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「ネスは人生のパートナー」『スマブラ』で1キャラにこだり続ける“Gackt”の競技者論・ストリーマー論【『スマブラSP』プロゲーマー ZETA DIVISION・Gackt選手インタビュー】
目次
任天堂にゆかりのあるキャラクターが、メーカーやジャンルの枠を超えて戦う『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズ。1999年にニンテンドー64で登場して以来、ハードウェアを変えながら実に20年以上も遊ばれている世界に誇る対戦アクションゲームだ。
そのeスポーツシーンはメーカー主導というよりはプレイヤーたちのコミュニティ大会が支えてきた。ゲームキューブなどでリリースされた古いバージョンは、特に海外で今もなお熱狂的に遊ばれており、日本のaMSa選手のようにプロゲーマーとして活躍している選手もいる。
そんな『スマブラ』シーンの中で、ひときわ注目されているのがGackt(がくと)選手だ。最新作の『スマブラSP』では『MOTHER 2』の主人公であるネスを愛用。メジャー大会での活躍も目覚ましく、いまノリに乗っている。2022年9月17日にはZETA DIVISIONの『スマブラ』部門設立&加入が発表されたばかり。
この度、ZETA DIVISION スマブラ部門所属の選手として活動していくこととなりました。
— Gackt / がくと (@Gackt_N) September 17, 2022
ZETAファミリーの一員としてこれからの活動を取り組みます。よろしくお願いします!
joined @zetadivision https://t.co/Dc7Ow4CIcd
彼の魅力はなんといってもTwitchでの配信だ。ほぼ1日と言っていいくらい長時間の配信を行っており、いつTwitchを開いてもなにかしらの配信をしているというほど。『スマブラSP』だけでなくお気に入りの他のゲームもプレイするなど、Twitchの『スマブラ』のストリーマーとしての地位も確固たるものになっている。
今回は、そんな話題のGackt選手にインタビュー。ネスのみを使い続けるストイックさの理由、プロゲーマーながら企業の匂いが一切感じられない彼の生活など、配信でもあまり語られない秘密を暴いてみたい。
※インタビューはZETA DIVISION加入前にオンラインにて実施した。
『スマブラ』を通して交流の輪が広がっていった幼少期
──Gackt選手と聞いて思い浮かぶのはネスだと思いますが、世代的に『MOTHER 2』はリアルタイムではないですよね。最初にネスと出会ったのはいつ頃ですか?
Gackt選手:3つ上にお兄ちゃんがいまして、お兄ちゃんに全然勝てなくて人生で初めて「悔しい!」と思ったのが『大乱闘スマッシュブラザーズ64』でした。それ以来、幼稚園、小学校、中学校、高校とひたすら『スマブラ』のことばかり考えてきましたね。
──兄弟での対戦から始まって、他人と戦うようになったのはいつ頃ですか?
Gackt選手:中学生の時にWiiの『スマブラX』でオンライン対戦ができるようになったんです。その当時、僕は地元では負けなしだったんですけど、オンラインで対戦してみたらまあ、ボコボコに負けまして(笑)。ここが人生第2の悔しさを味わったポイントでした。
──でも、地元の友達とか相手のオフライン環境では強かったんですよね?
Gackt選手:そう思っていましたし、その後も勝てていたんですが、高1の時に初めて参加したオフライン大会「ピヨスマ」で、7~8人くらいでやる予選では全敗してしまったんです。
──自信があったのに全敗、ですか?
Gackt選手:はい。もう高1の僕のプライドはさらにズタズタでしたよ(笑)。オンライン対戦を渡り歩いた僕からすると予選全敗というのは本当にこたえて、「これは生半可な気持ちで挑んじゃいけない、情熱を注がないと勝てない!」と思い、そこからさらに『スマブラ』にのめり込むようになりましたね。
──大会に出たことで自分の周りにはいない強い人の存在を知ったわけですね。それから、自分が本当に「強い」と勝てることを実感し始めたのは?
Gackt選手:ネットにも名前が載るようになったのが、2014年に『スマブラ for Wii U』が発売されてからのことでした。ここでブイブイ言わせ始めて「ああ、僕って強いんだ」と初めて才能が開花したんです。オフライン大会などでもベスト8くらいに入れるようになって「これが勝つってことなんだ」と実感し始めましたね。
その後、高3で受験のためにフェードアウトしましたが大学で復帰して、大学3年の時に『スマブラSP』が発売されてからは、Wii Uの時よりさらに成績がアップしたんです。昔の僕からしたら「僕ってそんなにすごい選手なの?」って思うような戦績を残し始めて。
──Gackt少年が今のGacktさんを見たら、「すごいよ、未来の僕!」って思ってるでしょうね。
Gackt選手:ちょうどこの頃、『スマブラ』だけで食べていく専業プレイヤーも出始めました。就職の時期も重なって、もしかしたら就職しなくても『スマブラ』だけで食べていけるのかな、という思いが芽生えてきました。
就職よりも『スマブラ』で生きていく決断
──当時の大会の多くは国内のコミュニティ大会で、最初に大きな大会に出たのは、2017年のアメリカの大会でしたよね。
Gackt選手:大学2年の時に「The Big House 7」という大会に何も考えずに参加しました。当時は海外遠征が流行り始めた時期で、バイトでお金は貯められたので熱に浮かされて。その初めての大規模大会は17位だったんですが、「なんだ、あのネス使いは?」と現地で衝撃だったみたいで話題になったんです。この時に承認欲求がドバドバ出て「このゲームやっててよかった!」って思いましたね(笑)。
その実力を認められて、大学に通いながらRay Road Gamingというチームに所属しました。でも大学4年生だったので同時に就職活動もしていて、バイト先の会社から内定もいただいたんです。
ある時、採用担当の方に「実は僕、『スマブラ』というゲームの競技者をやっていて、YouTubeとかも含めて食える環境はあるんです。ただ、せっかく大学卒業したんだし就職した方がいいんですかね?」と相談したんですよ。
そしたら、「それは才能だよ。そのポジションはなりたくてもなれない人がたくさんいる。言い方は悪いけど、誰にでもできる仕事をして一生を終えるなんてもったいない。君はそっちの道で食っていくべきだと思う」と言われて。
その言葉がきっかけで就職するのをやめて、大学卒業後から『スマブラ』1本で生活することにしました。
──ご両親や家族との思いのずれはなかったんですか?
Gackt選手:うちの家族、みんな自営業とか自由の利く仕事をしているので、サラリーマンにならないといけないという考えはなくて、相談もしやすかったんです。
納得してもらえた一番の理由は、当時すでにチームにも加入して、YouTubeの広告収入なども合わせると大卒初任給以上はいただけていたからだと思います。親が考える基準をクリアできて「それで食べていけるのならいいんじゃない」と。ただ「なりたい」と言っているだけだったら認めてもらえなかったと思います。
ネスは人生のパートナー
──『スマブラ』のプロって、みなさん1キャラへのこだわりが強いと思うんです。ただ疑問なのは、あまり強キャラと言われていないネスにそこまでこだわり続けられる理由。大会での勝利だけを考えれば、他のキャラを使うという選択肢もありますよね。
Gackt選手:そこは「自分が信じ抜いたキャラで勝ちたい」ということが、僕の根幹にあるからだと思います。お兄ちゃんにボコボコにされていた幼稚園の頃からず〜っとネスを使っているので、こいつで勝てなかったらなんか違う気がするんです。もう10何年間も一緒にいるわけで、ネス以外で勝つことは僕の人生を否定されるような気がして。
初めてネスを知ったのは64の『スマブラ』で、ネスがリリースされて「なんだこの子ども? 人間じゃないか」って思っていました(笑)。当時は結構強いと思って使っていて、家にたまたま『MOTHER 2』があったので遊んでみたらどハマりしてしまって。そこからキャラ愛も芽生えて「このキャラで勝ちたい」って思い始めましたね。
──勝てるか勝てないか、という次元じゃないんですね。
Gackt選手:そうですね、僕の中ではネスは特別で、彼女以上というか、人生のパートナーなんです。理屈じゃないですね。優勝だけを狙うならもっと強いキャラを使えばいいと周りからも散々言われたんですけど、眼中にないです。僕はどうしてもネスで勝ちたいんですよ。
──だからこそ、ネスが厳しい組み合わせなどの時に、投げてしまいたくなることはないですか?
Gackt選手:正直今でもめちゃくちゃありますよ! 勝てる気がしないキャラ相性もあります。一方で「それって本当にダメな相性なのか?」とも考えてしまうんです。
開発元が公式に明言したならわかります。でも、どこかの誰かが不利だと言っているだけなら、本当はそうじゃないかもしれない。じゃあまだいけるよね、と信じて使い続けています。
Gackt×ネスの強さの秘密・建前と本音とは?
──そんなGacktさんだからあえて聞きたいんですが、「俺が使うネスはここがすごいんだ!」という部分をご自身で語っていただけますか?
Gackt選手:そういう質問には、いつも2つ回答を用意しているんです。
オフィシャル発言でウケがいい方を言うと(笑)、「PKサンダーアタック」の引き出しの多さですね。PKサンダーという技は遠隔操作しなければならず、出している間はネスが隙だらけになります。そこをうまく使って敵を誘導するんです。
「いま殴らなかったら、PKサンダーが終わっちゃいますよ〜」と誘っておいて、狙ってきたところにPKサンダーアタックを打つ。この技、結構見栄えがいいので、当てるたびに観客も「わーっ!」と湧いてくれて、「GacktはPKサンダーアタックがうまいね」「どんなところからでも当てるね」という評価を各方面からいただいています。
ただ、これはオフィシャルな回答です。『スマブラ』をわかっている人からしたら「大技だからそんなに当たんねぇよ」って思ってますし、僕自身もそんなに当たらないと思ってます(笑)。
──では、本音のところは?
Gackt選手:僕自身の強さは「地上での読み合い」だと思っています。
ネスは空中技が強いので、大半のネス使いは空中で戦えばいいと思いがちなんですけど、当然ジャンプ中は隙が多くなりますよね。最初に地上での読み合いを制して、相手を浮かせて不利な状況に持ち込んだ時に初めて、ネスの空中技が生きるんです。
僕はその機をうかがうまでずっと地上にいるので、隙も少なくてそう簡単に崩れない自信があります。そこが僕のネスが突出して勝てている理由かなと思います。こんな話は地味だと思われるので、これまではそんなに言ってこなかったんですけど。
──対戦格闘ゲームも極めていくと派手な技の使いどころじゃなく、地味な立ち回りの部分のうまさに行き着きますよね。
Gackt選手:そうですね、最初はPKサンダーアタック押しで良かったネスも、『スマブラSP』リリースから3年半が経過してメタも回っていますし、立ち回りの堅牢性とかが求められてきているんです。
──Gackt選手って見た目に反して、すごく緻密に考えて戦うタイプなんですね(笑)。
Gackt選手:公の場に出る時は割とちゃらんぽらんなんですけど、『スマブラ』のことは配信でも多くは語らないですね。やっぱり自分のプライドもあるので、口に出したくないという思いもあるんです。
──『スマブラSP』はアップデートも終了していますが、日々の練習はどんなことをしているんですか?
Gackt選手:先ほど、いまが僕の人生の中で戦績が一番いいとお話ししましたが、なぜかというと単純に練習時間を増やしたからなんです。
2021年4月にTwitchに移行して、いろいろな方からストリーマーとして成功するには「長時間配信し続けることが大切」と教えていただいたんです。そこからとにかく配信することにしたんですが、必然的にずっと『スマブラSP』をプレイするということなんです。毎日8時間、この1年間ずっとです。そうしたらみるみる成績が伸びていきました。本当に(プレイする)数なんだなと実感しています。
ただ、いまは時間をこなすだけではダメで、頭を使うことも必要だと思っています。8時間も配信しているとグダグダしてしまう。いまの僕の実力は階段の踊り場にいるような状態で、1段上に上がるためには頭を使って1戦1戦分析する必要があるんですが、配信しながら思考するのは大変なんですよね。リスナーとの交流も大切にしつつ、配信しながら分析できる能力が欲しいです。
自分を応援してくれるファンを増やすためにTwitchへ
──Twitchに切り替えた理由はなんだったんでしょうか?
Gackt選手:当時、チームを契約満了で抜けたばかりでストリーマーとして頑張ろうとしていた時に、ストリーマーの先輩方から「Twitchはいいぞ」って言われたんです。
第一に、ファンが本当に自分を純粋に応援してついてきてくれるところ。
YouTubeでは自分のファンじゃない人も訪問してくれます。「Googleサジェスト」とかにも出ますからね。ただ、再生数は伸びたとしてもファンじゃない方が多いと安定してくれません。
その点、Twitchには「サブスクリプション」という文化があって、僕のことを応援したい人が月額で支援してくれます。たとえ一時的にTwitchを離れたとしても支援を続けてくださる方もいるというのは、実質個人スポンサーみたいなもの。単純に自分を直接応援してくれる人を増やしたかったんですよね。
第二に、僕は生放送が得意なんですが、生放送を見たい人が集まるのがTwitchなんですよね。それも移行の理由でした。
最初は不安でしたが、YouTubeである程度ファンの土壌はできていたので、プラットフォームを変えてもついてきてくれると信じていました。もしいま他のプラットフォームに移行しても、みなさんついてきてくれると思います。そういうファンが本当に欲しかったので、結果的にはTwitchに移行してよかったです。
──選手によっては、配信する時間と練習する時間を分けている方もいます。でもGackt選手は、常に配信したい派ですか?
Gackt選手:そうですね、正直スマブラを起動している時に配信しないことはありえないと思っています。集中して2時間トレモをやるならそれも配信したらいい。思考がストリーマーに寄ってきているんでしょうね。まあ、競技者としても活動していますがフリーランスなので、自分で食っていかなきゃいけないですから(笑)。
競技者とストリーマーの両立はもはや当たり前?
──職業としてはフリーランスなのでしょうが、いまのGacktさんは競技者とストリーマーで言うとどちら寄りですか? チームに所属せずスポンサーも受けていませんよね。
Gackt選手:活動としては、ストリーマー:競技者=9:1くらいです。僕としては「競技者」と言われたいですが、見え方的にはストリーマーでしょうね。
──たしかに、ファンは理解しているとは思いますが、チームに所属している選手と比べると、ストリーマーというイメージは強いかもしれません。
Gackt選手:そうですね、特に『スマブラSP』はコミュニティ大会が基本なのでプロアマ問わず誰でも参加できますし、チームに所属する意味はその点においてはほとんどないんですよね。チームによっては最低限配信する時間のノルマもあると思うんですけど、僕は『スマブラ』に飽きたら他のゲームをやってもいいし、案件も取捨選択できるので居心地がいいです。個人で動いた方がなんでも自由にやれるので、コンプライアンスも気にすることもありませんし。
もしそういう自分のやり方を尊重してくれて、大会などの手続きとかをやってくれるチームがあれば、所属してもいいとは思っています。
※取材後の2022年9月17日にプロゲーミングチーム「ZETA DIVISION」に所属することが発表された。
──ストリーマーと競技者という分け方ではなく、もはやどちらも一緒にやるものなのかもしれませんね。『スマブラ』で活動していく上で大切にしていることはなんですか?
Gackt選手:配信の先輩方からは、「自分の好きなことができない環境はダメだ」と言われてきました。やりたくないことをやっていると気持ちも滅入っちゃうし、自分にも迷いが生まれる。『スマブラ』が好きだから『スマブラ』だけで生活しているのに、それじゃあ本末転倒です。
ありがたいことに、いまの僕はファンがTwitchのサブスクなどでたくさんサポートしてくれています。競技者としてはそれが一番クリーンで気持ちいい。僕を純粋に応援してくれる人と一緒に、配信や大会で頑張っていると思うと自信にもなるし、いまは本当に心地いいんです。
──Gacktさんのファンはどんな方なんですか? Gacktさん自身のファン、Gacktさんが使うネスのファン、いろいろいると思いますが。
Gackt選手:正確にはわからないんですが、僕としては僕自身を見てくれる人を意識しています。大会でのプレイを見てファンになった人は、結果を残せなくなったときには離れてしまうかもしません。でも、Gacktという人間を好きで支援してくださっている人なら、大会の成績が振わなくても『スマブラ』に関係なく応援してくださるので、そういう人を大切にしたいですね。
──実際、そういうファンが多いのですか?
Gackt選手:そう思いたいです。もしかしたら競技シーンにしか興味がない人かもしれませんけどね(笑)。
──ご自身では、自分のどういうところが評価されていると思われますか?
Gackt選手:多分、単純に話しやすいのかなと思います。
『スマブラ』に限らず、トッププレイヤーってファンとの間に一線が引かれていて話しかけにくいことが多いと思うんです。その点、僕は1日8時間くらい配信していますし、視聴者も交流しやすいというか、話しやすい部分はあるのかな。
この部屋の後ろのキッチンスペースで料理しているところとか、生活を全部配信で映していますからね。視聴者も僕のことが全部わかっているし、同じヒモで腰を括られているから支援してよ、という気持ちも伝わるというか(笑)。
──参考にしている配信者はいらっしゃいますか?
Gackt選手:再春館システムのネモさんがすごかったです。
先日「大会があると配信時間が減ってしまうんですよ」という悩みを打ち明けたら、「自分がやれることは全部やったほうがいい」っておっしゃって。「大会の結果が悪かったらなら『負けちゃったよ……本当に悔しい!』ということも配信していかないと、ファンは気づいてくれないんだよ」と。
実は、これまでの僕は正反対で、結果が伴わなかったらファンに会わせる顔がないって抱え込んでいたんです。ただ、配信しなければ視聴者はそういう僕の思いもわからないわけで。「Gacktさんはまだ若いから負けたら配信しなくていいという考えになっちゃうかもしれないけど、ダメだよ、やろう!」とプッシュしていただけたおかげで、7月にアメリカで行われた大会(Double Down 2022)でも雑談配信しました。
──Twitchで配信する時に心がけていることはありますか?
Gackt選手:あまり『スマブラ』のプレイについては語らないようにしているかもしれないですね。やっぱり競技者にとってプレイ内容というのはセンシティブな部分ですから。
例えば、相手のここが甘かったから突いた、というような話も僕はあまり好きじゃないんです。だって、言われた側はムカつくじゃないですか。
『スマブラ』が大好きで仕事を終えて楽しく遊んでいるだけかもしれない人が、オンライン対戦した相手に「あれは甘かったわ」とか言われたら、僕なら腹が立ちます。だから、あまりプレイのことは言わないように意識しています。
──言葉の端々から徹底的に『スマブラ』を大切にしていることが伝わりますね。
Gackt選手:とにかく「スマブラファースト」というのが僕の根幹にあるからかもしれません。『スマブラ』が好きだからこそ、一番気をつけているのは『スマブラ』に関わる発言ですね。
『スマブラ』で生きていきたい子どもたちへの公式声明と本音(※個人の見解です)
──Gackt選手みたいになりたいと思っている人もいると思いますが、そういう人たちにGackt選手のような、常に配信し続けるような生き方は勧められますか?
Gackt選手:『スマブラ』に限らず、もしゲームで食べていきたいと思っているならTwitchでの配信は一番の近道だと思いますよ。配信界隈に精通している方から「配信は継続だ」と言われたことがあるんです。一朝一夕でなれるものではなくて、1年、2年とやっていってどこかで芽が出るものだと。
それと、やっぱり『スマブラ』などのeスポーツ競技は、いい結果を残せなかったら見向きもされません。でも配信であれば、努力して続けていけば必ず芽が出ます。ただし、その“継続”が一番難しい。配信し続けるにはずっと家にいなければいけないから、飲みにもなかなか行けません。それを1年、2年と続けても苦じゃない人にはオススメできます。
──では、『スマブラ』で生きていきたいと思っている人にアドバイスするとしたら?
Gackt選手:これも、オフィシャルな意見と、腹を割った意見があるんですけど……。
大前提として、自分から発信しなきゃダメです。大会でいい結果を残せたら「僕はこういう結果を残しました!」と逐一みんなに伝わるように発信することが大事です。自分への興味がない多くの視聴者には大会の結果なんてわかりませんから、とにかく自分を売り込むことが『スマブラ』で食っていくための道だと思います。多少吹いてもいいです(笑)。
腹を割った意見としては、物議があるかもしれませんが、「プロゲーマーになるために学校をやめたい」という意見に対して「通いながら頑張った方がいい」という声もあるとは思うんですけど、僕の意見は逆です。
学校や仕事と『スマブラ』の両立はやめた方がいいと思います。
僕は、高校も大学も卒業してこのポジションにいますけど、むしろ僕の方が運が良かっただけです。正直、自分でいまの立場をつかみとったという感覚はいまもありません。時代のうねりと流れの中で、このポジションにいさせてもらえていますが、ほとんどの人はこんなに運がいいことはない。自分からつかみにいかなきゃ大成できない世界だと思うんです。そのためには、なにか1本に集中したほうがいいと思っています。
──すごい覚悟が必要ですね……。
Gackt選手:いえいえ、僕は輪廻転生論を信じていまして、1個の人生が終わったら次の人生に転生されると思っているんですよ。
──……え? 輪廻転生……?
Gackt選手:だから、この人生くらいは『スマブラ』だけに打ち込んでもいいんじゃないかと思うんです。環境が許されるなら。
──つまり、次の人生があるから打ち込んでもいいだろうと?
Gackt選手:そうです。もしかしたら前世はただのサラリーマンで、「次の人生にはやりたいことをやろう……」と志半ばで死んだかもしれない。なので、この人生では好きなことをやらせてもらいますと。
──なんだか素晴らしかった話が最後に眉唾みたいに思えてきました(笑)。
Gackt選手:まあ、それくらいの考え方で生きてきましたし、失敗しても悔いはないと言えるくらいの生き方はしています。だからこそ内定も辞退できましたし、1回だけの人生なんだからうまくいかなくてもいいじゃん、ひとつに集中してみようよって。
もちろん、僕の話を聞いてうまくいかなかったとしても責任は持てません。でも、それくらいしなかったらこのeスポーツやストリーマーの世界で、自分の力だけで生き抜くのは難しいと思います。
『スマブラ』コミュニティを動かせるくらいの影響力が欲しい
──最後に、今後の目標をお聞かせください。
Gackt選手:もっと僕自身の影響力を持ちたいです。僕自身がTwitchや配信で力を持てれば、おのずと『スマブラ』界隈にも影響が及びます。ある大会の視聴者が1万人だとして、僕の視聴者が1万人いたら僕が出場すれば2万人に増える……それくらいの影響力が欲しいんです。
──『スマブラ』のアップデートも終わり、次回作の発表もありませんしね……。
Gackt選手:大型アップデートが終わって、どうしたってこれから『スマブラSP』の人気は下がっていくと思うんです。その時に僕が力を持っていれば『スマブラ』界隈を救えるかもしれない。おこがましいんですけど、僕についてきてくれるリスナーがたくさんいれば『スマブラSP』が衰退しなくて済むかもしれません。
──そこまで『スマブラ』が好きな理由って、あらためて考えるとなんなんでしょうね?
Gackt選手:やっぱり『スマブラ』のコミュニティや大会シーンは高1からずっといる場所なので、本当に居心地がいいんですよ。だからどうにかこの流れを絶やしたくない。
『スマブラSP』の大会は企業スポンサーなどがあまり絡まない分、他の競技者たちも純粋に『スマブラ』を好きだからなんとかしなきゃ、と感じて行動しているんだと思います。内輪だけの狭い関係になりがちな傾向もありますが、そこも含めて僕はこの『スマブラ』界隈が大好きなので、この文化をずーっと継承していきたいですね。
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淡々としたやわらかい話し方が印象的なGackt選手だが、強さを持ちつつも、基本は子どもの頃から好きなゲームを純粋に楽しんでいるだけ、というところがとても不思議に感じられた。同時に、ゲームに人生をかけて生きていくという覚悟も本物だ。
一見ゲームを楽しんでいるだけのように見えるTwitchのストリーマーたちも、自分の好きなゲームが衰退していったり、新しいタイトルに取って代わられるかもしれないという不安やジレンマは抱えているだろう。
『MOTHER 2』ファンの方も、Gackt選手の元からのファンの方も、そして今回たまたまこのインタビューを目にした方も、ぜひ一度Gackt選手の配信と『スマブラSP』での戦いぶりを見てみてほしい。たとえ10年、20年後に『スマブラSP』の新作がリリースされていなくても、『スマブラDX』がいまでも熱狂的に楽しまれているように、Gackt選手がTwitchの画面の中で楽しそうにネスを操っている配信がきっと見られるはずだ。
なお、直近の大会として、Gackt選手が10月15日〜16日にパリで行われる「L'Odyssée」に日本人選手として招待されている。Gackt選手初のヨーロッパ大会で、ネスとともにぜひ初優勝を遂げてほしい。日本からもエールを送ろう!
10月15-16日にパリで行われるL'Odysséeという大会に招待いただいたので参加します。初めてのヨーロッパだ https://t.co/flNzMCay1o
— Gackt / がくと (@Gackt_N) September 28, 2022
写真提供:ZETA DIVISION、@sakyooooou
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