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『テイルズ オブ アライズ』Steam版レビュー:完成度の高いバトル&ストーリーに遊びやすい調整も光る傑作
1995年にシリーズ1作目『テイルズ オブ ファンタジア』が発売されて以来、コンスタントにヒット作をリリース。25年の時を経た現在は、いまや日本のRPGというジャンルを代表するタイトルにまで成長した『テイルズ オブ』シリーズの最新作、『テイルズ オブ アライズ』(以下、『アライズ』)が、2021年9月9日(Steam版は9月10日)に発売された。
本記事ではSteam版『テイルズオブアライズ』のプレイレビューをお届け。現行のRPGとしては最高峰のグラフィックで描かれたキャラクターたちが躍動するバトルパートの話を中心に、本作の魅力を語っていきたい。
『テイルズ オブ アライズ』のポイント
奴隷から始まるシリアスなゲーム本編
タイトルごとにほぼ毎回異なる舞台や設定が用意されたうえで、壮大なストーリーが描かれるのが特徴のひとつでもある『テイルズ オブ』シリーズ。『アライズ』もその例に漏れず、過去作の知識ゼロでも問題なく遊べるタイトルになっている。そんな『アライズ』の物語は、歴代のシリーズの中でもかなりハードな世界観のもとで展開される。
舞台はダナとレナと呼ばれるふたつの惑星が存在する世界で、高度な科学&魔法技術を持つレナ人がダナ人を300年間に渡って支配。プレイヤーは奴隷として過酷な労働に従事させられている記憶喪失の青年、アルフェンの視点から本作の世界のなりたちや、ストーリーなどを体験する。
▲過酷な労働を強いられている奴隷の視点から物語が始まる本作。この時点ではアルフェンという自分の名前すら覚えておらず、“鉄仮面”と呼ばれている
▲中世ヨーロッパのようなファンタジー世界だけでなく、SF要素も絡んでくるのが本作の特徴
▲従来の『テイルズ オブ シリーズ』と比べると頭身が高めなキャラクター。彼ら、彼女らがセリフやシチュエーションにあわせて感情の機微を表現するビジュアルも魅力のひとつ
『アライズ』の物語はこのアルフェンと、ゲーム開始後まもなくアルフェンと出会い行動を共にすることになるレナ人の女性、シオンが5つに分断されたダナを支配するす領将(スルド)を討つため、旅に出ることで進行していく。分断されたダナはそれぞれ炎が渦巻く国、光を失い雪に覆われた国といった、RPGらしいビジュアル的な変化のみならず、国によってダナ人とレナ人の関係性も浮き彫りに……。
・ダナ人が徹底的に搾取されている国(カラグリア)
・レナ人の支配とダナ人どうしの監視密告で息苦しい国(シスロデン)
・ダナ人とレナ人が”共存”する緑豊かな国(メナンシア)
・ダナ人の抵抗運動が実を結んだ結果、荒廃した国(ミハグサール)
・絶対強者ひとりに恐怖で支配される国(ガナスハロス)
と、異なる視点で描かれ、ストーリーに起伏と深みを加えている。
▲ゲーム開始から間もなくアルフェンと行動をともにすることとなるシオン。回復魔法をふくめた星霊術と、SFガジェット的な形状&性能をそなえた銃での攻撃を得意とする
▲2つ目に訪れる国、シスロデンではダナ人は使えないはずの星霊術を駆使して戦う少女、リンウェル(写真上)と、格闘攻撃に特化したシスロデンの元憲兵、ロウ(写真下)が仲間になる
▲メナンシアで起こる事件を解決すると、キサラ(写真上)とテュオハリム(写真下)が加わり、本作のパーティーメンバーが全員そろう
そしてゲーム的には、新しい国を回っていくうちに、操作可能な仲間キャラクターや戦闘で利用できるシステム、ふくろう探しや牧場での飼育、釣りといったミニゲームなどがアンロックされていくのも魅力だろう。加えて仲間が増えると移動や野営時の会話、ゲーム進行中にときおり挿入される仲間どうしの雑談、”スキット”にもコミカルな内容のものの割合も増えていくし、徐々に6人のパーティーメンバーが本当の仲間としての関係性を築いていく様子も確認できる。キャラクターに感情移入してRPGを遊びたい人にとっては、そこもゲームを進めていく魅力になるはずだ。
▲スキットでは本編を補足するような情報のほか、パーティーメンバーの趣味や意外な一面を知ることができる。スキットをチェックしているかどうかで、テュオハリムやキサラ、シオンあたりへの印象はかなり変わるはず
▲『テイルズ オブ』シリーズではおなじみ、料理レシピ集めや釣りといった本筋とは直接関係がない遊びの要素も盛り込まれている
▲よほどレベルの離れた敵でもない限り、本作の戦闘はただ(通常攻撃で)殴り続けるだけでは敵を倒すことはできない。しかしシステムを使いこなして戦えれば、やりごたえがあって見栄えもいいバトルが楽しめる
『アライズ』の戦闘は、パーティーのうち4名が戦闘に参加し、プレイヤーはその中からひとりを選んで操作、武器での通常攻撃や術技といったキャラクター固有の攻撃で敵にダメージを与えていく……という『テイルズ オブ』シリーズの基本は押さえつつも、(4人で戦えるシスロデン攻略以降は)よりアクションの自由度が高まっているのが特徴的。
まず本作の術技は、魔法系のタイプもふくめて攻撃に使用するものは時間経過や特定の攻撃を当てると短時間で回復するアーツゲージ(AG)を消費して放つ形式。そのため術技を出し惜しみする必要がほとんどない。そのうえでゲームを進めていくと、自分が操作するキャラクターには最大12種の術技(地上技6、空中技6)のショートカット登録が可能になるため、術技から術技をつないでヒット数を伸ばしていくコンボを容易に思いつきやすく、また実行もしやすい。
▲敵の攻撃パターンを観察しつつ、隙をさらした際に反撃。通常攻撃や術技でヒット数を稼ぎ、より強力な攻撃手段へつなげていくのが本作のセオリー
▲攻撃系の術はほぼ無制限に使えるが、回復術に関してはパーティーで共有しているキュアポイント(CP)を消費して発動させる。そのため初めて訪れるダンジョンを探索する際は、残りCPと手持ちのグミ(回復アイテム)と相談しながら進む必要がある
実戦ではここにCPUが操作するキャラクターの行動に合わせてヒット数を稼いだり、キャラクター固有の攻撃を当てて特定の種族の弱点を突くブーストアタックをしかけたり、高威力かつド派手な秘奥義「ブーストストライク」なども組み合わせることになったりするため、敵にダメージを与える手段はとにかく豊富。
ゲームスピードも速いこともあって初めのうちは操作が煩雑に感じるかもしれないが、筆者の場合は操作の忙しさがいつの間にか戦闘中に”やれることが多い”という魅力へと変わった
▲ブーストアタックはシオンなら飛行するズ―グル(モンスター)を撃墜、キサラなら敵の突進攻撃に合わせて発動するとダウンを奪えるなど、敵の強みを消しつつ攻撃するチャンスを作り出せる便利で強力な攻撃手段
▲敵の体力を一定以下まで減らしたうえで、ヒット数がとぎれないように攻撃を当て続けていると発動するブーストストライク。ザコズーグルに対しては一撃必殺の攻撃となり、ボス敵にもまとまったダメージを与えられる。発動したキャラクターの組み合わせによってそれぞれ違った専用の演出が見られるのも魅力
さらに誰をプレイヤーが操作するかでプレイ感覚が変わるのも、飽きずに戦闘を楽しめた理由のひとつ。斬撃がメインのアルフェンと武器が銃+術のシオン、術攻撃に特化したリンウェルで戦闘時の立ち回りが大きく変わるのはもちろん、アルフェンと同じ近接攻撃タイプのロウ、キサラ、テュオハリムもそれぞれ使い勝手が異なり、その特徴がとくに顕著なのがキサラとテュオハリムのふたり。
キサラはほかのキャラクターを操作時だと多用することになる回避行動を取ることはできないが、その代わりに盾を使ったガードが可能。アルフェンやロウのような機敏な動きの代わりに、ガードしながら技を出せるため、雑に戦う(ハイスピードな戦闘が苦手な)場合はアルフェンたちよりも手堅い戦果を挙げられる可能性を感じた。
▲ディフェンスにまつわるシステムがほかのキャラクターと異なるため、自分で操作すると最初のうちは独特の操作感覚に少し戸惑うキサラ。ガードしながら殴れるという強みを活かして戦うと、個性を出しつつ敵の撃破も捗るようになる
逆にテュオハリムの場合は、棒術での近接戦、術攻撃、回復系の術など、戦闘中に取れる行動の多彩さが長所なキャラクター。敵の攻撃をジャストタイミングで回避するほどパワーアップしていく特性を活かす必要があったり、シオンを同時に戦闘へ参加させないと戦線が崩壊しやすかったりと(筆者の場合、ゲームスピード的に回復役をこなしつつ強敵と戦うのは無理だった)、扱いの難しさを感じる場面は少なくなかったが、使っていて楽しいキャラクターだった。
▲ゲームへの理解度が高まり、戦場全体を見られる視野のあるプレイヤーが使うと強いデュオハリム。彼を操作すると、本作のCPUが回復術を唱えるタイミングがかなり絶妙だということを思い知らされる
作りこまれているがゆえにメジャーなRPGの中ではそれなりに歯ごたえのある難易度になっている『アライズ』の戦闘だが、ゲームスピードの速さについてはいつでも開けるメニュー画面で疑似的なポーズをかけることで解決、どうしても倒せない敵がいる場合は、対象の敵と戦う際だけ難易度を下げて再挑戦するという手もある。
キャラクターの使い分けに関してもゲームを進めるだけならアルフェンの操作にだけ精通していれば問題はないし、パーティーメンバーを変えるだけ、たとえば、
・近接攻撃が得意な仲間 (ロウ、テュオハリム)を多めに入れるとヒット数が伸びやすく、ブーストストライク発動での早期決着が望める
・シオン、テュオハリムのダブル回復役で生存力アップ
・キサラを囮に自分(アルフェン)は側面or背後から接近、残りふたりの仲間は安全に術で攻撃
といった感じで、さまざまな戦い方を体験することはできる。アクションゲームがそれほど得意でなくても戦闘を楽しみつつストーリーも進められる作りにはなっているので、ゲームの難易度に対する評判が気になって本作を敬遠している人は、気にせず触ってみてほしい。
▲獲得したスキルポイントをどう割り振っていくかも、悩ましくも楽しいポイント。まずは使用できる術技を増やしつつ、気に入った攻撃手段が数種類そろったらステータスアップに使っていくのがベターだろうか
まず挙げたいのがファストトラベルの存在。本作の街やフィールドの大半にはファストトラベルポイントが設定されており、マップを開いてポイントを選べば、ワンボタンでいきたい場所まで移動できる。使えるタイミングもかなり自由で、制限されるのは一部のストーリー進行中、たとえばパーティーメンバーのひとりが攫われている間など、話の展開的に寄り道が可能だと没入感が損なわれる際のみ。平時ならズーグルに囲まれて戦闘が始まる寸前であってもマップを開けさえすればファストトラベルが行えるため、緊急回避の手段としても活用できる代物だ。
▲マップにはファストトラベルポイントのほか、サブクエストが受注できる場所、入るストーリーが進行するポイントなども表示される
このファストトラベルのおかげで、本作はサブクエストの消化やアイテムの収集、釣りなどを遊びたいと思ったときに、その前段階の”移動”でストレスを感じることがほぼない。短めのロード時間もあいまって手際よくクエストを進められるし、ふだんはゲーム本編をクリアーしてしまったらオマケ要素のコンプリートは放置しがちな筆者のようなプレイヤーでも、料理のレシピやダナフクロウ探しを進められた。
▲特定の素材を収集する系統のクエストに関しては、依頼者に話しかけた時点で必要なものがそろっていると、その時点で素材を渡す選択肢が出現。即座にクエストを完了させられる
そのほかにも、
・クエストが受注できる場所やストーリーが進行するポイント、一度見つけた素材が収集できる場所はマップにはっきり表示される、
・会話した住民にはチェック済みのアイコンが浮かぶ
・PCフリーズなど不慮の事態にも対応できるオートセーブ(つねにふたつのオートセーブデータが残っている)など
・フィールドやダンジョン入口でアイテムの売買に武器やアクセサリーの強化、牧場の管理までしてくれる行商人
など、細かいがゲームをやっていると便利、あってよかったと感じる仕様が随所に施されており、その積み重ねが本作全体の遊びやすさにつながっている。
一部の地形がジャンプで渡れたり降りられるのかがわかりづらい、会話発生時に敵と接触するとその話が最後まで聞けなくなるといった点は個人的に不満を感じたものの、ゲームを進めるうえで親切な仕様が数多く盛り込まれていることはまちがいない。普段、「RPGって話を進めるのがかったるいんだよな……」と思っている人ほど、『アライズ』をプレイすると驚きを感じられるはずだ。
▲街を訪れるたびにセリフが変わっていないか気になって話しかけてしまう筆者としては、住民の頭の上に表示される既読アイコンがありがたかった
ストーリーに没入させるための世界観作りに快適に遊べる仕様、練られた戦闘システムなど、随所に完成度の高さを感じさせる『テイルズ オブ アライズ』。本編の購入のみでボリュームのある(筆者の場合はゲームクリアーまでにおよそ50時間プレイ)ゲーム体験ができるうえに、コラボ衣装などダウンロードコンテンツの展開は10月に入っても続いている。大作RPG、質の高いアクションゲームを遊びたいという人には、いまから始めても十分に楽しめるタイトルとしてお勧めできる1本だ。
Tales of Arise TM & (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
●タイトル:テイルズ オブ アライズ
●ジャンル:心の黎明を告げるRPG
●発売元:バンダイナムコエンターテインメント
●開発元:バンダイナムコスタジオ
●プラットフォーム:PC(Steam)、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2021年9月9日(Steam版は9月10日)
●価格:
【PS5/PS4 パッケージ版】
通常版 8778円[税込]
ASOBISTORE collector's edition 2万1780円[税込]
ASOBISTORE figure edition 1万7380円[税込]
Premium edition 1万2980円[税込]
【Steam/PS5/PS4/Xbox ダウンロード版】
通常版 8778円[税込]
Ultimate Edition 1万4300円[税込]
Deluxe Costume Edition 1万2650円[税込]
Deluxe Sound Edition 1万780円[税込]
【Steam ダウンロード版】
Steam版 Ultimate Edition 1万3750円[税込]
Steam版 Deluxe Edition 1万1000円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-2300 または AMD Ryzen 3 1200
メモリー: 8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX760 または AMD Radeon HD7950
ストレージ: 45GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-4590 または AMD FX-8350
メモリー: 8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX970 または AMD Radeon R9 390
ストレージ: 45GB
●公式サイトURL:https://toarise.tales-ch.jp/
●Steam版ダウンロードサイトURL:
https://store.steampowered.com/app/740130/Tales_of_Arise/
本記事ではSteam版『テイルズオブアライズ』のプレイレビューをお届け。現行のRPGとしては最高峰のグラフィックで描かれたキャラクターたちが躍動するバトルパートの話を中心に、本作の魅力を語っていきたい。
『テイルズ オブ アライズ』のポイント
- ハードな世界観と魅力的なキャラクターの両立
- 完成度&自由度の高い戦闘パート
- 超快適な旅を約束するファストトラベルほか、遊びやすさに配慮したきめ細かい調整
奴隷から始まるシリアスなゲーム本編
キャラクターの魅力はスキットイベントや会話でフォロー
タイトルごとにほぼ毎回異なる舞台や設定が用意されたうえで、壮大なストーリーが描かれるのが特徴のひとつでもある『テイルズ オブ』シリーズ。『アライズ』もその例に漏れず、過去作の知識ゼロでも問題なく遊べるタイトルになっている。そんな『アライズ』の物語は、歴代のシリーズの中でもかなりハードな世界観のもとで展開される。舞台はダナとレナと呼ばれるふたつの惑星が存在する世界で、高度な科学&魔法技術を持つレナ人がダナ人を300年間に渡って支配。プレイヤーは奴隷として過酷な労働に従事させられている記憶喪失の青年、アルフェンの視点から本作の世界のなりたちや、ストーリーなどを体験する。
▲過酷な労働を強いられている奴隷の視点から物語が始まる本作。この時点ではアルフェンという自分の名前すら覚えておらず、“鉄仮面”と呼ばれている
▲中世ヨーロッパのようなファンタジー世界だけでなく、SF要素も絡んでくるのが本作の特徴
▲従来の『テイルズ オブ シリーズ』と比べると頭身が高めなキャラクター。彼ら、彼女らがセリフやシチュエーションにあわせて感情の機微を表現するビジュアルも魅力のひとつ
『アライズ』の物語はこのアルフェンと、ゲーム開始後まもなくアルフェンと出会い行動を共にすることになるレナ人の女性、シオンが5つに分断されたダナを支配するす領将(スルド)を討つため、旅に出ることで進行していく。分断されたダナはそれぞれ炎が渦巻く国、光を失い雪に覆われた国といった、RPGらしいビジュアル的な変化のみならず、国によってダナ人とレナ人の関係性も浮き彫りに……。
・ダナ人が徹底的に搾取されている国(カラグリア)
・レナ人の支配とダナ人どうしの監視密告で息苦しい国(シスロデン)
・ダナ人とレナ人が”共存”する緑豊かな国(メナンシア)
・ダナ人の抵抗運動が実を結んだ結果、荒廃した国(ミハグサール)
・絶対強者ひとりに恐怖で支配される国(ガナスハロス)
と、異なる視点で描かれ、ストーリーに起伏と深みを加えている。
▲ゲーム開始から間もなくアルフェンと行動をともにすることとなるシオン。回復魔法をふくめた星霊術と、SFガジェット的な形状&性能をそなえた銃での攻撃を得意とする
▲2つ目に訪れる国、シスロデンではダナ人は使えないはずの星霊術を駆使して戦う少女、リンウェル(写真上)と、格闘攻撃に特化したシスロデンの元憲兵、ロウ(写真下)が仲間になる
▲メナンシアで起こる事件を解決すると、キサラ(写真上)とテュオハリム(写真下)が加わり、本作のパーティーメンバーが全員そろう
そしてゲーム的には、新しい国を回っていくうちに、操作可能な仲間キャラクターや戦闘で利用できるシステム、ふくろう探しや牧場での飼育、釣りといったミニゲームなどがアンロックされていくのも魅力だろう。加えて仲間が増えると移動や野営時の会話、ゲーム進行中にときおり挿入される仲間どうしの雑談、”スキット”にもコミカルな内容のものの割合も増えていくし、徐々に6人のパーティーメンバーが本当の仲間としての関係性を築いていく様子も確認できる。キャラクターに感情移入してRPGを遊びたい人にとっては、そこもゲームを進めていく魅力になるはずだ。
▲スキットでは本編を補足するような情報のほか、パーティーメンバーの趣味や意外な一面を知ることができる。スキットをチェックしているかどうかで、テュオハリムやキサラ、シオンあたりへの印象はかなり変わるはず
▲『テイルズ オブ』シリーズではおなじみ、料理レシピ集めや釣りといった本筋とは直接関係がない遊びの要素も盛り込まれている
さまざまな遊び方を模索できる戦闘パート
先が気になるストーリーやキャラクターの魅力だけでも十分に高いモチベーションで遊べた『アライズ』だが、筆者がゲームをプレイして気に入ったのはバトルパート。RPGを遊ぶうえでもっとも多くの時間を割くことになるであろう戦闘が、苦になるどころか「もっと戦いたい!」という気持ちに。こちらから敵シンボルにエンカウントしていくぐらい楽しかったことが、強く印象に残っている。▲よほどレベルの離れた敵でもない限り、本作の戦闘はただ(通常攻撃で)殴り続けるだけでは敵を倒すことはできない。しかしシステムを使いこなして戦えれば、やりごたえがあって見栄えもいいバトルが楽しめる
『アライズ』の戦闘は、パーティーのうち4名が戦闘に参加し、プレイヤーはその中からひとりを選んで操作、武器での通常攻撃や術技といったキャラクター固有の攻撃で敵にダメージを与えていく……という『テイルズ オブ』シリーズの基本は押さえつつも、(4人で戦えるシスロデン攻略以降は)よりアクションの自由度が高まっているのが特徴的。
まず本作の術技は、魔法系のタイプもふくめて攻撃に使用するものは時間経過や特定の攻撃を当てると短時間で回復するアーツゲージ(AG)を消費して放つ形式。そのため術技を出し惜しみする必要がほとんどない。そのうえでゲームを進めていくと、自分が操作するキャラクターには最大12種の術技(地上技6、空中技6)のショートカット登録が可能になるため、術技から術技をつないでヒット数を伸ばしていくコンボを容易に思いつきやすく、また実行もしやすい。
▲敵の攻撃パターンを観察しつつ、隙をさらした際に反撃。通常攻撃や術技でヒット数を稼ぎ、より強力な攻撃手段へつなげていくのが本作のセオリー
▲攻撃系の術はほぼ無制限に使えるが、回復術に関してはパーティーで共有しているキュアポイント(CP)を消費して発動させる。そのため初めて訪れるダンジョンを探索する際は、残りCPと手持ちのグミ(回復アイテム)と相談しながら進む必要がある
実戦ではここにCPUが操作するキャラクターの行動に合わせてヒット数を稼いだり、キャラクター固有の攻撃を当てて特定の種族の弱点を突くブーストアタックをしかけたり、高威力かつド派手な秘奥義「ブーストストライク」なども組み合わせることになったりするため、敵にダメージを与える手段はとにかく豊富。
ゲームスピードも速いこともあって初めのうちは操作が煩雑に感じるかもしれないが、筆者の場合は操作の忙しさがいつの間にか戦闘中に”やれることが多い”という魅力へと変わった
▲ブーストアタックはシオンなら飛行するズ―グル(モンスター)を撃墜、キサラなら敵の突進攻撃に合わせて発動するとダウンを奪えるなど、敵の強みを消しつつ攻撃するチャンスを作り出せる便利で強力な攻撃手段
▲敵の体力を一定以下まで減らしたうえで、ヒット数がとぎれないように攻撃を当て続けていると発動するブーストストライク。ザコズーグルに対しては一撃必殺の攻撃となり、ボス敵にもまとまったダメージを与えられる。発動したキャラクターの組み合わせによってそれぞれ違った専用の演出が見られるのも魅力
さらに誰をプレイヤーが操作するかでプレイ感覚が変わるのも、飽きずに戦闘を楽しめた理由のひとつ。斬撃がメインのアルフェンと武器が銃+術のシオン、術攻撃に特化したリンウェルで戦闘時の立ち回りが大きく変わるのはもちろん、アルフェンと同じ近接攻撃タイプのロウ、キサラ、テュオハリムもそれぞれ使い勝手が異なり、その特徴がとくに顕著なのがキサラとテュオハリムのふたり。
キサラはほかのキャラクターを操作時だと多用することになる回避行動を取ることはできないが、その代わりに盾を使ったガードが可能。アルフェンやロウのような機敏な動きの代わりに、ガードしながら技を出せるため、雑に戦う(ハイスピードな戦闘が苦手な)場合はアルフェンたちよりも手堅い戦果を挙げられる可能性を感じた。
▲ディフェンスにまつわるシステムがほかのキャラクターと異なるため、自分で操作すると最初のうちは独特の操作感覚に少し戸惑うキサラ。ガードしながら殴れるという強みを活かして戦うと、個性を出しつつ敵の撃破も捗るようになる
逆にテュオハリムの場合は、棒術での近接戦、術攻撃、回復系の術など、戦闘中に取れる行動の多彩さが長所なキャラクター。敵の攻撃をジャストタイミングで回避するほどパワーアップしていく特性を活かす必要があったり、シオンを同時に戦闘へ参加させないと戦線が崩壊しやすかったりと(筆者の場合、ゲームスピード的に回復役をこなしつつ強敵と戦うのは無理だった)、扱いの難しさを感じる場面は少なくなかったが、使っていて楽しいキャラクターだった。
▲ゲームへの理解度が高まり、戦場全体を見られる視野のあるプレイヤーが使うと強いデュオハリム。彼を操作すると、本作のCPUが回復術を唱えるタイミングがかなり絶妙だということを思い知らされる
作りこまれているがゆえにメジャーなRPGの中ではそれなりに歯ごたえのある難易度になっている『アライズ』の戦闘だが、ゲームスピードの速さについてはいつでも開けるメニュー画面で疑似的なポーズをかけることで解決、どうしても倒せない敵がいる場合は、対象の敵と戦う際だけ難易度を下げて再挑戦するという手もある。
キャラクターの使い分けに関してもゲームを進めるだけならアルフェンの操作にだけ精通していれば問題はないし、パーティーメンバーを変えるだけ、たとえば、
・近接攻撃が得意な仲間 (ロウ、テュオハリム)を多めに入れるとヒット数が伸びやすく、ブーストストライク発動での早期決着が望める
・シオン、テュオハリムのダブル回復役で生存力アップ
・キサラを囮に自分(アルフェン)は側面or背後から接近、残りふたりの仲間は安全に術で攻撃
といった感じで、さまざまな戦い方を体験することはできる。アクションゲームがそれほど得意でなくても戦闘を楽しみつつストーリーも進められる作りにはなっているので、ゲームの難易度に対する評判が気になって本作を敬遠している人は、気にせず触ってみてほしい。
▲獲得したスキルポイントをどう割り振っていくかも、悩ましくも楽しいポイント。まずは使用できる術技を増やしつつ、気に入った攻撃手段が数種類そろったらステータスアップに使っていくのがベターだろうか
移動やサブクエストをストレスフリーで進められる「調整の妙」
最後に本作がユーザーの”遊びやすさ”にもかなり力を注いでいる点にも触れておきたい。まず挙げたいのがファストトラベルの存在。本作の街やフィールドの大半にはファストトラベルポイントが設定されており、マップを開いてポイントを選べば、ワンボタンでいきたい場所まで移動できる。使えるタイミングもかなり自由で、制限されるのは一部のストーリー進行中、たとえばパーティーメンバーのひとりが攫われている間など、話の展開的に寄り道が可能だと没入感が損なわれる際のみ。平時ならズーグルに囲まれて戦闘が始まる寸前であってもマップを開けさえすればファストトラベルが行えるため、緊急回避の手段としても活用できる代物だ。
▲マップにはファストトラベルポイントのほか、サブクエストが受注できる場所、入るストーリーが進行するポイントなども表示される
このファストトラベルのおかげで、本作はサブクエストの消化やアイテムの収集、釣りなどを遊びたいと思ったときに、その前段階の”移動”でストレスを感じることがほぼない。短めのロード時間もあいまって手際よくクエストを進められるし、ふだんはゲーム本編をクリアーしてしまったらオマケ要素のコンプリートは放置しがちな筆者のようなプレイヤーでも、料理のレシピやダナフクロウ探しを進められた。
▲特定の素材を収集する系統のクエストに関しては、依頼者に話しかけた時点で必要なものがそろっていると、その時点で素材を渡す選択肢が出現。即座にクエストを完了させられる
そのほかにも、
・クエストが受注できる場所やストーリーが進行するポイント、一度見つけた素材が収集できる場所はマップにはっきり表示される、
・会話した住民にはチェック済みのアイコンが浮かぶ
・PCフリーズなど不慮の事態にも対応できるオートセーブ(つねにふたつのオートセーブデータが残っている)など
・フィールドやダンジョン入口でアイテムの売買に武器やアクセサリーの強化、牧場の管理までしてくれる行商人
など、細かいがゲームをやっていると便利、あってよかったと感じる仕様が随所に施されており、その積み重ねが本作全体の遊びやすさにつながっている。
一部の地形がジャンプで渡れたり降りられるのかがわかりづらい、会話発生時に敵と接触するとその話が最後まで聞けなくなるといった点は個人的に不満を感じたものの、ゲームを進めるうえで親切な仕様が数多く盛り込まれていることはまちがいない。普段、「RPGって話を進めるのがかったるいんだよな……」と思っている人ほど、『アライズ』をプレイすると驚きを感じられるはずだ。
▲街を訪れるたびにセリフが変わっていないか気になって話しかけてしまう筆者としては、住民の頭の上に表示される既読アイコンがありがたかった
ストーリーに没入させるための世界観作りに快適に遊べる仕様、練られた戦闘システムなど、随所に完成度の高さを感じさせる『テイルズ オブ アライズ』。本編の購入のみでボリュームのある(筆者の場合はゲームクリアーまでにおよそ50時間プレイ)ゲーム体験ができるうえに、コラボ衣装などダウンロードコンテンツの展開は10月に入っても続いている。大作RPG、質の高いアクションゲームを遊びたいという人には、いまから始めても十分に楽しめるタイトルとしてお勧めできる1本だ。
Tales of Arise TM & (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
●タイトル:テイルズ オブ アライズ
●ジャンル:心の黎明を告げるRPG
●発売元:バンダイナムコエンターテインメント
●開発元:バンダイナムコスタジオ
●プラットフォーム:PC(Steam)、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2021年9月9日(Steam版は9月10日)
●価格:
【PS5/PS4 パッケージ版】
通常版 8778円[税込]
ASOBISTORE collector's edition 2万1780円[税込]
ASOBISTORE figure edition 1万7380円[税込]
Premium edition 1万2980円[税込]
【Steam/PS5/PS4/Xbox ダウンロード版】
通常版 8778円[税込]
Ultimate Edition 1万4300円[税込]
Deluxe Costume Edition 1万2650円[税込]
Deluxe Sound Edition 1万780円[税込]
【Steam ダウンロード版】
Steam版 Ultimate Edition 1万3750円[税込]
Steam版 Deluxe Edition 1万1000円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-2300 または AMD Ryzen 3 1200
メモリー: 8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX760 または AMD Radeon HD7950
ストレージ: 45GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー: Intel Core i5-4590 または AMD FX-8350
メモリー: 8GB
グラフィック: NVIDIA GeForce GTX970 または AMD Radeon R9 390
ストレージ: 45GB
●公式サイトURL:https://toarise.tales-ch.jp/
●Steam版ダウンロードサイトURL:
https://store.steampowered.com/app/740130/Tales_of_Arise/