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Alienwareが牽引したゲーミングPCの歴史と最新モデルの進化点 〜Alienware25周年新製品発表会レポート

デルのプレミアムゲーミングブランドである「Alienware」は、2021年で25周年を迎えた。その記念すべき年にリニューアルされたのが、ゲーミングデスクトップPCのフラッグシップモデル「Alienware Aurora R13」と「Alienware Aurora Ryzen Edition R14」だ。

ふたりの若者が世に問うた“PCゲームに特化したカスタムPC”は、ゲーミングPCとして今やハイスペックPCのいちジャンルになっている。そしてその先駆者であったAlienwareは、四半世紀を経てもなお、業界のリーダーとして刺激的な市場を切り開いている。

今回は、10月28日に開催された新製品発表会の内容をもとに、Alienwareの25年の歩みと、ニューモデルのAlienware Aurora R13、Alienware Aurora Ryzen Edition R14の特徴などをご紹介したい。

某ゲームのようなコンセプトムービー

今回の発表会では、あらためてAlienwareというブランドの歴史を振り返るプレゼンテーションが行われた。その冒頭で放映されたのは、特別なムービーだ。

このムービーはYouTubeなどにもまだ公開されていないが、今回の新しいAlienware Auroraと25周年の節目を祝うイメージビデオとなっている。

▲青空に舞う飛行機からなにやらパラシュートが……

▲降りてきたのは「Alienware 25 YEARS」と書かれたコンテナ

▲それを目指して1台のピックアップが草原を駆けていく

▲降りてきたのは女性たち。コンテナを開くと……

▲中から現れたのは、補給物資でもAK-47でもフライパンでもなく、最新のAlienware Aurora

▲最後は飛び立つセスナの奥にうっすらと雲がエイリアンを描く

この映像に関する説明は特にされなかったが、なんとなくバトルロイヤルゲームの『PUBG: BATTLEGROUNDS』を想起させる。定番のeスポーツタイトルをモチーフにした25周年記念という意味かもしれないが、今後何らかの発表があるのだろうか。続報を待ちたい。

ゲーミングPCの礎を築いたAlienwareの25年間

続いて、「Alienwareゲーミングデスクトップの歴史」と題し、Alienwareグローバルプロダクトマネージャーであるエディー・ゴヤネス氏からのプレゼンテーションが行われた。



ゴヤネス氏には、過去にAlienware m15/m17がリリースされた2018年頃にインタビューさせていただいたことがあるが、それに連なるAlienwareの歩みがあらためて紹介された。Alienwareについてより深く知りたい方は、ぜひ当時のインタビューも合わせてお読みいただきたい。

進化のポイントは? 「ALIENWARE m15」&「ALIENWARE AURORA」新製品発表会レポート
宇宙人の英知を結集したのが「ALIENWARE」 ──本国ALIENWARE エディー・ゴヤネス氏インタビュー

そもそもAlienwareは、PCゲームを快適に遊べるパソコンのハードウェア・ソフトウェアがまだまだ一般的ではなかった1990年代に、ふたりの若者の手で設立された。下の写真はプレゼンの中でも紹介されたAlienwareの初期のイメージと、ふたりの創業者と初期のマイアミの倉庫。この倉庫でPCをカスタマイズ・パッケージングして、ゲーマーのニーズに応えていったという。

▲プレゼンテーションで紹介された初期のAlienwareとマイアミの倉庫の貴重な写真。宇宙のテクノロジーで生まれたPCというコンセプトだった

当初は現在のようなゲーミングPCはなく、最初期は一般的な白いパソコンながら、中身はPCゲームに特価したパーツなどを組み込んだもの。いまでは当たり前となっているパーツメーカーや小売店が作るBTOサービスを、ゲームに特化して行っていたのがAlienwareだった。この広告にもあるようにPC情報誌などのアワードも数多く受賞し、成長していく。

2000年頃の販売範囲は最大で6カ国ほどだったが、現在はグローバルブランドに成長し、ここ日本でも「宇宙最強のゲーミングPC」として定着するまでになっている。

当時と比べて現在はPCのカスタマイズも容易になり、誰でも簡単に最強PCも10万円を切るような安価で満足できるPCも作れるようにはなった。しかし、高性能な市販パーツを組み合わせたPCと、ゲーミングPCとは少し違う。

例えるならば、速いエンジンやシャシーを組み合わせた「速く走ることだけはできるマシン」で実績を挙げ、のちに高級スポーツカーブランドを確立させたフェラーリに近い。Alienwareに追いつき追い越そうとするメーカーも多いが、ゲーミングPC市場を自ら切り拓いてきた先駆者としての歴史がそれを物語っている。

Alienwareブランドを築いてきたゲーミングデスクトップPC

Alienwareが誕生してから25年。ゲーミングデスクトップPCブランドとして成長を遂げる中には、いくつかの印象的なマシンがあった。発表会の内容をもとに、編集部で補足しながらその歴史を追ってみたい。

▲AlienwareゲーミングデスクトップPCの25年間の歩み。デルに買収された2006年以前のモデルはオリジナルのPCだった

1996年
設立は1996年。GUIにより誰もが簡単にパソコンを業務や趣味で使えるようになった「Windows 95」のリリースにより、PCとインターネットが身近になり始めた時代に、ゲーマーだけに向けたPCを模索していった。当時のシャシーは一般的なPC。「羊の皮をかぶった狼」という感じで、見た目よりも性能を重視し、徹底したユーザーへのサポートがウリだった。

2003年
2003年、象徴的なデザインのデスクトップPCが登場する。当時のシャシーコードネームは「プレデター」。これは社内の呼称で製品名ではなかった。斬新なデザインとギミック、カラーリングは、自分だけのカスタマイズPCを求めるゲーマーを中心に話題を呼び、ゲーミングデスクトップPCのデザインの方向性を形作った。

2004年
2004年には、世界で初めてCPUの水冷システムを標準搭載した「Alienware Aurora ALX」がリリースされる。水冷システム自体は存在したが、当時はユーザー自身がインストールする必要があった。同時に、2枚以上のGPUを使ったデュアルグラフィックスも採用されている。


2012年
2012年には、リビングでPCゲームを遊ぶというコンセプトのAlienware x51シリーズが登場。日本ではR1〜R3まで販売された。

PCゲームをコンソール機のように楽しめる環境を提供した。縦横どちらにも配置でき、コンパクトな製品を好む日本にもマッチした。


のちに「Alienware Alpha」というSteamとの親和性を高めた超コンパクトPCもリリースされた。
<前編>10万円の低価格ゲーミングPC「ALIENWARE Alpha」はどこまで人気ゲームを攻めることができるか?
<後編>10万円の低価格ゲーミングPC「ALIENWARE Alpha」はどこまで人気ゲームを攻めることができるか?

2014年

2014年にはトライアドデザインのフラッグシップモデルであるAlienware Area-51が登場。日本ではR1〜R4までリリースされた。

Area-51という名称は本物のフラッグシップにしか使用しないという言葉どおり、AMD Ryzen Threadripperを搭載した圧倒的なハイパワーモデルや、SLI構成・水冷仕様のGPUなどもリリースされ、有無を言わさぬ存在感と性能を見せつけた。ちなみに、Alienware Store Akibaのディスプレイには、和紙で作られたArea-51が展示されている。



2016年
2016年には、コンパクトながら誰もが内部にアクセスしやすい構造を持つAlienware Auroraが誕生。R5〜R8まで同じデザインで改良が施された。

デュアルグラフィックスを搭載するなど、サイズと性能を両立し、eスポーツを中心とする世界のゲーミングPC市場に大きなインパクトを与えた。


ゲーミングPC「New ALIENWARE AURORA スプレマシーVR」のハードウェアを徹底検証!(前編)
ゲーミングPC「New ALIENWARE AURORA スプレマシーVR」のパフォーマンスを徹底検証!(後編)

2019年
2019年には、ゲーミングノートPCで先行して採用されていた「レジェンドデザイン」を体現したAlienware Auroraへと生まれ変わった。R9〜R12までが発売され、R10はAMD製CPUを搭載するモデルだ。

前モデルの直線的なデザインから曲面を多用し、Alienware初期のような斬新なデザインが復活した印象だった。


スイングアーム式の基本的な内部構造は踏襲されており、エアフローや冷却機構のたゆまぬ研究・開発により少しずつ洗練させてきた。
▲左がAlienware Aurora R5〜8、右がR9〜12の内部構造。基本設計はすでに完成しており、細部を煮詰めて性能を向上させてきた

Auroraシリーズはメーカー製PCでありながら、パーツ交換や清掃などのしやすさ、ケーブルの取り回しの美しさは、おそらく自作PCのケースなどを比較しても群を抜く利便性を誇る。ケースを開けるためのビスは1本だけ。未装着のストレージ用電源ケーブルなどもあらかじめ用意されている。それは、マザーボードからすべて自社で設計され、PCのパッケージングを自由に設計できるからこそできることだ。

市販ケースに市販マザーを搭載した時の、冷却ファンやメモリー高、端子類の絶妙なズレといったストレスは一切ない。そもそもメーカー自ら、ユーザーが内部パーツの交換や分解の手順をサービスマニュアルとして公開しているところからも、Alienwareのどこまでもユーザーファーストな姿勢がうかがえる。

そして25周年を迎えたR13/R14で、Auroraとしては大幅な設計変更が行われた。

Alienware Aurora R13/R14の気になるポイント解説

ここからは、製品情報からだけでは気づきにくい、最新モデルの気になるポイントをご紹介していこう。

Alienware Aurora R13/R14は、Auroraシリーズのデザインとしては4代目にあたる。見分けるための「Rxx」という数字は構成と世代の違いを表しており、R13はインテル製、R14はAMD製のCPUを搭載するということで分けられている。イメージカラーはR13がホワイト、R14がブラックだが、R13はホワイト・ブラックともに選択可能で、R14はブラックのみだ。


デザインもさることながら、大きく変わったのは本体のサイズ。新旧モデルで内部容積が50%増加した。といっても、実はそれほど極端な大型化がされたわけではない。下の横から見た写真でも、オプションの背面パネルを装着した状態での比較であり、背面パネルなしであれば前面と上部の拡大スペース以外はそれほど大きくなってはいない。

▲側面と正面から新旧モデルのサイズを比較。外観よりもむしろ内部の変化の方が大きい

この大型化の恩恵はエアフローの進化にある。従来モデルはフロントファンのすぐ後ろに3.5インチHDDと電源ユニットが配置されていたが、HDDを上部に、電源ユニットを薄型化して下部に配置し、空気の流れを妨げる要素を排した。フロントに吸気用ファンを2基、背面にも排気用ファン2基を備える。

▲新モデルの内部構造。中央の空間のエアフローを極力邪魔しないために、ストレージや電源、ケーブルの配置などが考慮されていることがわかる

R13もR14も内部構造は同じだが、マザーボードの違いによる性能差はある。R13は第12世代インテルCPUを採用していることから、メモリー規格がDDR5の最新ロジックになっている。対してR14はAMD製CPUのため、メモリー等の規格は旧モデルのR10(AMD)/R12(Intel)と同様のDDR4のままだ。性能の違いはレビューを待ちたいが、R13のゲーム性能がどれくらい進化しているかも気になるところだ。

また、CPUクーラー自体もライティングできる最新のCyro-techが採用され、Alienマークのライティングも追加されているが、Cyro-techはオプションで、しかもインテルCPUのR13でしか選択できない点にも注意したい。

▲ファンの大型化などが施されたCyro-tecnクーラー

もうひとつの変更点がマザーボードだ。内部容量の拡大とエアフローの改善にはマザーボードも貢献しており、ケーブル端子を邪魔にならない上下に配したほか、フロントパネルの端子も直結としている。

▲エアフローのためにマザーボードから新規設計されている

本体サイズの拡大は設置スペースの面ではマイナスだが、最大の恩恵はフルレングスのグラフィックカードも搭載可能となったことだ。そのコンパクトさゆえに旧モデルのAlienware Auroraは2連ファンサイズのGPUしか搭載できず、BTOオプションではRTX 3090も選択できたものの、市販モデルの選択肢がかなり狭かった。しかしR13/R14は、邪魔なパーツが取り除かれたことでほとんどのGPUが搭載可能となり、将来的なアップグレードの障壁も低くなった。

シンプルに性能を発揮させるための改良

ゲーミングPCの進化は、CPUやGPUの性能向上に伴う熱問題との戦いでもある。コンパクトさとのバランスが取れていたAlienware Auroraであっても、すでに新しいアーキテクチャーに対応するには容量不足な面はあった。

それらを解決するために開発されたのが、Alienware Aurora R13/R14だ。その開発は3年ほど前、レジェンドデザインのAlienware Auroraがリリースされた直後からスタートしていた。

開発の苦労についてゴヤネス氏は「デザインとユーザーへのアピールが難しかった」という。

「開発には3年ほどかかりました。今回はお客様からの意見をフィードバックしましたが、クリアサイドパネルが求められていた。長方形の平らなケースならすんなりいきますが、Alienwareは曲線だったので難しかった。ようやく提供できることをうれしく思っています」

▲「サイドパネルの透明化にあたっても脱着をしやすくした」とゴヤネス氏

同時に求められたのが静粛性だった。たしかに旧モデルは性能を引き出すためとはいえ、比較的早めに排熱ファンを回転させる傾向が感じられた。そのためにもエアフローの改善は必須項目だった。

「システムの静音性が求められていましたが、スイングアームを取り除くことで広大なスペースが生まれ、障害物なく流れるようにできました。それでファンの回転がより緩やかになって、静音につながりました。静音性はシステム全体で16%向上しており、CPUの温度も下がっています」

本体は物理的に大きくなってしまったものの、「大型化で得られた恩恵は大きい」とゴヤネス氏。この点は従来機種のユーザーならば納得できるだろう。

eスポーツブームの高まりや、ゲームメーカーのマルチプラットフォーム対応やコンソール機とほぼ同時発売になっていることなど、PCゲームが定着していない日本でも、ここ数年でかなりPCゲームのためにゲーミングPCを購入するユーザーも増えている。

そんな方たちが、ハイスペックなゲームから小規模なインディゲームまで、安心してゲームを楽しめる環境を提供するのがAlienwareの信条だ。最新のAlienware Aurora R13/R14を、ぜひ確認してみてほしい。



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