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ゲームのプレイテクニックを教える「コーチ」という仕事 ~『LoL』コーチ Data氏の場合~
ALIENWARE ZONE読者の皆さん、はじめまして。Dataと申します。ご縁があってこちらで書かせていただくことになりました。私はSengoku Gamingの『リーグ・オブ・レジェンド』(以下『LoL』)ユースチーム「Sengoku Gaming Underage Saga」「Sengoku Gaming Youth」のコーチをさせていただいておりました。ですので、私がココで執筆するなら……というわけで、ゲームにおける「コーチ」という仕事について書いてみたいと思います。
あらためて説明するまでもなく、eSportsは今や日本でもニュースやドキュメンタリーなどのテレビ番組で紹介されるほどになりました。ひと昔前は一般に認知もされていなかったものが、今日では少なくともその言葉のおよそ指すものは社会に伝わるようになったかなと感じています。
その影響もあり、コミュニティの一部の熱狂的なファンの中では、そのゲームのプロ選手として活動したいだとか、コーチやアナリストになりたいと考える人が急増しています。eSportsのファンがより深くコミュニティに関われるだけでなく、自分の特技や趣味を仕事(収入)にしたいと思っている人が増えているようです。
かくいう私は、ゲームのコーチングでわずかばかりの収入を得ているひとりです。私は元々『LoL』のプレイヤーのひとりで、シーズン1からプレイし始め、シーズン4には北米サーバーで208位、日本サーバーが始まったシーズン6には42位(チャレンジャー)まで上り詰め、セミプロチーム(7th heaven X)に選手として加入するなど、ある程度の実績を残していました。
その後、まもなく個人を対象にコーチングを始め、シーズン8にはアカデミックチームのコーチを務めるなど、現在は自身でプレイするよりも人に教える側の立場にあります。
そこで今回は、私の実体験を例として挙げながら、ゲームのコーチを仕事にする方法について考えていきます。
たとえば、私が現在コーチングを行っている『LoL』では、クライアントの試合をレビューしながらゲームの基礎的な考え方を説明し、試合中の様々な状況下でどういう行動を取れば合理的なのか、少しでも優位に立てるのかについて話し合うほか、求められれば一緒にゲームをプレイしてリアルタイムでの操作技術の向上を図ったり、瞬間的な判断を培う手助けをしたりします。
『LoL』の場合で説明してみましょう。このゲームではプレイヤーのゲームのうまさを語る際に"ミクロ"と"マクロ"というふたつの言葉を使います。
ミクロとは敵のスキルを避けたり、敵に自キャラクターのコンボスキルを叩き込むような瞬間的な操作技術を必要とする細かなプレイのことをいいます。
マクロは、簡単に言えばそういったミクロ以外のすべてのことであり、いわゆる戦略面のことを指します。たとえば「今なら敵が孤立しているから、この隙にふくろ叩きにしてしまおう」とか、「こちらの陣地が攻められているが手こずっているようなので、あえて今のうちに相手の陣地を攻め落としてしまおう」などがマクロの視点と言えます。
もちろん高度なミクロにはそれ相応の知識や経験を必要としますが、基本的にコーチングにおいて重要なのはマクロな部分です。ミクロは人に教わるよりも自身で慣れることのほうが大事なのと、視覚的に倒した・倒されたなどで善し悪しがわかるミクロと比べ、マクロの問題は自身では気付きにくいのです。
そのため、『LoL』のコーチは必然的にマクロ部分(戦略面)への深い理解と、その前提であるゲームへの膨大な知識が求められます。これらはゲームを長年プレイし続けることで自然に培うことができるほか、YouTubeや国内外の攻略サイトなど各種メディアでの情報収集も有効な手段となります。というより、その両方を徹底的に行う必要がある、と言っていいでしょう。そうすることで初めてそれを実践していない平均的なプレイヤーの知らない(=コーチングに役立つ)貴重な知識を得ることができるのです。
『LoL』から簡単な例を挙げるとすれば、ゲーム内の各ステータスが具体的にどう影響するのかという部分でしょうか。移動速度ひとつ取っても意外と知らない人が多いのであらためて説明すると、ゲーム内で使われている移動速度の表記は、そのユニットが1秒間に移動することのできる数値を表しています。フラッシュという呪文を使って移動できる最大距離が400であり、ほとんどのキャラクターの移動速度が325~345であることを考えると、移動速度が+55されるスウィフトネスブーツを購入した場合、1秒間でフラッシュとおよそ同等の距離を移動できることになります。
また、この移動速度パラメータが415~490の間は加算される移動速度に20%のペナルティがかかり、それ以上を超えると50%のペナルティがかかることもあまり知られていません。同様に、対面する相手と足を止めて殴り合った場合のダメージの計算方法や、それを踏まえた上でどのスキルを喰らうと負けるのか、どのスキルを当てると勝てるのかといった点も意識していない人が多いように思います。
こういった知識は、単体では1000試合に1試合しか役に立たないようなものでも、1000個知っているとすればすべての試合で役に立つことになります。その点では、クライアントが知らない大切な知識をどれだけ与えられるかがよいコーチの指標であると言えるでしょう。
私の場合で言えば、プレイヤーとしては半ば引退したような現在でもパッチが変わるごとにある程度の数をプレイし、その都度変化する環境の情報を頭に入れ、今はどのキャラクターが強く、どのキャラクターに弱いのか、どんなプレイをすれば不利を覆せるかなど、時間の許す限り新たな知識を入れるように努めています。ゲームの総プレイ時間だけでも10000時間はゆうに超えていますし、ゲーム外の情報収集も考慮すればその倍以上になるはずです。
ただ、この段階では、まだ誰もあなたがコーチができることを知りません。当然ですね、シャッターが下りている店には誰も入れないし、その商品の質が信用できなければ買おうともしないでしょう。さらに言うなら、その店を宣伝しなければ、せっかくシャッターが上がっていても訪れる機会があるのはたまたま店の前を通りがかった人たちだけとなってしまいます。
次に必要なのは、あなたが優れたコーチであると信用してもらうための肩書き。あなたがすでにプロ選手として活躍しているのでもない限り、いかに優れたコーチであったとしてもそれを証明するものがなければこの人に教わりたいと思う人はまず現れません。『LoL』ならランクシステムがあるので、それを肩書にするのがもっとも簡単です。日本人を対象にコーチを行うのであれば、日本サーバーで"チャレンジャー"に到達できれば十分な実力の証明になるはず。その他にもTwitterやブログでの情報発信、Twitchなど動画配信サイトでのゲームプレイやコメンタリー配信をすることで、さらなる認知度を得ることができます。
あなたに実力があり、それを証明するだけの実績・ブランド力が備わったなら、あとは宣伝です。コーチを求めている人にとってこれだけの要素が揃っていれば、その存在を知ってくれれば少なくとも候補に入るはずです。知ってもらうためには、やはりTwitterやブログ・配信などで認知度を高めていったり、知人のツテでクライアントを紹介してもらったりといった宣伝が必要になってきます。最初は客足が少なくとも、しっかりと満足度の高いサービスを提供できていれば口コミで認知度は上がっていくことでしょう。
なお、私の場合はこれらに加え、クラウドソーシングサイトに『LoL』のコーチングを行うというサービスを掲げるところから始めました。当時は日本サーバーもなく、サイト自体の知名度も低かったのであまり効果はなかったのですが、最初期から登録していたため時間とともに両サービスの知名度が上がるにつれ、サイトからのクライアントが増えました。後に気付いたことですが、私のサービスが検索エンジンでトップに表示されるまでに成長していたのです。
それでも、自分の好きなことが誰かの役に立ったときの喜びはひとしおです。そして何より、自分の好きなことで生きていけるかもしれないという喜びは、他の何をしていても得ることのできないとても大切な感情です。
コーチに限らず、eSportの世界に飛び込むには「ゲームが好き」以上の知識や情報が必要となってきますが、とくに日本はこれから伸びていくであろう業界なので、興味がある人はぜひその門を叩いてみてください。
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『リーグ・オブ・レジェンド』
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あらためて説明するまでもなく、eSportsは今や日本でもニュースやドキュメンタリーなどのテレビ番組で紹介されるほどになりました。ひと昔前は一般に認知もされていなかったものが、今日では少なくともその言葉のおよそ指すものは社会に伝わるようになったかなと感じています。
その影響もあり、コミュニティの一部の熱狂的なファンの中では、そのゲームのプロ選手として活動したいだとか、コーチやアナリストになりたいと考える人が急増しています。eSportsのファンがより深くコミュニティに関われるだけでなく、自分の特技や趣味を仕事(収入)にしたいと思っている人が増えているようです。
かくいう私は、ゲームのコーチングでわずかばかりの収入を得ているひとりです。私は元々『LoL』のプレイヤーのひとりで、シーズン1からプレイし始め、シーズン4には北米サーバーで208位、日本サーバーが始まったシーズン6には42位(チャレンジャー)まで上り詰め、セミプロチーム(7th heaven X)に選手として加入するなど、ある程度の実績を残していました。
その後、まもなく個人を対象にコーチングを始め、シーズン8にはアカデミックチームのコーチを務めるなど、現在は自身でプレイするよりも人に教える側の立場にあります。
そこで今回は、私の実体験を例として挙げながら、ゲームのコーチを仕事にする方法について考えていきます。
▲近年日本でもテレビで取り上げられるなど注目を浴びている『LoL』。ゲームをプレイして収入を得る"プロゲーマー"を何人も輩出
ゲームのコーチとは
ゲームのコーチとは、簡単に説明すると個人またはチームについてそのゲームプレイが上達するように指導する人間のことです。対象が個人である場合は、そのゲームについての細部にわたる知識を教えることが主となります。チームを対象とする場合はそれに加え、チームメイト同士のコミュニケーションが円滑に行われ、個々が100%のパフォーマンスを発揮できる環境づくり、そして個人プレイではなくチームとして完成したプレイを行えるように監督することが求められます。たとえば、私が現在コーチングを行っている『LoL』では、クライアントの試合をレビューしながらゲームの基礎的な考え方を説明し、試合中の様々な状況下でどういう行動を取れば合理的なのか、少しでも優位に立てるのかについて話し合うほか、求められれば一緒にゲームをプレイしてリアルタイムでの操作技術の向上を図ったり、瞬間的な判断を培う手助けをしたりします。
▲コーチングの際はリプレイ機能を使うことも多い。各種オブジェクトに対するアプローチは試合を大きく左右します
コーチに求められる知識
コーチになること自体はまったく難しくありません。現状、資格や認定が要るわけではないので、「私はコーチです」と言ってしまえばそれでなれる、と言ってもいいでしょう。ただ、それが無償であれ有償であれ、自身がコーチであるということが周知されて、その実力や実績が認められてそのクライアントが現れます。名乗っただけでは誰もコーチの仕事を頼んできませんし、教える内容をキチンと知識として自分のものにしていなければ何も教えることができません。まずはゲームの知識をしっかりと蓄える必要があるでしょう。『LoL』の場合で説明してみましょう。このゲームではプレイヤーのゲームのうまさを語る際に"ミクロ"と"マクロ"というふたつの言葉を使います。
ミクロとは敵のスキルを避けたり、敵に自キャラクターのコンボスキルを叩き込むような瞬間的な操作技術を必要とする細かなプレイのことをいいます。
マクロは、簡単に言えばそういったミクロ以外のすべてのことであり、いわゆる戦略面のことを指します。たとえば「今なら敵が孤立しているから、この隙にふくろ叩きにしてしまおう」とか、「こちらの陣地が攻められているが手こずっているようなので、あえて今のうちに相手の陣地を攻め落としてしまおう」などがマクロの視点と言えます。
もちろん高度なミクロにはそれ相応の知識や経験を必要としますが、基本的にコーチングにおいて重要なのはマクロな部分です。ミクロは人に教わるよりも自身で慣れることのほうが大事なのと、視覚的に倒した・倒されたなどで善し悪しがわかるミクロと比べ、マクロの問題は自身では気付きにくいのです。
そのため、『LoL』のコーチは必然的にマクロ部分(戦略面)への深い理解と、その前提であるゲームへの膨大な知識が求められます。これらはゲームを長年プレイし続けることで自然に培うことができるほか、YouTubeや国内外の攻略サイトなど各種メディアでの情報収集も有効な手段となります。というより、その両方を徹底的に行う必要がある、と言っていいでしょう。そうすることで初めてそれを実践していない平均的なプレイヤーの知らない(=コーチングに役立つ)貴重な知識を得ることができるのです。
『LoL』から簡単な例を挙げるとすれば、ゲーム内の各ステータスが具体的にどう影響するのかという部分でしょうか。移動速度ひとつ取っても意外と知らない人が多いのであらためて説明すると、ゲーム内で使われている移動速度の表記は、そのユニットが1秒間に移動することのできる数値を表しています。フラッシュという呪文を使って移動できる最大距離が400であり、ほとんどのキャラクターの移動速度が325~345であることを考えると、移動速度が+55されるスウィフトネスブーツを購入した場合、1秒間でフラッシュとおよそ同等の距離を移動できることになります。
また、この移動速度パラメータが415~490の間は加算される移動速度に20%のペナルティがかかり、それ以上を超えると50%のペナルティがかかることもあまり知られていません。同様に、対面する相手と足を止めて殴り合った場合のダメージの計算方法や、それを踏まえた上でどのスキルを喰らうと負けるのか、どのスキルを当てると勝てるのかといった点も意識していない人が多いように思います。
こういった知識は、単体では1000試合に1試合しか役に立たないようなものでも、1000個知っているとすればすべての試合で役に立つことになります。その点では、クライアントが知らない大切な知識をどれだけ与えられるかがよいコーチの指標であると言えるでしょう。
私の場合で言えば、プレイヤーとしては半ば引退したような現在でもパッチが変わるごとにある程度の数をプレイし、その都度変化する環境の情報を頭に入れ、今はどのキャラクターが強く、どのキャラクターに弱いのか、どんなプレイをすれば不利を覆せるかなど、時間の許す限り新たな知識を入れるように努めています。ゲームの総プレイ時間だけでも10000時間はゆうに超えていますし、ゲーム外の情報収集も考慮すればその倍以上になるはずです。
▲リアルタイムで操作を指導するライブレビューの様子
コーチであることを周りに知ってもらう
こうして蓄積した知識や経験をもってすれば、もうコーチになるためのベースはできたと言っていいでしょう。すでにあなたは平均的なプレイヤーにとって有用な情報を持っているはずなので、誰かに「ゲームを教えてほしい」と言われれば問題なく教えられるはずです。ただ、この段階では、まだ誰もあなたがコーチができることを知りません。当然ですね、シャッターが下りている店には誰も入れないし、その商品の質が信用できなければ買おうともしないでしょう。さらに言うなら、その店を宣伝しなければ、せっかくシャッターが上がっていても訪れる機会があるのはたまたま店の前を通りがかった人たちだけとなってしまいます。
コーチングを始めるために必要な3つの要素
ではどうすればいいのか? まずは大前提として、あなたがコーチでありそのクライアントを募集しているという旨を知ってもらうための場所が必要となります。これにはTwitterやブログなどのSNSを使うのがいいですね。用意するだけなら簡単なので、実際にクライアントを集める手段については後述します。次に必要なのは、あなたが優れたコーチであると信用してもらうための肩書き。あなたがすでにプロ選手として活躍しているのでもない限り、いかに優れたコーチであったとしてもそれを証明するものがなければこの人に教わりたいと思う人はまず現れません。『LoL』ならランクシステムがあるので、それを肩書にするのがもっとも簡単です。日本人を対象にコーチを行うのであれば、日本サーバーで"チャレンジャー"に到達できれば十分な実力の証明になるはず。その他にもTwitterやブログでの情報発信、Twitchなど動画配信サイトでのゲームプレイやコメンタリー配信をすることで、さらなる認知度を得ることができます。
あなたに実力があり、それを証明するだけの実績・ブランド力が備わったなら、あとは宣伝です。コーチを求めている人にとってこれだけの要素が揃っていれば、その存在を知ってくれれば少なくとも候補に入るはずです。知ってもらうためには、やはりTwitterやブログ・配信などで認知度を高めていったり、知人のツテでクライアントを紹介してもらったりといった宣伝が必要になってきます。最初は客足が少なくとも、しっかりと満足度の高いサービスを提供できていれば口コミで認知度は上がっていくことでしょう。
▲プレイヤーの実力を証明するランクシステムは、コーチとして活動する際の肩書としても役に立つ
なお、私の場合はこれらに加え、クラウドソーシングサイトに『LoL』のコーチングを行うというサービスを掲げるところから始めました。当時は日本サーバーもなく、サイト自体の知名度も低かったのであまり効果はなかったのですが、最初期から登録していたため時間とともに両サービスの知名度が上がるにつれ、サイトからのクライアントが増えました。後に気付いたことですが、私のサービスが検索エンジンでトップに表示されるまでに成長していたのです。
最後に
ここまでの行程は文章で読むだけなら簡単に見えるかもしれませんが、実際に行うとなるととてつもない苦労が待ち受けています。その上でさらに、急なドタキャンがあったり、理不尽な暴言を吐かれたりもします。ある程度軌道に乗ったところで、とても収入が安定するとはいえませんし、好きなこととはいえ苦労は確実に存在します。それでも、自分の好きなことが誰かの役に立ったときの喜びはひとしおです。そして何より、自分の好きなことで生きていけるかもしれないという喜びは、他の何をしていても得ることのできないとても大切な感情です。
コーチに限らず、eSportの世界に飛び込むには「ゲームが好き」以上の知識や情報が必要となってきますが、とくに日本はこれから伸びていくであろう業界なので、興味がある人はぜひその門を叩いてみてください。
©2017 Riot Games, Inc. All rights reserved.
■関連リンク
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