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【プロゲーマー・gappo3のメタゲームへの適応力】第3回 『オーバーウォッチ』におけるマップ理解度の重要性

前回の記事ではアルティメットについて語らせてもらった。「アルティメットより重要な要素なんてないんじゃないの?」と思ってしまう方もいるかもしれない。なるほど、確かにアルティメットは重要だ。誰も彼もがアルティメットの数に着目するし、勝負の分かれ目はアルティメットをいかに組み合わせるかに執着しがちだ。だが『オーバーウォッチ』には、アルティメット並みに重要な要素が他にも存在する。それはマップである。

「なんだよ、これだけ引っ張ってテーマはたかがマップかよ」なんてことは口が裂けても言ってはいけない。マップに対する理解度の差は、時と場合によってはアルティメットの差を簡単に覆してしまうほど、このゲームにおいてとても重要な要素だ。

マップの重要度を示すために、少し具体的な話をしていきたい。まず『オーバーウォッチ』のランクを頻繁に回している方は、「VOLSKAYA INDUSTRIES」の第2チェックポイント、「HANAMURA」の第2チェックポイントのマップをイメージしてほしい。これらのマップは攻撃側からしたら、とてつもなく堅いマップとして有名だ。防衛有利、攻撃不利の典型的ポイントである。なぜこのような有利・不利が生じてしまうのだろうか。

城や寺院がそびえ立つ日本マップ、HANAMURA

まず攻撃側のリスポーンが遠く、防衛側のリスポーンがチェックポイントに近いことが最大の要因だろう。つまり、防衛側が何でもいいから攻撃側を1人倒してしまえば、それだけで攻撃側の攻めは絶望的になるということだ。このとき、たとえ攻撃側がアルティメットを使って複数倒したとしても、防衛側は1人さえ倒してしまえば、後はリスポーンのゴリ押しで守れてしまうのだ。

また、防衛側がリスポーン前提のヒーローを選ぶことで、上記の要素に拍車をかける。このリスポーン前提のヒーローとは、簡単には死なない・移動スキルを持ったヒーロー(リスポーンしてからすぐに戦線復帰できて、時間を稼ぐことができるヒーロー)のことを指しているが、このようなヒーローを選ぶことでゾンビのように復帰してチェックポイントを防衛し続けることが可能となる。
特に「D.Va」、「ウィンストン」、「メイ」などのヒーローは、スキルとアルティメットによる時間稼ぎ・ピック力が強烈であり、なおかつD.Vaとウィンストンは戦線復帰のスピードも速いので、アサルトマップの第2チェックポイントではその特色がいかんなく発揮される。

VOLSKAYA INDUSTRIESはロシアマップ。外に出ると雪が積もっている

他にも防衛側の「高所取り」が非常に強いという点が挙げられる。この高所取りが強い理由は複数ある。

・高所にいる「アナ」やDPSはフリーになりやすく、かつ視野が広い
・そもそも高所と低所で分かれているので「ザリア」や「ラインハルト」のアルティメットの対策になっている
・高所へのアクセスルートがかなり少ないので、防衛側は攻撃側の進行ルート先で万全の構えを取ることができる
・攻撃側が高所へアクセスしようとするだけでそれなりに時間がかかる
・攻撃側のピックを半分強制させることができる(=移動スキルを持っているヒーローを無理やり選ばせる)

これらのマップに対する知識を防衛側が共通して持っていれば、そう簡単に守りは崩れないだろう。逆に攻撃側は「あのチェックポイントを取るには相手がポジションを取る前に攻めるか、アルティメットを複数温存して一気に使うしかない」と6人全員が認識していれば、防衛有利なアサルト第2チェックポイントを突破する可能性が増してくる。

何はともあれ、アサルト第2チェックポイントが防衛側に有利な理由が、マップの特性に秘められていることは理解していただけたと思う(もう少し厳密な話をするとチェックポイントの占有ルールにも原因はあるのだが)。

マップの例として、アサルト第2チェックポイントを出したのは非常に極端だったかもしれない。だが、他のマップでも同様のことは言えるのだ。「LIJIANG TOWER」などのコントロールでも、「KING'S ROW」などのハイブリッドでも、「ROUTE 66」などのエスコートでも、マップ理解度が高ければ自然とヒーローの選択は変わり、立ち回りやアルティメットを使うタイミングも変わってくる。

そしてマップの形は、アップデートを重ねても劇的には変化しない。「EICHENWALDE」のマップからもわかるように、たとえ変化したとしてもほんの一部に収まることが多い。マップ全体にわざわざ調整をかけることはバランス的にも労力的にも難しいので、全体が変化することは基本的にあり得ないと考えていいだろう。つまり、マップ理解度を深めてしまえば、それはメタを超えた財産になり得るということだ。

EICHENWALDEはドイツを舞台にした追加マップ

新マップが出たときや、大きなヒーロー調整が入ったときなどは、ぜひともカスタムゲームでマップを歩き回り、マップに対する理解を深めていってほしい。それは『オーバーウォッチ』をやる上で、いつでも・いつまでも通用する武器を手に入れることに他ならないからだ。

以上で第3回の記事を終えようと思う。「アルティメット、マップときて、他に何か大きなテーマがあるのか?」と感じている読者もいるかと思うが、実はまだとても重要な要素が残っている。次回はそれについて語っていきたい。

それでは、よいオーバーウォッチ・ Lifeを!

プロゲーマー・gappo3のメタゲームへの適応力
第1回 『オーバーウォッチ』のメタゲーム適応の難しさ
第2回 『オーバーウォッチ』はメタの変化に左右されない「アルティメット」を使いこなせ
第4回 『オーバーウォッチ』における良質なコミュニケーションとは

■gappo3選手のプロフィール
創設メンバーにして優れた戦術家。常に各国の試合を研究する分析家であり、敵の視線の動きから導く独自の判断基準と、卓越した洞察力を持ち合わせている。タンクプレイヤーとしてこれまでに多くの最善手を打ち出し、何度もチームを窮地から救い出してきた。リーダーNoanoa曰く「Green Leavesの精神的支柱」と言うほど、メンバーの誰からも頼られ慕われているもう一人のリーダー。

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■関連リンク
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『オーバーウォッチ』
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