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担当タイトルは50作品以上! 唯一無二のマルチ活動で競技シーンに寄り添った10年間【eスポーツキャスター OooDa氏インタビュー前編】

競技シーンで超人的なプレイを見せるプロゲーマーと並び、昨今のeスポーツイベントで注目を浴びているのが「eスポーツキャスター」と呼ばれる職業だ。

彼らは試合のワンシーンを的確に切り取って観戦者へ情報を伝えるだけでなく、時には特定タイトルの専属キャスターに就任し、競技シーン及びコミュニティの盛り上げ役も一挙にこなす。野球やサッカーといったリアルスポーツのキャスター同様、各ゲームタイトルの競技シーンになくてはならないファクターとしてここ数年特に認知度が高まっている。

そんなeスポーツキャスターの中でも、FPSタイトルを中心に10年以上にわたって界隈を盛り上げているのがOooDa氏。PC向けタイトル『カウンターストライク』シリーズをはじめ、コンシューマー、スマートフォンアプリ、アーケードゲーム……など、これまでに実況や解説を担当したタイトルは50近くにのぼる。2021年現在はタクティカルシューターVALORANT』の「VALORANT 2021 Champions Tour」で公式キャスターを務めるなど、一定以上の存在感を放つマルチキャスターとして活躍中だ。

今回は競技シーンの最前線に寄り添うeスポーツキャスター・OooDa氏へインタビューを実施。前編ではゲームとの出会いを筆頭に、eスポーツ業界に飛び込んだきっかけ、キャスター業に取り組む上でのスタンスについてお届けする。



「誰かと常に対戦していたい」、幼少期から変わらない勝負好きな性格


――OooDaさんとテレビゲームとの出会いについて教えてください。

OooDa:一人っ子だったこともあり、昔からおもちゃ関連は割と何でも買ってもらえる方ではありましたね。それこそテレビゲームで言えば、ファミリーコンピュータ(ファミコン)で『スーパーマリオブラザーズ』、ゲームボーイで『テトリス』などなど、王道タイトルと一緒に育ってきた感じです。

その中で特に好きだったのが「ミュータント・タートルズ」関連のゲーム。ベルトスクロールアクションの『T.M.N.T. タートルズ・イン・タイム』(スーパーファミコン/KONAMI)は友達とめちゃくちゃ遊びましたし、何ならミュータント・タートルズのファンクラブにも入って、会員だけが手に入れられる秘密基地セットみたいなおもちゃも持ってましたよ(笑)。

でもゲーム一辺倒というわけでもなく、「ゲームはいろいろあるおもちゃの1種類」という認識でした。小さいころから外ではしゃぐのが好きだったから、友達を20人ぐらい集めて鬼ごっこ大会を開いたり……あとはビーダマン、ハイパーヨーヨー、ミニ四駆とか流行のおもちゃで遊んだりしてましたね。

――インドアでゲーム三昧というよりは、活発な少年時代を過ごされてきたんですね。

OooDa:ただ、NINTENDO64(64)が出てからはもうみんな夢中でハマったんです。『大乱闘スマッシュブラザーズ』に『マリオカート64』、それから『ゴールデンアイ 007』。とにかく64にかじりついてました(笑)。あとはゲームボーイの初代『ポケットモンスター 赤/緑』(ポケモン)もやり込んだ記憶があって。

今振り返ると、あのころハマったタイトルってほとんど対人戦が楽しいゲームばかりなんですよ。他のおもちゃもそうですけど、僕は人と常に対戦していたい。逆に当時流行っていた『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といったRPGはなかなか自力で進めることができなかった。ポケモンもRPGですけど、やっぱり通信対戦があるから僕は熱くなれた気がします。どうしても1人で黙々と何かを進めることができないタイプなんでしょうね。


そこから小学校・中学校と学年が上がるにつれて、今度はゲームセンターにも通うようになりました。そのときに『ミスタードリラー』とか『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』を遊び出して。3D対戦格闘ゲームの『鉄拳』シリーズもやり込んでましたね。家でプレイステーション版の『鉄拳3』をやって、ゲーセンで『鉄拳タッグトーナメント』を触って……みたいな。まあRPG以外はそれなりに通っているほうだとは思います。ちなみに、今でも平八(『鉄拳』シリーズのキャラクター)はある程度動かせますよ(笑)。

――根本的に誰かと競い合うのが好きなのですね。では、客観的に見たご自身のゲームの腕前はどのあたりでしょうか?

OooDa:今でもそこそこだと思います。下手でもないし上手くもない。10段階で言えば5~6ですね。あんまり得意なゲームって実はなくて。強いて言えば麻雀でしょうか、テレビゲームじゃないですけど(笑)。

極端に下手なゲームはありますけど、圧倒的に上手いゲームがないんです。でも本人としては楽しんでプレイしているし、負けるともちろん悔しい。

――例えば友人とゲーム勝負をするとしたら、OooDaさんの場合どんなタイトルを選びますか?

OooDa:自分が得意なタイトルを選んで良いんですか? それなら、負けるかもしれないけど『VALORANT』かな。まあ相手を見て決めますね(笑)。友達同士なら「こいつはFPSが苦手」とか「格ゲーに弱い」とかわかるじゃないですか。なので相手の弱点を見つつ、僕がまだ戦えそうなタイトルを選びます。

トーク力を武器に裸一貫で飛び込んだeスポーツ業界


――ここからはeスポーツ業界に足を踏み入れたきっかけについてお伺いします。アマチュアのキャスターとしてイベントなどに関わったのはいつごろでしょうか?

OooDa:そもそもeスポーツというか、特定タイトルの競技シーンで思い入れが強かったのは『カウンターストライク』シリーズですね。最初は公式大会ではなく、毎週土日にやっているようなコミュニティイベントのスタッフ募集を見つけて、実際に協力したいと思って現場に行ったら「君、しゃべれるし面白いね」と運営の方に褒めてもらえたんです。そのまま「ちょうどイベントを配信したいと思っていたところだし、よかったら配信でしゃべってよ」とお声がけいただいて。その流れで人生初のLIVE配信を行いましたね。ニコニコ生放送とUstream(動画配信プラットフォーム)でイベント配信を実施しておりました。

▲OooDa氏が初めて実況を担当した大会の映像

――OooDaさんのトーク力には、10年近く前から注目されていたのですね。

OooDa:注目されていたかはわからないですけど、トークスキルの地盤は多少あったかもしれません。というのも、コミュニティイベントの実況をやるようになってから「もっとトークスキルを磨きたい!」と一念発起し、それまで経験のなかった電化製品メーカーの窓口付きお客様サポートセンターみたいな部署でアルバイトを始めたんですよ。お客さんと実際に会話しないといけないからこそ、接客業を通してトーク力が身につくと思って。本当にイベントを盛り上げるためにバイトを頑張っていましたね。

成績も良かったので、上司からも「うちで社員にならないか?」とお誘いいただきましたけど、就職をしたら土日も働く必要がある。そうするとコミュニティイベントに出られなくなるので、正社員化のお誘いは毎度お断りしてました。ただその時は将来ゲームキャスターでお金を稼ぎたいとも思っていなかったですね。その基盤も無かったので、イメージもできませんでした。趣味を中心にアルバイトして生活をしているイメージです。これわかってくれる方、多いと思います。

――2021年現在はフリーとして活動されていますが、「eスポーツキャスター業でご飯を食べていける!」と感じたタイミングはいつごろでしょうか?

OooDa:「働きながらeスポーツキャスターで生活する」で言うと、2014年くらいからできた気はします。先ほどの電化製品メーカーから株式会社成(E5esports Worksの前身)というイベント会社に転職したのですが、そこの社長さんに惚れ込んで辞めなかったのが大きな要因かもしれないです。

▲OooDa氏がこれまでに実況(番組MC)を担当したゲームタイトルの一部。ジャンルはもちろん、プラットフォームはPCからコンシューマー、モバイルとさまざま

株式会社成ではキャスター業を斡旋してもらっただけでなく、イベント立ち上げやキャスティング考案、台本の発注……などなど、制作業も同時に担当させてもらいました。会社員なので固定給でしたけど、成に入ってからは競技シーンのイベントがより身近になったし、お仕事の量も年間15本ほどに増えましたね。

当時はネクソンさんが運営していた『CSO』に加え、2014年からは同じくFPSの『サドンアタック』を担当し、『スペシャルフォース2』も追っかけていました。キャスターのキャリアで言えば11年くらいですが、アマチュア活動を含めると、さらに前からeスポーツに関わっていると思います。

僕より上の世代は『ストリートファイター』シリーズの実況を担当されているアールさん。あとは半年~1年の違いがあって、僕、岸大河と続き、1年くらい先輩でyukishiroさん、eyesさんと続く感じでしょうか。

eyesさんはDetonatioN Gaming(OooDaさんは2012年度のチーム立ち上げ時に加入)に所属している時期が僕と一緒だったのでいろんな話をしたし、yukishiroさんは成の同僚だったから同じ社宅に住んでいました。

10年以上も夢中になれたeスポーツキャスター業


――2019年にご結婚されていますが、結婚の前後で仕事に対する心境の変化はありましたか?

OooDa:子どもが生まれたら心境も変わるかもしれませんが……大きな変化は今のところないです。ただ、少しばかり将来を見据えるようにはなりました。

1人の時は給料をもらって自分で生活するだけでしたけど、結婚すると「子どもの教育はどうする?」「マイホームのローンはどうなる?」といった具合にお金の問題がどうしても浮上するからこそ、「仕事は安定させないといけない」という意識は生まれましたね。だから、好き勝手していたころみたいにその日暮らしな生活はなくなりましたね。その点では多少、仕事に影響があったかもしれません。

――根本的な部分では変わっていないと。やはり人としゃべるのは昔から得意だったのでしょうか?

OooDa:得意という自覚はないんです。もちろんしゃべること自体は嫌じゃないけど、高校を卒業してからはほぼ現場職だったので、大阪から関東に出てきて時間が経った今でも「トークが上手い」とかは思っていません。

人から言われると「多少は適正があるのかな」とうれしさはありますが、逆にお仕事の現場では反省ばっかりしています。「あの場面はこうツッコミをいれるべきだった」とか実況では「こういう言い回しの方が良かったな」とか……。本当にまだまだなんです。

僕、すごい飽き性なんですよ(笑)。昔から仕事や趣味もすぐ辞めちゃう。だけどeスポーツキャスター業だけは辞めずに続けられている。コミュニティイベントのころからしゃべって配信する、という行為は一切辞めていないので、これが唯一続いている趣味であり、仕事かもしれないです。

――トーク力だけでなく、個人的に声の良さに心惹かれます。

OooDa:「声が良い」っていうのは昔から周りに言われていましたけど、自分の声を聞くのってあんまり好きじゃなくて。良い声を出している自覚がまずない。だからアーカイブなどで試合が盛り上がったシーンを見直したときも「これで良かったのかな?」って思うし、ナレーションを録った際も「申し訳ない!」という気持ちで臨んでいますね。それでも毎試合、どんなシーンでも全力を出すことは意識しています。

「ガラスのハート」から生まれた、気分を害さないための実況スタイル


――eスポーツキャスターを担当するうえで、滑舌トレーニングなどの練習はされていますか?

OooDa:1年間くらい「外郎売」(ういろううり)を読んだり、舌のトレーニングを頑張ったりした時期もありましたが、今はほとんどやっていません。それよりも、「噛んでも許されるキャラクター作り」が功を奏したように思います。もちろん、重要な所では噛みませんよ!

今のeスポーツ業界は、元アナウンサーさん含めeスポーツキャスターの方々がたくさんいらっしゃるじゃないですか。そういった方たちがイベントのオープニング等で噛んでしまうと、どうしても気まずい空気が流れる瞬間も少なくないですよね。だけど、僕は噛んでしまった場合に「すみません! もう一回やり直してもいいですか?」くらいのフランクさを出せるキャラクターとして認知されているので、その点はありがたいですね(笑)。



――プランを練ってご自身のキャラクターを確立させたのですか?

OooDa:いえ、自然にイジられるようになったんだと思います。僕は真面目に試合を捉えるというより、イベントを楽しむ雰囲気に持っていくスタイルなんです。この部分は昔から変わってないし、自然体だったからお客さんにイジってもらえるようになったのではないでしょうか。

とはいえ、得することばかりでもなく、損することだってもちろんあります。例えば、現役アナウンサーの方や岸大河君はスタイリッシュじゃないですか。ミスもしない優等生なイメージ。僕はあんな風にはなれないし、クラスにいる平均点そこそこのムードメーカーという感じ。その事により仕事の相談が来る、相談が来ないがあると思いますし、キャラ作りができたといっても、メリット・デメリットはそれぞれありますね。

それでも、皆さんからいただく声援は本当に日々の励みになっています。僕はSNSでエゴサーチをする方ですが、どんな形であれ反響をもらえるのはめちゃくちゃうれしいです。皆さんの反応があるからこそ、今の生活を送ることができていると言っても過言ではないですね。

――お話を伺っていると、OooDaさんは普段からシーンを問わず自身の言動や立ち居振る舞いに注意を払っている印象を受けました。

OooDa:確かに。eスポーツイベントでいえば、「僕の言動でネガティブな結果になってしまうのは避けたい!」と常にリスクを考えているのは大きいと思います。運営陣・プレイヤー・観戦者・ゲームと諸々の要素が一体となっているからこそ、その大会がつまらないと思われないよう、とにかく意識を割いて実況時のフレーズやワードを精査する。この向き合い方は、たとえ気心の知れた共演者の多いバラエティ番組などであっても変わりません。

個人的に仲の良いストリーマーの配信に遊びに行く場合も例外ではなく、視聴者の目線をとにかく気にします。単に「僕がガラスのハート過ぎるだけ」という気もしますけど、昔から今にかけてeスポーツキャスター業にしっかり反映されているのは間違いないです。

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前編はここまで。後編では、OooDa氏によるeスポーツキャスター論についてお届けする。

OooDa Twitter
https://twitter.com/OooDa
OooDa Twitchチャンネル
https://www.twitch.tv/oooda?lang=ja
Youtube OooDaチャンネル
https://www.youtube.com/c/OooDa%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB

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