Gamers Zone

move to login

eSPORTS eスポーツに関する最新情報をチェック!

「EVO 2019」直前!『鉄拳』プロのユウ、ノビ、タケ。に聞く!【後編】パキスタン勢など世界の『鉄拳』情勢とTeamYAMASAのこれから

目次
  1. パキスタン勢だけじゃない⁉ 世界中で台頭する隠れた強豪たち
  2. キャラの強さから見る現在の『鉄拳7』情勢
  3. EVOで優勝すればツアー後半は休む!? 2019年下半期の目標
前編に引き続き、『鉄拳』シリーズのTeamYAMASA所属プロゲーマーの3選手、ユウ、ノビ、タケ。のお三方のインタビュー後編をお届けする。かつては日本と韓国の2強と言われた『鉄拳』情勢が、今年話題になったパキスタン勢のほかどの地域が強いのか、5強と言われているキャラについて、そして今年のEVOやTEKKEN World Tourの目標などを伺った。

▲左からノビ選手、タケ。選手、ユウ選手

パキスタン勢だけじゃない⁉ 世界中で台頭する隠れた強豪たち

――後編ではプレイヤーに関してのお話を聞きたいです、ベタな質問ですが、パキスタン勢について。今年についてはこれが一番のトピックかなと思うのですが。

ユウ:そうなんですけど、TeamYAMASAの3人は対戦できてないんですよね。

ノビ:僕が個人的に一番強いと思ってるのは未だにKnee選手なんですよ。パキスタン勢が本当に強いか弱いかって聞かれたらマジで強いとは思うんですけど、正直やらないとわからない部分が多いです。結局Knee選手のプレイだって、動画を見てるだけだったら「これいけそうだな」って思うんですよ。でもやると「うわっ、これきっついな」ってなるんです。たぶんパキスタン勢とやってもそうなると思うので、早く対戦したいですね。

――パキスタン以外で最近強くなったって感じる国、地域はありますか?

ユウ:めちゃくちゃありますよ。東南アジアだとBOOK選手のいるタイ、AK選手、DOUJIN選手を筆頭にしたフィリピン勢、ヨーロッパにも最近ちょっと話題になったhitBOX(方向レバーもすべてボタンになっている特殊なアケコン)を使う豪鬼使いのSUPER AKOUMA(フランス)選手とか。5年くらい前の日本と韓国の2強みたいな情勢ではないですね。

――あ、『鉄拳7』はhitBOXを使用してもいいんですね?

ユウ:大丈夫です。『ストリートファイター』ほど恩恵を授かる部分は少ないと思います。溜め技っていうものが『鉄拳』にはないですし、山ステやステップインガードみたいな防御テクニックは、バネの反動があるぶんレバーのほうが有利に入力できると思います。ただ、豪鬼のようなコンボに重きを置いたキャラクターにはマッチしてそうですね。


▲EVO JAPAN 2019で一躍有名になったパキスタンのArslan Ash選手。圧倒的な強さで優勝して、「パキスタンには僕より強い人がたくさんいる」と発言して話題となった

――日本勢で注目のプレイヤーを挙げるとしたら?

ノビ:去年からノロマ選手とダブル選手は若い世代の中ではすごい強くなってる。

タケ。:ふたりが今の日本のエースだと思います。若きエース。

――国や文化圏でプレイスタイルに違いはありますか? 情報が行きわたりやすくなっているので、昔ほど顕著な違いはないかもしれませんが。

ユウ:おっしゃる通り昔ほどの違いはないかもしれませんが、東南アジア勢はクセがありますよ。AK選手は反応にものをいわせて、基本ぼっ立ちしてるけど、デカい下段がきたらしゃがむよ、みたいな。

あとはリターンの高い“暴れ”を平気でするタイプなんですけど。共通して言えることは、野試合より大会に強いスタイルが多いですね。大会を勝ち進むために特化したスタイルになっているかなと。

キャラの強さから見る現在の『鉄拳7』情勢

――今のキャラクターの強さから見た『鉄拳7』の情勢も教えてください。先ほどシーズン2はキャラ差が大きいという話が出ましたが、現在強いとされているキャラクターは?

ユウ:今までの『鉄拳』で5強を挙げてみてって聞かれたら、国によってけっこうバラバラな答えが返ってきていたかと思うんですけど、今はわりと共通しています。だいたいみんなロウ、スティーブ、デビル仁、ギース、仁が5強っていう意見になるんじゃないですかね。その中で有利をつけて順位を決めるってのはちょっと難しいんですけど……。

タケ。:一番強いのは仁?

ノビ:……じゃないかなあ。

――仁は昔から理論値を出せれば強いっていう評価が定番だった気がします。

ノビ:昔は玄人好みのキャラだったんですけど、今はとりあえず出しとけ系の技が強すぎて。

ユウ:露骨に仁使いのプレイヤーが今年活躍していますからね。BOOK選手に韓国のCHERRYBERRYMANGO選手が代表的ですね。仁、ギース使いはかなり飛躍しています。

タケ。:日本だとチクリン選手もそうだし。

――『鉄拳7』の動画を見ていると、ギースはネタじゃなくて実戦で狙えそうな即死級のコンボや壁を絡めた連携がありますよね。

ノビ:かなりの頻度で7、8割は余裕で削れます。

ユウ:壁に飛ばして落として最後はレイジングストームで簡単に減りますからね。

――あと、ロウが最強クラスに入るっていうのも珍しいかなと思うんですけど。

ユウ:ロウは元々弱くはなかったんですけど、ひとつだけ弱点があって、中間距離で相手の技に対してお仕置きすることができない、2Dでいうと“差し返し”って言うんですかね、相手の技に対するスカ確(※相手の技の空振りの隙に技を当ててダメージを取るテクニック)が弱くて、それがずっと続いていました。でも今はその弱点を解決してしまうどころか、全キャラ中で最強クラスのスカ確技がついて……。

そのせいであいつはオールラウンダーになってしまったんですよ。スカ確が弱いからすごい火力とかも許せていたのに、そこもつけちゃうんだって。


――TeamYAMASAの皆さんはシーズン2になってキャラ変更はしていないんですか? タケ。さんはこの前の「YAMADA Cup」東京予選をギースで圧倒的な強さで勝ち抜いてましたけど……。

ノビ:ブライアンって言っとけよ(笑)。

タケ。:一応、一美にしておいてください。

――タケ。さんは何でも使えるプレイヤーという印象です。

タケ。:遊びでいろんなキャラを使うことは多いですね。でもサブキャラで使うんだったらポールとかスティーブ、ギースあたりになります。大会で一番サブで使う頻度が高いのはポールです。

ユウ:私は『鉄拳5』からフェンをずっと使い続けていて、サブで他のキャラを出すということも少ないと思います。というのもフェンはキャラクター的にめちゃくちゃ強いってポイントはないんですけど、大体いろんなキャラに対して使えるので、他のキャラクターをかぶせで中途半端に使うよりは、フェンの練度を高めたほうが自分のためになるかなと思っています。

――ノビさんはドラグノフと……。

ノビ:はい、僕はもうずっとドラグノフを使っていたんですけど、シーズン2になってからドラグノフがかなり弱体化を受けて、トップ層にかなり勝ちづらくなったので、けっこうサブキャラも使います。今は『鉄拳タッグトーナメント2』のころにドラグノフと一緒に使っていて当時の最高段位まで行っていたキャラクターのラース、ボブ、スティーブの中から、一番強いキャラであるスティーブを使っています。

ユウ:ドラグノフがきついキャラが、スティーブだとだいたい有利がつくんですよ。

ノビ:めちゃくちゃちょうどいい組み合わせなんです。

ユウ:うらやましい。あとタケ。のポールもわりとかぶせとして機能しますね。Knee選手も使ったりしますし。

タケ。:ポールはスーパーかぶせキャラなんで。あれをメインで勝ち抜いてる人はいないけど、こいつが来たら絶対ポールを出しとけ、みたいな正解のキャラではあります。

――そういうかぶせ合いが、今だと大会のプールでも発生している?

ノビ:そうですね。海外のデカい大会で最初のほうの組み合わせのとき、キャラ決めをブラインドピックするしないっていうのは、現場では選手たちが任意で決める雰囲気になってるんです。言えば対応してくれるんですけど、基本的にはみんなとりあえずパッとキャラを選んじゃうんですよ。だから僕がボタンチェックをしてる間に相手がもうキャラを決めちゃってて、それなら俺はこのキャラにしよう、ということはやっちゃうんで(笑)。

で、相手がなかなかキャラを選ばないときは、もうめんどくさいからドラグノフを先に選んじゃう。プールのブラインドピック事情は、知っておくとEVOプチお得情報になるかもしれないですね(笑)。

――2キャラ、3キャラ使えて当たり前な流れになってきていますが、『鉄拳7』で複数キャラを仕上げるのって相当大変ですよね。技数が多いですし、個々のキャラ対策やヒト対策も合わせるとなおさら。でもその大変なことをみんなやり始めている。その兆候が出てきたのっていつぐらいからでしょう?

ユウ:『鉄拳』シーンにおいて、最初にかぶせの概念を持ち込んだのがKnee選手だと思います。Knee選手は『鉄拳7』の初期から中期にかけての国際大会で、ブライアンで出るんだろうなと思ったら、すごくいろいろなキャラを使い始めてきました。最初の1年間は結果が振るわなくてノビもしょっちゅう勝っていたんですけど、彼はその苦難を乗り越えて完全体になった。

なので、『鉄拳7』はキャラクターの相性差が如実に出やすいということに一番最初に気づいたのがKnee選手で、それを実践したのもKnee選手です。

――日本の大会でもキャラ替えはけっこう多くなりました?

ユウ:増え始めました。以前はサブキャラを大会で出すことは恥ずかしいこと、カッコ悪いことって認識だったので、この変化にはびっくりしています。

ノビ:ありがたいよね。マジで練度の低いサブキャラがぽんぽん来ることが増えたので、こっちは勝率が上がるだけ。

――なるほど(笑)。サブキャラを出すタイミングって決めていますか?

ユウ:試合の最中にキャラを変えるっていうのはノビぐらい? タケ。さんはいろんなキャラで出られるけど、大会中には変えないよね?

タケ。:変えない。一回決めたら変えない。(サブキャラを大会に出すなら)最初に出して終わるまでそのまま。それで負けたら、まあしょうがない。

ユウ:ノビはかぶせキャラで負けたらドラグノフに変えるよね。

ノビ:死ぬならドラグノフがいいので。最初に有利だと思うキャラをかぶせて、負けたらドラグノフに戻します。

――負けて後からサブキャラを出すのは悪手になりやすいんでしょうか。

ノビ:人によりけり、だと思いますよ。サブキャラであるがゆえに緊張しにくいっていうのはあるので。メインキャラってメインであるがゆえの(堅い)行動もありますし、それに比べてサブキャラを使っている時は本当に自由なんです。

そのキャラクターをメインで使っている人だったら絶対やっちゃいけないだろうっていう行動も、サブキャラ使いだったら「たぶん当たるから打つ」みたいなことが許される。そういう面では緊張しないで済みます。


EVOで優勝すればツアー後半は休む!?
2019年下半期の目標

――EVO2019や今年の下半期の目標を教えていただけますでしょうか。

ユウ:EVOは人数が少ないころから毎年出場していますけど、最近はうなぎのぼりに参加人数が増えていて、今年は2000人弱、1900人くらいエントリーされている。そうなるとまずプールを抜けるのも大変だし、抜けてからベスト32に行くまでにも、世界中の強豪を3、4人は絶対倒さなきゃいけないっていう過酷なトーナメントになっています。

プール抜けを目標にするのはさすがに志が低い、でもベスト8はすごい大変。だから堅実なところに目標を設定するとTOP32ですね。TOP32を目指して、そこまで行けたらベスト8まで行けるようにしっかり気持ちを入れ替えて戦いたいなと思います。あまり上を見すぎると、今までけっこう負けちゃったりしているので、そこを本当に注意したいです。

下半期はEVOが終わったらワールドツアーになると思うんですけど、TeamYAMASA全員ポイントが全然足りていないうえ、これからひとつの大会に人が密集してくる。EVOの結果がどうあっても、その後のワールドツアーに向けて今年から変えたプレイスタイルを仕上げ切って、一層精進していきたいなと思います。

ノビ:EVOの意気込みっていうよりも、年を取るほど緊張に弱くなっているのをなんとかしたいですね。2015年に世界大会で優勝した時は本当に緊張とか全然しなかったんですよ。そのころは海外大会とか行けてなかったのに、行けばまあ普通に優勝できるでしょう、くらいな気持ちだったんですけど、1回優勝しちゃうと次も勝たなきゃって思って、年々それがすごく強くなっていって負けちゃってるっていうことが、本当につい最近分かったんですよ。

なので、負ける負けないというよりも、一番大事なことはゲームをやって海外に行って他の人と対戦することが楽しいんだなって思いながら対戦したいです。優勝したいとかしたくないとかじゃなくて、そういう気持ちでEVOに出られたらなあと思います。

後半のTEKKEN World Tour 2019については、まあ3年連続グランドファイナルに出たいですし、どこかの大会で優勝したいですね。最近2位、3位っていうのが多いんですけど全然うれしくないんすよ、やっぱり。2位でもすごいって言われても、僕は結構恥ずかしいだけと思っていて、絶対どっかで勝たないとなとは思ってます。

でも2019年の後半に向けては、仕上げるっていうよりも、逆に『鉄拳』をやらないで休んだり遊んだりして、新しい気持ちで15、6年目くらいを迎えられたらいいなと思います。

タケ。:去年は早い段階でEVOは負けちゃったので、去年と同じようなことにはならないように頑張りたいというのがあります。EVO自体、僕は大好きなイベントなんですよ。会場の他のゲームを見ながら順番を待ったりとかが楽しいですし、すごい熱気がある。そういう雰囲気の中で自分を出してプレイできればいいかなというのもあります。明確な目標はないですけど頑張りたいと思います。

ユウ:マンダリンベイの舞台に立ったのってタケ。さんだけだよね。

タケ。:またあそこに立てたらいいですよね……っていうのはEVOの目標かも。2019年の後半は……ぶっちゃけワールドツアーに関しては諦めている部分もあるんで。ファイナル進出はきついなって。それに少しでも光が射せるような動きができればなと。EVOで勝てれば話は早いんですけど(笑)。

――確かに(笑)。

ユウ:一気に550ポイントだよ!

ノビ:(EVOに優勝したら)もうどこにも行かない!(笑)

タケ。:でも簡単な話じゃないのでね……。

ノビ:ベスト8に入ったらいろいろできるだろうね、賞金よりポイントが重要ですよ。それだけポイントが取れれば以降はファイナルまで海外に行かなくて済むんで。

タケ。:ヤマサにも負担をかけずに済みますしね。とりあえず頑張ります。

――本日はありがとうございました。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

最後にEVOやTEKKEN World Tourに向けて意気込みを聞いておいて何だが、TeamYAMASAの3人はもっと広い見識で『鉄拳』に携わっているように思える。プロゲーマーとしてその実力を知らしめるためにいろいろな大会やTEKKEN World Tourで優勝することはもちろんだが、それ以上に『鉄拳』が楽しくてしょうがなくて、だからもっとたくさんの人に知ってもらいたい、上達してもらいたい、という気持ちが溢れていた。その姿はまさにプロフェッショナルだ。

ALIENWARE ZONEとしても、ALIENWAREとともにTeamYAMASAを応援していきたい。

■関連リンク
TeamYAMASA
http://www1.yamasa.co.jp/teamyamasa/
TeamYAMASAのTwitter
https://twitter.com/team_YAMASA
ユウ Twitter
https://twitter.com/Yuu_Norespect
ノビ Twitter
https://twitter.com/daichinobi
タケ。 Twitter
https://twitter.com/hk_takkun
鉄拳オフィシャルサイト
https://www.tekken-official.jp/
TEKKEN World Tour
https://tekkenworldtour.com/

WRITER RANKING プロゲーマーやゲーム業界人などの人気ライターランキング