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【DONUTS USG 弦選手インタビュー】コロナ禍で転機を迎えた『鉄拳』若手最強プレイヤー。専業プロとして決意を固めた想いや2022年の目標を聞く【鉄拳】

目次
  1. 小学校高学年から続く、 『鉄拳』トッププレイヤーとしての歩み
  2. プロのオファーを断った高校時代と、 卒業後の苦しかった”リハビリ”
  3. 自身の強みは”反応のよさ”と 長期戦で活きる”読み”
  4. 大学の自主退学からDONUTS USGへの加入、 そして上京
  5. 2022年の目標はともに活躍する若手の台頭と 海外大会制覇
『鉄拳』が超強い小学生として2010年代から名を馳せ、高校卒業後にはプロ契約、さらにここ1、2年はTOPANGA LEAGUEでの複数回制覇、Red Bull Kumite優勝、世界中のeスポーツプレイヤーから年間ベスト選手を選ぶ”New York Game Awards”受賞など、コロナ禍においても『鉄拳7』の競技シーンで輝かしい成績を残しているDONUTS USG所属の弦選手。しかしその裏では受験勉強のため1年間の『鉄拳』断ちを経て入学した大学の自主退学、生まれ育った福岡からの上京、所属するプロチームの変化など、大きな環境の変化があった期間でもあった。

本記事ではそんな弦選手に、『鉄拳』シリーズデビューを飾った小学生のころから、現在に至るまでの歩みを振り返ってもらい、今後の目標もあわせて語ってもらった。

小学校高学年から続く、
『鉄拳』トッププレイヤーとしての歩み

――『鉄拳』シリーズを始めた小学生のころの話から聞かせてください。

弦:『鉄拳』を始めたのは小学生からなんですけど、キッカケとしては僕が幼稚園ぐらいのころから両親がゲームセンターに通っていて、一緒に連れて行ってもらっていたからですね。小学1年生のころ……当時稼働していたのは『鉄拳6BR』だったと思いますが、そのデモ画面でデビル仁がビームを出しているのを見て単純に「かっこいい!」となって、吸い込まれるように始めました。

――お父さんがけっこう『鉄拳』をやっていらしたみたいな話を聞いたのですが。

弦:『ストリートファイター2』や『餓狼伝説』、『バーチャファイター』など、いろいろ格ゲーはやっていたみたいなんですけど、『鉄拳』だけはやってなかったんですよ。『鉄拳』はぼくが興味を持ち始めたから、いっしょにやってくれた感じですね。

――なるほど。当時、2010年代はいまほどオンライン対戦の質が高くなかったですし、ゲーセンに通ってその時々のアーケード版の『鉄拳』、『6BR』や『TAG2』、『7』などをやっていたって感じですよね。

弦:そうですね、はい。

――ネットで弦選手の戦績を追っていくと、闘劇2012でベスト16に入ったり、翌2013年のマスターカップ6では準優勝している記録が出てきたりするのですが、当時は小学生ですよね? この時点で当時の『鉄拳』シーンのトップ層に食い込めていたのはすごい……。

弦:闘劇2012のときは確か小学5年生ですね。「闘劇」って大会にはめちゃくちゃ憧れがあって、ずっと出たいと思っていたんですけど、(試合のことは覚えていなくて)ぼくの時は屋外でやる大会だったのがメッチャ印象に残っていますね(笑)。

ただ大会には出られていましたけど、強い人に勝てていたって感じではなかったです。それでも少しずつ勝てるようになったのは、とんでもないぐらい両親にいろいろなゲーセンに連れて行ってもらったのがデカかったと思います。平日は地元……福岡のけっこう田舎のほうなんですけど、そこで『鉄拳』をやって、金曜の夜になったら県内でも強い人が集まる「鬼丸」というゲーセンに連れて行ってもらって、日曜の夜までずーっとゲーセンで『鉄拳』をやる、ということをよくやっていました。

▲小学校高学年、10代前半から強い『鉄拳』プレイヤーを求めていたという弦選手

――格ゲーにハマったプレイヤーが大学生や社会人になってからすることを、小学生からやっていたって感じなんですね。

弦:そうです(笑)。鬼丸は全国から遠征しに来る人もいるゲーセンだったので、最初はぜんぜん勝てませんでした。勝てない人には勝てるようになるまでとことん対戦していましたね。その人に勝てるようになったら、その次に強い人に勝負を挑む……みたいな。そんな感じで対戦していたら、鬼丸はもちろん、連休になったら連れて行ってもらえた遠征先のゲーセンでもけっこう勝てるようになりました。すごく負けず嫌いだったのと、ひたすら強い人と対戦して経験値を積んでいく……みたいな、地道な練習がよかったのかなと思っています。

プロのオファーを断った高校時代と、
卒業後の苦しかった”リハビリ”

――学生時代の戦績でいうと、やはりEVO2014での準優勝が一番大きなトピックかと思うのですが、これも遠征の延長というか、お父さんに連れて行ってもらった?

弦:EVO2014は中学校2年生だったんですけど、TwitchさんからぼくをスポンサードしてEVOに連れていきたいみたいなオファーを頂いたからですね。なので、最初は一人で行くつもりでしたが、ありがたいことにお父さんのぶんまでTwitch側が旅費を負担してくれることになって、二人で行きました。めちゃくちゃありがたかったですね。Twitchさんとしては「なんか若いプレイヤーがいたら面白そうだし、我々が見たいだけだから結果とか考えず出てみて」みたいな雰囲気で。

▲14歳、中学2年生で参加したEVO2014

――高校生になると1、2年生のときはこれまで通り大会に出つつ結果を残してきたと思うんですけど、3年生になったら大学受験のためにキッパリと『鉄拳』を休止しました。大会の実績からすると高校生のあいだにプロチームからの誘いもあったと思うのですが、実際のところはどうでしたか?

弦:ありましたね。じつは高2のときに(前所属の)Team Liquidさんから誘われたんですけど、「受験で来年1年間は『鉄拳』を休みます」ってお断りしました。そうしたら、「じゃあ1年待ちますので、受験が終わったらもう1回声をかけさせてください」と言われたんですよ。それで受験が終わったタイミングでEVO Japanが福岡で開催されたので(2019年2月)見に行ったら、会場で呼び止められて……。それがTeam Liquidの人で、改めてお話をして、チームに入ることになりました。

――チーム側から「1年待つ」つって言わるのはなかなか聞かない話ですよね。

弦:そうですよね。最初に断ったときはTeam Liquidがどういう規模のチームかってことも知らなかったので、契約前にいろいろ調べたら、とんでもないチームだったことに気づいてびっくりしました。

――1年間『鉄拳』を休止していて、復帰と同時に即プロになりました。苦労した面はありましたか?

弦:シンプルに勝てないっていうのがすごい悩みでしたね。プロになったのが確か5月で、4月からはすでにTWT(鉄拳ワールドツアー)が始まっていたので、とりあえず大会で結果を残せるぐらいにはならないと……と考えていましたが、やっぱり1年間のブランクめちゃくちゃでかいんですよ。相手が何を狙っているかはある程度読めるし、それに勝つための行動がわかっても手が動かないんです。技が出なかったりガードが間に合わなかったり……。逆に焦ってボタンを押してしまうこともありました。だから最初は誰にも勝てなかったですね。

有名な選手でいうと、チクリンさんとの対戦では何度も心が折れました。ぼくが福岡在住、チクリンさんが長崎在住なので、家に行って『鉄拳』を教えてもらっていたんですけど、もう余裕で30連敗とかしてました。

――リハビリ相手がチクリンさんというのはかなりハードだと思いますが(笑)。

弦:復帰して間もなかったんすけど、それでも30連敗するとは思っていませんでしたね。『鉄拳』はやっていないけど、動画は塾の行き帰りの間に毎日見ていて、日本で活躍している人の動きは知識はあったので、負けるにしてももうちょっといい勝負ができるかなと思っていました。でも圧倒的にやられてしまって……けっこうメンタルをやられました。でもそこでお父さんから「それでもやり続けろ!」みたいなことを言われて、僕もじつは負けず嫌いなのでずっと対戦し続けていたら、少しずつよくはなっていきました。

ただ、海外の大会は……まあ勝てなかったですね。TWT2019の前半はベスト16とか32でもめちゃめちゃいいほうで、予選敗退も少なくなかったです。チームの人はずっと優しくて、「1年ブランクがあったんだし、今年は結果残さなくていいよ。経験を積み直して!」と言ってくれました。でも、その優しさすらもけっこう刺さるぐらいでした。

――ただ2019年の後半からは大会の上位にも食い込んでいた印象があります。きっかけになった大会や出来事はありました?

弦:僕は1回でも優勝したらけっこう自信がつくタイプだと思っていて、そういう意味だと国内大会のYAMADA Cupが大きかったと思います。第1回でまず2位になれて、すぐに行われた第2回では優勝できた。さらにその後にあったマスターカップTRYでも優勝してプロライセンスが獲れましたし、そのあたりからけっこう大会での勝ち方っていうか、実績に繋がっていったのかなと思いますね。

▲プロとして勝てる転機になったという、YAMADA Cupでの優勝

自身の強みは”反応のよさ”と
長期戦で活きる”読み”

――今日は弦選手がどういうタイプの『鉄拳』プレイヤーなのかという話も聞いてみたいです。ここ1、2年の弦選手の試合を観客側から見ていると、すべてのプレイの質が高すぎて、逆にプレイヤーとしての特徴が見えにくい気がします。自分ではどういった部分を得意だと感じているのでしょうか?

弦:昔から一緒にプレイしている知人友人からは、「感覚」とか「読みがすごい」と言われます。

――各キャラの技のフレームをガチガチに覚えているタイプではなくて、わりと感覚派?

弦:そうですね。プロになってしばらくは『鉄拳』のフレーム関連のことはあまり知らなくて、「この技をガードしたらだいたいこのぐらい有利」とか、「この状況は不利っぽいから手を出すのはやめておこう」みたいな感じで、あまり調べずにやっていました。プロになって以降、とくに最近はけっこう調べていますが、それでも感覚でやっていることが多いですね。

あと得意な点という話だと、細かいスカ確とか下段ガードとか、反応に関することに関しては自信があります。そこはちょっと有利かなっていうのは思いますね。

――『鉄拳』の場合、「この技をガードしてもこっちが不利なの?」みたいな技が少なくないので、感覚でやれる『鉄拳』プレイヤーはすごいなって思います(笑)。

弦:そのあたりは何か感じるんすよね。やっていれば(笑)。あとフレームってめちゃくちゃ大事なことなんですけど、フレームを知りすぎたり頼りにしすぎたりすると、逆にダメな場合があるんですよ。

何が言いたいかというと、フレームを知っていると相手を信用しすぎちゃう部分があって、(セオリーと)逆のことをやられちゃうと日和って負けやすいんです。それに『鉄拳』の場合は大幅有利な状況よりも微有利、微不利、+2とか-3フレームのほうがダメージを取りやすいので、フレームを完璧に知らなくてもいいんじゃないかなって思うこともあります。

――なるほど。読みが得意という点は、TOPANGA LEAGUEやRed Bull Kumiteなど、リーグ戦でとくにいい成績が残せている理由につながるのですかね? 中~長期戦のほうが強みを出しやすい、とか。

弦:TOPANGAはまずオフラインというのがデカいですね。自分の武器である反応のよさを活かしやすいですし。あと7先みたいな長期戦だと、事故らないという安心感みたいなのもあって、予想外の技をくらって1戦取られてもそのまま負けることがないですし、切り替えていけるのが僕の中ではすごい大きいです。昔から2先だと焦って負けることが多いんですよ。7先だとかなり落ち着いていて、先に1回負けても、次の試合までに完全に切り替えられるんですよ。負けた理由も「ここの読み合いで負けたのが響いたな」みたいな感じで分析できるので。

――逆に反応のよさを活かしづらいオンラインでの大会は苦手ですか?

弦:オフラインに比べたらだいぶキツいですね。だからTOPANGAの場合は、T1リーグに居続けられたらいいんですけど……。

――T2やT3リーグはオンライン対戦ですよね。

弦:はい。だから絶対に落ちたくないんです! だから怖いんですよTOPANGAは。やっぱりオフラインだと安心して技を振れるというか、ガードも下段を見てから自分の反応で動けますが、オンラインだとケアするところが多すぎて……。考えることが増えちゃうんですよね。そこがちょっと難しい。

――T1のずっと上位に残り続けてると、他の選手も優勝候補の弦選手に特化した「弦対策」を仕上げてくるかと思うのですが、研究されてると感じることはありますか?

弦:感じますね。とくに感じるのはチクリンさんです。あの人はすごい。キャラ対策なんかは当然完璧に仕上げてきますし、僕はいまでもけっこう(意表をつくために)普通に初心者とか中級者がやるような、意味のわからん暴れとかもたまにやるんですよ。それでもしっかり対応してくるので、よく調べているなっていうのを感じますね。もちろん、チクリンさんだけじゃなくて、他の人と対戦しているときにも(研究されていると)感じるところはありますし、T1は毎回全然気が抜けないですね。

――チクリン選手のほかに、たとえば同世代で意識しているプレイヤーはいらっしゃいますか?

弦:同世代だとT1にも進出したB君ですね。負けたくないっていうのはもちろんあるんですが、嬉しさもあります。もっと20代前半の人たちがどんどん出てきてほしいという気持ちもありますし。

――弦選手は20代前半ですが、『鉄拳』歴でいえばベテランと言えばベテランですもんね。

弦:『ストリートファイター』シリーズの大ベテラン選手と比べたら、『鉄拳』はそれよりちょっと若い層がベテランと呼ばれていると思います。でも『ストV』とか若手選手もめちゃめちゃいますよね。強い若手がたくさんいるのが『鉄拳』とはちょっと違うかなと。

――格ゲーは経験値も大きなアドバンテージです。ただ『鉄拳』の場合は、たとえば弦選手が先ほど例に出した下段が見える見えないみたいな反応面のところで、若手のほうが優位に立てる部分もありそうに思えます。

弦:いや、奥が深いんすよ、このゲーム。技術(や反応)も大事なんですけど、割合としては、知識7、技術3ぐらいのレベルですね。経験に基づいた知識がないと技術が生かせないですし。

大学の自主退学からDONUTS USGへの加入、
そして上京

――ここ1、2年の活動の話に移したいと思います。弦選手はコロナ禍の影響をモロに受けたプレイヤーというか世代かと思うのですが、『鉄拳』を休止してまで入った大学を自主退学するに至った経緯を教えていただけますか?

弦:前から薄々感じていたんですけど、僕は昔から中途半端が嫌いなんです。何かを両立させるのが苦手というか……。2021年は新型コロナの影響で大学内に入れない中、リモートで授業をボーッと聞いて、課題をしてハイ終わりのくり返し。大学生生活をしている感じはまったくしませんでした。

あと、これは自分の勝手なイメージですが、大学って意外と入ってしまえば何とかなるというか、別にそんなに勉強が好きじゃなくても大丈夫かなと思っていたんです。でも、プロとして海外大会に月1、2ペースで出ていると、大学との両立がめちゃくちゃ難しかったんですよね。そのうえ『鉄拳』も全然勝てないし、1年のころからどっちつかずだと感じていたんです。そこで2年に上がる直前に、『鉄拳』と大学、どっちを取るか考えたときに「俺は一生『鉄拳』を絶対やり続けるな」という確信が持てたので、大学を辞めることにしました。

――いまは東京に引っ越して活動していらっしゃいますが、上京は大学を辞めたことがキッカケで?

弦:辞めたときはまだTeam Liqued所属だったので、これからもふつうに福岡で『鉄拳』をやっていくかなと思っていましたが、大学を辞めるとなると『鉄拳』が完全に職業になるわけじゃないですか。そうなってくると、やっぱり将来大丈夫かなみたいな不安は浮かんできますよね。そこで自分の中でいろいろ考えた結果、Team Liquidはめちゃくちゃいいチームだったんですけど、僕のほうから「チームを辞めます」と伝えたんです。

――そこからDONUTS USGさんに所属することになった?

弦:ただ「辞める」と言ったものの、正直次とかは決めずに辞めちゃったんです。自分でチームを探してみようと思っていました。でも、昔からお世話になっている(Team YAMASAの)ノビさんやユウさんには相談していて、それが縁でいま所属しているDONUTS USGにつないでもらいました。いろいろなタイミングが相当よかったですね。

DONUTS USGは東京にある会社ですし、東京で活動しようと思いました。やっぱり東京に憧れていたところもあって、『鉄拳』のプレイヤー人口も多いですし、オフラインのイベントも多いですよね。そういうところがいいなあって昔から思っていました。……ここ1~2年は新型コロナでオフラインイベントはほぼない状態ですけど。

▲DONUTS USGに加入した2021年は、”New York Game Awards”受賞。コロナ禍においてもプロプレイヤーとして存在感を示した

――コロナ後はオフラインイベントがないのは当然として、トッププレイヤーが集まって練習する機会はあるのでしょうか?

弦:DONUTS USGの寮でチームメイト(Rangchu選手、PINYA選手)と練習することはありますが、他の方とかはあんまりやらないですね。でもオンラインではチームメイトとはもちろん、いろいろな人とけっこう頻繁に対戦はやっています。

――かなり個人的な疑問なのですが、『鉄拳』に限らずいまの格闘ゲームプレイヤーは大会前でも積極的に同じ大会に出場する選手と対戦していますよね。手の内がバレるのが嫌みたいな考えがよぎることはないのでしょうか?

弦:たとえばチームメイト二人と絶対に対戦することが決まっているデカい大会が近々開催される……みたいなことがあったら、やらなくなると思います(笑)。でも「勝ち進めばいつか当たるかもしれないよね」っていうぐらいだったら、大会前でもバチバチやりあいますね。練習で手の内がバレるというより、その前の時点でお互いの手癖とか、読み、考え方はわかっていますし、大会になったらそのへんは意識すれば変えられますし。だから対戦はガンガンやります。

2022年の目標はともに活躍する若手の台頭と
海外大会制覇

――最近の活動ですと、25歳以下のDiscordサーバーを作ったり、あとは動画投稿も再開されていたり、若手や初心者に向けた動きが活発なように思います。こういった活動に20代前半で目を向けられる格闘ゲーマーって貴重だと思うのですが、きっかけみたいなのがあったりしたのでしょうか?

弦:たとえば『ストリートファイターV』の大会を見ていると、若手が輝いていますよね。それを周りのベテランが祝福しているのを見ると、なんか「いいな」って思うじゃないですか。それ(祝福される若手側)は自分ががんばればいいんだと思っていた時期もあったんですが……。最近は、もっと何人も若手が活躍してほしい気持ちが強くなってきましたね。

Discordはわりと突発的に始めた部分もあるんですけど、若手の人たちも年上の人たちに教えてもらうよりかは、年齢が近い僕のほうが話しやすいかなと思ってスタートしました。

やっぱり『鉄拳』を職業にしたことによって、もちろん自分が勝たなきゃダメというのはもちろんですが、そもそも『鉄拳』がなくなったら元も子もないですよね。だから、僕が『鉄拳』プレイヤーを増やすことを考えるのはまだ早いとか、そういう意見もあるかもしれないですけど、少しでも『鉄拳』を知ってもらう活動をしなくてはいけない! と思っちゃったんですよね。

――U-25のDiscordではどんな活動を?

弦:Discordはいま150人ぐらい入っています。だいたい週2、3ぐらいプレマ会を開いたり、講習をやったりしているんですけど、ほぼ毎日誰かしらが使っていて、対戦も行われてますね。

▲弦選手が立ち上げた、25歳以下の『鉄拳』プレイヤーが対象のDiscordサーバー

――ミクチャで配信をやっている格ゲープレイヤーという点も、弦選手の特徴です。

弦:ミクチャで配信をやり始めたのは、DONUTS USG(の親会社)がミクチャの会社ってこともありますが、10~20代の人に『鉄拳』を知ってもらいたいという気持ちが強くて続けていますね。たぶんミクチャで格ゲーを配信しているのって僕らDONUTS USGのメンバーだけだと思うので、ここから『鉄拳』を知ってもらえるとうれしいですね。

――弦選手のYouTubeチャンネルは、現状『鉄拳』の配信と動画に特化した作りになっています。ストリーマーのように他のゲームの配信等を行うことはせず?

弦:やっぱり『鉄拳』の対戦動画を載せるのが一番いいのかなと思っています。僕の配信を見に来てくれる人は『鉄拳』が目的だと思いますし。たまに自分のプライベートとか動画をあげたほうがいいのかな……とも思うんですけど、いまは『鉄拳』の動画を見てもらえれば、と。

――初心者向けの動画が印象的でした。コントローラーの選び方から解説しているのはあまりみたことないので。

弦:動画に初心者ってタイトルをつけた通り、何も『鉄拳』を知らない人向けに作ったので。やっぱり格闘ゲームを知らないと「アケコンって何?」ってなりますからね。

――今年の目標があれば教えてください。

弦:春あたりから、海外大会がちょくちょく再開される予定なので、海外大会に向けて練習していく感じですね。たとえば6月にアメリカでCEOっていう、EVOの次にデカいっていわれている大会が開催されるので、行けると信じてCEOを目標にしています。

僕っていままでたくさん海外へ遠征していますが、優勝経験はないんですよ。この前のRed Bull Kumiteが初の海外大会優勝でしたけど、あれは招待制で参加者は8人でしたし。もっと海外で優勝して、日本以外でも自分の存在を知ってもらえたらいいなと思っています。

――海外大会の中でも、2先のトーナメントの大会で結果を残したい?

弦:2先……いやもうね、海外大会に行って予選負けるとかマジで最悪、ほんとに嫌なんで、全力で勝ちにいきたいですね。そういうハラハラするところ含めて、海外大会も楽しいですね。

――トーナメント系の海外大会から遠ざかっているのが不安材料ではありますよね。

弦:いまは海外大会どころか2先の大会そのものにあまり出ていないので、そこがちょっと不安ではあるので、2先の大会向けの練習をしたいですね。U-25のDiscordでも2先のガチ大会をやろうかと考えたりもしているので、そこにぼくも出ようかなぁ、と。Discordサーバーのほうにもめちゃくちゃ強い人がいっぱいいるので。

――じゃあ直近の目標はCEOで、その後も海外大会で勝っていく1年にしたい、ということですよね。

弦:はい。日本国内で優勝してももちろんめちゃめちゃ嬉しいんですけど、優勝できたときの影響力みたいなものは、やっぱり海外大会での優勝が大きいと思うので、海外で優勝したいですね。

――ありがとうございました。

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弦選手が参戦を表明しているCEO2022をはじめ、オフライン開催のEVO2022でも正式種目に選ばれた『鉄拳7』。2020、2021年に日本国内で圧倒的な“鉄拳力”を見せつけた弦選手が、世界の舞台でさらなる飛躍を見せるのか、期待をこめて見守っていきたい。

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