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宇宙最強が再び更新されたゲーミングノート120Hz液晶+GeForce® GTX 1080搭載の「ALIENWARE 17 プラチナVR」レビュー

PCゲームは高スペックの大型デスクトップPCで遊ぶのが一番快適だとは分かっていても、セットアップが楽で場所をとりにくいノートPCが良いという人は多い。ゲーミングノートはサイズという物理的制約、製品コストという2つの制約をもろに受けやすいため、中途半端な製品は性能も中途半端になってしまうことが多い。

それでもゲームはノートPCで遊びたい……というコアゲーマーが真っ先に検討すべきは、強力なCPUとGPUを搭載した17インチクラスの大型ノートだ。各PCメーカーがフラッグシップモデルという形でこだわり抜いた設計の製品が多いため、一番面白い製品の多いジャンルだが、宇宙最強を標榜するALIENWAREシリーズにも17インチモデルが存在する。

今回テストすることができた「ALIENWARE 17 プラチナVR」(以下:ALIENWARE 17)は同社の17インチゲーミングノートの最上位モデルだ。CPUに「インテル® Core™ i7-7820HK プロセッサー」、グラフィックには「GeForce® GTX 1080」というノート用最強のCPU/GPUを搭載し、さらに17インチWQHD(2560×1440ドット)G-Sync IPS液晶という“飛び道具”まで備えた究極のゲーミングノートだ。

新製品登場のたびに宇宙最強記録を更新する「ALIENWARE」シリーズの中でも、最強最速を誇る17インチモデルがこの「ALIENWARE 17 プラチナVR」。デル直販サイトで26万4980円(税別)より販売中だ

シンプルで機能性を追求した外観デザイン

まずはALIENWARE 17の外観からチェックしていこう。全体的なデザインやテイストは既に当サイトでもレビュー済みの「ALIENWARE 15」と共通だが、液晶が17インチなので本体サイズも一回り大きい。液晶ヒンジは本体の最後部ではなく、若干前にオフセットされているが、これはラジエーター風の構造を後部に張り出すことで冷却システムの効率を最大限に高める工夫だ。

本体は大きいがインターフェースは側面でなく背面に集中的に配置されている。そのためALIENWARE 17はほぼ据え置き前提の設計であることが読み取れる。搭載インターフェース(特にUSB3.0)は本体の大きさの割に少ないため、別途USBハブを用意しておいた方がよいだろう。

グレイ(エイリアン)をモチーフにしたALIENWAREお馴染みのエンブレムを配した天板

17インチWQHD液晶は広いというより“絵が緻密”。画質はOLED液晶を備えたALIENWARE 13には及ばないものの、美しい映像が堪能できる。液晶付け根の部分の色が違うのは、このスペースに、後述するアイトラッキングシステム「Tobii」のセンサーが埋め込まれているためだ

本体左側面にはUSBタイプAおよびCポートがあるが、電気的にはいずれもUSB3.0なので速度の上限は5Gbpsとなる

本体右側にはUSB3.0が1基のみというかなり割り切った設計。SDカードリーダーすら持たないのは、写真はWi-Fi同期やクラウド経由で行うという時代の趨勢を読み取ったからなのだろう

背面はギガビットイーサネットのほか、HDMI出力やThunderbolt™3ポート、同社の「Graphics Amplifier」を接続する専用ポートなどが配置されている。HDMIや有線LANを背面に回すことで、側面から太いケーブルが出るのを阻止する設計上の狙いが読み取れる

ALIENWARE 17のキーボード。触ると分かるがキーキャップ中央が絶妙な皿形になっており、指の着地を見事に受け止めるほか、隣のキーの誤爆がすぐ分かるようになっている。キータッチはCHERRY MX赤軸並みに軽く、軽やかに打鍵できる

ALIENWARE 17には9個(左端に5個、テンキーの上に4個)のマクロキーを備える。配置的にFPSでは使いにくいため、MOBAやMMO、あるいは実務アプリでのショートカットを登録して使うためのものと考えるべきだろう

ゲームを快適にプレイするために厳選された採用パーツ

改めて本体内部に目を向けると、CPUは「インテル® Core™ i7-7820HK プロセッサー」。ノート用のインテル® Core™ i7 プロセッサーといえば本機の下位モデルでも採用されている「インテル® Core™ i7-7700HQ プロセッサー」がメジャーな存在だが、インテル® Core™ i7-7820HK プロセッサーは3次キャッシュが8MB(インテル® Core™ i7-7700HQ プロセッサーは6MB)と大きく、ブースト時の最大クロックも4.4GHz(同じく3.8GHz)と、デスクトップ用のインテル® Core™ i7-7700K プロセッサーにかなり近い設計になっている。最近のゲームではCPUがGPUの足を引っ張ることも見られるようになっているため、本機のインテル® Core™ i7-7820HK プロセッサーの存在は非常に頼もしい。さらにメモリもDDR4-2400でなく、1段上のDDR4-2666にオーバークロック(OC)されたものが使われているなど、性能確保に対し妥協していない点は素晴らしい。

「HWiNFO64」でハードの情報をチェックしたところ。3次キャッシュ8MBのノート向けハイエンドモデル「インテル® Core™ i7-7820HK プロセッサー」が搭載されていること、メモリは普通のノートPCより速いDDR4-2666である等が読みとれる

グラフィックは前述の通りGeForce® GTX 1080だが、ここで注目したいのは液晶のスペックだ。本機の液晶のリフレッシュレートは120Hz。通常の液晶の2倍の速さで画面を書き換えるため、動きの速い物体を表示させても通常の液晶よりはるかに視認しやすい。PCゲーマーにとって高リフレッシュレート液晶は定番装備といえるが、本機はそれを標準装備。さらに画面のティアリングや表示遅延に由来するモタつきを解消する「NVIDIA® G-SYNC™」にも対応。ゲーミングノートとしては現時点でほぼ最強の液晶といってよいだろう。今時液晶解像度が4Kより小さいのはちょっと……と考える人もいるかもしれないが、4Kドットバイドット表示のゲームは非常に重いうえに、ノート用4K液晶はリフレッシュレートが60Hzになるなど、ガチゲーマーにとってはデメリットの方が大きいのだ。

【注意】本PCで採用されているパーツは、生産時期やロットによって変更される場合があります。

「画面のプロパティ」には本機の液晶のリフレッシュレートは120Hzまで設定可能とある。ALIENWARE 17を使い始める時は、この表示が120Hzに設定されていることを必ず確認しておこう

OS側でリフレッシュレートが120Hzに設定されていれば、ゲーム側でも解像度指定に120Hzの選択肢が出現する。画面は『Overwatch』の設定画面

「HWiNFO64」で液晶の素性を確認したところ、ハードウェアIDから台湾AUO社製の液晶であることが読み取れた

また、ストレージは超高速なNVMe SSDとHDDの組み合わせ、ネットワークは802.11ac対応の無線LANとゲーマー向け有線LANとして知られる「Killer E2500」のデュアル仕様。SSDはコスト圧縮のためか容量は256GBと小さめだが、HDDをデータ置き場や録画時の書き出し先として利用することで十分カバーできる。

デバイスマネージャでストレージとネットワークデバイスをチェック。ストレージはNVMe SSDとHDDのデュアルドライブ構成だ。前者はサムスン製「PC300」、後者はHGST製の7200回転モデルが搭載されていた

有線および無線LANは全てRivet Networks社製の「Killer」シリーズが採用されている。ゲームの通信に最適化されているほか、有線と無線を当時に使うことでゲームの通信と実況配信の帯域が衝突しないようにする(回線の帯域は別の話)機能を備える

ALIENWAREならではの個性を表現できるイルミネーション機能

ALIENWAREシリーズはボディーの作り込みと高級感に定評があるが、ソフトウェア的な面でも手抜きがない点も力説しておきたい。ボディーのイルミネーションの色を変更できるとか、キーにちょっとしたマクロを設定できるといった要素は他社製のゲーミングPCでも見られるようになったが、ツールの内容や完成度はALIENWAREシリーズは非常に充実している。

ALIENWARE 17を手に入れたらALIENWAREシリーズ共通の「Command Center」を開こう。ボディーのイルミネーションの発光制御は部位ごとに点灯パターンまで制御できるので、ゲーム中だけオン、ゲーム以外の時はオフといった制御も思いのままだ。また、ゲーム中にどの程度CPUやGPUが使われているかの監視機能もCommand Center内に実装されている。ゲームが重いと感じたらこの監視機能を使って記録をとってみるとよいだろう。CPUやGPUの使用率が100%近くにならないのに重く感じるなら、それはネットワークやサーバ側の問題も疑うべきだからだ。

ALIENWAREシリーズではお馴染みのイルミネーションの制御機能「AlienFX」。キーボードは4エリア、正面や天板のロゴなど部位ごとに点灯する色の順序まで細かく設定できる。デフォルトのテーマも豊富なのが◎だ

イルミネーションを点灯させた様子

AlienFXが“動”なら「AlienAdrenaline」は“静”の機能。CPU/GPU/メモリ/ネットワークの使用率がグラフ化される。ゲーム開始前に記録を開始しておき、ゲーム終了後に見直せばパフォーマンス改善の糸口が掴めるかもしれない


Alienware TactX™」はALIENWARE 17が持つ9個のマクロキーの設定を行う機能。マクロセットを3通り持てるので、ゲーム内のコマンドを登録するほかに、頻用するアプリのショートカットを登録しておくと作業が捗る

“正体不明ゲーマー”になれるボイスチェンジや実況プレイのサポート機能

Command Centerの次に見るべきはALIENWARE 17のサウンドシステムだ。「ALIENWARE Sound Center」と銘打たれてはいるが、中身はノートPC用高品質サウンドとして定着した「Nahimic2」をベースにしたものだ。ゲームのジャンルや用途(音楽や動画鑑賞)に合わせた音質調整やバーチャルサラウンド化のほかに、ボイスチャット音声の明瞭化等の機能を備えている。ALIENWARE 17のサウンド機能は単体で聴くだけでも聴きやすいが、ヘッドセット等を介して使う場合でも、Sound Centerは強力な助っ人となるはずだ。

Nahimic2のインターフェースそのままのSound Center。ゲームのジャンルごとに低音・高音のブーストやバーチャルサラウンド機能の有効・無効化ができる

ボイスチャット(本体マイクまたはアナログ入力使用時)でもノイズやエコーの低減機能を備えている。若干ラグは出るが自分の声を即時変調させる機能は正体を知られたくないゲーマーにとっては面白い機能だ

Nahimic2独特といえるのがホットキーで効果音を出す機能。ゲーム実況にちょっとSEでアクセントを付けたい時に活躍するはず

また、前述の通りALIENWARE 17にはアイトラッキングシステム「Tobii」のフルシステムが搭載されている。下位のAW15にはユーザの瞳を検知して省電力化する機能が搭載されているが、ALIENWARE 17の場合は瞳の動きも捉え、それを利用してゲームの操作を補助することができる。視線で画面の左の方を見れば、左を見るような操作に変換されるというものだが……正直なところガチゲーマーにとっては予想できないタイミングで画面が動いてしまうため、あまり使いでのない装備。対応ゲームも限られているため、どちらかといえば“接待用”の装備という印象だ。

Tobiiはタスクトレイに常駐している。右下に2つの円が出ているが、これはユーザーの瞳を認識しているというサインになる

初めてTobiiを使う際はキャリブレーションを行う必要がある。ミニゲームでTobiiの操作に馴染めるか判断しよう。新鮮ではあるが、マウスで動かした方がエイミングは遙かに楽だ(当然の話だが)

ノートPCとしての基本性能もハイパフォーマンス

【注意】以下の検証は、ALIENWARE ZONEが独自に行ったものです。確かにALIENWAREの名を冠している媒体ではありますが、ベンチマークの数値を保証するものではありません。あくまで参考としてご覧下さい。

ゲームのパフォーマンスを検証する前に、ノートPCとしてALIENWARE 17を見た場合の性能をチェックしておきたい。まずはCPUの馬力を見る「CINEBENCH R15」だ。

CINEBENCH R15のスコア

ALIENWAREシリーズに速攻で採用された話題のCPU「AMD Ryzen™ Threadripper™プロセッサー」のように最近はマルチスレッド性能に超特化したCPUが出現しているが、ノート用CPUは4コア8スレッドが今のところの限界。マルチコアテストで600ポイント台はノートPCとしてはとても良いスコアといえるだろう。

続いてはグラフィックのパフォーマンスを見る定番「3DMark」と、VRシステムにおける快適度をみる「VRMark」を試す。前者は“Fire Strike”“Fire Strike Ultra”の2テストを、後者は“Orange Room”“Blue Room”をそれぞれ実施した。

「3DMark」Fire Strikeのスコア

「3DMark」Fire Strike Ultraのスコア

「VRMark」Orange Roomのスコア

「VRMark」Blue Roomのスコア

GeForce® GTX 1080を搭載した製品だけあってスコアも高い。4Kゲーミングを想定したFire Strike Ultra、将来のVRシステムを想定したBlue Roomになるとスコアはかなり減るが、これらのテストで高スコアが要求される(特にBlue Roomは非常に重い)のは相当先になることだろう。

続いてはストレージ(SSDおよびHDD)の読み書き性能を「CrystalDiskMark」で計測してみた。テスト条件はデフォルトの1GiB×5を選択している。

「CrystalDiskMark」を利用したOS起動ドライブ(SSD)の読み書き性能

「CrystalDiskMark」を利用した内蔵HDDの読み書き性能

SSDについては現在最速のものだと読み出しは3GB/秒を超えるものが出てきているため、CPUやGPUまわりの豪華さに比べるとやや見劣りする部分は否定できない。だが今回試した読み出し速度1.6GB/秒のSSDでも、ゲーム用途としては十分な速さであるといえる。現時点で最速のSSDを持ってきても、ゲームの読み込み待ち時間が短くなることはないからだ。

ゲームの検証に移る前に、総合性能をみるベンチマーク「PCMark10」を試した。出たばかりのベンチなのでスコアの善し悪しの基準がないが、今後別のPCと性能を比較する際に、このスコアがALIENWARE 17の凄さを再認識する手がかりになるかもしれない。テストは全テストを実行する“Extended”を実行した。

「PCMark10」Extendedテストの結果

リフレッシュレート120Hzの液晶に負けぬパワーを発揮

それでは実ゲームでのパフォーマンスチェックに入る。最初は『ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター』の公式ベンチマークを使用する。画質は一番重い“最高品質”とし、解像度はフルHD(1920×1080ドット)および液晶のドットバイドット表示であるWQHD(2560×1440ドット)で計測した。

また、ALIENWARE 17クラスのゲーミングPCで同ゲームのベンチを実行しても、7000ポイント以上で得られる“非常に快適”以上の評価がないため性能が実感しにくい。そこでベンチ中の平均フレームレートも合わせて比較することにした。

『ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター』公式ベンチのスコア(上:フルHD、下:WQHD)

上のスコアが出た状況における、テスト中の平均フレームレート

より負荷の高いWQHDですら7000ポイントを軽く超えてしまうためスコアによる評価は全くできないが、平均fpsだと違いが出てくる。フルHDの方がWQHDよりも平均20fps程度滑らかに描画できることが確認できた。一番重い最高品質設定とはいえALIENWARE 17のスペックをもってしても平均120fpsに届かなかったのは少々惜しい気がするが、ベンチマーク終盤のFATEを模した戦闘シーンが特に重く設定されている(ベンチマークソフトだから当然だが)ことを考えれば、仕方のないところだろう。

ベンチ中一番重いシーンがこのあたり。遠景が見通せるうえにエフェクトがそこら中で炸裂するためALIENWARE 17でもわずかに処理落ちが発生する。画像はフルHD時のもの

同じ戦闘シーンでも多量の軍勢が出るシーン(上)では90fps前後だが、ラストのボス戦(下)では140fpsを超える

FATEのシーンにおける処理落ちはWQHDの方が激しい。とはいえ40fpsは出るので動けなくなるほど固まるという訳ではない

派手な透過エフェクトがあるシーンや単にキャラが多いシーンだと90fpsを割ることも。プレイ自体は快適なのでそこまで気にすることもないだろう

ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター』はMMOゆえに動きはやや乏しいゲームだが、eSports系の『Overwatch』はその対極にあるゲームといえる。ここではマップ“King's Row”におけるBotマッチをプレイした時のフレームレートを「Fraps」で計測した。画質は一番重い“エピック”と、その下の“ウルトラ”の2通りを試した。

『Overwatch』1920×1080ドット時のフレームレート

『Overwatch』2560×1440ドット時のフレームレート

リフレッシュレートが60Hzの液晶を備えているなら最低60fps以上なら絶賛しているところだが、今回のALIENWARE 17は120Hz液晶なので、評価のハードルも少々高い。フルHDでもエピック画質だと、微妙に120Hzを下回るシーンも見られたので、快適さにこだわるのであればウルトラ画質の方がよいだろう。ただエピック画質の場合、キャラやエフェクトが画面を覆う状況よりも、遠距離を見通せる状況でのフレームレートが落ち込むようだ。つまり近〜中距離程度の戦いならば、一番重い設定でも全く問題ないだろう。

フルHD&エピック画質だと、エフェクト祭り(下)になっても120fpsをわずかに下回る程度。それよりも(上)のような遠距離が見通せる状況の落ち込みが激しかった

画質を1段落とすと、重いシーンでも140fps以上となり、液晶のアドバンテージが最大限に引き出されることになる

WQHD&エピック画質にすると、フレームレートの平均値は一気に下がる。80〜90fpsあたりでウロウロする感じだ。100fpsを超えるのは主にリスポーンポイントから移動するような状況のみだ

ドットバイドット表示にこだわるなら、ウルトラ設定が上限と考えるべきだろう。フレームレートは100fps弱で踏ん張ってくれるため、ハデに暴れても画面表示は非常に滑らかだ

『Overwatch』は比較的描画負荷が低めのゲームなので、今度は純粋に描画負荷の高いゲームでのパフォーマンスをチェックしよう。ここでは『Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands』のベンチマーク機能を利用する。画質は一番重い“ウルトラ”を使用したが、その2段下の“高”設定も試した。ウルトラ設定にすると草の表現が超絶にリアルになる“Turf Effects”が有効になるが、ALIENWARE 17はその負荷に耐えられるだろうか?

『Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands』1920×1080ドット時のフレームレート

『Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands』2560×1440ドット時のフレームレート

残念ながら『Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands』のウルトラ設定で120fps以上キープできるGPUはまだ存在しない(それだけこのゲームの描画負荷が高いということだ)。ALIENWARE 17のパワーをもってしても、フルHDでは60fpsを超えることすら許されなかった。ただ画質を2段落とせば80fps前後でプレイできることも確認できた。WQHDでのプレイは……さらに画質を落とすか、諦めた方が得策だが、これを超高fpsでプレイするには、GPUを2基備えたゲーミングノートでも厳しいだろう。

フルHDでの比較。ウルトラ画質(下)はほとんど動きのない状態でも60fpsと厳しいが、2段下の高画質設定(上)にすれば、100fps近くまで上がる。地面のテクスチャーや樹木の影の描写がかなり省略されるが、滑らかさ優先なら画質は落とさざるを得ない

最後に試すゲームは今人気ダントツのPUBGこと『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』を試してみた。フレームレート比較のグラフは最初にプレイヤーが集う小島で「Fraps」を用いて計測したものだが、プレイヤーならご存じの通り『PUBG』はどんなハードを使おうと“突然画面がカクっと来る”ため、最低fpsは特に信用ならない。テストをした時は“こんなデータが出た”という程度で見て頂きたい。ただ平均fpsについては、割とプレー時の感覚(これもどこで戦うかによっても違うのだが)に近いものになっている。画質は3段階で計測したが、「低〜中設定」とはテクスチャのみ“中”、後は「低」という設定にしている。

『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』1920×1080ドット時のフレームレート

『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』2560×1440ドット時のフレームレート

どう頑張っても常時120fps維持はできないのは『PUBG』側の問題だが、平均fpsベースで見ると、ALIENWARE 17なら画質“中間”が一番見た目とフレームレートのバランスが良い印象だ。フルHDならウルトラ画質でもプレイは快適だが、120Hz液晶のアドバンテージが活かせなくなる。中間画質ならWQHDでもそこそこフレームレートが出る点にも注目しておこう。GeForce®系GPUの標準録画機能(Share)を使うと3%前後フレームレートが落ちるので、録画前提なら画質を落としてフレームレートに余裕を持たせるのが得策だ。

ちなみに、ALIENWARE 17のサウンドシステムの威力を一番感じられたゲームがこの『PUBG』だった。Nahimic2はバーチャルサラウンドなので足音の方向から正確に方位を割り出すのは難しい(リアル7.1chヘッドセットが欲しいところ)ものの、敵の存在を聴覚で素早く捕らえることができた。密閉型ヘッドセットで音に集中できる環境を作ることが必要だが、ぜひともALIENWARE 17のサウンドシステムでドン勝を平らげて頂きたい。

フルHDでもウルトラ画質だと50fps台にストンと落ち込む。ただこれは『PUBG』側の問題でもある

フルHD&ウルトラ画質でも60fpsを超えるので快適に遊べることは確かだが、液晶のパフォーマンスをフルに活かせてない感はある。室内なら90〜100fps程度で安定

フルHD&中間画質でも、こういう開けた場所でオブジェの沢山あるシーンはフレームレートが落ち込みやすい

開けていても90fps程度まで上がることも多く、ウルトラ画質よりもフレームレートが上がったぶん、立ち回りしやすい印象がある

ウルトラ画質のままWQHDにしてもALIENWARE 17ならちゃんと遊べる。ただ屋外のシーンなどで50fpsを割ることが多くなる(上)。大抵は60fpsあたり(下)でプレイ可能だ

中間画質にすればWQHDでもしっかりフレームレートは稼げる。一瞬50fpsを下回ることはある(上)が、屋外では60〜70fpsあたりで動ける(下)感じ

真の凄さは熱&クロック管理にあり

こういったハイパワーノートでは発熱が問題になりやすい。ボディー容積が少ないぶん、冷却システムの大きさも制限され、結果的にゲームで長時間高負荷をかけると性能が熱でダレてくる現象が起こる(そういう意味では『ファイナルファンタジーXIV』や3DMarkといったベンチマークは、負荷の長さが足りない)。

ではALIENWARE 17はどの程度熱ダレするのだろうか?ということで『Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands』を起動し、ゲームを始めて30分放置した時のCPUおよびGPUの温度、そして一番熱の影響を受けやすいGPUクロックの推移を「HWiNFO64」で追跡してみた。画質は「フルHD&ウルトラ」設定であるため、GPUはゲームにおけるフルパワーに近い状態といえるだろう。

室温27℃環境でゲームを30分動かした時の温度推移

ゲーム開始後間もなくはCPUは95℃で天井をうち、最終的に90℃前後で安定。GPUも90℃がピークだが、CPUほど変動はしていない。デスクトップ型のゲーミングPCに比べると確かに温度は高めだが、室温27℃の真夏にこの温度で安定していれば、十分管理された温度といえるだろう。ファンノイズも確かに聞こえてくるが、エアコンの音の方がずっと目立つ状態だ。

だが温度推移を知っただけでALIENWARE 17を評価するのは早計だ。今度は視点を変えてGPU温度とGPUクロックの推移を追跡してみよう。

前掲のグラフと同じ状況で、GPU温度とGPUのクロックを追跡したもの

ゲーム開始直後、GPUのクロックは1860MHzを記録するが、GPU温度上昇に伴い少しずつ低下。最終的に1797MHzで安定しているが、このクロック推移はゲーミングノートでは非常に珍しいものなのだ。現行GeForce®系GPUでは、熱や消費電力に余裕のある時にクロックを自動でブーストするが(つまり発熱すればクロックは下がる)、特にゲーミングノートではクロックはCPU温度グラフのように刻々と変動するものなのだ。しかしALIENWARE 17の場合、1797MHzになってからは、ほぼそのラインで動かない。ファームウェアレベルで高クロックを維持するようチューニングされていることと、高クロック動作させても冷やしきるハードウェア設計の両方がなければ実現できないことなのだ。PCパーツショップで売られているハイエンドなビデオカードに近い思想のチューニングといえるだろう。

ノート向けのGTX 1080におけるブーストクロックは1733MHz、これに対しALIENWARE 17における実測安定値は1797MHzなので、クロックの“上げ幅”は数値としては小さいが、本来のGeForce® GTX 1080よりも性能は出ることは確かだ(そもそも1733MHzをずっと維持できないゲーミングノートの方が多いのだ)。

究極のパフォーマンスが欲しいコアゲーマーのためのノートだ

以上でALIENWARE 17のレビューは終了だ。「インテル® Core™ i7-7820HK プロセッサー」に「GeForce® GTX 1080」を搭載していてゲームが快適にならない訳がないが、特に制約の多い冷却システムをフルに活かしつつも、最大限のパフォーマンスを得られるようチューニングされたという印象が強い製品だ。NVIDIAが今年発表した「Max-Qデザイン」は採用されていないものの、パフォーマンスと快適さのバランスは最大限確保されていると感じた。

だがゲーマー視点では熱よりもリフレッシュレート120HHzの液晶に負けないフレームレートが出せるという点だろう。特にゲーム展開の早い『Overwatch』や『Rainbow Six Siege』といったゲームでは、ALIENWARE 17の液晶は戦いにおいてプレイヤーの技量に確かなアドバンテージを与えてくれる。もちろん外付けでゲーミング液晶を追加すればALIENWARE 17でなくても良い話だが、ALIENWARE 17はオールインワンになっているため、本体にACアダプターを持っていけばどこでも戦えるのが大きい。

決して気楽に買えるとは言えない価格の製品だが、ゲーマーにとって何が必要かを凝縮した、まさに“勝つための理想”を実体化したノートPCといえるだろう。

■関連リンク
デル株式会社
http://www.dell.co.jp/
ALIENWARE
http://alienware.jp/
「ALIENWARE 17」のページ
http://www.dell.com/jp/p/alienware-17-laptop/pd

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