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【プロゲーマー・gappo3のメタゲームへの適応力】第2回 『オーバーウォッチ』はメタの変化に左右されない「アルティメット」を使いこなせ

オーバーウォッチ』は、パッチによって劇的にメタ(安定した勝利が得られる主流のチーム構成・戦略、個人の立ち回り)が変化するゲームだ。どのように変化するかはPTR(Public Test Regio = リリース前のテストサーバー)や事前にBlizzard Entertainmentが公開する情報によってある程度予測がつきそうなものだが、現実はそうもいかない。予想のつかない着地点を迎えることがある。

そのようなメタの変化によってプレイヤーも柔軟な対応を求められるところだが、実際にはほとんど変化のない部分も存在する。そしてそのような部分こそが「メタの変遷によって左右されない強さ・安定感」を生み出す要素となっている。第2回となる今回の記事では、そのような普遍的要素の中でも最も基本的な知識であり、なおかつ最も重要な技術となっているアビリティの一種「アルティメット(ウルト)」について話していきたいと思う。

まず大前提として一つ断言してしまおう。『オーバーウォッチ』はアルティメットの足し算と引き算によって勝敗が決まるゲームである。より多くのアルティメットを保持しているチームが集団戦に打ち勝ち、より適切にアルティメットを使用する(無駄に使用しない)チームが試合に勝利を収めるゲームである。これは実際に統計にも表れており「Lunatic-Hai」や「KongDoo-Panthera」「RunAway」といった世界のトップチームは例外なく高い計画性をもってアルティメットを運用している。

アルティメットは、その性能は変われども、それ自体の重要性や性質がパッチによってほとんど変化しないという傾向を持っている。重要性とはアルティメットの足し算・引き算に使用できるということを意味し、性質とはアルティメットの効果的な使用方法や対策だと考えてもらえれば、イメージしやすいと思う。

例えば、キャラクター「アナ」が使用するアルティメット「ナノ・ブースト」は、パッチによって大きなナーフ(修正による弱体化)を受けた攻撃的アルティメットだが、それによって最大の被害を被ったキャラクターは「リーパー」である。当時のリーパーは真の救世主でありヒーローであり世界最強のベーゴマだったわけだが、パッチ後の彼は温厚なモブヒーローへと様変わりしてしまった。

アナはパッチによって大きなナーフを受けた

元々リーパーは射程距離の問題から、そこまで使用頻度は高くなかった。しかし当時のアナのウルト(アルティメット)とは親和性が非常に高く、「アナのウルト」+「リーパーのウルト」だけで非タンクヒーローは秒殺できた。また、リーパーはスキルを活用することで高所に陣取りやすく、加えてウルトのタイミングやウルト最中の操作もかなり易しい部類となっていた。つまり、誰がリーパーを操作しても、アナのウルトと同時にリーパーのウルトを放つことができれば「大惨事間違いなしのウルトになる」といった特性があった。他にもアナのウルトとリーパーのウルトは、共にウルト溜めが非常に容易だったという点も見逃せないポイントとなっていた。しかしアナのナノ・ブーストのナーフによってスピードボーナスがつかなくなり、リーパーのウルトとの親和性が極端に少なくなったことで「リーパーは射程距離の短いヒーロー」という汚名のみが残ってしまった。さらに、リーパーはD.Vaやウィンストンなどのタンク陣に対するアンチタンクとしての機能性も現状では疑問視されるようになった。

これにより、リーパーはB級レベルのヒーローへと落ちぶれ、アナのアビリティのウルトにナーフが入っただけで、ゲーム全体のヒーロー構成は大きく変わってしまった。これはチームの強弱すら変えてしまうほどの強烈なメタの変遷であった。

アナのナーフによりリーパーも大きな影響を受け、B級レベルのヒーローへと落ちぶれてしまった

しかしここで注目したいのはそんなことではない。アナのアルティメットは確かに弱体化されたが、アルティメットの性質や溜め方はあまり変わっておらず、戦況を覆す強力な一手であることは依然変わりない(=アルティメットの足し算・引き算に参加できる)。また、アナのアルティメットをつける対象も、「強力な攻撃的アルティメットが溜まっているヒーロー」という点で本質的には変化していない。つまり、以下の3点はパッチに左右されにくい部分であり、これを習熟すればメタと関係なく計画的なアルティメットの運用が可能となり、試合の勝敗に大きく影響を与えるようになる。

1. アルティメットの使い方・タイミング
2. アルティメットの溜め方
3. アルティメットの相性(誰に対して強いか、何のアルティメットと組み合わせると強いか等)

上記はあくまで味方や自分のアルティメットに関してのみ言及しているが、敵のアルティメットに対するカウンターや捌き方なども視野に入れると、アルティメットの使い方や立ち回りも変わってくる。「グラビトン・サージ」に対しては集団で固まらない、「アース・シャッター」に対しては高台を取る、「タクティカル・バイザー」に対しては物陰の近くで立ち回る、龍神剣には「サウンド・バリア」など。言わば敵アルティメットへの対策といったところだが、これもメタに左右されにくい部分であり、例えアルティメットに多少の調整が入っても、かなりの応用が効く。

ザリアの「グラビトン・サージ」に対しては集団で固まらないなど、アルティメット対策が重要だ

更に掘り下げると、いかに自分のアルティメットを効率的に溜めつつ相手のアルティメットを溜めさせないかという話になってくるが、この辺りになるとミクロな視点になりすぎて本稿の主旨とはそぐわないと感じたので割愛させてもらう。総括すると、『オーバーウォッチ』は以下の3点を重視することで、メタの変化に左右されない戦いができる。

1. アルティメットの使い方・タイミングを習熟する。

2. アルティメットの相性を知る。
3. アルティメットの対策を知る。

次回は、引き続きメタに左右されにくい部分について話していこうと思っている。もちろんアルティメットとは全く違うものを主旨として掲げる予定だ。
それでは、よいオーバーウォッチ・Lifeを!

プロゲーマー・gappo3のメタゲームへの適応力
第1回 『オーバーウォッチ』のメタゲーム適応の難しさ
第3回 『オーバーウォッチ』におけるマップ理解度の重要性
第4回 『オーバーウォッチ』における良質なコミュニケーションとは

■gappo3選手のプロフィール
創設メンバーにして優れた戦術家。常に各国の試合を研究する分析家であり、敵の視線の動きから導く独自の判断基準と、卓越した洞察力を持ち合わせている。タンクプレイヤーとしてこれまでに多くの最善手を打ち出し、何度もチームを窮地から救い出してきた。リーダーNoanoa曰く「Green Leavesの精神的支柱」と言うほど、メンバーの誰からも頼られ慕われているもう一人のリーダー。

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■関連リンク
gappo3選手のTwitter
https://twitter.com/gappo3gappo3
Green Leaves
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BLIZZARD ENTERTAINMENT
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『オーバーウォッチ』
http://www.jp.square-enix.com/overwatch/

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