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【FAV gaming sakoインタビュー(後編)】Twitch配信によって“世界のsako”に
目次
日本の格闘ゲーム界黎明期から活躍し、稀代のコンボ職人として人気のFAV gaming所属 sako選手。
前編では、ゲームとの出会いからプロゲーマーになるまでの経緯をうかがったが、後編では、6万1000人以上のフォロワーを抱えるTwitchでのストリーマー活動の裏側について、引き続きsako&akikiご夫妻にじっくりお話を聞いた。
──sako選手も動画配信の中で、『ストリートファイターV チャンピオンエディション』のコンボや攻略を配信することはありますよね。ただ当然、スクリム(練習試合)は配信と切り分けたり、「ファンを交えた試合を練習と呼ぶのは違う」という方もおられますね。
sako:難しいところですね。集中したいときは配信なしで練習したい。ただ、仲間と皆で意見を出し合って練習するときは、ストリームありでワイワイやるときもあります。その辺は、どういう練習方法が今の自分に合っているかによって変えています。
──Twitchでは火曜日に定期配信をされていますが、それ以外はどんなふうに配信しているんでしょうか?
sako:特に決めないで、理由もなく配信しています。自分が好きなゲームとか気になっているゲームを雑談交じりで遊ぶのが好きなんです。仕事といえば仕事だけど、楽しみながらやっていますね。
──ちょっと気になったのが、配信とは別に行っている練習はどれくらいなのかというところです。配信している以外で練習もかなりされていますよね?
sako:そうですね、練習をそのまますべて配信しているわけではないです。『ストリートファイターリーグ」みたいに10月から12月までみっちり対戦する相手が決まっている大会だと、チーム戦なので僕が今どういうキャラを練習しているかによって、どういう戦略で来るかもバレてしまいます。それに、次にあたるチームに向けた戦略とかが、CFN(カプコン・ファイターズ・ネットワーク)などで見ることによってわかってしまうんです。
ゲーム内の戦略がチームメイトにも影響したりするので、練習内容を見せたくないときは、基本的に配信はしないです。
──他のeスポーツタイトルのように、データがわかるようになってきたことの弊害でもあり、プラスになることもある、ということですよね。
sako:そうなんですよ。その辺がすごく難しいところで。「ストリートファイターリーグ」ってホームとアウェイがあるんですけど、ホーム側のときほど気をつけないといけないんです。自分から被せにいけるルールなので、「今このキャラを重点的にやっているんだったら、逆にこの練習をしておいたほうがいいな」ということがバレてしまう。
──sakoさんも相手の情報を見ているんですか?
sako:見ていますね。基本的に違うプラットフォームでもチェックするようにはしています。やっぱりそういう情報はかなり武器になるので。
──なるほど。長期のリーグ中は配信はしにくそうですね。
sako:正直な話、いま(「SFL 2021:Pro-JP」開催期間中)はちょっとやりにくいです。『ストV』自体を楽しく見てもらうためには、他の人が使っていないようなキャラクターで自分のプレイを見せるのが多分いいんですけど、いまそれをやると「こいつは何を遊んでるんだ?」と思われてしまう。そのあたり、大会練習と配信のバランスが難しいですね。
──オフになったら全然違う展開になるかもしれないですよね。
sako:そうですね。また好きなようにできるので。
配信ポリシーは「悪口は言わない」
──そんなsakoさんのTwitchチャンネルは、『ストV』の定期配信を中心に、『It Takes Two』の夫婦プレイなどいろいろありますが、ご自身の配信の「ここがいいところ」というポイントはなんですか?
sako:嫁と2人で配信していることが多いんですが、僕がゲーム担当、嫁が雑談担当という感じで。ゲーム画面を見ていても楽しめるし、嫁のトークをラジオ感覚で聞いていても面白い、どちらを見ても聞いてもいいという感じです。
akikiの朝雑談。「炊飯器を買います」(https://www.twitch.tv/videos/1263906351)
──その分担は意識されてやっているんですか?
sako:そもそもは、配信すれば僕がちょっとはしゃべれるようになるかもしれないとやり始めたのがきっかけだったんです。すごく上がり症で人前に出ても全然しゃべれれないし、気の利いたことが言えないので、配信でコミュニケーションをとれるようにして、自分の意見を言葉にできるようになったら、もうちょっと違う仕事も増えるんじゃないかなと。
──しゃべるための練習から始まって、それが定番化していったという感じなんですね。
sako:そうですね。あと、うちの配信のいいところというと、人の悪口を言わないことですかね。視聴者の間でも、誰かをディスったり悪口のコメントを書く人はめちゃくちゃ少ないんです。だからチャット欄も荒れない。他の配信の人から見たら、多分すごく不思議に見えるんじゃないかな。
──たしかに、ほとんど嫌なコメントは見たことがないです。そのために心がけていることはあるんですか?
sako:コメントをちゃんと読むようにしたら、自然と減りました。話下手なので、面白く見てもらうためにコメントを読んで返信すると話が長持ちするんですよね。
僕はいま42歳ですが、見ている人の平均年齢も高いのかなと思います。「落ち着いて見られる」とよく言われますし。こういう性格なので、似た人が集まってきやすいのかもしれないですね。
──最近は特に、いろいろなゲームを他のプロゲーマーさんと配信していますよね。企画はどういうふうに考えられているんでしょうか? おふたりで?
sako:僕が気になるゲームをやるということもよくあるし……。
akiki:いや、ゲームはsakoが選んだものしかやってくれないです。そこは私、すごく不満だわ(笑)。
──(笑)。
akiki:sakoもぼちぼち視聴者数とか気になっていて。やっぱり人が少ないとチャットがあまり動かないので、しゃべることがなくなって気まずい感じがするらしいんです。だから、「今はこういうゲームがすごく人気みたいだからやってみたら?」とかは言うんですけど、「別にそれは好きじゃないからいいわ」ってやってくれないんです。
sako:人気のゲームって皆がやるじゃないですか。同じことをやってもなんだかな、ということでわりと嫌厭しちゃうんです。
「sakoとakikiの離婚回避。」では夫婦で『It Takes Two』をプレイ(https://www.twitch.tv/videos/1263906351)
──それも1つの考えですよね。でも、akikiさんからすると「やってくれない」と(笑)。
akiki:別にやらなくてもいいんですよ? だったら、人が集まらなかったときにしょんぼりしなかったらいいのにと思うんです。「あまり面白くないのかな」とか「あまり人が来てくれへんかった」とか言うから。黙々とローグライクをしていても、やっぱりゲームやsakoが好きな人しか来ないとは思うんです。
──ま、まあ、そうですね(汗)。
sako:どっちかというと1人でやりこむ系のゲームがすごく好きなので、放っておいたらずっとそっちに寄ってしまうんですよ。
akiki:なので、たとえばローグライクとかパズルなら、そのゲームが好きな人に来てもらって一緒に話しながらやりたいときはそのまま「普通にゲームをプレイします」と書くんです。
でも、たとえば『Project Winter』とかだと皆で集まるゲームですよね。sakoは「やりたい」と言うところまでなので、スケジュールを立てて「この日に集まれませんか?」と声をかけていくのは私の係です。
sako:ありがとうございます(笑)。
──sakoさんがやりたいゲーム配信をakikiさんが実現しているという、二人三脚での配信だったんですね。
sako:そうですね。いつも迷惑をかけています(笑)。
──そうやって企画を考えていくのは、やっぱりファンが飽きないように考えていらっしゃるんだと思うんですけど、配信を楽しく続けていく上でのコツはありますか?
sako:根本的な問題なんですけど、ゲームが好きじゃないとそもそも絶対に続かないと思うんです。そして、そのゲームのいいところをいかにアピールできるか、楽しくやっているように見せるか。そういうところは重要ですよね。
──やってみたけどつまらなかった、ということもありますよね。
sako:ありますね。「ちょっと思っていたものと違うな」とか。でもたまには感情的になってもいいと思うんです。たとえば『Jump King』みたいなイライラする系のゲームだったら、感情を出してみたりとか。多分見ている人もそれを楽しみにしているので。
sakoのイライラJump King(https://www.twitch.tv/sakonoko_game/video/655305652)
──やっぱりファンが何を楽しみにしているのかは意識しますか?
sako:僕に求められているのは、面白いゲームプレイだと思うので、そういうプレイをすることを心がけていますね。
──トークを担当しているakikiさんとして、配信を邪魔せずにうまくsakoさんの魅力を引き出すために、どんなことを考えているんですか?
akiki:いつも邪魔しているような気がするので何とも言えないんですけれど(笑)。意外とTwitchのアナリティクスは見ていて、しゃべるのはこのくらいがいいのかなと気をつけています。
たとえば、sakoがプレイしているときに、すごく有名な人がラウンジに入ってきて対戦していたら、みんな対戦を見たいと思うのであまり入らず、チャットも拾いません。でも、チャットのコミュニケーションを求めて一生懸命何度も何度も書き込んでくださる人もいます。
なぜライブ配信しているかといったら、リアルタイムのコミュニケーションや双方向のやり取りがあるからですよね。
実際、あまりコメントを拾わなかったり、ただコメントを垂れ流しているだけよりも、ちゃんとコミュニケーションをとっていると数字も上がっていきます。
その中でも、「ここは皆も対戦に集中したいよね」というところは、黙るようにしています。逆に、たとえば、「今のことに対してsakoがどう思っているのか皆知りたいだろうな」と思ったら、私から質問してみてsakoにしゃべってもらうようにするとか。
難しいのは、チャットの方の求めているものも、sakoが求めているものも見なくてはいけないこと。「俺は今、この対戦にめっちゃ集中したいねん」みたいな空気が横から来るときが結構あるんです。そういうときは、sakoは対戦して、私がずっとチャットとコミュニケーションをとっていく。そうすると、sakoにとっては対戦に集中できる時間が確保できるんです。
配信外でも「しゃべっていてくれたら集中できる」と言われることがあります。逆に、わりとフワッと対戦しているときだったら話しかけてもいい。そういう感じで、押し引きを頑張っています。
──アナリティクス機能では、「このゲームのこういうシーンが人気があった」といった分析もされているんでしょうか?
sako:そうですね。嫁がよくやっています。他にも、個人でクリップを切り抜いて送ってくださる方がいるので参考にしています。
──シーンの切り抜きが公式にできる「クリップ」は、Twitchならではの使い方ですよね。
sako:あれは僕らとしてもすごく助かっています。長時間の配信が多いので、面白いと思ってくれた部分を切り抜いて、チャンネルをアピールしてくれる人が結構いてくれるので、一石二鳥というか。
Twitchの「クリップ」は、ファンが見たい部分を自由に抜き出したレコメンド機能(https://www.twitch.tv/sakonoko_game/clips?filter=clips&range=7d)
──切り抜いたクリップの部分も、sakoさんのTwitchの視聴数としてカウントされるんですよね。
sako:そうですね。ただ、マナーのある人が使ってくれればwin-winですが、やっぱり悪意のある切り抜きもあります。
──そこはsakoさんとakikiさんの配信ならではの絶妙なバランスですよね。アナリティクスを見ているというのはリアルタイムですか?
akiki:どっちもあります。チャットの動きが鈍いと思ったときはリアルタイムで見ますが、チャットも対戦もsakoの空気も読みつつとなると、配信中は忙しいのであまりアナリティクスは見れません。なので、配信終了後に見て「あそこが気になっていたけどやっぱりあまりよくなかった」とか、「次はこうやってみよう」みたいな感じでやっています。
リスナーさんから「しゃべりすぎ」とか「sakoさんの声が聞きたくて見に行っているんだ」という苦情をいただくこともあります。でも、sakoひとりでの配信を増やしたり、黙って配信スタッフとして作業だけに徹したりもしたんですけど、アナリティクスが下がっていくことがほとんどでした。だからもともとのスタイルの方が、ゲームがわからない方でも配信を楽しめるのかなと思ったりしています。
──今までのお話を聞いていると、アナリティクスや切り抜きのシステムなど、配信する上でTwitchの強みは結構ありますよね。
sako:そうですね。システム面でいうと、常にアップデートが入るところもいいですね。僕はPC音痴ですが、何でもやりやすくてわかりやすいのはすごく助かります。
画質面でいうと、PS4の頃はそこまでよくなかったですが、今はPCを2台にして片方はゲーム用、片方は配信用と分けてスペックも高いので、だいぶいい方だと思います。
あとは、海外のファンとのコミュニケーションの部分ですね。Twitchは本当にグローバルに強いので、海外からの視聴が多いのはすごくいいところですよね。
akiki:Twitchのアナリティクスでは、どの国から何%の視聴があるか、全部わかるんです。チャットには日本語がずっと流れているので、「海外の人っているのかな?」と思うんですけど、要はROMっている人(Read Only Member。読むだけの人のこと)がかなりいるみたいなんです。sakoの場合は本当に幅広いです。
sako:近場だと台湾、韓国、中国。アメリカ、オーストラリア、ロシア、フランス、イギリス、ブラジル……。
akiki:トルコやコスタリカの人も定期的に見に来てくれるんです。
sako:僕はブラジルに行ったことがあるので、そこでしゃべった人とかファンになってくれた人はわかるんですけど、行ったことがないトルコとかコスタリカの人たちが見に来てくれているというのはすごく嬉しい反面、不思議ですね。
akiki:特に格闘ゲームはプレイで魅せる部分があるので、言葉がわからなくても見ている人がきっといるんだと思います。Twitchは本当にグローバルに強いので、いろんな国の人がTwitchを知っているところが強いですね。
──今後、Twitchへの要望はありますか?
sako:海外からのコメントを一瞬で翻訳してくれる機能があったらすごく嬉しいです。まったく読めない言語の人もコメントをくれるんですけど、何を書いているのかわからなくて。あとは、僕がしゃべったことをリアルタイムに字幕にしてくれる機能。難しい技術かもしれないですけど。
──Twitchというサービスによって、ゲーム配信だけで生きていけるようになった方も増えてきたと思います。ゲームで生きるということや、Twitchを中心に配信で生きることについてはどう思われますか?
sako:僕みたいにゲームしかできない人間には、すごく夢が広がりますよね。まさかゲームをしているだけで生活ができるなんて、小さい頃はまったく思わなかったので。ただ、仕事としてやるにはそれなりの覚悟が必要です。多分、楽な部分しか見えないと思いますが「思っていたものとは違う」という人もいるでしょうし。
──sakoさんにも娘さんがおられますが、ストリーマーに憧れる子どもたちも増えましたよね。
sako:楽しいことを楽しそうにやっているし、憧れる気持ちはわかります。それに、子どもに憧れられるのってやっぱり嬉しいですよね。誇れるというか。僕らが子どもの頃は、ゲームをやっていることがオープンにできなかった。いまは逆に「すごい!」と言われる時代。こんな時代が本当に来たんだなと、感慨深いです。
──一方で、中国ではゲームをプレイする時間を厳しく制限したり、身分確認を行うといった規制も始まりました。今後のゲーム配信のあり方について心配している部分はありますか?
sako:ゲームのプレイ時間を制限されてしまうと、僕らみたいな人間は結構つらいですね。ただ、規制されたらその範囲に合わせて僕らも変わっていくしかない。それが仕事なので、そのルールに従うだけの話です。正直、そうなってしまうとつまらないですけどね。
でも、エンターテイメントのひとつとして、万人が楽しめるのがゲームのいいところです。言語も関係なく、1個のゲームタイトルで何十万、何百万人が遊べること自体が夢が広がることですよね。
──最後に、今後取り組んでいきたいことを教えてください。
sako:「ストリートファイターリーグ」中なので思ったように配信はできませんが、終わったら新作ゲームや気になっているゲームを、他のプロゲーマーを集めてやりたいです。タイトルは今後をお楽しみに、ということで。
──ありがとうございました!
※ ※ ※
1月29日には、「ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2021」のグランドファイナルが開催され、長かったリーグ戦にも決着がつく。残念ながら北米チームとの対決もなくなり、「Capcom Pro Tour 2021」も中止となってしまったが、sako選手も所属する「v6プラス FAV Rohto Z!」がどんな活躍を見せるか、ぜひ応援しよう!
ストリートファイターリーグ 2021 Pro-JP プレイオフの詳細
https://sf.esports.capcom.com/playoff/
ストリートファイターリーグ 2021 Pro-JP グランドファイナルの詳細
https://sf.esports.capcom.com/final/
sakoのTwitch
https://www.twitch.tv/sakonoko_game
sakoのTwitter
https://twitter.com/sakonoko
sakoのYouTube
https://www.youtube.com/c/sakonokogame
前編では、ゲームとの出会いからプロゲーマーになるまでの経緯をうかがったが、後編では、6万1000人以上のフォロワーを抱えるTwitchでのストリーマー活動の裏側について、引き続きsako&akikiご夫妻にじっくりお話を聞いた。
大会期間中に配信できないもの
──sako選手も動画配信の中で、『ストリートファイターV チャンピオンエディション』のコンボや攻略を配信することはありますよね。ただ当然、スクリム(練習試合)は配信と切り分けたり、「ファンを交えた試合を練習と呼ぶのは違う」という方もおられますね。
sako:難しいところですね。集中したいときは配信なしで練習したい。ただ、仲間と皆で意見を出し合って練習するときは、ストリームありでワイワイやるときもあります。その辺は、どういう練習方法が今の自分に合っているかによって変えています。
──Twitchでは火曜日に定期配信をされていますが、それ以外はどんなふうに配信しているんでしょうか?
sako:特に決めないで、理由もなく配信しています。自分が好きなゲームとか気になっているゲームを雑談交じりで遊ぶのが好きなんです。仕事といえば仕事だけど、楽しみながらやっていますね。
──ちょっと気になったのが、配信とは別に行っている練習はどれくらいなのかというところです。配信している以外で練習もかなりされていますよね?
sako:そうですね、練習をそのまますべて配信しているわけではないです。『ストリートファイターリーグ」みたいに10月から12月までみっちり対戦する相手が決まっている大会だと、チーム戦なので僕が今どういうキャラを練習しているかによって、どういう戦略で来るかもバレてしまいます。それに、次にあたるチームに向けた戦略とかが、CFN(カプコン・ファイターズ・ネットワーク)などで見ることによってわかってしまうんです。
ゲーム内の戦略がチームメイトにも影響したりするので、練習内容を見せたくないときは、基本的に配信はしないです。
──他のeスポーツタイトルのように、データがわかるようになってきたことの弊害でもあり、プラスになることもある、ということですよね。
sako:そうなんですよ。その辺がすごく難しいところで。「ストリートファイターリーグ」ってホームとアウェイがあるんですけど、ホーム側のときほど気をつけないといけないんです。自分から被せにいけるルールなので、「今このキャラを重点的にやっているんだったら、逆にこの練習をしておいたほうがいいな」ということがバレてしまう。
──sakoさんも相手の情報を見ているんですか?
sako:見ていますね。基本的に違うプラットフォームでもチェックするようにはしています。やっぱりそういう情報はかなり武器になるので。
──なるほど。長期のリーグ中は配信はしにくそうですね。
sako:正直な話、いま(「SFL 2021:Pro-JP」開催期間中)はちょっとやりにくいです。『ストV』自体を楽しく見てもらうためには、他の人が使っていないようなキャラクターで自分のプレイを見せるのが多分いいんですけど、いまそれをやると「こいつは何を遊んでるんだ?」と思われてしまう。そのあたり、大会練習と配信のバランスが難しいですね。
──オフになったら全然違う展開になるかもしれないですよね。
sako:そうですね。また好きなようにできるので。
配信ポリシーは「悪口は言わない」
居心地のよさを大切に
──そんなsakoさんのTwitchチャンネルは、『ストV』の定期配信を中心に、『It Takes Two』の夫婦プレイなどいろいろありますが、ご自身の配信の「ここがいいところ」というポイントはなんですか?
sako:嫁と2人で配信していることが多いんですが、僕がゲーム担当、嫁が雑談担当という感じで。ゲーム画面を見ていても楽しめるし、嫁のトークをラジオ感覚で聞いていても面白い、どちらを見ても聞いてもいいという感じです。
akikiの朝雑談。「炊飯器を買います」(https://www.twitch.tv/videos/1263906351)
──その分担は意識されてやっているんですか?
sako:そもそもは、配信すれば僕がちょっとはしゃべれるようになるかもしれないとやり始めたのがきっかけだったんです。すごく上がり症で人前に出ても全然しゃべれれないし、気の利いたことが言えないので、配信でコミュニケーションをとれるようにして、自分の意見を言葉にできるようになったら、もうちょっと違う仕事も増えるんじゃないかなと。
──しゃべるための練習から始まって、それが定番化していったという感じなんですね。
sako:そうですね。あと、うちの配信のいいところというと、人の悪口を言わないことですかね。視聴者の間でも、誰かをディスったり悪口のコメントを書く人はめちゃくちゃ少ないんです。だからチャット欄も荒れない。他の配信の人から見たら、多分すごく不思議に見えるんじゃないかな。
──たしかに、ほとんど嫌なコメントは見たことがないです。そのために心がけていることはあるんですか?
sako:コメントをちゃんと読むようにしたら、自然と減りました。話下手なので、面白く見てもらうためにコメントを読んで返信すると話が長持ちするんですよね。
僕はいま42歳ですが、見ている人の平均年齢も高いのかなと思います。「落ち着いて見られる」とよく言われますし。こういう性格なので、似た人が集まってきやすいのかもしれないですね。
akikiさんとの二人三脚で企画
──最近は特に、いろいろなゲームを他のプロゲーマーさんと配信していますよね。企画はどういうふうに考えられているんでしょうか? おふたりで?
sako:僕が気になるゲームをやるということもよくあるし……。
akiki:いや、ゲームはsakoが選んだものしかやってくれないです。そこは私、すごく不満だわ(笑)。
──(笑)。
akiki:sakoもぼちぼち視聴者数とか気になっていて。やっぱり人が少ないとチャットがあまり動かないので、しゃべることがなくなって気まずい感じがするらしいんです。だから、「今はこういうゲームがすごく人気みたいだからやってみたら?」とかは言うんですけど、「別にそれは好きじゃないからいいわ」ってやってくれないんです。
sako:人気のゲームって皆がやるじゃないですか。同じことをやってもなんだかな、ということでわりと嫌厭しちゃうんです。
「sakoとakikiの離婚回避。」では夫婦で『It Takes Two』をプレイ(https://www.twitch.tv/videos/1263906351)
──それも1つの考えですよね。でも、akikiさんからすると「やってくれない」と(笑)。
akiki:別にやらなくてもいいんですよ? だったら、人が集まらなかったときにしょんぼりしなかったらいいのにと思うんです。「あまり面白くないのかな」とか「あまり人が来てくれへんかった」とか言うから。黙々とローグライクをしていても、やっぱりゲームやsakoが好きな人しか来ないとは思うんです。
──ま、まあ、そうですね(汗)。
sako:どっちかというと1人でやりこむ系のゲームがすごく好きなので、放っておいたらずっとそっちに寄ってしまうんですよ。
akiki:なので、たとえばローグライクとかパズルなら、そのゲームが好きな人に来てもらって一緒に話しながらやりたいときはそのまま「普通にゲームをプレイします」と書くんです。
でも、たとえば『Project Winter』とかだと皆で集まるゲームですよね。sakoは「やりたい」と言うところまでなので、スケジュールを立てて「この日に集まれませんか?」と声をかけていくのは私の係です。
sako:ありがとうございます(笑)。
──sakoさんがやりたいゲーム配信をakikiさんが実現しているという、二人三脚での配信だったんですね。
sako:そうですね。いつも迷惑をかけています(笑)。
Twitchアナリティクスで、ゲーム選出やコメントのタイミングを研究
──そうやって企画を考えていくのは、やっぱりファンが飽きないように考えていらっしゃるんだと思うんですけど、配信を楽しく続けていく上でのコツはありますか?
sako:根本的な問題なんですけど、ゲームが好きじゃないとそもそも絶対に続かないと思うんです。そして、そのゲームのいいところをいかにアピールできるか、楽しくやっているように見せるか。そういうところは重要ですよね。
──やってみたけどつまらなかった、ということもありますよね。
sako:ありますね。「ちょっと思っていたものと違うな」とか。でもたまには感情的になってもいいと思うんです。たとえば『Jump King』みたいなイライラする系のゲームだったら、感情を出してみたりとか。多分見ている人もそれを楽しみにしているので。
sakoのイライラJump King(https://www.twitch.tv/sakonoko_game/video/655305652)
──やっぱりファンが何を楽しみにしているのかは意識しますか?
sako:僕に求められているのは、面白いゲームプレイだと思うので、そういうプレイをすることを心がけていますね。
──トークを担当しているakikiさんとして、配信を邪魔せずにうまくsakoさんの魅力を引き出すために、どんなことを考えているんですか?
akiki:いつも邪魔しているような気がするので何とも言えないんですけれど(笑)。意外とTwitchのアナリティクスは見ていて、しゃべるのはこのくらいがいいのかなと気をつけています。
たとえば、sakoがプレイしているときに、すごく有名な人がラウンジに入ってきて対戦していたら、みんな対戦を見たいと思うのであまり入らず、チャットも拾いません。でも、チャットのコミュニケーションを求めて一生懸命何度も何度も書き込んでくださる人もいます。
なぜライブ配信しているかといったら、リアルタイムのコミュニケーションや双方向のやり取りがあるからですよね。
実際、あまりコメントを拾わなかったり、ただコメントを垂れ流しているだけよりも、ちゃんとコミュニケーションをとっていると数字も上がっていきます。
その中でも、「ここは皆も対戦に集中したいよね」というところは、黙るようにしています。逆に、たとえば、「今のことに対してsakoがどう思っているのか皆知りたいだろうな」と思ったら、私から質問してみてsakoにしゃべってもらうようにするとか。
難しいのは、チャットの方の求めているものも、sakoが求めているものも見なくてはいけないこと。「俺は今、この対戦にめっちゃ集中したいねん」みたいな空気が横から来るときが結構あるんです。そういうときは、sakoは対戦して、私がずっとチャットとコミュニケーションをとっていく。そうすると、sakoにとっては対戦に集中できる時間が確保できるんです。
配信外でも「しゃべっていてくれたら集中できる」と言われることがあります。逆に、わりとフワッと対戦しているときだったら話しかけてもいい。そういう感じで、押し引きを頑張っています。
──アナリティクス機能では、「このゲームのこういうシーンが人気があった」といった分析もされているんでしょうか?
sako:そうですね。嫁がよくやっています。他にも、個人でクリップを切り抜いて送ってくださる方がいるので参考にしています。
──シーンの切り抜きが公式にできる「クリップ」は、Twitchならではの使い方ですよね。
sako:あれは僕らとしてもすごく助かっています。長時間の配信が多いので、面白いと思ってくれた部分を切り抜いて、チャンネルをアピールしてくれる人が結構いてくれるので、一石二鳥というか。
Twitchの「クリップ」は、ファンが見たい部分を自由に抜き出したレコメンド機能(https://www.twitch.tv/sakonoko_game/clips?filter=clips&range=7d)
──切り抜いたクリップの部分も、sakoさんのTwitchの視聴数としてカウントされるんですよね。
sako:そうですね。ただ、マナーのある人が使ってくれればwin-winですが、やっぱり悪意のある切り抜きもあります。
──そこはsakoさんとakikiさんの配信ならではの絶妙なバランスですよね。アナリティクスを見ているというのはリアルタイムですか?
akiki:どっちもあります。チャットの動きが鈍いと思ったときはリアルタイムで見ますが、チャットも対戦もsakoの空気も読みつつとなると、配信中は忙しいのであまりアナリティクスは見れません。なので、配信終了後に見て「あそこが気になっていたけどやっぱりあまりよくなかった」とか、「次はこうやってみよう」みたいな感じでやっています。
リスナーさんから「しゃべりすぎ」とか「sakoさんの声が聞きたくて見に行っているんだ」という苦情をいただくこともあります。でも、sakoひとりでの配信を増やしたり、黙って配信スタッフとして作業だけに徹したりもしたんですけど、アナリティクスが下がっていくことがほとんどでした。だからもともとのスタイルの方が、ゲームがわからない方でも配信を楽しめるのかなと思ったりしています。
Twitchのおかげで“世界のsako”に
──今までのお話を聞いていると、アナリティクスや切り抜きのシステムなど、配信する上でTwitchの強みは結構ありますよね。
sako:そうですね。システム面でいうと、常にアップデートが入るところもいいですね。僕はPC音痴ですが、何でもやりやすくてわかりやすいのはすごく助かります。
画質面でいうと、PS4の頃はそこまでよくなかったですが、今はPCを2台にして片方はゲーム用、片方は配信用と分けてスペックも高いので、だいぶいい方だと思います。
あとは、海外のファンとのコミュニケーションの部分ですね。Twitchは本当にグローバルに強いので、海外からの視聴が多いのはすごくいいところですよね。
akiki:Twitchのアナリティクスでは、どの国から何%の視聴があるか、全部わかるんです。チャットには日本語がずっと流れているので、「海外の人っているのかな?」と思うんですけど、要はROMっている人(Read Only Member。読むだけの人のこと)がかなりいるみたいなんです。sakoの場合は本当に幅広いです。
sako:近場だと台湾、韓国、中国。アメリカ、オーストラリア、ロシア、フランス、イギリス、ブラジル……。
akiki:トルコやコスタリカの人も定期的に見に来てくれるんです。
sako:僕はブラジルに行ったことがあるので、そこでしゃべった人とかファンになってくれた人はわかるんですけど、行ったことがないトルコとかコスタリカの人たちが見に来てくれているというのはすごく嬉しい反面、不思議ですね。
akiki:特に格闘ゲームはプレイで魅せる部分があるので、言葉がわからなくても見ている人がきっといるんだと思います。Twitchは本当にグローバルに強いので、いろんな国の人がTwitchを知っているところが強いですね。
──今後、Twitchへの要望はありますか?
sako:海外からのコメントを一瞬で翻訳してくれる機能があったらすごく嬉しいです。まったく読めない言語の人もコメントをくれるんですけど、何を書いているのかわからなくて。あとは、僕がしゃべったことをリアルタイムに字幕にしてくれる機能。難しい技術かもしれないですけど。
ゲームで生活できるのは夢のよう。しかし覚悟も必要
──Twitchというサービスによって、ゲーム配信だけで生きていけるようになった方も増えてきたと思います。ゲームで生きるということや、Twitchを中心に配信で生きることについてはどう思われますか?
sako:僕みたいにゲームしかできない人間には、すごく夢が広がりますよね。まさかゲームをしているだけで生活ができるなんて、小さい頃はまったく思わなかったので。ただ、仕事としてやるにはそれなりの覚悟が必要です。多分、楽な部分しか見えないと思いますが「思っていたものとは違う」という人もいるでしょうし。
──sakoさんにも娘さんがおられますが、ストリーマーに憧れる子どもたちも増えましたよね。
sako:楽しいことを楽しそうにやっているし、憧れる気持ちはわかります。それに、子どもに憧れられるのってやっぱり嬉しいですよね。誇れるというか。僕らが子どもの頃は、ゲームをやっていることがオープンにできなかった。いまは逆に「すごい!」と言われる時代。こんな時代が本当に来たんだなと、感慨深いです。
──一方で、中国ではゲームをプレイする時間を厳しく制限したり、身分確認を行うといった規制も始まりました。今後のゲーム配信のあり方について心配している部分はありますか?
sako:ゲームのプレイ時間を制限されてしまうと、僕らみたいな人間は結構つらいですね。ただ、規制されたらその範囲に合わせて僕らも変わっていくしかない。それが仕事なので、そのルールに従うだけの話です。正直、そうなってしまうとつまらないですけどね。
でも、エンターテイメントのひとつとして、万人が楽しめるのがゲームのいいところです。言語も関係なく、1個のゲームタイトルで何十万、何百万人が遊べること自体が夢が広がることですよね。
──最後に、今後取り組んでいきたいことを教えてください。
sako:「ストリートファイターリーグ」中なので思ったように配信はできませんが、終わったら新作ゲームや気になっているゲームを、他のプロゲーマーを集めてやりたいです。タイトルは今後をお楽しみに、ということで。
──ありがとうございました!
※ ※ ※
1月29日には、「ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2021」のグランドファイナルが開催され、長かったリーグ戦にも決着がつく。残念ながら北米チームとの対決もなくなり、「Capcom Pro Tour 2021」も中止となってしまったが、sako選手も所属する「v6プラス FAV Rohto Z!」がどんな活躍を見せるか、ぜひ応援しよう!
ストリートファイターリーグ 2021 Pro-JP プレイオフの詳細
https://sf.esports.capcom.com/playoff/
ストリートファイターリーグ 2021 Pro-JP グランドファイナルの詳細
https://sf.esports.capcom.com/final/
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