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Steam版『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』レビュー:グラフィックの進化と軽い動作でPC派にこそオススメ!


2019年2月1日に発売された、バンダイナムコエンターテインメントのフライトシューティングゲーム『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』(AC7)。『エースコンバット』シリーズのナンバリングタイトルとしては、国内で初めてPC向けに発売されたタイトルである本作のPC版(Steam)レビューをお届けする。なおVRモードはPS4版のみとなっている。

PC初のナンバリング展開『エースコンバット7』とは?

『エースコンバット』シリーズは、過去にコンソールを中心としてリリースされてきたフライトシューティングゲームだ。1995年にナンバリング1作目『エースコンバット』(PS1。以下カッコ内は発売ハード)が登場して以降、プレイヤーが戦闘機のパイロットとなって任務を遂行していくという基本的な流れをそのままに、グラフィックやストーリーを強化してきた。

基本的に『3』以降のナンバリングタイトルは現実世界の地球とは違う「ストレンジリアル」という世界を舞台にしている(『7』を展開する時に改めて時系列が整理された)。現時点から見て2040年の最も先の未来を描いたのが『エースコンバット3』(PS1)で、1995年の過去を描いたのが『エースコンバットZERO』(PS2)。この50年ほどの戦いの間に、『04』と『5』(ともにPS2)、『6』(Xbox)と時代を順に描いており、本作『エースコンバット7』は時代的にほぼ中間に位置する2019年が舞台だ。

エンジンの変更でグラフィック表現がリッチに

ここでグラフィックに目を向けて見よう。ゲームエンジンは従来使用されてきた「エース」エンジンから、『鉄拳7』などで実績があるUnreal Enginge 4を新たに採用している。

機体表現は、ナンバリング前作の2007年に発売された『エースコンバット6』では光沢表現が、2011年発売の『エースコンバット アサルトホライゾン』(PS3)では映画的な荒々しいウェザリングが目立っていた。今作『エースコンバット7』ではどちらかと言えば、一眼レフカメラで撮影したような写実的な表現となっている。

『エースコンバット6』のF-16 

『エースコンバット アサルトホライゾン』のF-16

『エースコンバット7』のF-16

機体のフライトモデルだけを見ると『エースコンバット7』に登場する機体のクオリティは相当に高く、今まで省略されがちだったリベットやピトー管、着陸装置、そして表面の微妙な表面の凹凸も表現しているのが特徴だろう。

コックピットの質も相当に高く、一部計器が動くようになっている

また、敵機や味方機の3Dモデルもほぼ省略されずに描かれているのは大きな進歩だ。敵機が省略されていないこと以外にも、地上モデルがより高精細となり「近づいても冷めない質」になったことも合わせて言及しておくべきだ。


臨場感を高めるサウンド演出を追加

今作のサウンドは、従来作品と大きな変化はないように感じる。一つ気付いた変化を挙げるなら、コックピット視点時のミサイル発射ボタン音が追加されたことや、エンジン音の描写が今までと少し違うところだろうか。


サウンドトラックは今作も耳に残りやすい楽曲が多く、ミッション19の“Daredevil”やミッション13の“Magic Spear 1”など、オーケストラからロック調の音楽まであるため、バリエーションに富んでおり飽きさせないのがいいポイント。しかし現時点で公式からサウンドトラックが販売されておらず、シーズンパスに付属するミュージックプレイヤーからゲーム内で聴くしかないのが残念だ。


無人機 vs 有人機という架空の未来を描くシナリオ

本作のストーリーにも少し触れよう。脚本は、『エースコンバット04』と『エースコンバット5』も手がけた片渕須直氏が担当。アニメ『この世界の片隅に』の監督・脚本としても有名だ。

ストーリーは、エルジア王国がオーシア連邦に宣戦布告したことをきっかけに、オーシア軍の国際停戦監視軍に所属するプレイヤー“トリガー”が“灯台戦争”の戦いに参加するというもの。

物語の構成は少し複雑で、オーシア軍の作戦に参加する“トリガー”を基本に、別視点となる“エイブリル”、そしてエルジア軍側の“シュローデル”という3視点が絡み合って灯台戦争が描かれる。


物語には「無人機vs有人機」という構図が暗に使われており、巨大無人機アーセナルバードを筆頭に、話が進むごとに驚異が大きくなってくる。無人機vs有人機は古くからピックアップされる題材だが、2019年現在のようにUAV(無人機)の存在が大きくなった今こそ、理解しやすいテーマではないだろうか。

戦闘機を題材にしたゲームが少ないなか、航空機という分野で「未来の空を支配するのは人間かAIか」という不透明な未来に挑戦したシナリオとなっているため、キャンペーンをプレイしても決して損をすることはないだろう。


アップデートによりフライト要素を大幅に改良

続いて、ゲームシステムについて触れていこう。

基本的なゲームシステムを説明するのなら、『エースコンバット』シリーズはフライトシューティングというジャンルに位置するタイトルで、フライトシムのように飛行機の制御が難しいものではなく、カジュアルに飛行と戦闘を楽しめるタイトルとなっている。


今作では新たにシステムとして「気象」の概念が追加された。機体の制御だけでなくミサイルのロックオンや誘導性能に影響を与えるため、戦闘時に雲の中へ逃げて避けることもできる。過去作では、ミサイルは急旋回で回避するしかなかったが、避け方にバリエーションが増えたことは素直に評価したい。

他にも、テクニックの1つとして「ポストストールマニューバ」が追加。戦闘機動の一種の“コブラ”や“クルビット”が可能となるため、テクニックがうまくいけばドッグファイトで追われる状況を打破できるかもしれない要素を含んでいる。


これらの新要素は、従来の『エースコンバット』シリーズとは一線を画すものとなり、遊び方に大きな変化が生まれ、面白くなったことは確かだ。2011年の『アサルトホライゾン』がシューティング部分を進化させようとしたとすれば、本作はフライト部分を進化させたと言える。


また、本作はリリース後から「難易度が高い」と言われている。実際にプレイしてみると敵機が大量にいることでの大量のミサイル攻撃をプレイヤー側が対処しきれずに倒されてしまう場面が多々あった。現時点では調整がまだ足りないと思われる部分も多々あったため、今後の調整に期待したい。

収録機体は29機種以上!

ここで少し登場機体についても触れよう。

『エースコンバット7』での収録機体は東西合せて29機種を数えており、F-15やフランカーの基本的なバリエーションを揃えている。収録機体の傾向を見ると、従来の人気機体を基本に、今まで登場してこなかった最新のバリエーション機体が多くなった。

F-15Jには日本で運用されているミサイルAAM-3が装備されている。標準ミサイルの性能は同じでも、搭載されているミサイルの外見はそれぞれ異なる。赤丸エンブレムを貼り付けるとF-15Jそのものにできる

AAM-5のような外見のQAAMと、後ろに見えるF-15J

例えば、縦列複座のSu-30SMとSu-30M2や、A-10C(過去作はA-10A)だけでなく、日本国内で運用されているF-15Jがナンバリングの新機体として登場することも特徴。また、マルチプレイモードでランクを上げると、白いラインが入った赤丸や赤星が手に入るため、ロシア機や日本機のようなマーキングも再現できることが嬉しいところだ。

『エースコンバット』シリーズ主人公の歴代エンブレムに加え、国籍マークのようなエンブレムもハイビジからロービジまであるのが嬉しい

マルチプレイは全てが敵となる「バトルロイヤル」と4 vs 4のチーム戦「チームデスマッチ」の2つしかない。対地戦がないため、攻撃機と対地兵装が無用の長物になってしまっているのはもったいない。加えてクイックマッチもないため気軽に遊べないのは残念だ。

パーツ要素もあり機体を強化可能

他にも細かなストレスになる部分はあるが、PC/コンソール版リリース後から様々な改良が加えられているため、今後の調整にも期待は持てる。

直近で改善されたシステムの1つはロックオン関係だ。3月のアップデートでロックオン方式が機体の水平線「W」を中心に変更する方式に変わったため、狙いたい目標を決めやすくなった。


PC版は意外と軽い! ワイドウルトラスクリーン対応にも期待

今回のPC版の特徴といえば動作がとても軽いことだ。筆者のPC環境はIntel Core i5-6600とNVIDIA GeForce GTX 970 Ti、メモリーが16GBと少しばかり古い構成だが、フルHD解像度で出力してもフレームレートが60fpsを切ることがとても少ない。そればかりか、内部解像度のスケーリングを上げても負担が小さく、3Dモデルやテクスチャ解像度を含めた細かなグラフィックのジャギーを軽減できるのは特筆すべきだ。

また、PC版リリース当初は一部フライトスティックしか対応していなかったが、5月末に配信されたバージョン1.10でロジクールやThrustmaster(スラストマスター)のジョイスティックに対応したことは大きな前進だろう。

他にも、リリース当初はウルトラワイドスクリーン解像度が対応していなかったことから、3Dモデルの描写距離の長大化や視野角(FOV)の広域化の方法がユーザーより発見されている。シングルプレイでのみ楽しむのなら、PC版が持つ独自の特徴を存分に発揮できるだろう。視野角や描写距離の調整がゲーム内から可能になることも含め、今後のウルトラワイドスクリーン公式対応にも期待したい。


現用機フライトゲームへの道を広げてくれる『エースコンバット7』

ナンバリングタイトルが国内向けにPCでリリースされるのは初めてとなった『エースコンバット7』。動作が軽いことに加え発売後のアップデートによって、発売当初より遊びやすくなっているため、今から始めても楽しめる内容だ。

DLCも5月22日に第1弾が配信されており、今後6カ月をかけて今回配信された1機体を含む3つの機体と3つの新規ミッションが配信される予定で、継続的なコンテンツ配信にも期待できる。

グラフィックやストーリー、そしてサウンドのクオリティも高く、現時点でもミッションの難易度が高いことを除けばプレイしても損はない。また本作をやり込めば、基本的な操縦テクニックが身につくため、他のフライトジャンルのゲームに入っていけるのも魅力だ。

「ストレンジリアル」の空は、いつでも新規ユーザーを受け入れるように、青々しく輝いている。


■関連リンク
エースコンバット7 スカイズ・アンノウン
https://ace7.acecombat.jp/
バンダイナムコ エンターテインメント
https://www.bandainamcoent.co.jp/

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