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ALIENWARE × Predator対談【前編】「エイリアンに勝つため、名前をプレデターにした」
デルの「ALIENWARE」と日本エイサーの「Predator」。いまにも対決を始めそうなネーミングであるため、何かと比較されてきたふたつのゲーミングPC。そんな両ブランドの責任者が、膝をつき合わせてじっくりと語り合う対談がALIENWARE ZONEで実現!
日本のゲーミングシーンや何かと話題のeSportsに関することなど、その話題は多岐に渡った。今回は、たっぷり語り合った2時間の模様の前半をお届けする。
ALIENWARE 柳澤真吾氏(以下、柳澤):ALIENWAREは、1996年に立ち上がったゲーミングPC専門のブランドです。当初は4人で創業したのですが、じつを言うといまの責任者のフランク・エイゾールがその4人のうちのひとりなんですよ。2006年にデルから買収の話があって、傘下に入りました。日本では2009年から事業を立ち上げました。
▲デル株式会社 ALIENWAREマーケティングシニアマネージャーの柳澤真吾氏
私はゲームが大好きだったんですけど、デルでは病院や市役所などの公共関係のマーケティング部署にいました。あるとき、日本のALIENWAREを立ち上げた方の異動が決まったとき、「後任者はゲームが好きな人にしよう」という話になったんです。そこで私が担当することになりました。
私がALIENWAREのマーケティングとして本格的に動き出したのはここ2年くらいですね。2016年には東京ゲームショウ(以下、TGS)にも参加し、その年の11月にALIENWARE ZONEを立ち上げたりして、いまに至っています。
Predator 谷康司氏(以下、谷):私は、日本エイサーでPredatorブランドのプロダクトマーケティングをしています。日本エイサーに入社したのは2016年5月ですね。Predatorは2008年から展開しているんですが、本格的にグローバルで取り組み出したのはここ2年くらいです。
エイサーに来るまえは日本のゲーム会社にいて、マーケティングを7年ほどやっていました。国外のマーケティング担当で、おもに欧米と台湾を担当し、販売会社のコントロールをしながらいろんな施策をしてきました。
そこで感じたのは、確固としたコンソールという大きな市場があり、スマホ向けが台頭してきた日本国内のマーケットを中心に考えていたので、PCに向けてゲームを出すという意識が薄かったということです。ここ3年くらいで、コンソール向けに開発したゲームを開発費をかけてPC版に移植して、欧米マーケットでも収益を上げようというふうに考え始めました。
柳澤:ちなみに、「Predator」という名称の由来はご存じなんですか?
谷:知っていますよ。本社(台湾)の担当者が夜、テレビを見ていたらしいんです。そしたら映画『エイリアンvsプレデター』をやっていて。主人公の助けを借りながらも最後はプレデターが勝つんですけど、「ALIENWAREに勝ちたい!」というところからプレデターにしようと。いや、冗談抜きで(笑)。
――最初から明確にライバルとして「ALIENWARE」を意識し、それに勝つために「Predator」という名称になったんですね。
谷:名付けた本人から聞きましたから、そこは間違いないですね。だから、今日みたいな対談のお話をいただいて、因縁と言いますか、ご縁と言いますか、何かを感じているのは事実です。
今日持ってきた「ALIENWARE 13」にしても、本体のどこにも「Dell」の名前がないんですよ。当社で一番偉いマイケル・デルという全部決めちゃう人がいるんですけど(笑)、彼がゲームに対する理解があって、ALIENWAREのファンでもあったので、それが通っている、と聞いたことがあります。本当かどうかわかりませんけど(笑)。ただ、デルという会社がALIENWAREというブランドを大切に考えているのは確かです。
▲「ALIENWARE 13」。液晶の下のロゴ、液晶の背面のトレードマークのみで、「Dell」のロゴは目につく場所には見られない。
谷:エイサーでは、いま社長をやっているジェイソン・チェンが改革を始めました。いいか悪いかはおいておいて、ビジネス的にゲーミングという市場をしっかり見ようという視点から、2年くらい前から「Predator」のモデルを変えています。
ゲーミングPCの市場をグローバルで見ると、予想以上にニーズが高いマーケットであるということがわかったんですよ。なので、この2年間はエイサー全体としてゲーミングPCをひとつの大きな柱としています。
柳澤:グローバルで見ると、どの地域が調子いいですか?
谷:うちで言うとアジアの市場で、フィリピン、インドネシア、マレーシア、インドといったあたりが前年比200%みたいなすごい伸びを示していますね。ただ、僕らとしてつらいのは、なんで日本はこの程度なのか、と突っ込まれることが……。同じアジアなのでどうしても比較されてしまいます。
柳澤:状況は一緒ですね。たとえばヨーロッパの場合、販路を持ってない国もあったのですが、ここ2年くらいはイギリスを中心にかなり力を注いでいて、すごく伸びています。そうするとすぐ「(日本でも)ヨーロッパと同じことやれ」と言われるんですけど(笑)。
谷:「だから違うんだよ!」と声を大にして言わないといけない(苦笑)。
柳澤:日本も伸びているんですよ? 普通にビジネスを考えたら、パソコン全体のマーケットは右肩下がりなのに、ALIENWAREは日本でもゆるやかだけど右肩上がりなんです。ところが本社からは、「もっと、こう(急激な右肩上がり)だろ」と言われてしまって(笑)。
谷:グローバルで見ると、ゲーミングPC市場は急角度で右肩上がりなんですよね。日本のグラフを見て、国外のエラい人は「なぜこの程度なんだ!?」と言うんですよ。
柳澤:「日本では、まずファミコンから始まった家庭用ゲーム機文化が強くて、パソコンゲーム勢は、いろんな意味で大人向けコンテンツを中心に生き残ってきたんです」と説明したりします。
それから、海外ゲームはいわゆる「洋ゲー」というくくりをされて、「おもしろくない」「むずかしい」「絵がなじめない」というのを理由に、ジャンルとしてはじき出されてしまった歴史があるんですよね。その洋ゲーが得意なのがパソコンなんだから仕方ないでしょう、と。
谷:おっしゃるとおりです。でも、洋ゲーのくくりだけで見ると、ここ3年くらいで日本のユーザーの意識がすごく変わってきていますよね。家庭用ゲーム機の海外ゲームでも10万本、20万本と売れるタイトルが出てきています。だんだん日本のユーザーの海外ゲームに対するバリアが下がってきているんですが、そこからパソコンになかなか来てくれなくて……。海外ゲームも結局は家庭用ゲーム機で遊ばれていますし。
柳澤:私はそれでも前向きに捉えています。たとえば『The Witcher 3』がすごく売れたじゃないですか。これは結構エポックメイキングだったと思うんですよ。昔はこういうゲームがこんなに売れることなかったと思いますし。ベセスダ・ソフトワークスさんの『The Elder Scrolls V: Skyrim』や『Fallout 4』も話題になったこともあって、PlayStationでたくさんのユーザーが海外ゲームを遊んでくれました。
それを機にパソコンで遊び始めるユーザーもいましたし、国内のゲームメーカーもSteamで同時発売するところも増えてきました。
谷:私は、まさにその「日本のゲームメーカーが大作を家庭用ゲーム機版とPC版を同時発売してくれる」ことこそが、PCゲームユーザーが増える起爆剤の一つになるのかなと思っているんです。コンソール版と同時発売になると、ユーザーさんはPC版を待たなくてもよくなります。遊びたいゲームが、コンソールユーザーさんに遅れることなく遊べるようになりますよね。「パソコンでも日本の大作ゲームが遊べるんだ!」という認識が広がっていくんじゃないかな、と。
柳澤:以前と比べたらだいぶ増えましたよね。たとえば最近だと、PCでゲームを遊んでいる女性も増えてきています。少しまえまで、女性のPCゲーマーに会えたことなんてなかったですよ。時代が変わったなあ、という意味では前向きにとらえています。
▲日本エイサー株式会社 プロダクトマーケティングマネージメント部統括部長の谷康司氏
柳澤:まさに谷さんがおっしゃったように、「プレミアム」という枠組みを日本で強化していったら、じつはもっと販売の余地がありそうだよって話はいろいろしているんですよ。
日本でもっと普及させようとしたら、いろんなユーザーに売っていくことを考えないといけないじゃないですか。ALIENWAREの場合、じつは意外と音楽をやっていますとか、大学の研究室で使ってますとか、株取引でとか、いろんな人がいるんです。そういう人たちへのアピール方法はもっと検討すべきだな、と。
谷:モデル構成も、真ん中ではなく上か下で2極化してきていて、ゲームをプレイしている方は多少お金を出してもいいものが欲しいし、そうじゃない方はできるだけ安くしたい、という傾向です。ハイエンドモデルの要求というのは、まだまだ日本の市場でも上がっていくと僕は思っています。
――両社ともここ2年くらいでゲーミングPCに力を入れ始めた印象ですが、何かキッカケがあったのでしょうか?
谷:私の感覚だと、毎年少しずつ伸びてきた、という印象です。市場全体の成長としては、おそらく年1~2%くらいかな。
柳澤:このマーケットってはっきりとしたデータがないんですよね。私はもう少し上に……3~4%とかで見ています。まあ、それでも1桁パーセント台前半ですけども。
ここ2年くらいで世界的にゲーミングPC市場が大きく伸びて、それにともなって日本にも多少予算が流入しているんです。マーケティングの投資額に関して言えば、ここ2年くらいは各社とも“バブって”いる気がします。
谷:あの、“バブって”いるっていうのは、売上に対してその投資額はどうなの? という意味ですよね。ちなみにそのお金、ウチには入ってきてません!(笑)
一同:(笑)。
柳澤:たまにALIENWAREでも日本でローンチできないモデルがあるんですよ。尖りすぎていてビジネスプランが描けないモデルっていうのが。エイサーさんも海外で面白く展開されているけど、日本でローンチされていないモデルとかがあるじゃないですか。やっぱり事情は近いところがあるのかなと。
谷:でも、ALIENWAREが素晴らしいところは、選択肢がすごく多くて、スマートでカジュアルなところじゃないですか。13.3型の有機ELのパネルとか、選択肢がユーザーにたくさん与えられています。そのあたりはPredatorではいま全然できていないところなので……。
柳澤:ありがとうございます。デルはもともと直販BTOを売りにしてのし上がった会社なので、そこはデルの根幹で譲れないポイントなんですよね。だから必然的にデルに組み込まれたALIENWAREにもその部分は残る、というのがいい意味で作用しています。
とくにゲームユーザーってどうしても自分の好きなスペックで組みたいという思いがあるので、そこはうまくハマっていると思います。Predatorでもそれができたらきっと面白いですよね。
谷:我々がそれをやろうとすると、同じ筐体でいくつものモデルを組んで持ってこなければいけなくなるので、どうしてもビジネス上のリスクが高まります。将来的に我々もそれができるようにしたいですね。
BTOとは言えないのですが、日本で3モデルくらい作れるような体制を作っています。プリセットされたものを出しているだけなので、お客様のニーズからはまだまだ遠いんですけども……。
柳澤:逆に、Predatorがすごいところって、まさに今日お持ちいただいた「Predator 21 X」(日本未発売)みたいな、こういうモデルですよね。ビジネスが大きくなるほど、なかなか変わったことができないじゃないですか。それが許されていて、ラインアップの多彩さがすごく自由ですよね。
あと、こちらの15.6インチノートの「Triton 700」にしても、デザイン的に常識を一切無視していますよね。ノートパソコンは手前にパームレストやタッチパッドがあるものですが、それがないじゃないですか。
谷:タッチパッドは一応ここ(キーボードの奥側)にあるんですけどね。このデザインになったのは、冷却システムに力を入れている会社ですので、「AeroBlade 3D Fan」という冷却システムを見せたかったから、というのがひとつ。あとは本当にゲームをするユーザーに特化して企画された製品なので、タッチパッドなんて使わないでマウスを使うだろう、と。
▲「Predator Triton 700」。タッチパッドをキーボードの奥側に配置。透過する本体内部が見える光沢部分右側がタッチパッドになっている
柳澤:そういう思いきりがいいですよね。あと、すごく細かいところだと、オーバークロックをワンタッチで切り替え可能にしている「PredatorSense」がよくできているなぁと。あれで、「GPUのオーバークロックってこんなに簡単なやり方があるんだ」って思いました。
谷:ありがとうございます。あのあたりも含めて、それなりにいろんな国の意見を聞きながら製品を考えてはいるんですけど、まあ、日本の意見を通すのは苦労します(笑)。
柳澤:うちも同じです(笑)。
――たとえば日本からだとどんな要望を出されているんですか?
谷:日本はやっぱり住環境が狭いので、筐体を大きくするのはやめてくれという話をしています。だって置くところないじゃないですか。いまデスクトップで出している「Predator G1」というモデルがありますが、あれは多少日本の意見も聞いてくれて、ぎゅっと凝縮してくれました。
柳澤:私もびっくりするくらい同じことを本社に伝えてますよ(笑)。G1はいいなぁと思っていて、あのサイズ感っていまALIENWAREにないんです。G1は日本で売れると思っているんですけど……。
谷:いや、想像されるほどでは……(笑)。
柳澤:(笑)。うちも前に「X51」っていう超小型デスクトップがあったんですよ。日本ではよく売れていたんですが、アメリカからすると拡張性がないデスクトップはあまり売れないんです。そうなると、やはり販売継続は難しいんですよね。
谷:4Kゲームとかパソコンの方がリッチな体験ができるものが多いですよね。あと、ゲームをしながらいろんなことが並行してできるのも大きいです。そこが家庭用ゲーム機ではできない部分としてあると思いますね。
柳澤:ゲームをコミュニケーションツールとして使える、という部分はパソコンならではですよね。もちろん、最近は家庭用ゲーム機にもボイスチャットがありますけど、それほど自由にできるものではないですし。クリアな音、ハイエンドなテクノロジーで、テキストチャットしながらだってできます。横でネットを見ながらメールしてとか、モニターも3画面にしたり、『マインクラフト』などMODを入れて自分で無限に改変することもできますし。
谷:たしかにMODの存在は大きいですね。
柳澤:だから、家庭用ゲーム機っていうのはゲームをすることに特化しているぶん、ゲームをする段階では安定していると思うし、それはすごいことなんですけど、パソコンって本当にいろんな意味でゲームを楽しめちゃうんですよね。
ただ、PCゲームを遊ぼう! と思ったとき、家庭用ゲーム機ほどのわかりやすさがない印象もあって。Steamひとつとっても、「どうしたらいいの、コレ!?」って感じじゃないですか。何をしたらいいかわからない。家庭用ゲーム機からPCゲームの世界に入ってきたとき、大半の人が戸惑うと思うんですよね。
谷:開発側からすると、Steamはゲームを投入しやすいプラットフォームなんですけどね。家庭用ゲーム機だとマスターチェックが必ずありますが、Steamにはそれがないので、メーカーが出したいときに出せますからね。
――ちなみに、おふたりが最近遊んでいるゲームはなんですか?
谷:2年まえからTGSのウォーゲーミングジャパンさんのブースで『World of Tanks』(以下『WoT』)企業対抗戦をやっているんですよ。日本エイサーもチームプレデターとして参戦したんですが、ALIENWAREチームに負けっぱなしで(笑)。きっと今年のTGSもやるだろうということで、最近はずっと『WoT』をやっています。
柳澤:私はここ2年くらい『ファイナルファンタジーXIV』をメインゲームとしてやっています。その合間にSteamの軽めなインディーゲームも遊んでいる感じですね。最近ではないのですが、『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』というゲームがめちゃくちゃよかったです。いまだに超オススメですね。
そんな感じでゲームは本当に大好きなので、いまの仕事は助かっていますね。家族にも「これは仕事だから」って言い訳できますし(笑)。
谷:そこ、重要ですよね。ビジネスパートナー、ユーザー、いろんな方と話をするとき、ちゃんとゲームのことをわかってないとすぐ見抜かれますから。
<後編に続く>
歴史的な2大メーカーの対談がレポートされます。ぜひこちらもご覧ください。視聴者プレゼントもあるよ!
eスポーツ MaX(毎週木曜日 20:00〜20:30)
放送予定日:3月8日(木)
以下の2製品をセットにして1名様に差し上げます。
■応募方法
ALIENWARE ZONEのTwitter「@alienwarezone」をフォローし、以下のリンクから感想を添えてツイートしてください。
※当選者には、ALIENWARE ZONEのTwitterアカウントより、ダイレクトメッセージでご連絡いたします。あらかじめ、ダイレクトメッセージを受信できるように設定してください。
※当選者の発表は、当選者本人にのみご連絡いたします。
■プレゼント
ALIENWARE「Mobile Edge Alienware Vindicator(15インチ用)」
Predator「ゲーミングマウス Powered by SteelSeries PMW510」
■応募締め切り
2018年3月30日(金)ツイート分まで
■関連記事
ALIENWARE × Predator対談【後編】「eSportsの普及でやるべきことは賞金ではない」
https://alienwarezone.jp/post/741
■関連リンク
ALIENWARE
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Predator
https://www.acer.com/ns/ja/JP/predator-world/
TOKYO MX 「eスポーツ MaX」
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エムキャス「eスポーツ MaX」
http://mcas.jp/movie.html?id=749817085&genre=453017947
日本のゲーミングシーンや何かと話題のeSportsに関することなど、その話題は多岐に渡った。今回は、たっぷり語り合った2時間の模様の前半をお届けする。
両ブランドの発足から両者が担当になるまで
――最初に、両方のブランドの成り立ちについてお聞かせください。ALIENWARE 柳澤真吾氏(以下、柳澤):ALIENWAREは、1996年に立ち上がったゲーミングPC専門のブランドです。当初は4人で創業したのですが、じつを言うといまの責任者のフランク・エイゾールがその4人のうちのひとりなんですよ。2006年にデルから買収の話があって、傘下に入りました。日本では2009年から事業を立ち上げました。
▲デル株式会社 ALIENWAREマーケティングシニアマネージャーの柳澤真吾氏
私はゲームが大好きだったんですけど、デルでは病院や市役所などの公共関係のマーケティング部署にいました。あるとき、日本のALIENWAREを立ち上げた方の異動が決まったとき、「後任者はゲームが好きな人にしよう」という話になったんです。そこで私が担当することになりました。
私がALIENWAREのマーケティングとして本格的に動き出したのはここ2年くらいですね。2016年には東京ゲームショウ(以下、TGS)にも参加し、その年の11月にALIENWARE ZONEを立ち上げたりして、いまに至っています。
Predator 谷康司氏(以下、谷):私は、日本エイサーでPredatorブランドのプロダクトマーケティングをしています。日本エイサーに入社したのは2016年5月ですね。Predatorは2008年から展開しているんですが、本格的にグローバルで取り組み出したのはここ2年くらいです。
エイサーに来るまえは日本のゲーム会社にいて、マーケティングを7年ほどやっていました。国外のマーケティング担当で、おもに欧米と台湾を担当し、販売会社のコントロールをしながらいろんな施策をしてきました。
そこで感じたのは、確固としたコンソールという大きな市場があり、スマホ向けが台頭してきた日本国内のマーケットを中心に考えていたので、PCに向けてゲームを出すという意識が薄かったということです。ここ3年くらいで、コンソール向けに開発したゲームを開発費をかけてPC版に移植して、欧米マーケットでも収益を上げようというふうに考え始めました。
柳澤:ちなみに、「Predator」という名称の由来はご存じなんですか?
谷:知っていますよ。本社(台湾)の担当者が夜、テレビを見ていたらしいんです。そしたら映画『エイリアンvsプレデター』をやっていて。主人公の助けを借りながらも最後はプレデターが勝つんですけど、「ALIENWAREに勝ちたい!」というところからプレデターにしようと。いや、冗談抜きで(笑)。
――最初から明確にライバルとして「ALIENWARE」を意識し、それに勝つために「Predator」という名称になったんですね。
谷:名付けた本人から聞きましたから、そこは間違いないですね。だから、今日みたいな対談のお話をいただいて、因縁と言いますか、ご縁と言いますか、何かを感じているのは事実です。
イケイケの世界市場と徐々に盛り上がっている日本市場
柳澤:ALIENWAREは、老舗として残っている唯一のゲーミングPCブランドなんですよ。フランク・エイゾールが過去にインタビューで言及していましたが、Voodoo PCという大きなゲーミングPCブランドがあって、そちらはヒューレット・パッカードさんが買収しましたが、その名称はもう残ってないですよね。デルはALIENWAREを買収したとき、彼らのやり方を尊重して独立してビジネスを続けさせました。やっぱりそこがALIENWAREが残った理由なのかな、と思っています。今日持ってきた「ALIENWARE 13」にしても、本体のどこにも「Dell」の名前がないんですよ。当社で一番偉いマイケル・デルという全部決めちゃう人がいるんですけど(笑)、彼がゲームに対する理解があって、ALIENWAREのファンでもあったので、それが通っている、と聞いたことがあります。本当かどうかわかりませんけど(笑)。ただ、デルという会社がALIENWAREというブランドを大切に考えているのは確かです。
▲「ALIENWARE 13」。液晶の下のロゴ、液晶の背面のトレードマークのみで、「Dell」のロゴは目につく場所には見られない。
谷:エイサーでは、いま社長をやっているジェイソン・チェンが改革を始めました。いいか悪いかはおいておいて、ビジネス的にゲーミングという市場をしっかり見ようという視点から、2年くらい前から「Predator」のモデルを変えています。
ゲーミングPCの市場をグローバルで見ると、予想以上にニーズが高いマーケットであるということがわかったんですよ。なので、この2年間はエイサー全体としてゲーミングPCをひとつの大きな柱としています。
柳澤:グローバルで見ると、どの地域が調子いいですか?
谷:うちで言うとアジアの市場で、フィリピン、インドネシア、マレーシア、インドといったあたりが前年比200%みたいなすごい伸びを示していますね。ただ、僕らとしてつらいのは、なんで日本はこの程度なのか、と突っ込まれることが……。同じアジアなのでどうしても比較されてしまいます。
柳澤:状況は一緒ですね。たとえばヨーロッパの場合、販路を持ってない国もあったのですが、ここ2年くらいはイギリスを中心にかなり力を注いでいて、すごく伸びています。そうするとすぐ「(日本でも)ヨーロッパと同じことやれ」と言われるんですけど(笑)。
谷:「だから違うんだよ!」と声を大にして言わないといけない(苦笑)。
柳澤:日本も伸びているんですよ? 普通にビジネスを考えたら、パソコン全体のマーケットは右肩下がりなのに、ALIENWAREは日本でもゆるやかだけど右肩上がりなんです。ところが本社からは、「もっと、こう(急激な右肩上がり)だろ」と言われてしまって(笑)。
谷:グローバルで見ると、ゲーミングPC市場は急角度で右肩上がりなんですよね。日本のグラフを見て、国外のエラい人は「なぜこの程度なんだ!?」と言うんですよ。
柳澤:「日本では、まずファミコンから始まった家庭用ゲーム機文化が強くて、パソコンゲーム勢は、いろんな意味で大人向けコンテンツを中心に生き残ってきたんです」と説明したりします。
それから、海外ゲームはいわゆる「洋ゲー」というくくりをされて、「おもしろくない」「むずかしい」「絵がなじめない」というのを理由に、ジャンルとしてはじき出されてしまった歴史があるんですよね。その洋ゲーが得意なのがパソコンなんだから仕方ないでしょう、と。
谷:おっしゃるとおりです。でも、洋ゲーのくくりだけで見ると、ここ3年くらいで日本のユーザーの意識がすごく変わってきていますよね。家庭用ゲーム機の海外ゲームでも10万本、20万本と売れるタイトルが出てきています。だんだん日本のユーザーの海外ゲームに対するバリアが下がってきているんですが、そこからパソコンになかなか来てくれなくて……。海外ゲームも結局は家庭用ゲーム機で遊ばれていますし。
柳澤:私はそれでも前向きに捉えています。たとえば『The Witcher 3』がすごく売れたじゃないですか。これは結構エポックメイキングだったと思うんですよ。昔はこういうゲームがこんなに売れることなかったと思いますし。ベセスダ・ソフトワークスさんの『The Elder Scrolls V: Skyrim』や『Fallout 4』も話題になったこともあって、PlayStationでたくさんのユーザーが海外ゲームを遊んでくれました。
それを機にパソコンで遊び始めるユーザーもいましたし、国内のゲームメーカーもSteamで同時発売するところも増えてきました。
谷:私は、まさにその「日本のゲームメーカーが大作を家庭用ゲーム機版とPC版を同時発売してくれる」ことこそが、PCゲームユーザーが増える起爆剤の一つになるのかなと思っているんです。コンソール版と同時発売になると、ユーザーさんはPC版を待たなくてもよくなります。遊びたいゲームが、コンソールユーザーさんに遅れることなく遊べるようになりますよね。「パソコンでも日本の大作ゲームが遊べるんだ!」という認識が広がっていくんじゃないかな、と。
柳澤:以前と比べたらだいぶ増えましたよね。たとえば最近だと、PCでゲームを遊んでいる女性も増えてきています。少しまえまで、女性のPCゲーマーに会えたことなんてなかったですよ。時代が変わったなあ、という意味では前向きにとらえています。
BTOのALIENWARE、尖ったデザインのPredator
谷:たとえば、ゲーミングPCでプロモーションをかけると、一般の方は「私はパソコンでゲームをしないから関係ない」という無意識の心理が働くと思うんです。だから、最近社内で「ゲーミングPCという言い方を変えませんか」って言ってます。「高機能」とか「プレミアムスペック」とか、そんな名称のほうが日本はいいんじゃないかと思って。▲日本エイサー株式会社 プロダクトマーケティングマネージメント部統括部長の谷康司氏
柳澤:まさに谷さんがおっしゃったように、「プレミアム」という枠組みを日本で強化していったら、じつはもっと販売の余地がありそうだよって話はいろいろしているんですよ。
日本でもっと普及させようとしたら、いろんなユーザーに売っていくことを考えないといけないじゃないですか。ALIENWAREの場合、じつは意外と音楽をやっていますとか、大学の研究室で使ってますとか、株取引でとか、いろんな人がいるんです。そういう人たちへのアピール方法はもっと検討すべきだな、と。
谷:モデル構成も、真ん中ではなく上か下で2極化してきていて、ゲームをプレイしている方は多少お金を出してもいいものが欲しいし、そうじゃない方はできるだけ安くしたい、という傾向です。ハイエンドモデルの要求というのは、まだまだ日本の市場でも上がっていくと僕は思っています。
――両社ともここ2年くらいでゲーミングPCに力を入れ始めた印象ですが、何かキッカケがあったのでしょうか?
谷:私の感覚だと、毎年少しずつ伸びてきた、という印象です。市場全体の成長としては、おそらく年1~2%くらいかな。
柳澤:このマーケットってはっきりとしたデータがないんですよね。私はもう少し上に……3~4%とかで見ています。まあ、それでも1桁パーセント台前半ですけども。
ここ2年くらいで世界的にゲーミングPC市場が大きく伸びて、それにともなって日本にも多少予算が流入しているんです。マーケティングの投資額に関して言えば、ここ2年くらいは各社とも“バブって”いる気がします。
谷:あの、“バブって”いるっていうのは、売上に対してその投資額はどうなの? という意味ですよね。ちなみにそのお金、ウチには入ってきてません!(笑)
一同:(笑)。
柳澤:たまにALIENWAREでも日本でローンチできないモデルがあるんですよ。尖りすぎていてビジネスプランが描けないモデルっていうのが。エイサーさんも海外で面白く展開されているけど、日本でローンチされていないモデルとかがあるじゃないですか。やっぱり事情は近いところがあるのかなと。
谷:でも、ALIENWAREが素晴らしいところは、選択肢がすごく多くて、スマートでカジュアルなところじゃないですか。13.3型の有機ELのパネルとか、選択肢がユーザーにたくさん与えられています。そのあたりはPredatorではいま全然できていないところなので……。
柳澤:ありがとうございます。デルはもともと直販BTOを売りにしてのし上がった会社なので、そこはデルの根幹で譲れないポイントなんですよね。だから必然的にデルに組み込まれたALIENWAREにもその部分は残る、というのがいい意味で作用しています。
とくにゲームユーザーってどうしても自分の好きなスペックで組みたいという思いがあるので、そこはうまくハマっていると思います。Predatorでもそれができたらきっと面白いですよね。
谷:我々がそれをやろうとすると、同じ筐体でいくつものモデルを組んで持ってこなければいけなくなるので、どうしてもビジネス上のリスクが高まります。将来的に我々もそれができるようにしたいですね。
BTOとは言えないのですが、日本で3モデルくらい作れるような体制を作っています。プリセットされたものを出しているだけなので、お客様のニーズからはまだまだ遠いんですけども……。
柳澤:逆に、Predatorがすごいところって、まさに今日お持ちいただいた「Predator 21 X」(日本未発売)みたいな、こういうモデルですよね。ビジネスが大きくなるほど、なかなか変わったことができないじゃないですか。それが許されていて、ラインアップの多彩さがすごく自由ですよね。
あと、こちらの15.6インチノートの「Triton 700」にしても、デザイン的に常識を一切無視していますよね。ノートパソコンは手前にパームレストやタッチパッドがあるものですが、それがないじゃないですか。
谷:タッチパッドは一応ここ(キーボードの奥側)にあるんですけどね。このデザインになったのは、冷却システムに力を入れている会社ですので、「AeroBlade 3D Fan」という冷却システムを見せたかったから、というのがひとつ。あとは本当にゲームをするユーザーに特化して企画された製品なので、タッチパッドなんて使わないでマウスを使うだろう、と。
▲「Predator Triton 700」。タッチパッドをキーボードの奥側に配置。透過する本体内部が見える光沢部分右側がタッチパッドになっている
柳澤:そういう思いきりがいいですよね。あと、すごく細かいところだと、オーバークロックをワンタッチで切り替え可能にしている「PredatorSense」がよくできているなぁと。あれで、「GPUのオーバークロックってこんなに簡単なやり方があるんだ」って思いました。
谷:ありがとうございます。あのあたりも含めて、それなりにいろんな国の意見を聞きながら製品を考えてはいるんですけど、まあ、日本の意見を通すのは苦労します(笑)。
柳澤:うちも同じです(笑)。
――たとえば日本からだとどんな要望を出されているんですか?
谷:日本はやっぱり住環境が狭いので、筐体を大きくするのはやめてくれという話をしています。だって置くところないじゃないですか。いまデスクトップで出している「Predator G1」というモデルがありますが、あれは多少日本の意見も聞いてくれて、ぎゅっと凝縮してくれました。
柳澤:私もびっくりするくらい同じことを本社に伝えてますよ(笑)。G1はいいなぁと思っていて、あのサイズ感っていまALIENWAREにないんです。G1は日本で売れると思っているんですけど……。
谷:いや、想像されるほどでは……(笑)。
柳澤:(笑)。うちも前に「X51」っていう超小型デスクトップがあったんですよ。日本ではよく売れていたんですが、アメリカからすると拡張性がないデスクトップはあまり売れないんです。そうなると、やはり販売継続は難しいんですよね。
ゲームと同時にアレコレできるのがパソコンの魅力
――スマホとか家庭用ゲーム機にはない、パソコンゲームならではの魅力っていうのはなんでしょう?谷:4Kゲームとかパソコンの方がリッチな体験ができるものが多いですよね。あと、ゲームをしながらいろんなことが並行してできるのも大きいです。そこが家庭用ゲーム機ではできない部分としてあると思いますね。
柳澤:ゲームをコミュニケーションツールとして使える、という部分はパソコンならではですよね。もちろん、最近は家庭用ゲーム機にもボイスチャットがありますけど、それほど自由にできるものではないですし。クリアな音、ハイエンドなテクノロジーで、テキストチャットしながらだってできます。横でネットを見ながらメールしてとか、モニターも3画面にしたり、『マインクラフト』などMODを入れて自分で無限に改変することもできますし。
谷:たしかにMODの存在は大きいですね。
柳澤:だから、家庭用ゲーム機っていうのはゲームをすることに特化しているぶん、ゲームをする段階では安定していると思うし、それはすごいことなんですけど、パソコンって本当にいろんな意味でゲームを楽しめちゃうんですよね。
ただ、PCゲームを遊ぼう! と思ったとき、家庭用ゲーム機ほどのわかりやすさがない印象もあって。Steamひとつとっても、「どうしたらいいの、コレ!?」って感じじゃないですか。何をしたらいいかわからない。家庭用ゲーム機からPCゲームの世界に入ってきたとき、大半の人が戸惑うと思うんですよね。
谷:開発側からすると、Steamはゲームを投入しやすいプラットフォームなんですけどね。家庭用ゲーム機だとマスターチェックが必ずありますが、Steamにはそれがないので、メーカーが出したいときに出せますからね。
――ちなみに、おふたりが最近遊んでいるゲームはなんですか?
谷:2年まえからTGSのウォーゲーミングジャパンさんのブースで『World of Tanks』(以下『WoT』)企業対抗戦をやっているんですよ。日本エイサーもチームプレデターとして参戦したんですが、ALIENWAREチームに負けっぱなしで(笑)。きっと今年のTGSもやるだろうということで、最近はずっと『WoT』をやっています。
柳澤:私はここ2年くらい『ファイナルファンタジーXIV』をメインゲームとしてやっています。その合間にSteamの軽めなインディーゲームも遊んでいる感じですね。最近ではないのですが、『Ori and the Blind Forest(オリとくらやみの森)』というゲームがめちゃくちゃよかったです。いまだに超オススメですね。
そんな感じでゲームは本当に大好きなので、いまの仕事は助かっていますね。家族にも「これは仕事だから」って言い訳できますし(笑)。
谷:そこ、重要ですよね。ビジネスパートナー、ユーザー、いろんな方と話をするとき、ちゃんとゲームのことをわかってないとすぐ見抜かれますから。
<後編に続く>
■TOKYO MX「eスポーツ MaX」で対談の模様を放送!
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■プレゼント
ALIENWARE「Mobile Edge Alienware Vindicator(15インチ用)」
Predator「ゲーミングマウス Powered by SteelSeries PMW510」
■応募締め切り
2018年3月30日(金)ツイート分まで
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ALIENWARE × Predator対談【後編】「eSportsの普及でやるべきことは賞金ではない」
https://alienwarezone.jp/post/741
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