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社会人リーグ「LNS」インタビュー ~『LoL』仲間を増やすきっかけ作りを目指して~

リーグ・オブ・レジェンド』(以下『LoL』)が日本サーバーを設立してから2年が経ち、今ではユーザー主催の大会やイベントも多く見られるようになった。その中の一つに、社会人を対象にした大会「League of Legends Nippon-no Salaryman」(以下、LNS)がある。

今回はその運営を務めるのりじろ氏、chanjiro氏、DICOM氏の3名を招き、設立のきっかけなどを伺った。

▲LNS運営チームの、のりじろ氏(写真中央)、chanjiro氏(左)、DICOM氏(右)

「社畜でも楽しめるリーグにしよう」を掲げて


――最初に、皆さんの自己紹介をお願いします。

のりじろ:代表を務めているのりじろです。団体の立ち上げをして、それからずっと代表として、みんなの先頭に立って旗を振る役割をしています。面白いものが好きな性格もあって、仕事ではVRのソフトエンジニアをやっています。

chanjirochanjiroです。僕は実務全般の取りまとめをしています。リーグの運営期間中のタスク管理をしたり、リーグの設計をしたりしています。実況や解説をしたこともあったり、オープニングムービーを作ったりもしました。またつい先日、eSports関連の会社に入社しました。LNSをやりはじめて生活が楽しくなってきて、仕事もそういう方向に寄せました。

DICOMDICOMです。LNSには初期メンバーとして参加しています。大会の配信をするとなったときに、「声が欲しいよね」ということになったので、当時一番若かった僕ともう一人のメンバーがキャスターになりました。イベントの司会をしたりもしています。

▲代表を務めているのりじろ氏。『LoL』は友人からの誘いがきっかけで、かれこれ7年くらいプレイしているそうだ

――LNSを始めるきっかけを教えてください。

のりじろ:LNSは2016年の暮れくらいに立ち上げました。ちょうど学生リーグ「League U」が発足した時期で、すごく羨ましかったんです。それから雑談の中で「社会人のリーグもほしいよね」「誰も作らないなら俺たちが作ろうか!?」という話になり、立ち上げました。

最初は僕含めて2人だったんですが、Twitterや配信で運営メンバーの募集をかけたら、10人くらい集まりました。

――最初はどんな形の、どんなものにしようと思っていたのですか?

のりじろ:社会人は忙しいのが前提だと思っているので、「社畜でも楽しめるリーグにしよう!」というテーマを大事にしました。そのテーマをベースにして、「社畜はオフライン大会へいくのは難しいからオンライン大会にしよう」「練習しなくても参加できるように同じレベルのチームが戦えるようにしよう」と仕組みが作られていきました。

そうしてまとめたのが、LNS 運営4ヶ条です(下記写真)。運営していくうえで何か迷うことがあったら、この4ヶ条を読み直しています。

▲LNS 4ヶ条がこちら

DICOM:悲しいことに、みんな仕事が忙しいからキャンセルもあるんですよね。「休日出勤が入ってしまって……」みたいな(笑)。

のりじろ:忙しい人を対象にしていることもあって、その点はお互い理解しあえていましたね。運営も「休日出勤なら仕方ない!」という気持ちでした。

DICOM:シーズン1は30チームくらい参加してくれたんですよ、「自分たち含めて6チームで、総当たりできたら楽しいな」と思っていたので、まさか30チームも集まるとは思ってなかったです。

――そういう場をみんな欲していたんですね。

chanjiro:日本ではチーム戦ができる場がなかったので、みんな欲しかったんだと思います。僕はシーズン1は参加者側の立場だったんですけど、対戦相手のチームを研究したり、Ban/Pickを決めたり、そういう体験ができたのは本当に面白かったです。

のりじろ:僕も運営チームとして出場してわかったことなんですけど、チームを組んで、作戦を練って勝ったとき、すごく嬉しいんです。部活動みたいなワクワク感を味わうことができましたね。

▲統括プロジェクトマネージャーのchanjiro氏。シーズン1では運営チームと対戦し、負けてしまった過去があるとのこと

――どんなプレイヤー、チームが参加されているんですか?

chanjiro:SNSで集まったチームもあれば、元から友達同士のチームもありました。面白いところだと、会社の同僚で組んだチームとかもありましたね。そのチームには初心者の人もいて、レベル30になってすぐ大会に出てくれたみたいです。

大会に出る人は、自分の腕にある程度自信がある人ってイメージがあったんですけど、そうでない人もいて、「とにかくチーム戦がしたい」という人が参加してくれていますね。

イベントでも「LNSらしさ」を追求


――昨年の10月にはオフラインイベント「LoLヶ原の戦い」も開催しました。

chanjiro:LNSのメンバーがスポンサー様や会場の根回しをしてくれて、オフラインイベントをできる環境を整えてくれたんです。イベントで参加者同士が仲良くなってほしかったので、単純に強いチームを決めるとか、トーナメントで優勝を目指すのではなく、20人対20人にして、仲間のチームを応援できる構造をつくりました。

こうすると自分が出場する回数は少なくなっちゃうんですけど、それでも満足度が高かったのは、「仲間を応援する」という体験を生むことができたからだと思っています

のりじろ:運営側では二次会を用意していなかったのですが、途中で参加者の人が「二次会をやったら絶対面白いよね」って言ってくれて、幹事をやってくれました。運営メンバーは撤収作業があって遅れて参加したんですけど、お店に入ったらみんなが『LoL』の話をしている光景は、ちょっと感動しちゃいました。

――6月10日にはオンラインイベント「スノーダウン vs プールパーティー」を開催しましたが、そちらはどんな経緯で行われたのでしょうか。

chajiro:まず、直前までシーズン4をやっていて、これまで最長の3ヶ月間のリーグに挑戦しました。これが結果的に少しマンネリ化してしまって、運営もメリハリがなくなってきてしまったんです。

そこで、「まずは運営が心から楽しめるイベントを作りたい」という気持ちの元、企画をしました。自分自身が軍を選べるところは異なりますが、構造は「LoLヶ原の戦い」と近しいものになりました。20人ずつ2軍に分けてそれぞれ4チーム作って対戦し合い、ファイナルラウンドでは20人の中から選抜した5人で対戦する、というものです。

――「LoLヶ原の戦い」のときのようなオフラインイベントと同じ雰囲気が出せたのでしょうか?

chajiro:出せたと思います。オフラインのほうが勝る部分もありますが、大事なのは20人対20人の中でコミュニケーションを生むことで、そこに関してはうまくいったと思います。

「観戦して仲間を応援する」という状況を作ったのは狙い通りだったんですが、自分たちが戦った相手チームの情報を自軍のチームへアドバイスし合っていたり、そういうコミュニケーションが自然発生していたのは、想定外に良かったことでした。

▲実況解説を務めるDICOM氏。「オフラインイベントは本当に楽しかった! また司会をやりたい!」と意欲を見せていた

「LNSがいろんなことに挑戦する登竜門になれば嬉しい」


――運営メンバーの役割は、おもに配信担当が多いんですか?

chanjiro:そうですね、配信は人手がいないと回らないので。例えば実況と解説をセットでやろうとすると1試合に2人必要になるんですけど、実況・解説担当の都合が合わないときは、1人だけのときもあります。

それはそれで楽しいんですけど、やはり実況・解説がいるというのが、『LoL』の試合配信ではスタンダードになっているので、見てくれる人はその前提を持っているんです。個人的には、もっといろんな形があってもいいと思うんですが、実況・解説がしっかりいるほうが今は受け入れられやすい。だから、実況・解説をしたい人はぜひLNSに来てほしいですね。

のりじろ:LNSがいろんなことに挑戦する登竜門になれば嬉しいですね。キャスターに力を入れた理由も配信をしていた理由も、僕が昔キャスターになりたかったからなんです。

chanjiro・DICOM:えっ!? 初めて聞いた(笑)。

のりじろ:そりゃ言わないよ、恥ずかしいもん(笑)。今でこそいろんなeSportsでキャスターの募集がありますが、当時は何もなくて。2年前に募集があったら絶対に僕は応募していたし、エンジニアにもなっていなかったと思います。

そういう悔しさがあったので、せめて若い人たちに「僕の夢を継いでほしい」という思いがありますね。

▲LNSのホームページはイラストが入れ替わりで表示される。イラストは最初から豊富だったわけではなく、イラストを描きたいメンバーが入ってからだそうだ

――運営をしていてよかったこと、苦労したことを教えてください。

のりじろ:良かったことは、シンプルに自分たち社会人が遊べるところができたことですね。あとは今まで対戦相手と仲良くなるってあんまり聞かないんですけど、LNSだと対戦チーム同士が仲良くなって、一緒に遊んだりしているみたいなんです。社会人としてのコミュニティとして成り立っているのを感じて嬉しかったです。

chajiro:苦労したことは、運営内でのコミュニケーションですね。運営メンバーの中には一度も会ったことがない人もいるので、そういう人たちと毎週ネット上で会議をして、一緒にモノづくりをするのは大変でした。ちょっとした言葉のすれ違いで印象が変わってしまうこともあるので。

あとはやりたいことがいろいろあっても、取捨選択しなければいけないことですね。

のりじろ:僕が一番大変だったのは、趣味の域を超えないようにすることですね。さきほどもお伝えしたとおり、LNSには立ち上げ当初から変わっていない運営方針の4ヵ条があります。そこでも「趣味でできる範囲でやる」というのを掲げています。趣味の範疇を超えてしまうと辛くなってしまいそうだな、とは思いますね。

LNSの今とこれから


――シーズン5はいつごろ開催される予定なのでしょうか?

chanjiro:今のところ(2018年7月2日現在)、シーズン5をいつ開催するのかは未定になっています。ちょうど準備期間なのですが、「シーズン5をどのような大会にするか」については、時間をかけてじっくり考えることにしています。

シーズン3までは順調に大きくなっていったのですが、シーズン4でマンネリ化してしまったのが大きな理由です。参加者の満足度も少し下がってしまって。

DICOM:シーズン4のアンケートでは、シーズン3に比べて参加者が減ったことによって、「毎週同じ人と対戦することになった、あるいはなかなかマッチングしない」という問題が起きてしまいました。あとは運営陣が忙しくなり配信頻度が減ってしまった結果、「自分の試合も配信・実況されたかった」という声を参加者の方から頂きました。

chanjiro:LNSは「チーム戦がやりたい」という気持ちを拾って成長してきましたが、今はフレックスキューやClashができたりして、その熱は他の選択肢でも解消できるような環境になってきたんですよね。その環境下でもLNSに参加する価値や、どうしたら参加者の皆さんが楽しんでくれるかを検討しているところです。

――新しい運営メンバーが入ってくれば、新しいアイディアが出てくるかもしれませんね。

chanjiro:運営メンバーもたまに数人増えたりしているのですが、一気に入ってきてはないですね。じつは「せっかく入ったのに、放置されてしまって何もできない」という状態になることを恐れていたので……。

それが起きないような受け入れ体制を作る余裕もなくて、大々的な募集は踏み出せずにいました。でも今はそんなことを言っている場合ではなくて、LNSを変えていかなきゃいけないタイミングなので、とにかく一緒にLNSを盛り上げてくれる運営メンバーがもっと欲しいですね。

のりじろ:僕らのやっていることに賛同してくれて、面白いことを一緒に作りたい、活躍したいという熱がある人にぜひ来てもらいたいです。

外から人が来る流れを作って、LNSで学んだことをまた他のところで活かしたり、また新しいコミュニティを作ったり、といったサイクルができるといいな、と思っています。


――今後はどう発展させていきたいと考えていますか?

chanjiro:僕は大きく分けて2つですね。チーム戦ができる環境を継続的に提供し続けることと、一緒に『LoL』ができる仲間が増えるきっかけをもっと増やせたらいいなと思っています。

結局フレックスキューもClashも、同じチームと戦うのは1回きり。「また同じチームだ、この前の戦術とは変えよう」みたいな経験はできないので、それもまたLNSの価値になると思っています。

DICOM:最近はいろんなイベントも増えてきたので、LNSの参加者も他のイベントに参加することがあると思っています。他のイベントに参加して、LNSのことを思い返したときに、どうやって出迎えるのかを考えていきたいですね。

LNSが仮になくなってしまったら、参加してくれた方が「LNSもうないんだよな、やりたかったな」という寂しい気持ちになってしまうと思うので。「あのときよりももっと面白いことやっているよ!」と出迎えてあげたいですね。

のりじろ:僕が最終的にやりたい形は、日本だけじゃなくて世界中の社会人が遊べるコミュニティができればいいな、と思っています。

現実的な話をすると、継続的な運営をするのが目標ですね。属人性がなく、どんな人がきても回る組織を作って、LNSを長く続けたいです。長く続けることに、意味があると信じています。

■関連リンク
『リーグ・オブ・レジェンド』
http://jp.leagueoflegends.com/ja/
LNS
http://lns-lol.com/index.html


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