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No.01【LoL】さらなる高みを目指して ~Astaroreからの手紙~
プロゲーマー「Astarore」自己紹介
こんにちは、初めての方ははじめまして。『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』というゲームでプロゲーマーをしている「Astarore(アスタロール)」と申します。「Burning Core」というチームの一員として、日本の公式プロリーグである「LJL」で戦っています。このゲームでチームに入って戦い始めてから4年目になりました。僕はもっともっと上位を目指したいし、そのために上手くなりたい、今の自分には足りないものがたくさんあると思っています。今回は、僕がプロゲーマーになったきっかけやこれまでの経緯を振り返って、今感じていることや、プロとして目指していることについてお話をしたいと思います。オンラインゲーム『LoL』が欧米で正式稼働したのは2011年になります。当初は英語のみのゲームだったのですが、日本でも遊び始める人がいて、チームや草の根大会ができ始めました。僕もそんな日本人プレイヤーのひとりで、「Veck」「Object Oriented」といったアマチュアチームに所属して、2013年ごろまでは趣味の範囲でプレイしていました。
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2013年、欧米では本格的な公式プロリーグ「LCS」が始まるなど、プロシーンの本格的な整備が始まりました。日本ではNAサーバーでプレイする人が口コミで増え始めていましたが、現在の公式プロリーグであるLJLなどはまだなかった頃の話です。
当時僕は、日本の大きなアマチュア大会だった「JCG」に参加していました。2014年1月の大会が終わった頃、日本初のプロゲーミングチームを目指していた「DetonatioN FocusMe(DFM)」のオーナーからお声掛けをいただき、チームに正式加入することに。同年4月に始まった「LJL Spring Season」からジャングラーとしてプレイを始めることになりました。
2015年の前半にはDFMのゲーミングハウスができて、僕も生活と練習の場をそちらに移しました。夏からチームに韓国人ジャングラーが入ってきたため、リザーブ(補欠)という立場になりましたが、その後にまた新しく入ってきた韓国人ジャングラーがチームに合わず、スターターのジャングラーに復帰することになりました。この年の夏はライバルチーム「Rampage」に勝てないままレギュラーシーズンを終えてしまったのですが、グランドファイナルでは優勝を飾りました。この結果をもって、チームは世界大会への登竜門である国際大会「International Wildcard Tournament」に出場することができました。
© 2017 Riot Games, Inc. All rights reserved.2016年3月には、日本サーバーのオープンベータテストが始まり、ついに日本在住者のための正式なプレイ環境が整いました。僕はというと、5月に発足したDFMの姉妹チーム「DetonatioN Rising(DNR)」にADCとして加入し、二部リーグである「LJL CS」を戦うことにしました。その後再びジャングラーにロールチェンジしますが、この年はプロモーションに出られる結果を出せず終わってしまうことになります。
引き続き2017年も僕たちはLJL昇格を目指して戦いました。「LJL CS Spring Season」で優勝し、プロモーションで格上リーグのチームを相手に勝利。「Burning Core」という名前になったチームに、引き続きジャングラーとして所属し、Summer SeasonはLJLで戦っています。
プロゲーマーという職業 ~プロゲーマーになったきっかけ~
2013年当時、僕はプログラマーのアルバイトをしながら、趣味であるゲームに熱中していました。プログラマーという仕事は自分自身のスキルとして身につくため、将来的に専門職として安定した生活ができるのではないかと考えて選びました。このことからも想像できるとは思いますが、当時の僕はどちらかと言えば安定志向であったと思います。そんな頃、DFMのオーナーより、近い将来ゲーミングハウスを設置し、完全フルタイム制度を導入するというお話を聞きました。最初は「そんな世界があるのか」程度に聞いていましたが、詳細を聞くうちに徐々に興味が湧いてきました。オーナーである梅崎さんに熱心に誘っていただいたこともあって、全く未知数のプロゲーマーという職業と、比較的安定しているプログラマーという職業との間で、真剣に悩みました。悩んだ結果、「ゲームが好き」という自分の中での大きな気持ちに素直に従い、プロゲーマーという道を選択することにしました。
しかし、ゲーミングハウスというもの自体がどのようなものなのか想像できませんでしたし、実家を出て別の場所で知らない人達と共同生活することにも正直大きな不安はありました。しかし大好きなゲームがもっともっと上達するかもしれないし、それを仕事にできるかもしれないという期待もありました。
日本で初めて完全フルタイム制のチームができるという時、5人という限られたチームメンバー枠の1人として、自分を選んでお誘いいただいた。この時人生で初めて自分が他人に必要とされていると実感し、胸が高鳴ったのを覚えています。ちょうど以前VeckでチームメイトだったBonzinもDFMに移籍したこともあり、次第に不安より期待感の方が膨んでいきました。
限られた年齢で、かつ、ごくわずか一握りの人しか挑戦できない。今の自分にしかできないことを後悔しないように精一杯やってみようと決心し、そこから本格的にプロゲーマーへの道を歩み始めました。
安定志向だった僕が、まさか海の物とも山の物とも分からないプロゲーマーという道に進むとは想像もしていませんでした。
ゲーミングハウスでの生活 ~オンラインから、オフラインへの変化~
それまで日本には完全フルタイム制のプロチームがなかったため、海外のプロゲーミングチームのドキュメンタリーや配信でしか知らなかったゲーミングハウス。同じところでみんなで生活・練習し、その場で発生した問題点について唐突に議論が始まり、解決するといったようなことができる場所を想像していました。以前見学した中国のチーム「Royal Club」のゲーミングハウスはとにかく広く、専門のシェフがハウスに来て毎日選手のために食事を作って帰っていくところを見て、とても驚いたことを覚えています。そんな風に想像を膨らませながらゲーミングハウスに引っ越し、ある日突然約8人での共同生活が始まりました。
12時に昼礼がありましたので、全員決まった時間に起床し、食事、練習試合以外はソロランクをひたすらやって、午前4時までに寝るというサイクルでした。生活の中で一番不安だったのが洗濯です。今まで全くやったことがなかったので洗濯機で洗うのはいいんですが、干すことと、たたむ作業が慣れるまでとても大変でした。それとアイロンの使い方もわからず、最初は何度やってもうまくシワが取れず苦戦したことを覚えています。男だけの集団生活だと、やっぱり家事全般に気をつけてくれる人がいないとそれなりに散らかるわけですよね。僕はどちらかと言えば潔癖症な方なので、初めは気づけば自ら掃除や片付けをしていたのですが、それをやると全員の家政婦状態になってしまうことに気づき、途中から必要最低限の自分の身の回りの事以外何もしなくなってしまいました(笑)。
今までは仕事に追われながら限られた時間の中でチームメイトとスケジュール調整し、練習し解散というスタイルでした。ゲーミングハウスに入った後は毎日いつでも練習に没頭できて、フィードバックもface to faceで行えるというのが大きな変化でした。
まともなコーチングを受けたのも初めてで、自分のスキルが向上していくのを日々肌で感じ、毎日がとても刺激的で楽しかったです。
プロゲーマーAstarore誕生 ~プロゲーマーという職業の浮き沈み~
当時は今よりもっと選手生命が短いという印象が強く、NAの選手などは今の僕の年齢くらいで引退してコーチや運営側に活動の場所を変えていく人が多くいました。プロゲーマーになっても数年しか活躍できないことは、僕も当時から理解していました。プログラマーとしての第一歩を踏み出した直後だというのに、世間に浸透していない業種に転職したことで両親にも心配をかけてしまいました。しかし徐々に理解を得られるようになり、今ではback upしてくれる存在になっているので、両親にはとても感謝しています。とはいえ、実力主義の世界で結果を残さなければ試合にも出ることができませんし、当然お給料もいただけないわけで。とにかく人一倍努力して、うまくなりたい一心で日々練習に励む毎日を過ごしていました。
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DFMが外国人選手を起用するようになってからeSports界の実力主義は更に加速しました。自分がリザーブでいる時間の方が長くなったとき、一部や二部といったリーグに関係なく、とにかくスターターとして活躍したいという気持ちを強く感じていました。二部チームであるDNR発足時に、スターターとして大会で活躍できるならと自ら移籍を志願しました。プロゲーマーである以上、大会に出てこそ経験も積めますし、単に毎日ソロランクゲームを回しているだけでは個人のハンドスキルは向上しても、チームプレイは学べないと考えているからです。
『LoL』というゲームは70%チームプレイで勝敗が決まると言われており、僕もそう思っています。スターターになれば日々の練習でもチームプレイを集中して練習できますし、出場した大会での緊張や度胸も鍛えられます。スターターとリザーブには埋められない差があり、プレイスキルはもちろんメンタル面でも大きく差が開いていきます。
スターターとリザーブの間を行ったり来たりしている僕だからこそ分かると思っているのですが、スターターの経験があったとしても、一度リザーブになりチームプレイの練習を存分にできなくなってしまうと、その経験値はほぼゼロに戻ります。リザーブであっても、当然のことながら練習するわけですよね。でもその練習方法が正しいのか、間違っているのか、試す場所もない中で全く変化が感じられない。成長しているのか後退しているのかさえ分からなくなってしまう時もありました。その間にメタもどんどん変わっていき、次第についていけなくなる。
もしリザーブでも成長を実感していたらそのまま継続していたかもしれませんが、そうではなかったので、二部チームであってもスターターとして活躍する方を選択しました。
大きく立ちはだかる壁 ~今自分に課せられている問題と目標~
現在、LJLでは全チームが韓国人ジャングラーを起用している事実があり、ジャングラーというロールがこのゲームにおいて重要視されています。一番の問題は、自分を含む日本人ジャングラーが韓国人ジャングラーに勝てないことです。韓国人に勝てないというよりは、よりレベルが高い環境で練習を積んでいて、かつ世界的ランクで見ても上位のプレイヤーに勝てないと言った方が正しいかもしれません。わかりやすく例えると、バスケットボールでアメリカと日本の差くらいあると思います。
どんなスポーツやゲームでもそうだと思いますが、プレイ人口という分母が多ければ多いほど、当然上手い人も多くなるわけですよね。ちなみに『LoL』ランク戦のプレイヤー人口は、韓国300万人に対して日本は10万人しかいないんです。たとえ10万人の中でナンバーワンになったとしても、300万人の中に入れば上位にいくのさえ難しいんですよ。
今回僕はチームの公式発表でもあったとおり、一度日本を離れて韓国のBCゲーミングハウスで毎日練習を行っています。
環境から変えて、高い意識をもった人たちが最も多いこの場所で、韓国語を学びながら練習に励み、ハンドスキルやチームプレイ含めその他学べるようなことは全て吸収していきたいと思っています。
一人っ子ということも影響しているせいか僕の性格は少し消極的なところがあります。しかし、ジャングラーというロールはすべてのポジションに対して関わる機会が多く、誰よりもコミュニケーション能力が高くないといけないところでもあります。だからこそ、海外に出て今自分に足りていない「誰とでもすぐ打ち解けられるようなコミュニケーション能力」を最大限に高めたいと思っています。
また、現在のLJLは全てのチームが韓国人選手を最大人数である2名起用しています。しかし、外国人選手を迎え入れた直後は、コミュニケーションの問題でつまずくチームが多いです。来日する韓国人は当然日本人選手よりも高いパフォーマンスが出せるので、実力主義の意識が日本より強い韓国人は、実力が自分より明らかに下回ってる人の言うことをあまり聞いてくれないんですよ(笑)。
LJLではコーチも韓国人の方が多いですが、そこでもフィードバックの際に通訳が必要だったり、本当にコーチが言いたいことを100%理解するのは実際には困難で、同じ指導を何度か受けることになってしまうという、非合理的な時間のロスが増えてしまいがちです。
でも、日本人の僕が韓国人と同等のパフォーマンスを出せて、かつ、韓国語を話せるようになれば、来日したばかりの韓国人選手と日本人選手との潤滑油的な存在になり、より早く打ち解けることができると思います。今ではeSportsとは切っても切れない韓国という国を、より深く知ることでチーム全体の底上げもできると信じています。
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最後に
今回チームからこのような大きなチャンスをいただき、心から感謝しているとともに、このチャンスが無駄にならないよう最大限トライし、早くチームに恩返しし、貢献できるようになりたいと思っています。そしてこれまで僕を支えてくださっているファンの皆さまに、再びLJLで活躍できる姿を早くお見せできるよう頑張りたいと思っています。
Burning Core
Astarore
■Astarore選手のプロフィール
1994年1月14日生まれ。Burning Core所属のLoLプロゲーマー。ジャングラー。2014年にDetonatioN FocusMeへ加入、その後DetonatioN Risingに移り、2017年5月よりチームごとBurning Coreへ移籍。
■Burning Core連載
No.02【LoL】僕の気持ちはまだ燃え尽きていない ~Zerostの覚書~
■関連リンク
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Astatore選手のTwitter
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