらかに操作を振り分けられるのが強みだ。またスロットル部には、ベースコントロールとして、7つのトグルスイッチと2つのロータリーが備え付けられており、M1/M2/S1のモード変更もできる。またトグルスイッチは、二方向へ入力することができるが一方へ固定することは不可能で、常にニュートラルの位置に戻る仕様だ。スロットルに手を置いてみるとスティックと同じように少しばかり手にあまる大きさだが、スロットル背面のボタンがホームポジションとなりフィット感は良い。スロットル自体の動きはそこそこ重く、格闘戦などでは対応しきれないかもしれないのが懸念点だ。


次にPCへの接続だが、スロットルとスティックで2つのUSB接続口が必要となる。またそれなりにスペースも必要なことから、筆者の机環境ではギリギリのスペースであった。この大きさは導入を考えているユーザーには懸念要素でもあるだろう。またフライトスティックの設定は、インストール時に導入されるアプリケーションによって、LEDの光量などを制御できる。

▲サポートソフトの「X56 スペース/フライト H.O.T.A.S. ソフトウェア」で設定を行う

▲それなりに大きいためマウスの作業領域が著しく狭くなってしまった

現用機フライトシムへ特化した多種多様なボタン ─スロットルの重さに懸念も


今回のレビューでは筆者が所有しているコンバットフライトシム『DCS World』のモジュール『DCS: Flaming Cliffs 3』に加え、WW2フライトシム『IL-2 Sturmovik: Battle of Stalingrad』、MMOミリタリーコンバットゲーム『War Thunder』、『Arma 3』で使用した。

『DCS World』は現用機を中心とした航空機モジュールが揃っており、『DCS: Flaming Cliffs 3』ではF-15C/A-10A/Su-27/Su-33/MiG-29A/MiG-29S/Su-25の7機種が操作できる。マウスでのクリッカブル操作を求められないモジュールであるため、「X56 H.O.T.A.S.」のHOTAS機能を活用するのは最適なゲームだ。接続したばかりの設定では、スロットルはスロットルロータリーに割り当てられているので、別途スロットルに割り当て直す必要がある。またクリッカブルコックピットの『A-10C』でも使用してみたが、画面上でのスイッチ操作はともかくとして、キーを設定しておけばキーボードでの特殊操作を行う必要がないという点で、ストレスが減り操作に集中できるアドバンテージがとても大きいのは見逃せないだろう。

▲『DCS World 2.5.2』での設定画面。X56 H.O.T.A.S.はスティックとスロットルの両方別々に認識される

▲離陸時のタキシングでも操作をフライトスティックに集中できるのが大きい

▲F-15Cのレーダー操作。「X56 H.O.T.A.S.」ならばBVR(beyond-visual-range、視界外射程)戦闘でのヘッドオン時にはすぐに回避行動へ移れるのが大きなポイントだ

『FC3』のF-15Cは、通常レーダー操作を行う時にフライトスティックから手を離しキーボードを入力する必要がある。しかし「X56 H.O.T.A.S.」では、ハットスイッチがミニアナログスティックと合わせてスティック/スロットル側に6個あるため、その中から1つ設定すると手を離すことなくレーダー操作に集中できるのが大きな利点だ。また兵装切り替えや対空/対地モード選択、ギア展開/収納、エアブレーキのOn/Offなどの操作も、トグルスイッチや背面スイッチに設定すれば、キーボードに触れる必要がないほど快適になる。各スイッチの感触もはっきり違っているため、VRデバイスを装着した状態でも操作に混乱することはないだろう。

次は『IL-2 Sturmovik: Battle of Stalingrad』と『War Thunder』で使用した。WW2フライトシムでは、レーダーなどのアビオニクス操作は大きく作用してこないものの、フラップやスロットル、プロペラピッチ、燃料混合比など頻繁に操作する必要がある。それらの動作に関しても、左右のスイッチを用いれば大体カバーできるのが心強い。またスティックには捩りラダーが備わっているため、接敵し射撃するときの微調整もしやすいのがとても良い部分だ。

『IL-2 Sturmovik: Battle of Stalingrad』ではジョイスティックの選択項目がそれぞれ表示されないがしっかりと別々に認識されている

『War Thunder』では前モデル「X55」用プロファイルがあるが、レイアウトがめちゃくちゃになってしまうため、改めて設定し直す必要がある

しかしながら特にスロットル操作に関しては、前後運動が重いため力を込めないと意図したとおりに動かせないのが特に厳しいところだ。スロットルの大きく細かな動きは格闘戦や編隊飛行で必要となるため、レシプロ機でも懸念材料になるだろう。

また『Arma 3』に関しても、1から操作を設定する必要があるが、ヘリコプター/航空機でそれぞれ設定して使えることから前述のフライトシムのように、ほぼすべての動作をスティックとスロットル側に割り当てられるため、操作するためスティックから手を離す必要がなくなるだろう。

『Arma 3』ではスロットル/スティック別々に認識される。左下に写っているF-2AはユーザーModのものだ

設定した部位がしっかりと表示される

総評:フライトシムプレイヤーが欲する要素を詰め込んだ、文字通りのフグシップモデル

「X56 H.O.T.A.S.」は、フライトシムプレイヤーが必要だと感じた要素を全て兼ね備えた、文字通りのフラッグシップモデルと評価できる。複数のハットスイッチや捻りラダー、基部スイッチなどに設定することでジョイスティックから本当に手を離す必要がなくなるからだ。

しかしながら、堅実に作られているためスティック/スロットルの大きさによる机のスペース専有とスロットルの重さには目をつぶることはできないだろう。フライトスティック専用のスペースを用意していないユーザーは、新たに空間を作る必要があるからだ。

またPC専用というのも少し気になる点。確かにコンソール機ではフライトゲームが少ないという事情もあるが、スペースコンバットシムやVRでのゲームも存在しないわけではないため、今後の新製品での対応にも期待したいところだ。

多少気になる点はあるものの、3万2,630円という価格は質に見合った十分なもの。これから新しいフライトスティックを探すフライトシマーには、「X56 H.O.T.A.S.」は外せないフライトスティックだ。

■関連リンク
X56 H.O.T.A.S.
https://gaming.logicool.co.jp/ja-jp/product/x56-space-flight-vr-simulator-controller
ロジクールG
https://gaming.logicool.co.jp/ja-jp

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