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【ネモ選手インタビュー】社会人プロゲーマーだったからこそわかる、プロを目指す人にネモがいま伝えたいこと

目次
  1. ネモ選手は「Alienware」と共に始まった
  2. 兼業時代の働き方
  3. 専業プロゲーマーへの道へ
  4. プロゲーマーとスポンサーの関係
  5. これからの活動
ほんの数年前までのプロゲーマーは「プロゲーマー? ゲームでお金を稼げるの?」と首を傾げる人も多い職業だった。しかし2022年現在では、プロゲーマーたちの活動がTVで取り上げられることもあるほど認知度は高まり、子供たちが将来なりたい職業の上位にランキングされることも珍しくなくなっている。

今回インタビューを行ったネモ選手は、2016年にAlienwareと契約を結びプロゲーマーとなった人物だ。現在は「ウェルプレイド・ライゼスト」に所属し専業プロゲーマーとして活躍しているネモ選手だが、約1年前までは、会社勤めとゲーマー生活を両立した兼業プロゲーマーとして活動を行っていた。

専業プロゲーマーが増加する中、なぜネモ選手は兼業を続けていたのか。社会人として豊富な経験を持つネモ選手から見た、プロゲーマーの問題点とは何か。リーダーを務めるeスポーツチーム「Saishunkan Sol 熊本」を通じて果たそうとしている役割とは何か。そしてネモ選手自身の今後への展望とは何か。


ネモ選手は「Alienware」と共に始まった

――ネモ選手は、2016年7月にデルのゲーミングPCブランド「Alienware」と契約してプロゲーマー生活をスタートしました。当時の話をお聞かせください。

ネモ:自分は2015年ごろからスポンサー獲得のためにいろんな企業へ営業に行っていたんですけど、どの企業からも「ウチでは前例がないからやれない」と全然相手にしてもらえなかったんです。でも、Alienwareさんはプレゼンをしたときに「資料はもっとこうしたほうが良いね」とアドバイスをしてくれたりと、他の会社ではまったくなかった手ごたえを感じたんです。

当時のAlienware担当者はeスポーツにかなりの熱量を持っている方だったんですが、ちょうどデル本社からも、「そろそろ日本でもeスポーツをやっていきなよ」と打診があったそうで、そこに自分が現れてアタックしていたんですね。Alienwareが無かったら、今こうして自分がプロゲーマーとして活動できていませんでした。とても感謝しています。

▲Alienware Zoneでは2016年の開設から2018年まで、ネモ選手のコラムを連載していた

――印象に残っている出来事はありますか?

ネモ:自分が「こういうことをやりたい」と提案すると、すぐに一緒になって考えてくれるほど、担当者がとても熱心でした。当時、オフラインでの対戦に困っていた時期が結構あったんですよ。対戦できる場所は秋葉原の「e-sports SQUARE」くらいしかなくて、それも曜日が決まっていました。

どうすればいいのかと相談したら、AlienwareさんがPCを貸し出してくれて対戦会を開けたこともありました。2017年に「Red Bull Kumite 2017」で優勝したときも、「祝勝会をやりたいです」と申し出たら秋葉原の店舗を貸し切りにしてくれて、本当にいろんなことをしてくれましたね。

▲Alienware ASTORE AKIBAにて行った祝勝会の様子(2017年6月4日)

兼業時代の働き方

――ネモ選手は2021年から専業プロゲーマーとして活動していますが、Alienwareとの契約時やその後のTeam Liquid時代は、大半の時期を社会人との兼業ゲーマーとして過ごしています。なぜ、兼業を選択したのでしょうか。

ネモ:家庭の事情もあり、専業プロゲーマーは親の理解を得られなかったんです。しかし会社員をやりながらプロゲーマーとして活動する形なら許してくれたので、兼業でやることになったんです。

――2018年にはスクウェア・エニックスに入社しています。どのような業務を担当されていたのでしょうか。

ネモ:おもにスマホアプリの運営に携わっていました。最初は対戦型カードバトルを担当していたので、配信動画の制作などをやりつつ、バトルバランスの調整をしていました。でもしばらくしてサービスが終了してしまったので、その後はQA業務の最適化やマーケティング、Twitterの施策やイベント周りなど、それほど重くはない作業を行っていました。

▲スクエニスマホタイトルの配信番組にも出演していた

――スクエニさんからは軽めの業務を割り振られていたのでしょうか?

ネモ:その側面はもちろんありました。自分がTeam Liquidに所属していた時代には海外大会をかなり回っていたので、どうしても他の人の助けが必要だったんです。

――新型コロナウイルスの影響が出る前の時期は、『ストV』のCAPCOM Pro Tour(以下、CPT)の予選が毎週のように海外で開催されていました。体力的には厳しかったのでは?

ネモ:そのころは夢中になって仕事とゲームに打ち込んでいました。会社には午前中だけ出て仕事をして、その日の夕方に海外に行って、週末は大会に出て帰国してそのまま出社したこともありましたね。そのスケジュールを繰り替えすことが当然になっていて、休む暇はぜんぜんありませんでした。

2年くらいそのような形で活動をしていたんですけど、やはり体がきついと思う瞬間もあったんですよ。ギリギリでやりくりしていたので、いつ体調を崩してもおかしくない状態でした。「もしかしたら来年は今ほど回れなくなるかもしれない」とチームにも相談していたんですが、そこにコロナが来たんです。

――コロナの影響はどのようなものがありましたか?

ネモ:コロナ前は、簡単に言ってしまえばCPT予選に参加してポイントを稼いで、本戦に出場するのがわかりやすいゴールでした。みんな夢中になって海外に行って大会に出て、予選の結果を反省して、次に向かって練習してまた海外に行く。選手は強くなることだけを考えていればいい時代でしたね。コロナで大会自体も少なくなってしまったので、選手が自分で多くのファンをつかむために配信もやっていく必要も生まれたと思います。

仕事面でも会社がリモートワークに切り替わり、働き方が一変したのは大きかったです。世の中にはいろいろな働き方があるんだなと強く感じましたし、自分の頭の中で「プロゲーマーもひとつの働き方なんだ」と納得できた部分もありました。親に「今の働き方だと辛いから、専業でやりたい」と話をしたのもその時期です。

――そのときの親御さんの反応はいかがでしたか?

ネモ:「あんたの好きにやりなさい」と言ってくれました。昔はプロゲーマーという存在がよくわからなかったようなんですが、自分が5年くらい活動して、メディアに出たり賞金を獲得したときは報告していたので、ある程度理解してくれたようです。収入の面もきちんと話をしていたので、今はいろんな働き方があるということですんなりと受け入れてくれましたね。


専業プロゲーマーへの道へ

――そして2021年にスクエニを退社し、専業プロゲーマーとなりました。兼業から専業に変わって変化した部分は?

ネモ:生活に余裕が出来ました(笑)。やはり会社で働かなくて済むのはすごく大きいですね。退職前の2020年度は、一番仕事が忙しかったんです。新しいプロジェクトに参加してすぐにリモートワークになったんですが、みんなリモート環境に不慣れだったので、会議の時間がすごく長くなってしまったんですよ。その中でゲームも練習しなきゃいけない状況でした。

かなり忙しいプロジェクトだったので、Slackの通知がずっと鳴っている中で練習をしている状況でした。自分宛ての通知を見逃すわけにはいかないから、どうしても集中できない状態がずっと続いてしまっていたんです。1日2時間は必ずゲームをすると決めていたんですが、全然楽しくなかったですね。

――2020年度は「ストリートファイターリーグ Pro-JP 2020」でチームリーダーも務めておられましたよね?

ネモ:チームメンバーのsakoさん、ガチくん、キチパは元々会社で働いていたけど今はプロとして活動している人たちだったんです。そこで素直に「自分の仕事がかなり忙しい。もしかしたらリーグで活躍できないかもしれない」と話をしたら「そうなったら仕方ない。任せてくれ」と皆が言ってくれたので、自分は担当する対戦キャラクターを決めて、その対策だけをやっていました。

――厳しい状況でありながら優勝を果たしました

ネモ:チーム練習を行いたくても中々できない状況で、皆が立てた作戦が上手くハマってくれました。この優勝はすごく嬉しかったですね。

▲ストリートファイターリーグ Pro-JP 2020では、ネモ選手率いるチームが優勝した

――翌年の2021年度に開催された「ストリートファイターリーグ Pro-JP 2021」では、熊本の再春館製薬さんのチーム「Saishunkan Sol 熊本」のチームリーダーとして参戦しています。再春館さんからはスポンサードも受けていますが、どのようにして熊本のチームと縁を結んだのでしょうか?

ネモ:最初は2018年に開催された『ストリートファイターV アーケードエディション』ルーキーズキャラバンで自分が熊本に行くことになって、そのときに再春館のオーナーの方と名刺交換をさせていただいたんです。それからしばらく経って、自分がTeam Liquidを抜けることになって新しいスポンサーを探さなきゃいけないタイミングと、再春館さんがストリートファイターリーグにチームを持つタイミングがマッチして、自分が入ることになりました。


――先日、熊本の旅番組にチームメンバーのShuto選手と一緒に出演されていました。

ネモ:普通に観光として楽しめたのでこういう仕事もいいよなと思いました(笑)。再春館さんはeスポーツを通じて熊本の地方創世と地域貢献をやっていきたいと考えているので、自分の活動を見た人が熊本に来たくなるようなことをする必要があると考えています。

プロゲーマーとスポンサーの関係

――ネモさんのように実績あるプロゲーマーは企業のスポンサードを受けている方が多いですが、若手だと中々難しい部分もあります。

ネモ:強い人には常にスポンサーがついているので、これから実績を出したところでスポンサーが付くかどうかは正直わかりません。でもスポンサーが選手を募集しているときに実績はかなり役に立つと思うので、成績をあげつつアンテナは常に張っておく必要があるでしょう。

スポンサー獲得については、選手が自覚を持ってやるしかないと正直思います。それに、仮にスポンサー契約を取ったとしても、1~2年で契約が終わるかもしれない。なんだかんだで最終的には自分が何とかするしかありません。先日『ストリートファイターVI』が発表されましたが、自分も今後スポンサードを契約してもらえるかはわかりませんし、勝てるかも分かりません。状況の変化についていけるかは、本人次第だと思います。

――プロゲーマーとして生きていくにはやはりスポンサーは必須なのでしょうか?

ネモ:収入の軸はスポンサーです。なのでプロゲーマーとして生きていくのであれば、まずスポンサーを探す必要があります。ただ、スポンサーが見つからない人は、動画の編集スキルを身に付けて、配信で収入を得る方法もあると思います。

プロゲーマーの中でもスポンサー料だけで大金を稼げる人は一握りです。でも、そういう人たちがストリーマーになっても、人気が出るとは限りません。逆に競技シーンで活躍できなくても配信受けがいい人はストリーマーとして活躍できると思うので、自分に向いている方向に進めばいいんじゃないかと思います。

配信で食べている人だってゲームを仕事にしているわけですから、プロゲーマーと考えるのはありじゃないかなと。


――ネモ選手ご自身はスポンサーとの関係についてどうお考えですか?

ネモ:自分は今、再春館さんとM-GAMINGさんからスポンサードを受けていますが、スポンサー企業はゲームコミュニティのことをわかっていないことも多いので、そこは自分がカバーする形ですね。とくに再春館さんとはeスポーツ事業の戦略含めて、自分がアドバイザーとして活動するのも条件のひとつになっています。これからは一緒に大会を開催するなど、連携してイベントをやって盛り上げていきたいですね。


――ただスポンサードを受けるだけではなく、還元も考えているんですね

ネモ:元々会社員を経験していましたし、スクエニ時代のノウハウも役に立つと思うので。ただ、企業側で「こういうことをやりたい」と考えていても、選手に伝わっていないこともあるんです。例えば企業がSNSに何かを投稿するときに、選手がファンに伝えてハッシュタグを付けてもらうと効果が出るんですが、企業側が選手に「ハッシュタグをつけて欲しい。ファンに広めてほしい」と伝えてないこともあります。

そこは企業が選手とコミュニケーションを取らなきゃいけないことなんですよ。「こういうことが大事だからお願いね」とひと言伝えるだけでもかなり違うと思うんです。企業が勝手に動いても、選手は何をしていいのかわからないので動けませんから。企業と選手のコミュニケーションが取れていなくてもったいないと思うことも多いので、連携する部分を自分が担当していければと考えています。

――それは社会人経験が生きている、と。

ネモ:企業側から見るとスポンサー料を支払っているので「このくらいするのは当然でしょ」と考えている部分もあるんです。例えばYouTubeの「チャンネル登録お願いします」という台詞も、配信のときにちゃんと言わないと視聴者は中々気づかないんです。

スマホアプリの運営をしていたときも、イベントを開催してもイベントが始まったことすらわかっていなかったり、どう遊んでいいのかわかっていない人も多いので、地道にフォローしていました。

――企業がプロゲーマーをスポンサードするのは、選手を広告塔として使いたいという思惑があるからです。選手側はそれを理解しているのでしょうか?

ネモ:いや~、できていないと思いますね。やはりどうしても、ゲームの延長線上で考えてしまっている人が多いです。そもそも、ゲームを仕事だと考えていない人もいます。とくに勘違いされている部分は、強くなればスポンサーが付くと思っている人がいっぱいいるんです。企業の顔になることを理解していないので、炎上するような行動をとる人も出てきます。

――とはいえ、社会人経験無しでプロゲーマーになった人ではそのあたりを理解するのは難しいと思います。ゲーマーを教育する手段はあるのでしょうか?

ネモ:今のスポンサー企業と選手は契約だけの関係になっちゃっているので、選手への教育はまだまだこれからなんだろうなと。企業側が用意した施策を選手が理解していないと、そもそもスポンサードの効果があまり出ません。企業がもっと選手と一体となれるよう、コミュニケーションを取ったほうがいいと思います。


これからの活動

――ネモ選手自身のこれからについて伺いたいのですが、まずは先日、『ストⅤ』がアップデートされました。思う所を語っていただきたいな、と。

ネモ:最悪ですね(笑)。『ストⅥ』の発売が決まっている状況で自分のメインキャラのユリアンが弱くなったということは、もうずっとこのままなので、これはもうキツイなと(笑)。

ユリアンはEXデンジャラスヘッドバッドの無敵が無くなったのと、エイジスリフレクターも性能が落ちて立ち回りの部分が難しくなりました。とはいえ使えないキャラクターではないのでピンポイントで出すかもしれませんが、苦手なキャラにはとことん弱くなってしまったんですよ。

――以前からギルを使用していましたが今後も使うのでしょうか?

ネモ:いや、ギルもキャラパワーが足りないと感じています。昔、『ストリートファイターⅣ』のときに、それまでは弱かったロレントというキャラが最終バージョンで滅茶苦茶強くなったことがあるんです。同じパターンを期待してギルを使っていたんですけど、全然強くならなかった(笑)。今はルークがほぼ一強なので、対抗できるキャラを何か準備する予定です。

――新キャラのお披露目はいつごろになりそうでしょうか?

ネモ:直近の「TOPANGA CHAMPIONSHIP 4」には間に合わないので今のままで行きます。その後は少し次の大会まで間が空くので、そこで新キャラの練習をするつもりです。

――最後に、これからの目標や展望についてお聞かせください

ネモ:去年は専業1年目だったので生活になれることを考えていたんですけど、だいぶ慣れたので今年以降は会社員時代の経験を生かして大会やイベントを開催し、eスポーツに貢献出来たらいいなと考えています。あとは再春館を盛り上げるためには勝たなければいけないので、頑張ろうと思います。


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ネモ選手に「プロゲーマーになったころと今で変化したところはありますか?」と尋ねたところ、「最近はプロゲーマーと名乗っても、みんな驚かなくなりましたね。昔は”何それ”って感じでしたから」と返ってきた。

ネモ選手がプロゲーマーになってから6年が経ち、そのあいだに日本のeスポーツシーンは大きく様変わりを見せている。愛好家たちの趣味の延長だった時代から、ビジネスシーンで当たり前のように「eスポーツ」という言葉が飛び出すようになったのは、ネモ選手たちを始めとする社会人を経験したプロゲーマーたちが積み上げて来た成果が結実しつつあるからだろう。

さまざまな問題を孕みながらも、eスポーツの世界は前へと進み続けている。その先頭集団のひとりであるネモ選手が問題解決への糸口を提示してくれたことは、今後の状況改善のための大きな助けとなるのではないだろうか。そう感じられたインタビューだった。

ネモ選手Twitter
https://twitter.com/GOOD_NEMO
ネモちゃんねる
https://www.youtube.com/channel/UC8BCNz98vpzaFkqniBB27FA
ネモ選手Twitch
https://www.twitch.tv/nemo_good
再春館システムeスポーツ推進室 Twitter
https://twitter.com/saisys_esports
Saishunkan Sol 熊本 公式サイト
https://saisys-esports.com/
ウェルプレイド・ライゼスト株式会社 公式サイト
https://wellplayed-rizest.jp/

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