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「ポタフェス 2023 夏」で見た、ゲーミングイヤホン・ヘッドセット最新事情

目次
  1. SHURE:「SE215」が今なおゲーマーに支持されている理由
  2. Final:「反応」と「空間」、ゲームに特化した2種類のゲーミングイヤホン「VR」シリーズ
  3. JBL:純粋に「勝つため」を追求した、プロゲーマーも認める「JBL Quantum」シリーズ
  4. オーディオテクニカ:デザインから没入できる『モンハン』をイメージした限定モデル
  5. 勝利のために、“音”にこだわれ
2023年7月8日(土)〜9日(日)にかけて、東京・秋葉原のベルサール秋葉原にて、「ポタフェス 2023 夏」が開催された。新型コロナウイルスにより長らく開催が休止していたが、今回は対面で多くの観客を集めての開催が実現した。


「ポタフェス」とは、世界中のイヤホン・ヘッドホンなど、ポータブルオーディオに関するブランドが一堂に会し、 最新のモデルを試聴できる国内最大級のイベント。話題のワイヤレスイヤホン、ハイレゾ対応のポータブルオーディオプレイヤーやイヤホンだけでなく、お手頃で音質もいいモデルの販売なども好評だ。

毎回、ここで初お披露目となる最新モデルや、ファン垂涎のプレミアムモデルなどを、自前のDAWや音源を持ち寄って試せるとあって、2日間ともにファンの姿が途切れない。なにより、各ブースにはブランドのスタッフがいるため、オススメのポイントや製品の使い方なども丁寧に案内してくれるとあって、コアなファンからライト層、さらに土地柄からインバウンドの外国人までが幅広く集まっていた。

主催者は、全国に専門店を構えるイヤホン専門店のe☆イヤホン。今回は、公式アンバサダーでもあるピエール中野さん(凛として時雨)をメインビジュアルに起用し、セゴリータ三世、散財TVなおしまらも招いてのYouTube公開生放送「出張版e☆イヤホンTV」なども実施された。

イベントの立ち位置的には、どちらかというと超高級イヤホンやケーブルなどが主役と言えるが、そこはGAMERS ZONEでもあるため、「ゲーミング」や「eスポーツ」をキーワードとした展示に注目してみた。普段ゲーミングヘッドセットのレビューなどではあまり聞けない、イヤホンイベントだからこその担当者の説明もあり、ゲーミングヘッドセット・イヤホンなどにこだわりたい読者にとっても有益な情報を、取材したブランドごとにお届けしよう。


SHURE:「SE215」が今なおゲーマーに支持されている理由


Shureといえば、映像・放送業界などでマイクブランドとしても有名だが、ゲーミング業界でも高い支持を得ているのをご存じだろうか?

そのモデルが「SE215」という製品で、FPSのプロなどから「今まで聞こえなかった音が鮮明に聞こえた」といった評価を得ており、発売から10年以上が経過した今でも愛用者は多い。現在は「SE215 Special Edition」という低音を強化したモデルも発売されている。

「SE215 SPECIAL EDITION」はケーブル部分も交換可能

なぜそれほどまでに「SE215」が支持されるのか。「ポタフェス2023」の会場でShureの担当者に直接うかがって、その秘密が見えてきた。

ひとつは、音楽業界などでボーカルや楽器の音を聞き分ける目的で使われる「イヤーモニター」としての性能が、FPSなどの音が重要なゲームのユーザーに支持されたという点だ。「SE215」は高遮音性イヤホンとして登場し、低音から高音まで、正確に再生できることが特長。それによってFPSでの足音や射撃音の聞き分けがしやすいと評価された。

ふたつめは前述した遮音性の高さが、ゲーム業界のニーズに合ったこと。もともと「SE215」は、バンドのドラマーなどから、自分がたたくドラムの音を遮って他の楽器やボーカルの音をしっかり聞き分けるような使い方を想定した高い遮音性を備えている。それが、eスポーツ大会の会場や解説の音を遮りつつ、ゲーム内の繊細な音に耳を傾けるような用途で支持されている。

そしてみっつめはやはり価格。「SE215」は実売1万4000円前後と、決して安いわけではないが、eスポーツを始めたばかりの人がステップアップするにはちょうどいい価格帯だった。人気が高まった数年前はまだゲーミングヘッドセットのような専用品は比較的少なかったこともあって、入手しやすいイヤホンの中からお手頃で高性能な「SE215」がプロゲーマーの中で注目されたというわけだ。

ちなみに、バランスドアーマチュアを4基搭載し、高い遮音性はもちろん、よりクリアで正確な音域を再現する「SE846(第2世代)」も上位モデルとして存在している。こちらはつい先日開催された某eスポーツタイトルの国際大会の機材としても採用されているとのこと。価格も約13万円と一気に跳ね上がるが、100本以上が使われているというのだから、重要な大会でも信頼性の高さは折り紙付きだ。

違いを知るプロの間でもファンの多い「SE 215 SPECIAL EDITION」(左)と、上位モデルの「SE846 第2世代」

「ゲーミング○○」という名前がなくても、プレイヤーたちの口コミで長く支持されているShureの「SE215」。「e☆イヤホン」の店頭はもちろん、多くの家電量販店などでも試聴できるので、ぜひ聴き比べてみてほしい。

ブースにはワイヤレス製品やヘッドセットなどもあり、試聴の列は絶えなかった


Final:「反応」と「空間」、ゲームに特化した2種類のゲーミングイヤホン「VR」シリーズ


ゲーミングデバイスには、さまざまな特色がある。FPSに特化したキーボードやマウス、格闘ゲームに向いているゲームパッドなどなど。その中で、「ゲームタイトルに最適化したゲーミングイヤホン」というのはこれまであまり聞いたことがなかった。

今回finalが展示していた「VR2000」と「VR3000」は、そういったゲームの特徴にマッチさせた画期的なゲーミングイヤホンだ。

反応の「VR2000」と空間の「VR3000」。用途や効果が非常にわかりやすい

「VR2000 for Gaming」は、今回の「ポタフェス2023」で先行試聴となった「反応」に特化したゲーミングイヤホン。すでに発売中の「VR3000 for Gaming」は「空間」に特化したモデルで、その比較試聴が可能になっていた。

「空間」や「反応」などと言われても、一般のゲーマーにはわかりにくいかもしれないが、実は最近の3Dなどのゲームは、ゲーム内のオブジェクトに直接音をレンダリングできるようになっている。そのため、プレイヤーを中心としたゲーム空間の中で、360度から「音」が聞こえてくるわけだ。

ゲーム中で感じるその空間認識は視覚効果が最も大きく、画面で見た映像だけで判断している……ように思われがちだが、当然ながら視界に入っていない場所にいるキャラも動いており、それらは音響として再現される。昨今のFPSなどではそれがいかに重要か、ゲーマーならおわかりだろう。

「空間」に特化した「VR3000 for Gaming」は、そういったゲームプログラムが持っている「空間」を再現するべくチューニング。FPSやオープンワールド系ゲーム、ホラーゲームのように3Dで世界が構築されているゲームの作者の意図通りに空間表現が再生できる。実はそれらは映画音楽の臨場感とも近いもので、映画鑑賞などにも向いているモデルでもある。

一方、今回初試聴が可能となった「VR2000 for Gaming」が目指した「反応」は、敵の小さな足音がした時に、リアルさよりもその音がした瞬間に聞き取れるような速さを重視したチューニング。格闘ゲームやアクションゲームでの技を出した瞬間、当たった際の打撃音はもちろん、音ゲーなどでも威力を発揮しそうだ。

ちなみに、finalの言うチューニングは、単純に特定の音域を目立たせるといったイコライザー的なものではない。特定の音を目立たせようとすると他の音も目立ってしまい、たくさんの音の中から1つの音を聞き取るというのはかえって難しくなる。そこでfinalは、「音の立ち上がりに注目」し、フォーカスしたい音だけをしっかり拾えるように研究を重ねてきたという。

「VR2000」と「VR3000」は、さまざまなゲームを音と映像を交えて聴き比べられた

実際に「VR2000 for Gaming」で『ストリートファイター6』のプレイを試聴してみたが、試聴してみてあらためて、格ゲーにおける効果音や演出の重要性を感じさせられた。相手が技を使う時の音を理解すると、視覚での反応に加えて聴覚でその対応を予約できるというか、身構えられる余裕ができるようなイメージだ。プレイはしていないが、トレーニングモードなどで技が当たった時だけ次の技につなげる「ヒット確認」のような高精度な操作が要求される場面でも効果が感じられそうだ。

価格はどちらも実売8000円ほどと、ゲーミングイヤホンとしては買いやすい価格帯。遊ぶゲームに応じてイヤホンを使い分ける、といった楽しみ方も、これからトレンドになるかもしれない。


JBL:純粋に「勝つため」を追求した、プロゲーマーも認める「JBL Quantum」シリーズ


スピーカーブランドとして75周年を迎えたJBL by HARMAN(以下、JBL)。人の耳にどのように音を届けるかを追求し、緻密な設計技術と最先端のソフトウェアを用いて、今もなおチューニングを研究し続けている老舗オーディオブランドだ。

そんなJBLの展示は、一般向けのワイヤレスイヤホンを中心としつつ、ゲーミングヘッドセットや、配信者向けのマイク、スピーカーなども試聴可能となっていた。

ゲームを遊んでいる人なら、市販のステレオヘッドホンなのに、ゲーム内で立体的に聞こえる経験をしたことがあるだろう。それを実現できているのは、ゲームプログラムやPC側が対応しているため。5.1chサラウンドなどで配置された音声データが、後ろにいるのか、前から右に動くのか、といった動きをエンコードした上で、耳の中でわかりやすいように音を作っている。これはJBLのゲーミングヘッドセットのいずれのモデルでも同様だ。

上位モデルと下位モデルの決定的な違いは、ゲームに集中している時の雑音や、そのゲームの中の自分の意識と聞こえてくるもののイメージが一致するかどうか、だという。ゲームの世界観に入り込んだ時に、その世界に自分がいるように感じさせるためには、耳からの情報として専用にチューニングされた、かつオーディオブランドならではの高品質なサウンドが求められるのだ。

実際、JBLはプロチームの「FAV gaming」をスポンサードしており、「JBL Quantum」シリーズを提供。何十人もいるメンバーたちからも好評だという。

特にチーム競技の『VALORANT』や『レインボーシックス シージ』などでは、仲間と会話をしながら周囲の音にも耳を傾ける必要がある。そこで、有線タイプのゲーミングイヤホン「JBL Quantum 50」をチャット用として装着した上から、フラッグシップモデルの「JBL Quantum 910 Wireless」を使用しているという。後者はノイズキャンセリング機能が強力で、会場のガヤなどは聞こえず、チャットのボイスもしっかり拾いながら、誰がどこにいるのかを伝えてくれる。

フラッグシップの「JBL Quantum 910 Wireless」

ここまではeスポーツのプロたちによる高いレベルの話ではあるが、一般ユーザーにとっても、戦争映画などをヘッドホンをつなげてパソコンで見ると、緊張感も含めてその雰囲気を再現してくれる。

5.1chサラウンドスピーカーシステムを実際に部屋に組んだものとは少しイメージが異なるが、決して劣っているというわけではない。ゲーミングヘッドセットの方がより細かく、銃撃戦のようなシチュエーションをリアルに体感できるという。

さらに、完全ワイヤレスタイプで、ノイズキャンセリングを搭載した「JBL Quantum TWS」も好評。低遅延を実現する2.4GHzワイヤレス接続のための専用ドングルを用意する力の入れようだ。

完全ワイヤレスモデルの「JBL Quantum TWS」

余談だが、eスポーツやゲーミングをうたう商品は、JBLでもマーケティングの方法がまったく違うとのこと。一般的なイヤホンの方は「女性」をメインとして、老若男女を狙うかたちでマーケティングするため、デザインもカワイイ、カッコイイという印象だ。

一方、ゲーミング製品は勝負にどれだけ貢献するか。勝利をつかみたければこれを使おう! といった押し出し方だという。そのため、デザイン、サウンドともに妥協のない「Quantumシリーズ」であるにもかかわらず、一般人はゲーミングラインの商品を知らない方も多いようだ。

「勝つためのヘッドセット選び」という指標も、これからのヘッドホン/イヤホンの目的のひとつになっていくのかもしれない。


オーディオテクニカ:デザインから没入できる『モンハン』をイメージした限定モデル


あらゆるユーザーに向けたオーディオ製品を多数ラインナップするオーディオテクニカのブースでひときわ目を引いたのが、6月に限定発売された『モンスターハンター』とのコラボヘッドセットだ。

ベースとなったヘッドセットは、最軽量クラスの快適な装着性、優れたマイク品質を誇る「ATH-GDL3」と「ATH-GL3」。「迅竜 ナルガクルガ」モデルはFPSなどで敵の位置を把握しやすくしながら開放型、「雷狼竜 ジンオウガ」モデルは没入感を高める密閉型と、機能面でも異なる。

「雷狼竜 ジンオウガ」をイメージした「ATH-GL3 ZIN」は密閉型

「迅竜 ナルガクルガ」をイメージした「ATH-GDL3 NAR」は開放型


実際に試聴もしてみたが、「ジンオウガ」モデルの方が遮音性も高くよりゲームに集中できる印象。耳にこもる音が苦手な人には開放型の「ナルガクルガ」モデルがいいだろう。

驚いたのは、どちらも非常に軽量なこと。ヘッドセットをつけていることを意識しなくなってしまうほどだった。細かなデザインのこだわりも盛り込まれており、環境や雰囲気も含めてゲームを楽しみたい人や、長時間集中してプレイしたい人にはまさに最適なモデルと言える。


勝利のために、“音”にこだわれ


「ポタフェス 2023 夏」の出展者にはほかにも、ゲーミングブランドの「INZONE」を擁するソニーや、ゼンハイザー、配信用のスイッチャーが大人気のヤマハなどなど、多くの有名ブランドも集まっていたが、もともとがゲーミング向け製品を推すイベントというよりは、よりハイエンドな製品にフォーカスしていた。

そんな中でも、ゲーミングオーディオという市場は着実に拡大を広げている。事実、主催者であるe☆イヤホンでも、秋葉原にゲーミング専門の店舗を設けており、ゲーマーたちの「音」に関する悩みに応えてくれている。

ゲーミング向け製品に特化したe☆イヤホンゲーミング AKIBA

そして、ちょうど本稿の公開直前に、次回の「ポタフェス」が4年ぶりに福岡で開催されることも発表された。イヤホンファンもゲームファンも、“音”にこだわりたい方はぜひ、次の「ポタフェス」で深淵なるオーディオの世界に浸かってみてほしい。





SHURE
https://www.shure.com/ja-JP
final
https://final-inc.com/
JBL
https://jp.jbl.com/
オーディオテクニカ
https://www.audio-technica.co.jp/
ポタフェス
https://potafes.com/

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