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【デスモフモフ】ゲーム開発歴約20年の集大成を『ネコ人間ユージン』にぶつける!【インディーゲームインタビュー】
「どんな人がどんなインディーゲームを作っているのか」に注目したインタビュー連載企画の3回目は、同人サークル「デスモフモフ」の「ネコ忍者コア」さんを取り上げます。中学時代からさまざまなジャンルのフリーゲームを作り続け、ゲーム開発歴は20年に及ぼうとしています。小説「ニンジャスレイヤー」公式ゲームや横スクロールSTG(シューティングゲーム)『ネコネイビー』なども手がけたネコ忍者コアさんに、ゲーム開発者人生を振り返ってもらいつつ、現在開発中の横スクロールアクション『ネコ人間ユージン』のお話も聞いてきました。
▲デスモフモフのロゴ(左側)とマスコットキャラの「ユージン」ちゃん(右側)
デスモフモフのメンバーは以下の通り(名前・担当・好きなゲームの順に記載)。
ネコ忍者コア:メイン開発/『斑鳩』
ナツメドコーラ:背景グラフィック(サポートメンバー)/『海腹川背』シリーズ
※7月初旬、ビデオ会議ツールを用いて取材。
※『ネコ人間ユージン』の画面は、すべて開発中のものです。
ネコ忍者コア:はい。自宅にはいないのですが、実家で飼ってます。帰省時に何百枚か撮り貯めて、Twitterでじわじわと投稿しています。
▲実家で飼っている猫「寿司(黒ハチワレ)」「もも(キジ白)」「しょう(キジトラ)」
──一番好きなゲームタイトルは?
ネコ忍者コア:トレジャーさんの『斑鳩』です。STG(シューティングゲーム)に興味を持ちはじめたのも『斑鳩』がきっかけですね。見た目がすごく好みでシステムの完成度も高い点が気に入ってます。『斑鳩』がアーケードで出たときは高校生だったので、入り浸るお金がなくてそんなに遊べなかったのですが、Xbox 360に移植されてからは狂ったように遊んでいました。
──ネコ忍者コアさんはVTuber「緑黄色野菜マン」として動画を投稿していますが、経緯を教えてください。
ネコ忍者コア:VTuberとして初めて投稿したのは2018年ごろ。当時は3Dキャラを使ったVTuberのベビーブームが起こり、キャラになりきる方たちを見て「僕も冷やかしでやったろ!」と思い立ちました。ですが、僕はかわいい女の子の3Dモデルを作ったことがなく、手元にある3Dモデルは自作ゲーム『わくわくベジタブル』の主人公「緑黄色野菜マン」のみ。まぁこれでいいかと思い、それを使って投稿しました。
VTuberを名乗っていますがモーションはトラッキングで表現しているわけではなく、一定のアクションをループさせているだけでして。リアクションに合わせて動きに変化を付けることもしていません。完全に手抜きです(苦笑)。
▲野菜の化身「緑黄色野菜マン」を操り、障害物を避けながら落ちている野菜を集めてトラックの荷台に積み込む3Dアクションゲーム『わくわくベジタブル』
──VTuber活動は今も続けているのですか?
ネコ忍者コア:辞めると明言してはいませんし、再開しようと思えばできますね……。でも「VTuberやってる場合か??」と思っているので、優先順位は非常に低いです(笑)。
──主に一人で開発していますが、チームを組まない理由は?
ネコ忍者コア:何事も自分で決めたい、わがままなところがあるからですね。アセットなども使いたくないですし、できることならすべての素材を自分の手で作りたい。そうじゃなきゃ一人で作っている意味がないという強迫観念もちょっと感じています(笑)。
──本業は別にあるとのこと。日々どのくらいの時間をゲーム開発に当てているのでしょうか?
ネコ忍者コア:毎日絶対触るようにはしていますが時間は日によってまちまちで、長くて3時間、短いと5分くらい。3時間もやるともうへとへとになるので、あとの時間は遊んでリフレッシュしています。
ネコ忍者コア:2001年で、僕が中学1、2年生のときだったかな。ダウンロードサイトのVectorでフリーゲームの存在を知り、同級生の間で面白いフリーゲームを遊ぶことが流行りまして。会社ではなく個人でもゲームが作れるんだと気づいて、コーディングなしでゲームが作れるツールのClick&Createをお年玉で買い、ゲーム開発をはじめました。
▲初めて作ったゲームは、巨大ヤマなめくじと戦うトップビューのアクションゲーム『なめくじパニック』
──使っている開発ツールはいろいろ変わっていると思います。歴代の使用ツールと、今のツールに落ち着いている理由を教えてください。
ネコ忍者コア:ゲーム作りをはじめてから数年は、Click&Createを使い続けていました。その後はMultimedia Fusion 2、Construct、DigitalLoca、DXライブラリも触ってみて、2012年以降はUnityをメインに使っています。現状、やりたいことはすべてUnityで実現できていて、他のツールに移る気はありません。他のツールは試しに触れるくらいはすると思います。
──ゲーム開発者としての活動歴は、2021年で20年を迎えることになります。そんなに長く開発し続けられるのはなぜでしょうか?
ネコ忍者コア:自分の世界を表現できることに魅力を感じているからですね。絵や文章よりももっと具体的に、解像度高く、自分の世界を表現できると僕は思っています。それと、若いころは自分が作ったゲームが雑誌に載ることや、その雑誌を片手に自慢したら同級生がそのことをものすごく喜んでくれたり、ゲームをほめてくれたりしたのがうれしかった。こういったことが、次のゲーム作りへのモチベーションにつながったのだと思います。
──作るゲームのジャンルは多岐にわたっており、グラフィックも2D・3Dともに手がけています。どういった基準で作ろうと思うのでしょうか。
ネコ忍者コア:キャラの操作がリアルタイムに連動し、攻撃・回避を楽しめるアクションゲームを作りたい思いはありますが、ジャンルに対するこだわりはないです。僕が遊んでいたセガサターンの初期あたりの作品は3D空間を自由に動けるゲームが多くて、操作できるだけでうれしかった。3D系のゲームは、あのころの楽しさを共有したいと思って作っています。
──縦スクロールSTGも好きだと思うのですが、1本しか作っていません。
ネコ忍者コア:ジャンルとしては縦スクロールSTGが一番好きで、何回かちょっと作ってみてはいるんです。でもそのたびに「これじゃなーい!!」と思って捨ててます(苦笑)。一番好きなジャンルだからこそ、こだわりが強くなってしまいますね……。自分の代表作は横スクロールSTGの『ネコネイビー』だと思っていますが、横スクロールSTGってそこまで好きなジャンルではありません。こだわりのないジャンルほど自分の中の指標が少ないからか、パッと作れてしまう傾向にあります(苦笑)。
▲残機がなくなるまで戦い続ける縦スクロールSTG『モクフォース』
──私が好きなゲームは2017年のFPS『淀屋橋お嬢様倶楽部』なのですが、作ることになったきっかけを教えてください。
ネコ忍者コア:1週間くらいでゲームを作るゲームジャムを自分の中で開催しまして、そのときに生まれました。荒いグラフィックで『DOOM』ライクなゲームを作ることは決めていましたが、おっさんがモンスターを倒してもありきたりかなと思って切り口を変えた結果、セレブ感を出すことに。なぜか人気で続編を希望する方が多く、ちょっと作ろうかなとも思ってます。
▲お嬢様になって、襲い来るお嬢様たちと戦うセレブFPS『淀屋橋お嬢様倶楽部』
──ゲーム開発者としてのターニングポイントはありますか。
ネコ忍者コア:2014年に公開された『急げ!ニンジャスレイヤー』です。それまでは「フリーゲームだし、詰めが甘くてもいいだろう」と思っていた節があり、インターフェースや細かな作りはなぁなぁになっていました。商業タイトルの本作を通じてそういった甘えが消え、プロ意識が芽生えたと思っています。
▲ニンジャスレイヤーがクローンヤクザやニンジャの襲撃をかわしながら、ナンシー=サンを助けるミニゲーム『急げ!ニンジャスレイヤー』
ネコ忍者コア:僕がニンジャヘッズ(※)で、2013年に制作したニンジャスレイヤーの二次創作ゲーム『バリキジャンプ』が人気になりました。それをきっかけにカドカワさんから「ニンジャスレイヤーのPR用にゲームを作りませんか」とメールが飛んできたので、そのまま引き受けました。
(※)ニンジャヘッズ:ニンジャスレイヤーの読者・ファンを指す用語。ヘッズとも。
▲第二部「シー・ノー・イーヴル・ニンジャ」に登場するニンジャ「クラミドサウルス」が爆発四散するミニゲーム『バリキジャンプ』
──ニンジャスレイヤーつながりでいうと、2018年にはSteamでリリースされた『AREA 4643』も手がけています。
ネコ忍者コア:ニンジャスレイヤーつながりではありますが、仕事がもらえたのはたまたまです。Twitterで仕事を募集したら、ダイハードテイルズさん(※)から声がかかりまして。
(※)ダイハードテイルズ:クリエイターユニット。ニンジャスレイヤーの日本語訳を担当している
▲トップビュースタイルのアクション『AREA 4643』
──『AREA 4643』をトップビュースタイルのアクションにした理由は?
ネコ忍者コア:ダイハードテイルズさんと話し合って、1作目は手間をかけずにリリースしようとまとまりました。横スクロールとかベルトアクションだと描画カロリーが高いので、1方向分だけキャラを描き、それを360度回転させるだけで済むトップビューを選びました。ダイハードテイルズさんは『Hotline Miami(ホットラインマイアミ)』が大好きで、あのアトモスフィアを希望していたのもあります。僕も『Hotline Miami』にニンジャスレイヤーめいたものを感じ、良いジャンルを選べたと思っています。
──ダイハードテイルズさんという第三者の方とともに作った作品ですが、開発でやりづらさなどは感じましたか。
ネコ忍者コア:丸投げしてもらったので、基本的にはやりやすかったです。「ドールハウス」のキャラデザにこだわりがあったみたいで、これだけは何度も修正依頼がきたのが印象深かったかな(苦笑)。
といっても、一人で作るよりは制限は当然かかります。たとえば、先方の指定があったボスキャラはニンジャスレイヤー内では強すぎて「これを倒してしまっていいのか?」と悩みも生まれました。また、ゲームとしてはボスはデカいほうが映えるのですが、指定されたキャラが人間サイズなので、迫力の出し方でも試行錯誤しました。
▲ダイハードテイルズさんこだわりの「ドールハウス」。カワイイヤッター!
──ニンジャヘッズなネコ忍者コアさんならではの悩みですね。『AREA 4643』は「日本語がフルサポートされていないように思える」という理由でValveの審査に引っかかったのが思い出深いです。
ネコ忍者コア:僕もダイハードテイルズさんも想定していなかった、完璧なアンブッシュでした。まぁ、ニンジャスレイヤーらしいと言えるかもしれません。ダイハードテイルズの皆さんは「持ってる」と思わせてくれました(笑)。
▲独特な言葉遣いがValveの担当者を困惑させた可能性
──審査が通らなかったため、リリース初期は日本語非対応としてリリースしました。しかし、その後いつの間にか日本語がフルサポート表示されていました。
ネコ忍者コア:Steamの管理ページで日本語をフルサポートしていることを表示するボタンを見つけ、「よくわからんけど押せるんだから押してみようぜ!」とノリでやってみたらそうなりました。怒られたら戻そうと思ってるんですが、今のところ何も言われていません。
ネコ忍者コア:STGで起こりがちなストレスを、できるだけ軽減しようと思って作りました。自機をせっかく強化したのに死んだら初期化とか、敵の弾とアイテムの区別が付きづらいとか、そういう類いの要素ですね。とくに、僕はボムの抱え落ち(※)が本当に嫌いなので、ボムを使いまくれるシステムにしてそのイライラを減らそうと心がけました。難易度で突き放すようなこともしなかったため、STG初心者でも遊びやすい作りになっていると思います。
(※)抱え落ち:ボムのストックが残っている状態で死んでしまうこと。復活時にボムが持ち越されることは基本的にないので、とてももったいない
──かわいらしいキャラや、ストーリーがあるようでない設定も魅力ですね。
ネコ忍者コア:グラフィックはキャッチーなテイストにしつつ、世界観は荒唐無稽になるようを目指しました。ストーリーを感じさせないことで、プレイヤーを振り回したかったのです。3面のボスなんかは、『バトルガレッガ』の「マッドボール」みたいなのを出す予定だったんですが、パンチが足りないと思って描き直したこともありました。
▲パンチの効いた3面のボス
──販売本数はどのくらいでしょうか。また、今回初めて有料という形式を採っていますが、本数に対してどう思ってますか。
ネコ忍者コア:Steam版は約4000本で、Nintendo Switch版は5000本くらい売れました。販売本数は、現在のシューターの人口を考えると妥当だと思います。
──パブリッシャーに「Fruitbat Factory」さんを選んだ理由を教えてください。
ネコ忍者コア:Greenlight(※)で出すまでは全部自分でやったのですが、その後の具体的な行動をまったく考えてなかった……(苦笑)。どうしようかと悩んでいたら、たまたまFruitbat Factoryさんからお誘いの連絡が入りまして。当時はまったく伝手もなかったので、その後はすべてお任せしました。
(※)Greenlight:開発者やパブリッシャーがリリースしたいゲームの情報を投稿し、Steamユーザーはその情報を元に投票したり、開発者たちと意見交換したりする。投票数や意見などを参考にして、正式にリリースするかどうかが決まるシステム。現在は廃止されている。
──Fruitbat Factoryさんは具体的に何をしてくれたのですか。
ネコ忍者コア:プロジェクトファイルをFruitbat Factoryさんに渡したら、翻訳やSteam対応だけでなく、Nintendo Switchへの対応とチューニングまで、本当にいろいろとサポートしてくれました。本来ならこちらがやるべきこともあったと思いますが、全部やってくれましたね。
──至れり尽くせりなサポートですね。
ネコ忍者コア:すべてお任せできたので助かりました。Nintendo Switch対応時に、タイトルロゴやメニュー、アニメーションもFruitbat Factoryさんに追加してもらったのですが、そのことはリリース後に知ってびっくりしましたね。ちょっとリリース前に見せてほしかったなと(苦笑)。
ネコ忍者コア:かわいいネコミミ少女「ユージン」が、血と肉片の雨を降らせる2D横スクロールバイオレンスアクションゲームです。「グリグリ動く多関節のデカいキャラ」「ハイテンポな進行」「人外少女」を存分に味わえることをコンセプトに開発しています。
──Discordで『ネコ人間ユージン』開発用のサーバーを立てており、そこでは公用語を「お嬢様言葉」にしたと聞きました。
ネコ忍者コア:ナツメドコーラと僕、外注を依頼している音楽担当の方で使っているサーバーですね。ナツメドコーラとは仲が良いのでDiscord上でもフランクに話していますが、音楽担当の方はシャイでいつも敬語。気を遣わせてしまっているのが心苦しくて、試しにサーバー内での公用語をお嬢様言葉にしてみました。
導入してからは気を遣わない和やかな雰囲気になったのですが、お嬢様言葉ってスッと出てこないので書くのに時間がかかるのが難点です。その反面、「○○が入力中……」と長い時間表示されていても緊張せず「お嬢様言葉考えるのムズいよね……」と同情しながら見守れるのは良いですね。まぁ、やっぱり書くのが面倒なので没になるかもしれないですが(笑)。
▲お嬢様しかいないDiscordサーバー
──本作の構想はいつから考えていたのでしょうか?
ネコ忍者コア:大学在学時から構想はあり、当時からプロトタイプを作り続けていました。最初はトップビューのSTGにしようと思ってたんですが、それだとキャラのデザインが映えないと気づいてから、サイドビューに落ち着きました。
──多関節キャラのどこに魅力を感じていますか。
ネコ忍者コア:パーツ破壊できる点はもちろんのこと、画面を埋めつくすようなデカい敵がグリグリ動かして、威圧感を出したい。ボスだけでなく、中ボスなど隙あらば多関節キャラを入れていきたいです。『ガンスターヒーローズ』のボス「セブンフォース」が原体験です。
▲多関節キャラ「えびタンク」
──敵勢力は甲殻類「カニソルジャー」。なんでカニなんですか……?
ネコ忍者コア:カクカクしたワルっぽくてカッコいいフォルムが好きなので! 韮沢 靖さんや『ガメラ2 レギオン襲来』の影響も受けているかも。まぁ、モンスターのデザインって甲殻類デザインモチーフものが多いですし、きっと一般的なアイデアですよ!
──カニ姫さまこと「シルヴィア」ちゃんがかわいいです。かわいさはどうやって表現しているのでしょうか。
ネコ忍者コア:打算などは考えず、己の性癖に正直に従ったらああなりました。自分の中にいるSF警察が「魔界から襲来した生命体が日本語を流暢にしゃべるんじゃない!」「甲殻類の癖になんで人型なんだ!」とか罵ってくるんですが、理屈っぽく考えるよりは自分の好きなものを詰め込んだほうが面白いので、罵りは受け流しています。
▲シルヴィアちゃんの魅力が詰まった1枚絵
──ネコ忍者コアさんの作品では、かわいいキャラも容赦なくバラバラになって死にますよね。
ネコ忍者コア:敵味方関係なく、キャラが粉々・バラバラに四散する様子を見ると妙な高揚感を覚えます。子どものころに見た映画の影響が大きい気はしています。『ロボコップ』とか。とくに『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』は、僕にとって劇薬でした。
──ユージンちゃんが死ぬと「死」の文字が表示される演出は、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』のリスペクトでしょうか。
ネコ忍者コア:『わくわくベジタブル』でも使った演出で、どちらもファミコンの『月風魔伝』をリスペクトしています。『月風魔伝』は、主人公が穴に落ちて死ぬと画面上部から「死」の文字が降ってくる。これが大変シュールで気に入っており、採用しています。
▲『わくわくベジタブル』の「死」(左側)と『ネコ人間ユージン』の「死」(右側)
──2D横スクロールアクションでありながら、STGの弾幕要素を組み合わせているように見えます。
ネコ忍者コア:弾幕は意識していたわけではなく、もはや僕の癖ですね……。近距離攻撃よりは撃つほうに重きを置いて、STG寄りの作りにしたいとは思っていて、フリーエイムのシステムも組み込んでいます。
──武器のロケットの使い勝手が良く、強すぎる印象です。
ネコ忍者コア:いやー強すぎましたね(笑)。威力は落としたくないので、チャージ時間を長くして威力も上げようかと考え中です。残弾制だと調整は楽なんですが、やりたくはないです。
▲ロケットは高威力で、着弾後の爆発にも攻撃判定が発生する
──近距離攻撃で敵を倒すと回復アイテムが出現するシステムは面白いと思いました。
ネコ忍者コア:遠距離攻撃がメイン武器なので、近距離攻撃の意味を持たせる意味もあって入れました。主人公がネコモチーフのキャラだと、やはりひっかき攻撃は必須。なので、近距離攻撃自体を外すわけにはいきませんでした。実家の猫にもネコパンチされまくってますし(笑)。近距離攻撃の威力はそこまで高くないのですが、攻撃力が上がる代わりに隙も大きくなるといったカスタマイズができるようにしたいとも思っています。
▲ショットボタンと同じボタンで近接攻撃を放てる
──最新版の映像を拝見しましたが、スコアアップアイテムがジャラジャラと出なくなっていました。
ネコ忍者コア:最新版手前くらいのバージョンではジャラジャラ出るようにしていたのですが、アイテム回収が面倒でテンポを悪くさせていると思い、最新版ではこの要素を削除しました。より軽快に遊んでもらうための策ですね。
──本作に関して印象的なエピソードはありますか。
ネコ忍者コア:6月にオンライン上で開催されたインディーゲームイベント「BitSummit」に、本作を出展したことが思い出深いです。2日間、各日3時間半ずつ生配信することになったのですが、3時間半という長さをなめていました。PVを再生している間しか休めないうえ、用意したPVは非常に短かったのです。そのため、ほぼ休みなしで本作を紹介し続けたのがキツかった……。初日が終わるころには背中・腰がバキバキになってしまいました。
2日目は初日の反省を生かして、PVに設定資料イラストなどを追加して再生時間を延長し、休める時間を増やす対策を施しました。オンラインイベントならではの注意点があるのだなと、文字通り身に染みて味わいました。
──ネコ忍者コアさんはオフラインイベントとオンラインイベントのどちらも出展経験があります。それぞれの感想や違いを教えてください。
ネコ忍者コア:オフラインイベントだと、試遊していただく様子を見られるのが気に入ってます。出展中はほぼ移動できませんが、他の方の出展内容とかステージイベントはチラッと見えたり漏れ聞こえたりするので、あの独特なお祭り感を存分に楽しめるのも良いですね。
オンラインイベントは、住んでいる場所に関係なく誰でも参加できる間口の広さがあるのと、参加者のメッセージのログが残るのは良い点。ただ、実際に触っている様子は見られないのと、他に出展した方の配信などは見づらいです。自宅という狭い空間から配信しているので、お祭り感を味わえないと言いますか、少々寂しく感じます。僕としては、オフラインイベントのほうが好み。とくに、手弁当感があってインディー魂を感じる「megabitconvention」が大好きです。
▲megabitconventionでの様子
──話がずれてしまってすみません。本作の話に戻りまして、完成度は現状どの程度でしょうか。
ネコ忍者コア:本格的に開発をはじめてから1年半ほど経っていて、今は15パーセントくらい。まだまだ先は長いです。基本システムはできていますが、敵キャラの作りやステージのギミックはもっと練っていきたい。周回プレイも楽しめるようにしたいので、クリア後にステージの配置が変わる仕組みなども導入していきたいですね。
──リリースはいつごろを目指してますか?
ネコ忍者コア:2022年に出せたら100点です。ただ、時間に縛られずじっくり作り込みたいです。本作を作り終えたら休止期間を設けようと思っているくらい、すべてを注ぎ込んでいます。
──リリースするプラットフォームはSteamとNintendo Switchですか。
ネコ忍者コア:パブリッシャーさんのプラン次第ではPlayStation 4も考えています。
──そういえばパブリッシャーはマーベラスさんで考えているようですね?
ネコ忍者コア:Twitterで『ネコ人間ユージン』のスクリーンショットや動画をちょくちょく出しているんですが、それを見た複数のパブリッシャーさんから声がかかりました。なかでも担当者さんの熱意がすごかったという理由で、マーベラスさんと一緒にやれたらと思っています。 BitSummitでの展示もその方からの提案です。イベント中は担当者さんと一緒に配信してもらうなどしていただいたので助かりました。
──本作の目標を教えてください。
ネコ忍者コア:夢はでっかく10万本セールスですね! それと目指せアニメ化! トリガーに作ってほしいです。
ネコ忍者コア:なぁなぁの関係よりは、競い合っていく仲でありたいです。
──ライバル視している方はいますか。
ネコ忍者コア:いっぱいいますね! まず挙げたいのは『Graze Counter』の「ねこび」さん。『常世ノ塔』開発中のさえばしさんは、デザイナーぢからが強いです。あとは、『Dezatopia』の「HEY」さんと、『グランドクロス・リノベーション』の「RAYNEX」さんもヤバいですね。
それと、甲殻類つながりで『カニノケンカ』の「ぬっそ」さん。一緒にご飯食べたときにカニへの激重感情を聞いてしまい、敵わないなと思い知らされました。『HellSinker.』の「TONNOR」さんと『デビルブレイド』の「シガタケ」さんもそうですね。しかし、この3人はすごすぎて「怖っ……近寄らんとこ……」とビビってしまう。他の方向性で立ち向かいたいです。
ライバルではなくリスペクトしているのが「ひもじ村」というWebサイトでフリーゲームを公開している「ウータ」さん。僕がゲームを作ろうと思えたのは、ウータさんのゲームをVectorで知ったからです。僕がゲーム開発者として活動しているのはウータさんのおかげと言っても過言ではありません。
──強敵だらけですね。気が早いかもしれませんが、今後どういった作品を手がけていきたいですか。
ネコ忍者コア:最初のほうで少し話しましたが、縦スクロールSTGは作りたいですね。温故知新ボンバー巻き込み準弾幕STGを。そしてアーケード稼働を目指したいです。
©ダイハードテイルズ出版局/デスモフモフ
©Fruitbat Factory, Ltd./デスモフモフ
©KADOKAWA CORPORATION/Ninj@ Entertainment/デスモフモフ
デスモフモフ
http://deathmofumofu.sakura.ne.jp/index.htm
デスモフモフ Twitter
https://twitter.com/deathmofumofu
デスモフモフ Fantia
https://fantia.jp/fanclubs/3718
ネコ忍者コア Twitter
https://twitter.com/nekoninja_core
ナツメドコーラ Twitter
https://twitter.com/nachuyama
『ネコ人間ユージン』
ジャンル:2D横スクロールバイオレンスアクションゲーム
発売日:2022年予定
プラットフォーム:Steam(Windows)、Nintendo Switch(PlayStation 4も検討中)
ゲームモード:ストーリーモード、スピードランモード(またはスコアアタックモードを予定)
プレイヤー数:1人
価格:未定
▲デスモフモフのロゴ(左側)とマスコットキャラの「ユージン」ちゃん(右側)
デスモフモフのメンバーは以下の通り(名前・担当・好きなゲームの順に記載)。
ネコ忍者コア:メイン開発/『斑鳩』
ナツメドコーラ:背景グラフィック(サポートメンバー)/『海腹川背』シリーズ
※7月初旬、ビデオ会議ツールを用いて取材。
※『ネコ人間ユージン』の画面は、すべて開発中のものです。
ネコ忍者コアのここが気になる
──ネコ忍者コアさんの作品は猫モチーフのキャラが多く、HNにも「ネコ」の字が。やっぱり猫が好き?ネコ忍者コア:はい。自宅にはいないのですが、実家で飼ってます。帰省時に何百枚か撮り貯めて、Twitterでじわじわと投稿しています。
▲実家で飼っている猫「寿司(黒ハチワレ)」「もも(キジ白)」「しょう(キジトラ)」
──一番好きなゲームタイトルは?
ネコ忍者コア:トレジャーさんの『斑鳩』です。STG(シューティングゲーム)に興味を持ちはじめたのも『斑鳩』がきっかけですね。見た目がすごく好みでシステムの完成度も高い点が気に入ってます。『斑鳩』がアーケードで出たときは高校生だったので、入り浸るお金がなくてそんなに遊べなかったのですが、Xbox 360に移植されてからは狂ったように遊んでいました。
▲ネコ忍者コアさんの『斑鳩』プレイ動画
──ネコ忍者コアさんはVTuber「緑黄色野菜マン」として動画を投稿していますが、経緯を教えてください。
ネコ忍者コア:VTuberとして初めて投稿したのは2018年ごろ。当時は3Dキャラを使ったVTuberのベビーブームが起こり、キャラになりきる方たちを見て「僕も冷やかしでやったろ!」と思い立ちました。ですが、僕はかわいい女の子の3Dモデルを作ったことがなく、手元にある3Dモデルは自作ゲーム『わくわくベジタブル』の主人公「緑黄色野菜マン」のみ。まぁこれでいいかと思い、それを使って投稿しました。
VTuberを名乗っていますがモーションはトラッキングで表現しているわけではなく、一定のアクションをループさせているだけでして。リアクションに合わせて動きに変化を付けることもしていません。完全に手抜きです(苦笑)。
▲野菜の化身「緑黄色野菜マン」を操り、障害物を避けながら落ちている野菜を集めてトラックの荷台に積み込む3Dアクションゲーム『わくわくベジタブル』
──VTuber活動は今も続けているのですか?
ネコ忍者コア:辞めると明言してはいませんし、再開しようと思えばできますね……。でも「VTuberやってる場合か??」と思っているので、優先順位は非常に低いです(笑)。
──主に一人で開発していますが、チームを組まない理由は?
ネコ忍者コア:何事も自分で決めたい、わがままなところがあるからですね。アセットなども使いたくないですし、できることならすべての素材を自分の手で作りたい。そうじゃなきゃ一人で作っている意味がないという強迫観念もちょっと感じています(笑)。
──本業は別にあるとのこと。日々どのくらいの時間をゲーム開発に当てているのでしょうか?
ネコ忍者コア:毎日絶対触るようにはしていますが時間は日によってまちまちで、長くて3時間、短いと5分くらい。3時間もやるともうへとへとになるので、あとの時間は遊んでリフレッシュしています。
自分の世界をゲームで表現したい
──ゲームを初めて作ったのはいつでしょうか。ネコ忍者コア:2001年で、僕が中学1、2年生のときだったかな。ダウンロードサイトのVectorでフリーゲームの存在を知り、同級生の間で面白いフリーゲームを遊ぶことが流行りまして。会社ではなく個人でもゲームが作れるんだと気づいて、コーディングなしでゲームが作れるツールのClick&Createをお年玉で買い、ゲーム開発をはじめました。
▲初めて作ったゲームは、巨大ヤマなめくじと戦うトップビューのアクションゲーム『なめくじパニック』
──使っている開発ツールはいろいろ変わっていると思います。歴代の使用ツールと、今のツールに落ち着いている理由を教えてください。
ネコ忍者コア:ゲーム作りをはじめてから数年は、Click&Createを使い続けていました。その後はMultimedia Fusion 2、Construct、DigitalLoca、DXライブラリも触ってみて、2012年以降はUnityをメインに使っています。現状、やりたいことはすべてUnityで実現できていて、他のツールに移る気はありません。他のツールは試しに触れるくらいはすると思います。
──ゲーム開発者としての活動歴は、2021年で20年を迎えることになります。そんなに長く開発し続けられるのはなぜでしょうか?
ネコ忍者コア:自分の世界を表現できることに魅力を感じているからですね。絵や文章よりももっと具体的に、解像度高く、自分の世界を表現できると僕は思っています。それと、若いころは自分が作ったゲームが雑誌に載ることや、その雑誌を片手に自慢したら同級生がそのことをものすごく喜んでくれたり、ゲームをほめてくれたりしたのがうれしかった。こういったことが、次のゲーム作りへのモチベーションにつながったのだと思います。
──作るゲームのジャンルは多岐にわたっており、グラフィックも2D・3Dともに手がけています。どういった基準で作ろうと思うのでしょうか。
ネコ忍者コア:キャラの操作がリアルタイムに連動し、攻撃・回避を楽しめるアクションゲームを作りたい思いはありますが、ジャンルに対するこだわりはないです。僕が遊んでいたセガサターンの初期あたりの作品は3D空間を自由に動けるゲームが多くて、操作できるだけでうれしかった。3D系のゲームは、あのころの楽しさを共有したいと思って作っています。
──縦スクロールSTGも好きだと思うのですが、1本しか作っていません。
ネコ忍者コア:ジャンルとしては縦スクロールSTGが一番好きで、何回かちょっと作ってみてはいるんです。でもそのたびに「これじゃなーい!!」と思って捨ててます(苦笑)。一番好きなジャンルだからこそ、こだわりが強くなってしまいますね……。自分の代表作は横スクロールSTGの『ネコネイビー』だと思っていますが、横スクロールSTGってそこまで好きなジャンルではありません。こだわりのないジャンルほど自分の中の指標が少ないからか、パッと作れてしまう傾向にあります(苦笑)。
▲残機がなくなるまで戦い続ける縦スクロールSTG『モクフォース』
──私が好きなゲームは2017年のFPS『淀屋橋お嬢様倶楽部』なのですが、作ることになったきっかけを教えてください。
ネコ忍者コア:1週間くらいでゲームを作るゲームジャムを自分の中で開催しまして、そのときに生まれました。荒いグラフィックで『DOOM』ライクなゲームを作ることは決めていましたが、おっさんがモンスターを倒してもありきたりかなと思って切り口を変えた結果、セレブ感を出すことに。なぜか人気で続編を希望する方が多く、ちょっと作ろうかなとも思ってます。
▲お嬢様になって、襲い来るお嬢様たちと戦うセレブFPS『淀屋橋お嬢様倶楽部』
──ゲーム開発者としてのターニングポイントはありますか。
ネコ忍者コア:2014年に公開された『急げ!ニンジャスレイヤー』です。それまでは「フリーゲームだし、詰めが甘くてもいいだろう」と思っていた節があり、インターフェースや細かな作りはなぁなぁになっていました。商業タイトルの本作を通じてそういった甘えが消え、プロ意識が芽生えたと思っています。
▲ニンジャスレイヤーがクローンヤクザやニンジャの襲撃をかわしながら、ナンシー=サンを助けるミニゲーム『急げ!ニンジャスレイヤー』
ゴウランガ! ニンジャヘッズの手から生まれた作品たち
──2014年、ニンジャスレイヤーの公式サイトで『急げ!ニンジャスレイヤー』『逃げろレオパルド』の2作品が公開されました。この経緯を伺いたいです。ネコ忍者コア:僕がニンジャヘッズ(※)で、2013年に制作したニンジャスレイヤーの二次創作ゲーム『バリキジャンプ』が人気になりました。それをきっかけにカドカワさんから「ニンジャスレイヤーのPR用にゲームを作りませんか」とメールが飛んできたので、そのまま引き受けました。
(※)ニンジャヘッズ:ニンジャスレイヤーの読者・ファンを指す用語。ヘッズとも。
▲第二部「シー・ノー・イーヴル・ニンジャ」に登場するニンジャ「クラミドサウルス」が爆発四散するミニゲーム『バリキジャンプ』
──ニンジャスレイヤーつながりでいうと、2018年にはSteamでリリースされた『AREA 4643』も手がけています。
ネコ忍者コア:ニンジャスレイヤーつながりではありますが、仕事がもらえたのはたまたまです。Twitterで仕事を募集したら、ダイハードテイルズさん(※)から声がかかりまして。
(※)ダイハードテイルズ:クリエイターユニット。ニンジャスレイヤーの日本語訳を担当している
▲トップビュースタイルのアクション『AREA 4643』
──『AREA 4643』をトップビュースタイルのアクションにした理由は?
ネコ忍者コア:ダイハードテイルズさんと話し合って、1作目は手間をかけずにリリースしようとまとまりました。横スクロールとかベルトアクションだと描画カロリーが高いので、1方向分だけキャラを描き、それを360度回転させるだけで済むトップビューを選びました。ダイハードテイルズさんは『Hotline Miami(ホットラインマイアミ)』が大好きで、あのアトモスフィアを希望していたのもあります。僕も『Hotline Miami』にニンジャスレイヤーめいたものを感じ、良いジャンルを選べたと思っています。
──ダイハードテイルズさんという第三者の方とともに作った作品ですが、開発でやりづらさなどは感じましたか。
ネコ忍者コア:丸投げしてもらったので、基本的にはやりやすかったです。「ドールハウス」のキャラデザにこだわりがあったみたいで、これだけは何度も修正依頼がきたのが印象深かったかな(苦笑)。
といっても、一人で作るよりは制限は当然かかります。たとえば、先方の指定があったボスキャラはニンジャスレイヤー内では強すぎて「これを倒してしまっていいのか?」と悩みも生まれました。また、ゲームとしてはボスはデカいほうが映えるのですが、指定されたキャラが人間サイズなので、迫力の出し方でも試行錯誤しました。
▲ダイハードテイルズさんこだわりの「ドールハウス」。カワイイヤッター!
──ニンジャヘッズなネコ忍者コアさんならではの悩みですね。『AREA 4643』は「日本語がフルサポートされていないように思える」という理由でValveの審査に引っかかったのが思い出深いです。
ネコ忍者コア:僕もダイハードテイルズさんも想定していなかった、完璧なアンブッシュでした。まぁ、ニンジャスレイヤーらしいと言えるかもしれません。ダイハードテイルズの皆さんは「持ってる」と思わせてくれました(笑)。
▲独特な言葉遣いがValveの担当者を困惑させた可能性
──審査が通らなかったため、リリース初期は日本語非対応としてリリースしました。しかし、その後いつの間にか日本語がフルサポート表示されていました。
ネコ忍者コア:Steamの管理ページで日本語をフルサポートしていることを表示するボタンを見つけ、「よくわからんけど押せるんだから押してみようぜ!」とノリでやってみたらそうなりました。怒られたら戻そうと思ってるんですが、今のところ何も言われていません。
『ネコネイビー』のポイントと苦労を振り返る
──ネコ忍者コアさんといえば、横スクロールSTG『ネコネイビー』が代表作と言えます。こだわったポイントを教えてください。ネコ忍者コア:STGで起こりがちなストレスを、できるだけ軽減しようと思って作りました。自機をせっかく強化したのに死んだら初期化とか、敵の弾とアイテムの区別が付きづらいとか、そういう類いの要素ですね。とくに、僕はボムの抱え落ち(※)が本当に嫌いなので、ボムを使いまくれるシステムにしてそのイライラを減らそうと心がけました。難易度で突き放すようなこともしなかったため、STG初心者でも遊びやすい作りになっていると思います。
(※)抱え落ち:ボムのストックが残っている状態で死んでしまうこと。復活時にボムが持ち越されることは基本的にないので、とてももったいない
▲『ネコネイビー』のPV
──かわいらしいキャラや、ストーリーがあるようでない設定も魅力ですね。
ネコ忍者コア:グラフィックはキャッチーなテイストにしつつ、世界観は荒唐無稽になるようを目指しました。ストーリーを感じさせないことで、プレイヤーを振り回したかったのです。3面のボスなんかは、『バトルガレッガ』の「マッドボール」みたいなのを出す予定だったんですが、パンチが足りないと思って描き直したこともありました。
▲パンチの効いた3面のボス
──販売本数はどのくらいでしょうか。また、今回初めて有料という形式を採っていますが、本数に対してどう思ってますか。
ネコ忍者コア:Steam版は約4000本で、Nintendo Switch版は5000本くらい売れました。販売本数は、現在のシューターの人口を考えると妥当だと思います。
──パブリッシャーに「Fruitbat Factory」さんを選んだ理由を教えてください。
ネコ忍者コア:Greenlight(※)で出すまでは全部自分でやったのですが、その後の具体的な行動をまったく考えてなかった……(苦笑)。どうしようかと悩んでいたら、たまたまFruitbat Factoryさんからお誘いの連絡が入りまして。当時はまったく伝手もなかったので、その後はすべてお任せしました。
(※)Greenlight:開発者やパブリッシャーがリリースしたいゲームの情報を投稿し、Steamユーザーはその情報を元に投票したり、開発者たちと意見交換したりする。投票数や意見などを参考にして、正式にリリースするかどうかが決まるシステム。現在は廃止されている。
▲Nintendo Switch『ネコネイビー -デイドリーム・エディション-』
──Fruitbat Factoryさんは具体的に何をしてくれたのですか。
ネコ忍者コア:プロジェクトファイルをFruitbat Factoryさんに渡したら、翻訳やSteam対応だけでなく、Nintendo Switchへの対応とチューニングまで、本当にいろいろとサポートしてくれました。本来ならこちらがやるべきこともあったと思いますが、全部やってくれましたね。
──至れり尽くせりなサポートですね。
ネコ忍者コア:すべてお任せできたので助かりました。Nintendo Switch対応時に、タイトルロゴやメニュー、アニメーションもFruitbat Factoryさんに追加してもらったのですが、そのことはリリース後に知ってびっくりしましたね。ちょっとリリース前に見せてほしかったなと(苦笑)。
『ネコ人間ユージン』ですべてを出し切る
──開発中タイトルの『ネコ人間ユージン』について、簡単な紹介とポイントをお聞かせください。ネコ忍者コア:かわいいネコミミ少女「ユージン」が、血と肉片の雨を降らせる2D横スクロールバイオレンスアクションゲームです。「グリグリ動く多関節のデカいキャラ」「ハイテンポな進行」「人外少女」を存分に味わえることをコンセプトに開発しています。
▲武器を切り替えながら敵をなぎ倒す2D横スクロールアクション『ネコ人間ユージン』のPV
──Discordで『ネコ人間ユージン』開発用のサーバーを立てており、そこでは公用語を「お嬢様言葉」にしたと聞きました。
ネコ忍者コア:ナツメドコーラと僕、外注を依頼している音楽担当の方で使っているサーバーですね。ナツメドコーラとは仲が良いのでDiscord上でもフランクに話していますが、音楽担当の方はシャイでいつも敬語。気を遣わせてしまっているのが心苦しくて、試しにサーバー内での公用語をお嬢様言葉にしてみました。
導入してからは気を遣わない和やかな雰囲気になったのですが、お嬢様言葉ってスッと出てこないので書くのに時間がかかるのが難点です。その反面、「○○が入力中……」と長い時間表示されていても緊張せず「お嬢様言葉考えるのムズいよね……」と同情しながら見守れるのは良いですね。まぁ、やっぱり書くのが面倒なので没になるかもしれないですが(笑)。
▲お嬢様しかいないDiscordサーバー
──本作の構想はいつから考えていたのでしょうか?
ネコ忍者コア:大学在学時から構想はあり、当時からプロトタイプを作り続けていました。最初はトップビューのSTGにしようと思ってたんですが、それだとキャラのデザインが映えないと気づいてから、サイドビューに落ち着きました。
──多関節キャラのどこに魅力を感じていますか。
ネコ忍者コア:パーツ破壊できる点はもちろんのこと、画面を埋めつくすようなデカい敵がグリグリ動かして、威圧感を出したい。ボスだけでなく、中ボスなど隙あらば多関節キャラを入れていきたいです。『ガンスターヒーローズ』のボス「セブンフォース」が原体験です。
▲多関節キャラ「えびタンク」
──敵勢力は甲殻類「カニソルジャー」。なんでカニなんですか……?
ネコ忍者コア:カクカクしたワルっぽくてカッコいいフォルムが好きなので! 韮沢 靖さんや『ガメラ2 レギオン襲来』の影響も受けているかも。まぁ、モンスターのデザインって甲殻類デザインモチーフものが多いですし、きっと一般的なアイデアですよ!
──カニ姫さまこと「シルヴィア」ちゃんがかわいいです。かわいさはどうやって表現しているのでしょうか。
ネコ忍者コア:打算などは考えず、己の性癖に正直に従ったらああなりました。自分の中にいるSF警察が「魔界から襲来した生命体が日本語を流暢にしゃべるんじゃない!」「甲殻類の癖になんで人型なんだ!」とか罵ってくるんですが、理屈っぽく考えるよりは自分の好きなものを詰め込んだほうが面白いので、罵りは受け流しています。
▲シルヴィアちゃんの魅力が詰まった1枚絵
──ネコ忍者コアさんの作品では、かわいいキャラも容赦なくバラバラになって死にますよね。
ネコ忍者コア:敵味方関係なく、キャラが粉々・バラバラに四散する様子を見ると妙な高揚感を覚えます。子どものころに見た映画の影響が大きい気はしています。『ロボコップ』とか。とくに『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』は、僕にとって劇薬でした。
──ユージンちゃんが死ぬと「死」の文字が表示される演出は、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』のリスペクトでしょうか。
ネコ忍者コア:『わくわくベジタブル』でも使った演出で、どちらもファミコンの『月風魔伝』をリスペクトしています。『月風魔伝』は、主人公が穴に落ちて死ぬと画面上部から「死」の文字が降ってくる。これが大変シュールで気に入っており、採用しています。
▲『わくわくベジタブル』の「死」(左側)と『ネコ人間ユージン』の「死」(右側)
──2D横スクロールアクションでありながら、STGの弾幕要素を組み合わせているように見えます。
ネコ忍者コア:弾幕は意識していたわけではなく、もはや僕の癖ですね……。近距離攻撃よりは撃つほうに重きを置いて、STG寄りの作りにしたいとは思っていて、フリーエイムのシステムも組み込んでいます。
──武器のロケットの使い勝手が良く、強すぎる印象です。
ネコ忍者コア:いやー強すぎましたね(笑)。威力は落としたくないので、チャージ時間を長くして威力も上げようかと考え中です。残弾制だと調整は楽なんですが、やりたくはないです。
▲ロケットは高威力で、着弾後の爆発にも攻撃判定が発生する
──近距離攻撃で敵を倒すと回復アイテムが出現するシステムは面白いと思いました。
ネコ忍者コア:遠距離攻撃がメイン武器なので、近距離攻撃の意味を持たせる意味もあって入れました。主人公がネコモチーフのキャラだと、やはりひっかき攻撃は必須。なので、近距離攻撃自体を外すわけにはいきませんでした。実家の猫にもネコパンチされまくってますし(笑)。近距離攻撃の威力はそこまで高くないのですが、攻撃力が上がる代わりに隙も大きくなるといったカスタマイズができるようにしたいとも思っています。
▲ショットボタンと同じボタンで近接攻撃を放てる
──最新版の映像を拝見しましたが、スコアアップアイテムがジャラジャラと出なくなっていました。
ネコ忍者コア:最新版手前くらいのバージョンではジャラジャラ出るようにしていたのですが、アイテム回収が面倒でテンポを悪くさせていると思い、最新版ではこの要素を削除しました。より軽快に遊んでもらうための策ですね。
──本作に関して印象的なエピソードはありますか。
ネコ忍者コア:6月にオンライン上で開催されたインディーゲームイベント「BitSummit」に、本作を出展したことが思い出深いです。2日間、各日3時間半ずつ生配信することになったのですが、3時間半という長さをなめていました。PVを再生している間しか休めないうえ、用意したPVは非常に短かったのです。そのため、ほぼ休みなしで本作を紹介し続けたのがキツかった……。初日が終わるころには背中・腰がバキバキになってしまいました。
2日目は初日の反省を生かして、PVに設定資料イラストなどを追加して再生時間を延長し、休める時間を増やす対策を施しました。オンラインイベントならではの注意点があるのだなと、文字通り身に染みて味わいました。
──ネコ忍者コアさんはオフラインイベントとオンラインイベントのどちらも出展経験があります。それぞれの感想や違いを教えてください。
ネコ忍者コア:オフラインイベントだと、試遊していただく様子を見られるのが気に入ってます。出展中はほぼ移動できませんが、他の方の出展内容とかステージイベントはチラッと見えたり漏れ聞こえたりするので、あの独特なお祭り感を存分に楽しめるのも良いですね。
オンラインイベントは、住んでいる場所に関係なく誰でも参加できる間口の広さがあるのと、参加者のメッセージのログが残るのは良い点。ただ、実際に触っている様子は見られないのと、他に出展した方の配信などは見づらいです。自宅という狭い空間から配信しているので、お祭り感を味わえないと言いますか、少々寂しく感じます。僕としては、オフラインイベントのほうが好み。とくに、手弁当感があってインディー魂を感じる「megabitconvention」が大好きです。
▲megabitconventionでの様子
──話がずれてしまってすみません。本作の話に戻りまして、完成度は現状どの程度でしょうか。
ネコ忍者コア:本格的に開発をはじめてから1年半ほど経っていて、今は15パーセントくらい。まだまだ先は長いです。基本システムはできていますが、敵キャラの作りやステージのギミックはもっと練っていきたい。周回プレイも楽しめるようにしたいので、クリア後にステージの配置が変わる仕組みなども導入していきたいですね。
──リリースはいつごろを目指してますか?
ネコ忍者コア:2022年に出せたら100点です。ただ、時間に縛られずじっくり作り込みたいです。本作を作り終えたら休止期間を設けようと思っているくらい、すべてを注ぎ込んでいます。
──リリースするプラットフォームはSteamとNintendo Switchですか。
ネコ忍者コア:パブリッシャーさんのプラン次第ではPlayStation 4も考えています。
──そういえばパブリッシャーはマーベラスさんで考えているようですね?
ネコ忍者コア:Twitterで『ネコ人間ユージン』のスクリーンショットや動画をちょくちょく出しているんですが、それを見た複数のパブリッシャーさんから声がかかりました。なかでも担当者さんの熱意がすごかったという理由で、マーベラスさんと一緒にやれたらと思っています。 BitSummitでの展示もその方からの提案です。イベント中は担当者さんと一緒に配信してもらうなどしていただいたので助かりました。
──本作の目標を教えてください。
ネコ忍者コア:夢はでっかく10万本セールスですね! それと目指せアニメ化! トリガーに作ってほしいです。
まとめ
──同じインディーゲーム開発者さんとどういう関係を築きたいですか。ネコ忍者コア:なぁなぁの関係よりは、競い合っていく仲でありたいです。
──ライバル視している方はいますか。
ネコ忍者コア:いっぱいいますね! まず挙げたいのは『Graze Counter』の「ねこび」さん。『常世ノ塔』開発中のさえばしさんは、デザイナーぢからが強いです。あとは、『Dezatopia』の「HEY」さんと、『グランドクロス・リノベーション』の「RAYNEX」さんもヤバいですね。
それと、甲殻類つながりで『カニノケンカ』の「ぬっそ」さん。一緒にご飯食べたときにカニへの激重感情を聞いてしまい、敵わないなと思い知らされました。『HellSinker.』の「TONNOR」さんと『デビルブレイド』の「シガタケ」さんもそうですね。しかし、この3人はすごすぎて「怖っ……近寄らんとこ……」とビビってしまう。他の方向性で立ち向かいたいです。
ライバルではなくリスペクトしているのが「ひもじ村」というWebサイトでフリーゲームを公開している「ウータ」さん。僕がゲームを作ろうと思えたのは、ウータさんのゲームをVectorで知ったからです。僕がゲーム開発者として活動しているのはウータさんのおかげと言っても過言ではありません。
──強敵だらけですね。気が早いかもしれませんが、今後どういった作品を手がけていきたいですか。
ネコ忍者コア:最初のほうで少し話しましたが、縦スクロールSTGは作りたいですね。温故知新ボンバー巻き込み準弾幕STGを。そしてアーケード稼働を目指したいです。
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『ネコ人間ユージン』
ジャンル:2D横スクロールバイオレンスアクションゲーム
発売日:2022年予定
プラットフォーム:Steam(Windows)、Nintendo Switch(PlayStation 4も検討中)
ゲームモード:ストーリーモード、スピードランモード(またはスコアアタックモードを予定)
プレイヤー数:1人
価格:未定
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