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『レインボーシックス シージ』公式キャスターの仕事論から国内シーンの問題点まで【『R6S』キャスター ふり~だ氏インタビュー後編】

ふり~だ氏の幼少期から「闘劇」への参戦、そしてキャスターへの転向……とパーソナルな部分に焦点を当てたインタビュー前編。

後編では、『R6S』キャスター業に取り組む氏の仕事論やキャスターから見た『レインボーシックス シージ』(以下『R6S』)の競技シーンについてお届けする。


何もかも手探りで始めた『R6S』キャスター業務

――インターネットのエゴサーチ時に何か目立つ意見はありましたか?

ふり~だ:「日本語の実況微妙」「実況下手すぎ」「盛り上がらない」というのが目立ちました。格ゲーで実況を任された時には、こんなにうまくいかなかったことはなかったのに、何故このような評価になるのだろう?と自分の中で分析して、言語化したことをお伝えしますね。そもそも格ゲーとFPSは画面の見方が違いますよね。

まず格ゲーはプレイヤーも観客も全員が同じ画面を見ています。体力ゲージも含め、試合で動く情報量が画面上で整っている。だから起きたことを実況するのが格闘ゲームなんです。

これがFPSやMOBAになると、複数人タイトルであることがほとんどで、観戦画面に映ったものだけでは試合で動いた情報量が整わない場合が大半です。
映っていない情報も補完して実況する必要があります。

FPSならオーバーレイ(建物などを透過してキャラクターの位置や動きが見えること)が見えるので、プレイヤーの視点を見ながら後ろのオーバーレイをめちゃくちゃチェックしないといけない。画面上で起きたことは視聴者の方にとって最も大切で分かりやすい情報ですからもちろん、それを実況しつつ、観戦画面に映らずに起きたことも言語化して実況しなければなりません。従って、ラウンドがどう展開するか予想の組み立ては必須です。でないと、アクションが発生した際に"なぜ起きたのか"がわからない。なのでプレイヤーから見えている情報も合わせて、オーバーレイと俯瞰視点で得られた位置関係のインプットがマストになります。

この考えは格ゲーになかったので、見せ場を作る考え方も全然違うんです。格ゲーは「ゲージ残量や体力差で〇〇が起きた」みたいに説明を省いても、試合全体の流れはある程度わかりやすいじゃないですか。だけどFPSは主観視点だけでは試合全体として見るとわかりづらい。かつその考え方すらも誰も教えてくれない。自分なりにロジックを立てていくしかありませんでした。

だから、FPSの実況を始めたころにエゴサすると批判的な意見がが多くて……。一方で「海外の実況がすごい盛り上がる」みたいな意見をたくさん見かけまして。そこから僕は海外の実況を聞いて、どういう抑揚で盛り上げているのかを全部聞いて学んでいきました。


――というとこは、最初から手探りだったわけですね。

ふり~だ:「他のキャスターさんに『R6S』のこと聞いてもわからないじゃん!」と思ったので、結局は僕が『R6S』シーンに寄り添ったというか。クオリティを上げるためにプレイヤーと距離を縮めたりもしましたね。

Year2の前後ぐらいに、競技シーンに携わっているチームに事情を説明し、一緒にプレイヤーとして活動していました。本来だったらメンバーの入隊報告もありましたけど、「表立って言わないでほしい」と自分から伝えていたので公表はしなかったです。実況の中で自分の所属チームの活躍へフォーカスすることはないんですけど、傍からみたら「このチームに所属しているから」なんて声が上がるかもしれないじゃないですか。それは嫌なので、とりあえず「表立って絶対に言わないでくれ」と。

当時一緒に活動していたメンバーたちはバラバラになって今でも活動してくれているので、大会で見かけることもありますが、やっぱり嬉しいですよね。その経験は糧になりましたし、だいぶ試合の先が読めるようになりました。

ただ、難しいのはキャスターとコミュニティの距離感ですね。コミュニティの代弁者でありつつ、コミュニティに寄り添い過ぎてもいけない。うまく距離感を保ってお付き合いする必要はあるかなと思います。

――キャスター業とプレイヤーを兼任されていたのですね……! 大会前、キャスターとしての事前準備はどのようなことを?

ふり~だ:最初に過去の類似した試合をチェックします。あとオープントーナメントや1DAYイベントは一般のプレイヤーも入っているじゃないですか、その人たちの呼び名を絶対に配信試合の実況の中で読み上げるようにしています。

――”普段どう呼ばれているか”を念入りにチェックする感じでしょうか。

ふり~だ:そうです。例えば"アルプス"という選手名でも、読み仮名に"天然水"と書いてあるなら天然水と読みますね、同時にちょっとイジってあげるとか(笑)。海外大会であれば、海外の選手をどう呼ぶか。ここも参加キャスターで統一します。試合を見ながら「コイツなんて呼ばれているんだ?」みたいに。

そして試合内容の組み立てに関して。「このチームは時間ギリギリまで戦うので、相手チームがどこまで人数有利を作れるのか注目しましょう!」と……見どころを言えるようには事前に考えます。

――とはいえ、選手もたくさん参加されていますよね。チェックも時間が相当かかりそうです。

ふり~だ:ほとんど毎週やっていますからね。PC版とPS4版の両方とも200チーム以上エントリーしていて、計算上は1000人を超えます。でも大変なぶん、オフラインイベントで「トーナメントに出場した〇〇です」って言ってくれた子に対しても、だいたい名前はわかりますよ。こちらは「あのときの君か! いつも参加してくれてありがとう」と伝えています。それで相手から「あの実況は最高でした!」みたいに言ってくれると、「ちゃんと読み上げていてよかった」と思えますし。同時に彼らのモチベーションにもつながっているみたいなので。

今となってはレジェンドになっているWokka(野良連合所属の『R6S』プレイヤー)は、大会に出たときにプレイングが派手でした。だから「コイツすげえな!」と実況で取り上げたらWokkaの人気に火がついたらしく……。後日「ふり~ださん、あれ美味しかったっす! あれでバズりました」って本人から感謝されて(笑)。キャスターは演出面で誰を持ち上げるのか、シーン全体の裁量を持っちゃっているので慎重に取り組んでいます。

――そのような考えに至った要因って何でしょうか? これまでの活動で何か契機があったとか……。

ふり~だ:「闘劇」を含め、自分がプレイヤーだった時にキャスター陣に対してプレイヤーから「あの実況ちょっとな……」といった声を聞いていたからだと思います。自分自身もこの人はちゃんと試合を見てくれているな、プレイヤーが凄く頑張った所が分かってるなって感じる実況が好きでしたし。

例えば「決めたー!」みたいに具体的な描写がなかったりとか。盛り上がりやテンポ重視の演出としてはアリですけど、「実況の仕事じゃねえじゃん!」という意見も裏で聞こえたりしましたね。『R6S』ならガジェット名や場所を正式名称で言えるようにしなきゃいけないし、そこからですね。イベントにもよりますが、自分が実況する際の公式名称は観戦者の層や演出次第でチューニングしています。

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