CULTURE PCゲームカルチャーに関する情報満載!
ALIENWAREとワタシ(1):『LET IT DIE』の開発環境はALIENWARE一色! 完成までの道のりとこれからの展望を開発・運営のキーマンに聞いた
グラスホッパー・マニファクチュアとガンホー・オンライン・エンターテイメントのタッグが北米・欧州にて2016年12月より、日本・アジアにて2017年2月よりサービスを開始したPlayStation®4(以下、PS4®)専用サバイバルアクションゲーム『LET IT DIE』。フリー・トゥ・プレイ(※)でハック・アンド・スラッシュ(ハクスラ)でローグライクという欲張った要素、そして過激な表現のアクションゲームとしてコアなゲーマーを中心に話題を呼んでいる本作だが、その開発はALIENWAREで行われたのだという。
今回は、グラスホッパー・マニファクチュアの開発の中心スタッフへのインタビューにて、ALIENWARE導入の理由と、本作のこれまでとこれからをじっくりと聞いてみた。
※海外では基本無料だが、CEROレーティングはZ(18歳以上対象)のため、日本では年齢認証のクレジット決済(108円)が必要
松崎昇氏(以下、松崎): Unreal Engineでのゲーム開発を数本経験して、それは比較的PCのパワーを使う開発環境ということが分かっていました。2013年に『LET IT DIE』をガンホー・オンライン・エンターテイメントと組んで開発するとなったときに、まずはその開発環境面でのボトルネックを解消することにしました。やはりPCの性能いかんで開発時間は大きく変わりますので。
当初は3DCG向けのビデオカードQuadroをデザインチームに導入したのですが、数十人単位で行う現在の開発ではコスト面で厳しい。そこで当時一番パワーのあったコンシューマー向けビデオカード、GeForce GTX680をベースに考えようとなったのですが、その時点で購入先の選択肢がかなり限られてしまう。
石川周志氏(以下、石川):開発現場は長時間PCを動かすことになるので、トラブルが発生したときのサポートの問題もある。実質、2択程度しかなかったですね。企業だとPCはレンタルやリースをするのが一般的ですが、『LET IT DIE』の開発当初の時代には、そこまでのスペックのマシンだとレンタルはなく、購入するしかなかったんです。
松崎:次がストレージ速度の問題でした。当時はまだSSDが一般的ではなく、RAIDを組めて、メモリも潤沢に搭載できるALIENWAREは適切だったので、導入を決めました。
――では、開発スタッフの全員がALIENWAREを使われている?
石川:そうです。事務員以外はすべてALIENWAREで、4~50台は稼働しています。スペックが追いつかなくなったりスタッフの増員があるたびに買い足していて、現在では“王蟲 (オーム)”形の「ALIENWARE Aurora」と三角の「ALIENWARE Area-51」がそれぞれ2世代分稼働しています。
――実際に導入されていかがでしたか?
松崎:スペックに関してはなにも不満はありませんでした。僕自身PCは自作派なのですが、使ってみて一番差があるなと思ったのは、本体の「音」の部分なんです。起動時こそファンの音が聞こえてきますけど、一度立ち上がってしまえば、高負荷になっても水冷のおかげなのかすごく静かなんですよ。
それと、石川も言っていたように開発を長く続けていると、高負荷で使うことも多いので、どうしても不具合が出ます。ですが、サポートに電話をすると、翌日の午前中には直してくれる。開発が止まるロスが最小限ですむのは、ALIENWAREならではだと感じました。
山岡晃氏(以下、山岡):(唐突に)僕ねぇ、個人的にほしいんですよ。会社でずっと使っていて慣れていることもあって、家でも同じ環境にしたいなと。音周りだとグラフィックはそこそこでいいので、ストレージやメモリをバーンと載せてね。
石川:同感です。一家に一台ほしいです。
――ALIENWAREを使ったことでのメリットを感じた点はありましたか?
石川:一番いいのはサポートでした。スペック面でもバランスがいい。ほかのメーカーさんでもUnreal Engineで開発するんでしたら、ALIENWAREがいいですよ。開発用PCって3~4年周期で入れ替えるものなんですけど、大きなトラブルもなくちゃんと持ってくれてます。開発者目線でいうと、安定性やサポートを含めると長寿命な部類ですね。
松崎:『LET IT DIE』は開発期間が長かった分だけ、ALIENWAREでも速度面……、とくにストレージに不満が生まれることもあったのですが、価格がこなれてきたSSDが何の問題もなく追加できて、そこでもありがたさを感じましたね。
ただ、筐体デザインの問題で、本体の上にモノが置きづらいのだけはどうにかならないかなって。開発スペースは限られているので、上に物が置けないのが辛いです(笑)。
石川:フリー・トゥ・プレイでPS4®専用のガチなアクションゲームで、長く遊んでもらえる位置づけで運営しています。PS4®の中では珍しく運営型のゲームで、ゼロから運営型でこんなにしっかり作ったゲームってほぼないと思っています。世界的にも注目されてダウンロード数はもうすぐ400万に達しようというところです。ユーザーの認知度はじわじわあがっているのではと思っています。
――フリー・トゥ・プレイでPS4®専用、というのは珍しいですよね。
石川:ちょっと頭がおかしいんじゃないかとか言われますけどね(笑)。欧米のメディアからも「なんでSteamじゃないの」ってよく聞かれます。
――どんな狙いがあって家庭用機のみとしたのでしょう?
石川:コンシューマーでフリー・トゥ・プレイでアクションゲームで勝負したい!というのが出発点にありました。市場的にこれまであまりなかった場所なので、ガンホー、そしてグラスホッパー・マニファクチュアでチャレンジしよう、というところから開発に入っていきました。そもそも開発に着手したのはPS3®の時代で、いろいろとあってPS4®になりました。
――ちなみに、PC版の予定はないのでしょうか?
石川:話が上がったり上がらなかったりはしていますが、現時点では具体的に言えることはありません。ユーザー要望はありますし、Steamとの親和性は高いでしょうけど、なにぶん運営型のゲームなので、それを含めてどうするかの判断がありますから。
――想定プレイヤー層としてはコアなゲーマー?
石川:そうです。そもそも『LET IT DIE』のサービス開始に向けて開発を行なっていたころは、PS4®を持っている人自体がゲームに対する興味が深い人であった。それに北米を中心とした海外に売っていきたいという考えがあったので、ちゃんとPS4®をアクティブに動かしている層、つまりガチゲーマーに近いところにフィットしたいなと。
アクションとしても難しい設定になっていて、誰でもウェルカム感はありません。サービス開始当初は難しすぎてユーザーさんに混乱があったくらいなんですけど(笑)。といった具合に、ゲーマーに対するチャレンジ的な投げかけはあります。
――プレイして受けた印象は、プレイヤーを突き放した感じといいアーケードゲームっぽいのかなと。
石川:PCゲームやアーケードゲームっぽく、良くも悪くも「みんなわかるでしょ?」みたいな(笑)。親切にアレもコレも手を引いてしまうと、やらされている感を感じてしまう。“自分たちが知っている感”があったほうがモチベーション的にもいいんじゃないかと。
――運営型のゲームとしてはユーザーの声を拾うことも重要でしょうが、“突き放し”とどうバランスを取っているのでしょう。
石川:ユーザーの声はかなり拾って一喜一憂しています。こちらの設計上でめんどくさくなってしまった部分については、全部解消してきています。最初から遊んでくれたユーザーには申し訳ないんですが、今はかなり遊びやすくなっているはずです。ただ、「ゲームが難しい、たいへんだ」という声に関してはスルーしています。
石川:そうですね、なかったです(笑)。でも、ソートに関しては実装後、不思議なことに「なくてもよかった」という声もあったんです。
本作はハクスラですから、自分で集めたものをちゃんと確認してほしい。それがボタンひとつでシュッと整理されてしまうと持ち物の確認が薄れるのではないか?と。他のハクスラゲームでもクリア時にアイテムを入手する際にひとつひとつ確認する方法をとっているじゃないですか。ゲームをやっている人が自分で確認していく手触りは重視しています。
――そもそもアクション、ハクスラ、ローグライクといったゲームを構成する要素はどのような形で作られていったのでしょうか?
石川:前身である『リリィ・ベルガモ』の企画段階からアクションでハクスラなのは固まっていて、そこに運営型のフリー・トゥ・プレイで繰り返し遊べる要素を加えていくことになりました。あとはどういったものがゲームに適しているかを考えていく中で、ゲームの舞台を塔にして日によって変わっていく形を取れば何度も遊んでもらえるだろう、と。
――オンラインであることは最初から決まっていたんですか?
石川:そうですね。ですが、オンラインゲームってチャットが必需品で、ほかのプレイヤーとコミュニケーションを取らないといけないというのが「ウザくていやだ!」という意識があって。もっと自由にゲームを遊びたいということで、非同期でのオンラインという形としました。
――東京デスメトロやヘイターがその形ですね。
石川:自分以外のプレイヤーがどこかでプレイをしている感覚はほしいけど、それに束縛はされたくない。ゲームのプレイ時間も、一度塔に入ったら1時間程度で戻れる設定にしています。最初は30分程度のつもりだったのですが、ゲームを進めることで1プレイのサイクルも長くなります。
――リリース後のユーザーからの反響は?
石川:こちらの予想以上に好き嫌いが分かれましたね。ものすごくコアな部分まで突っ込んですごく楽しんでくれる人もいれば、アクションの難しさから離れてしまう人もいる。総じて、10階を超えたユーザーの定着率はすごく高いので、こちらの狙いはちゃんと届いたのかなと。
――海外からの反応は?
石川:メディアを含めて好反応です。課金を強いるゲームではなく、曲りなりにも“ペイ・トゥ・ウィン”(課金ユーザーが勝つゲームバランス)ではないところも認めてもらえているようです。
――アングラな世界観的への反応は?
石川:海外のほうがウケがいいですね。日本、北米、欧州の中では、ダントツに北米のダウンロード数が高いです。現状の300万ダウンロードのうち、かなりの数を北米が占めるほどです。こういう世界観になったのは、グラスホッパー、ガンホーをはじめ、シナリオを担当してくれたストーリーライダーズさんを含めたいろんな人の趣向が入っていくうちに、なんとなくいつものグラスホッパー・マニファクチュアなテイストに仕上がったのではないかと。
――ゲームオーバーにならないための序盤のコツをお聞かせください。
松崎:序盤は倒した敵から得られるアイテムを使いまわすことで、気持ちよく進める設計となっています。手触り感の違う武器がどんどん手に入るので、まずは自分にどんな武器が向いているかを試しながら進んでもらえれば、10階まではあっという間です。
石川:ゲーム全体の攻略法としては、1対1の状況を維持することです。開発中によく言っていたのは、「ヤンキーに絡まれたときに自分1人対敵2人まではどうにかなるけど、1対3になったら逃げるね」と。その選択肢をゲームで実現したかったんです。1対3の状況で戦うのは無謀ですから、その状態になるべくならないようにするのがコツです。
――たしかに死ぬときは多数の敵に囲まれた場合が多いです。では、ボス戦はいかがでしょう?
松崎:私がボス戦に挑むときに意識するのはキノコですね。挑むまえにキノコを食べて、防御力と攻撃力を上げる。中層階では、敵のスピードが遅くなるといった便利なキノコが出てくるので、ここぞというときに使うのが40階までの基本です。
山岡:大前提としては『LET IT DIE』というゲームをユーザーが遊んだときに、違和感を感じないようサウンドで力を出すことです。それと、ビデオゲームというメディアを借りながら、プレイヤーがそれまで知らなかった音楽を拡散する。『LET IT DIE』というゲームの中で鳴っている音楽が楽しい! と思わせられる複合的な面白い見せ方ができればなというのが最初にありました。
――そのひとつの結論が100を超えるバンドに『LET IT DIE』という楽曲を提供してもらうことですか。
山岡:ええ。これまでの外部の方とのコラボレーションというと、せいぜいオープニングやエンディングの楽曲を作ってもらう程度。知名度を利用したタイアップを否定するわけではないんですよ? 音楽を純粋にやっている方々が作ったサウンドが『LET IT DIE』というゲームに合わさったときに、ゲームを遊んでいる人が今までにない“遊びの触感”を体験できればいいな、というのが理由です。
――たしかにこれまでにない企画です。
山岡:100数十のバンドに『レットイットダイ』って同じ曲名で作ってもらってますからね。本当はリリースのタイミングを合わせて、オリコンのチャートがすべて『レットイットダイ』で埋められればよかったんですけど(笑)。
でも、世間を驚かせたいという意気込みはあります。ゲームの音楽っていうと世間一般には“ゲーム音楽”っていうジャンルを想像されると思うんですけど、それって逆で音楽をやっている人たちがたまたまゲームの仕事をやっている人たちだっただけの話なんです。そこに外部から純粋に音楽をやっている人たちが入ってきて、それがゲーム音楽と呼ばれてもいい。その流れを作りたかったというのはあります。
――ゲームというメディアから音楽を発信していきたい、と。
山岡:そうですね。『グランド・セフト・オート』シリーズもそんなことをしていますけど、それとは違ったアプローチで日本のコンポーザーを世界に発信していけるのは、役割としては面白いのかなと。
――バンドの方々には、制作時になにか注文はされたのでしょうか?
山岡:してないです。たとえば、これだけ世界中にゲームを遊ぶ人が増えた今なら、ひょっとしたらボス戦で気持ちを煽る“バトル曲”がイヤだという人もいるかもしれないし、音が鳴っていない方がいいという人がいるかもしれない。そこはお客さんを特定せず無料で始められるフリー・トゥ・プレイゲームだからできたことです。
松崎:開発を進めているときにも「いろんな曲調があって、それってゲームの世界観に合うの?」という議論がなされたことはありました。たしかに“ボス戦になったら曲が変わる”のはゲームの様式美ではあるけど、山岡は「そこを固めきる必要はないでしょ」と言ったのがすごく印象的で。
いざリリースしてみたらユーザーはすごく喜んでくれて、お気に入りの曲をSNSを使って拡散してくれたんです。こんないい曲があるという声がとても多く、トーンの統一にこだわらずともいいんだなと思わされました。
石川:とくに海外だと(音楽配信サービスの)Spotifyを聞きながらプレイしているユーザーがものすごく多いんですよ。最初のバージョンでは待合室でしかバンドの曲が流れない仕様だったんですけど、リリース後には「この曲をずっと聴いてたい」という声が多かったので、塔の中でも聴けるようにしました。濃いユーザーほど、ゲームの文化のあり方が、僕らが考えている固定概念からだいぶ変わってきているのかなと。それに、フリー・トゥ・プレイのゲームで100数十曲の音楽が聴けるって、それだけでお得ですよね(笑)。
――では最後に、このインタビューを機会に『LET IT DIE』に興味を持ってくれたゲーマーに向けてコメントをお願いします。
石川:フリー・トゥ・プレイですけどカジュアルさはなく、パッケージタイトルよりも長く遊べるタイトルです。しかもいわゆる課金ゲームとは一線を画していて、頑張れば無課金でもクリアまで遊べます。アクションゲームが好きな方は、ぜひ手にとって遊んでほしいです。日々進化して遊びがいが増えているゲームですので、AAAタイトルの合間にでも楽しんでもらえたらと思います。
松崎:運営が始まりまもなく1年ですが、ゲームの改善は日々行っています。一度プレイを始めたら、やめ時が見つけにくいゲームであると思っているので、そういう中毒性が好きな方はぜひプレイしてみてください。よりゲームが遊びやすく快適になっているので、一度離れてしまった方も戻ってきてくれたら。
山岡:開発を始めて3年以上、運営を始めて約1年が経過しています。その間のアップデートやユーザーの声も取り入れて、“1年かけて熟成されたゲーム”になっています。1周年を記念し『World of Tanks』とのコラボも実施予定ですし、これからも進化した『LET IT DIE』が続いていくことになります。フリー・トゥ・プレイでもあるのでぜひプレイしてみてください。
『LET IT DIE』基本情報
タイトル :LET IT DIE(レット イット ダイ)
ジャンル :サバイバルアクションゲーム
対応機種 :PlayStation®4
発売日:通常版 2017年2月2日(木)/パッケージ版 2017年3月9日(木)
価格:
通常版 108円
※価格分のデスメタル付き ※PlayStation®Storeにて販売
パッケージ版 6,900円(税別)
※デスメタルを含むお得なアイテム付き
※通常版、パッケージ版は同じゲーム内容です。
※別途ゲーム内課金あり。
オンライン:非同期型オンライン
CERO区分:Z(18才以上のみ対象)
公式サイト :http://letitdie.jp
発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
開発元:株式会社グラスホッパー・マニファクチュア
※「PlayStation」、「PS4」および「PS3」は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標です。
© GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
■関連リンク
グラスホッパー・マニファクチュア
http://www.grasshopper.co.jp/
『LET IT DIE』
http://letitdie.jp/
「100+BAND UNITE」
http://letitdie.jp/100band.html
ALIENWARE
http://alienware.jp
今回は、グラスホッパー・マニファクチュアの開発の中心スタッフへのインタビューにて、ALIENWARE導入の理由と、本作のこれまでとこれからをじっくりと聞いてみた。
※海外では基本無料だが、CEROレーティングはZ(18歳以上対象)のため、日本では年齢認証のクレジット決済(108円)が必要
▲グラスホッパー・マニファクチュアの開発スタッフ。左からサウンドディレクターの山岡晃氏、ライン・プロデューサーの松崎昇氏、プロデューサーの石川周志氏
開発環境がALIENWAREで揃えられた理由とは
――どうして開発環境にALIENWAREを導入しようと思ったのでしょうか?松崎昇氏(以下、松崎): Unreal Engineでのゲーム開発を数本経験して、それは比較的PCのパワーを使う開発環境ということが分かっていました。2013年に『LET IT DIE』をガンホー・オンライン・エンターテイメントと組んで開発するとなったときに、まずはその開発環境面でのボトルネックを解消することにしました。やはりPCの性能いかんで開発時間は大きく変わりますので。
当初は3DCG向けのビデオカードQuadroをデザインチームに導入したのですが、数十人単位で行う現在の開発ではコスト面で厳しい。そこで当時一番パワーのあったコンシューマー向けビデオカード、GeForce GTX680をベースに考えようとなったのですが、その時点で購入先の選択肢がかなり限られてしまう。
石川周志氏(以下、石川):開発現場は長時間PCを動かすことになるので、トラブルが発生したときのサポートの問題もある。実質、2択程度しかなかったですね。企業だとPCはレンタルやリースをするのが一般的ですが、『LET IT DIE』の開発当初の時代には、そこまでのスペックのマシンだとレンタルはなく、購入するしかなかったんです。
松崎:次がストレージ速度の問題でした。当時はまだSSDが一般的ではなく、RAIDを組めて、メモリも潤沢に搭載できるALIENWAREは適切だったので、導入を決めました。
――では、開発スタッフの全員がALIENWAREを使われている?
石川:そうです。事務員以外はすべてALIENWAREで、4~50台は稼働しています。スペックが追いつかなくなったりスタッフの増員があるたびに買い足していて、現在では“王蟲 (オーム)”形の「ALIENWARE Aurora」と三角の「ALIENWARE Area-51」がそれぞれ2世代分稼働しています。
▲デスクの下にはALIENWARが所狭しと並んでいる
――実際に導入されていかがでしたか?
松崎:スペックに関してはなにも不満はありませんでした。僕自身PCは自作派なのですが、使ってみて一番差があるなと思ったのは、本体の「音」の部分なんです。起動時こそファンの音が聞こえてきますけど、一度立ち上がってしまえば、高負荷になっても水冷のおかげなのかすごく静かなんですよ。
それと、石川も言っていたように開発を長く続けていると、高負荷で使うことも多いので、どうしても不具合が出ます。ですが、サポートに電話をすると、翌日の午前中には直してくれる。開発が止まるロスが最小限ですむのは、ALIENWAREならではだと感じました。
山岡晃氏(以下、山岡):(唐突に)僕ねぇ、個人的にほしいんですよ。会社でずっと使っていて慣れていることもあって、家でも同じ環境にしたいなと。音周りだとグラフィックはそこそこでいいので、ストレージやメモリをバーンと載せてね。
石川:同感です。一家に一台ほしいです。
▲PC用とPS4®用で1人につき2台のモニタが必要なため、開発フロアはご覧のような光景に
――ALIENWAREを使ったことでのメリットを感じた点はありましたか?
石川:一番いいのはサポートでした。スペック面でもバランスがいい。ほかのメーカーさんでもUnreal Engineで開発するんでしたら、ALIENWAREがいいですよ。開発用PCって3~4年周期で入れ替えるものなんですけど、大きなトラブルもなくちゃんと持ってくれてます。開発者目線でいうと、安定性やサポートを含めると長寿命な部類ですね。
松崎:『LET IT DIE』は開発期間が長かった分だけ、ALIENWAREでも速度面……、とくにストレージに不満が生まれることもあったのですが、価格がこなれてきたSSDが何の問題もなく追加できて、そこでもありがたさを感じましたね。
ただ、筐体デザインの問題で、本体の上にモノが置きづらいのだけはどうにかならないかなって。開発スペースは限られているので、上に物が置けないのが辛いです(笑)。
コアなゲーマーに響くコアなアクションゲームを目指して
――では、ALIENWAREで開発した『LET IT DIE』についてですが、こちらはどのようなゲームでしょう。石川:フリー・トゥ・プレイでPS4®専用のガチなアクションゲームで、長く遊んでもらえる位置づけで運営しています。PS4®の中では珍しく運営型のゲームで、ゼロから運営型でこんなにしっかり作ったゲームってほぼないと思っています。世界的にも注目されてダウンロード数はもうすぐ400万に達しようというところです。ユーザーの認知度はじわじわあがっているのではと思っています。
――フリー・トゥ・プレイでPS4®専用、というのは珍しいですよね。
石川:ちょっと頭がおかしいんじゃないかとか言われますけどね(笑)。欧米のメディアからも「なんでSteamじゃないの」ってよく聞かれます。
▲薄暗い不気味なダンジョンの中でアイテムを集めながら冒険。出現する敵には入手した武器で立ち向かおう
――どんな狙いがあって家庭用機のみとしたのでしょう?
石川:コンシューマーでフリー・トゥ・プレイでアクションゲームで勝負したい!というのが出発点にありました。市場的にこれまであまりなかった場所なので、ガンホー、そしてグラスホッパー・マニファクチュアでチャレンジしよう、というところから開発に入っていきました。そもそも開発に着手したのはPS3®の時代で、いろいろとあってPS4®になりました。
――ちなみに、PC版の予定はないのでしょうか?
石川:話が上がったり上がらなかったりはしていますが、現時点では具体的に言えることはありません。ユーザー要望はありますし、Steamとの親和性は高いでしょうけど、なにぶん運営型のゲームなので、それを含めてどうするかの判断がありますから。
――想定プレイヤー層としてはコアなゲーマー?
石川:そうです。そもそも『LET IT DIE』のサービス開始に向けて開発を行なっていたころは、PS4®を持っている人自体がゲームに対する興味が深い人であった。それに北米を中心とした海外に売っていきたいという考えがあったので、ちゃんとPS4®をアクティブに動かしている層、つまりガチゲーマーに近いところにフィットしたいなと。
アクションとしても難しい設定になっていて、誰でもウェルカム感はありません。サービス開始当初は難しすぎてユーザーさんに混乱があったくらいなんですけど(笑)。といった具合に、ゲーマーに対するチャレンジ的な投げかけはあります。
――プレイして受けた印象は、プレイヤーを突き放した感じといいアーケードゲームっぽいのかなと。
石川:PCゲームやアーケードゲームっぽく、良くも悪くも「みんなわかるでしょ?」みたいな(笑)。親切にアレもコレも手を引いてしまうと、やらされている感を感じてしまう。“自分たちが知っている感”があったほうがモチベーション的にもいいんじゃないかと。
――運営型のゲームとしてはユーザーの声を拾うことも重要でしょうが、“突き放し”とどうバランスを取っているのでしょう。
石川:ユーザーの声はかなり拾って一喜一憂しています。こちらの設計上でめんどくさくなってしまった部分については、全部解消してきています。最初から遊んでくれたユーザーには申し訳ないんですが、今はかなり遊びやすくなっているはずです。ただ、「ゲームが難しい、たいへんだ」という声に関してはスルーしています。
▲ゲームの舞台となるバルブの塔。ゲームの運営にあわせて現在も増殖を続けている
ゲームのコツは、1対1の状況を作ること
――サービス開始時にはアイテムのソートがなかったそうですね。石川:そうですね、なかったです(笑)。でも、ソートに関しては実装後、不思議なことに「なくてもよかった」という声もあったんです。
本作はハクスラですから、自分で集めたものをちゃんと確認してほしい。それがボタンひとつでシュッと整理されてしまうと持ち物の確認が薄れるのではないか?と。他のハクスラゲームでもクリア時にアイテムを入手する際にひとつひとつ確認する方法をとっているじゃないですか。ゲームをやっている人が自分で確認していく手触りは重視しています。
――そもそもアクション、ハクスラ、ローグライクといったゲームを構成する要素はどのような形で作られていったのでしょうか?
石川:前身である『リリィ・ベルガモ』の企画段階からアクションでハクスラなのは固まっていて、そこに運営型のフリー・トゥ・プレイで繰り返し遊べる要素を加えていくことになりました。あとはどういったものがゲームに適しているかを考えていく中で、ゲームの舞台を塔にして日によって変わっていく形を取れば何度も遊んでもらえるだろう、と。
――オンラインであることは最初から決まっていたんですか?
石川:そうですね。ですが、オンラインゲームってチャットが必需品で、ほかのプレイヤーとコミュニケーションを取らないといけないというのが「ウザくていやだ!」という意識があって。もっと自由にゲームを遊びたいということで、非同期でのオンラインという形としました。
――東京デスメトロやヘイターがその形ですね。
石川:自分以外のプレイヤーがどこかでプレイをしている感覚はほしいけど、それに束縛はされたくない。ゲームのプレイ時間も、一度塔に入ったら1時間程度で戻れる設定にしています。最初は30分程度のつもりだったのですが、ゲームを進めることで1プレイのサイクルも長くなります。
――リリース後のユーザーからの反響は?
石川:こちらの予想以上に好き嫌いが分かれましたね。ものすごくコアな部分まで突っ込んですごく楽しんでくれる人もいれば、アクションの難しさから離れてしまう人もいる。総じて、10階を超えたユーザーの定着率はすごく高いので、こちらの狙いはちゃんと届いたのかなと。
――海外からの反応は?
石川:メディアを含めて好反応です。課金を強いるゲームではなく、曲りなりにも“ペイ・トゥ・ウィン”(課金ユーザーが勝つゲームバランス)ではないところも認めてもらえているようです。
――アングラな世界観的への反応は?
石川:海外のほうがウケがいいですね。日本、北米、欧州の中では、ダントツに北米のダウンロード数が高いです。現状の300万ダウンロードのうち、かなりの数を北米が占めるほどです。こういう世界観になったのは、グラスホッパー、ガンホーをはじめ、シナリオを担当してくれたストーリーライダーズさんを含めたいろんな人の趣向が入っていくうちに、なんとなくいつものグラスホッパー・マニファクチュアなテイストに仕上がったのではないかと。
▲武器ごとに熟練度が設定され、使うほどに強力な攻撃が繰り出せるように。強力な一撃“ゴアティカル アタック”が決まればスカッと爽快!
――ゲームオーバーにならないための序盤のコツをお聞かせください。
松崎:序盤は倒した敵から得られるアイテムを使いまわすことで、気持ちよく進める設計となっています。手触り感の違う武器がどんどん手に入るので、まずは自分にどんな武器が向いているかを試しながら進んでもらえれば、10階まではあっという間です。
石川:ゲーム全体の攻略法としては、1対1の状況を維持することです。開発中によく言っていたのは、「ヤンキーに絡まれたときに自分1人対敵2人まではどうにかなるけど、1対3になったら逃げるね」と。その選択肢をゲームで実現したかったんです。1対3の状況で戦うのは無謀ですから、その状態になるべくならないようにするのがコツです。
――たしかに死ぬときは多数の敵に囲まれた場合が多いです。では、ボス戦はいかがでしょう?
松崎:私がボス戦に挑むときに意識するのはキノコですね。挑むまえにキノコを食べて、防御力と攻撃力を上げる。中層階では、敵のスピードが遅くなるといった便利なキノコが出てくるので、ここぞというときに使うのが40階までの基本です。
100曲以上の楽曲を100以上のバンドが作った
――サウンド面での狙い所は?山岡:大前提としては『LET IT DIE』というゲームをユーザーが遊んだときに、違和感を感じないようサウンドで力を出すことです。それと、ビデオゲームというメディアを借りながら、プレイヤーがそれまで知らなかった音楽を拡散する。『LET IT DIE』というゲームの中で鳴っている音楽が楽しい! と思わせられる複合的な面白い見せ方ができればなというのが最初にありました。
――そのひとつの結論が100を超えるバンドに『LET IT DIE』という楽曲を提供してもらうことですか。
山岡:ええ。これまでの外部の方とのコラボレーションというと、せいぜいオープニングやエンディングの楽曲を作ってもらう程度。知名度を利用したタイアップを否定するわけではないんですよ? 音楽を純粋にやっている方々が作ったサウンドが『LET IT DIE』というゲームに合わさったときに、ゲームを遊んでいる人が今までにない“遊びの触感”を体験できればいいな、というのが理由です。
――たしかにこれまでにない企画です。
山岡:100数十のバンドに『レットイットダイ』って同じ曲名で作ってもらってますからね。本当はリリースのタイミングを合わせて、オリコンのチャートがすべて『レットイットダイ』で埋められればよかったんですけど(笑)。
でも、世間を驚かせたいという意気込みはあります。ゲームの音楽っていうと世間一般には“ゲーム音楽”っていうジャンルを想像されると思うんですけど、それって逆で音楽をやっている人たちがたまたまゲームの仕事をやっている人たちだっただけの話なんです。そこに外部から純粋に音楽をやっている人たちが入ってきて、それがゲーム音楽と呼ばれてもいい。その流れを作りたかったというのはあります。
――ゲームというメディアから音楽を発信していきたい、と。
山岡:そうですね。『グランド・セフト・オート』シリーズもそんなことをしていますけど、それとは違ったアプローチで日本のコンポーザーを世界に発信していけるのは、役割としては面白いのかなと。
▲ゲーム中のBGMは収録曲から自由に選択できる。お気に入りの一曲がネットワークを通じて広まっていく仕掛けも
――バンドの方々には、制作時になにか注文はされたのでしょうか?
山岡:してないです。たとえば、これだけ世界中にゲームを遊ぶ人が増えた今なら、ひょっとしたらボス戦で気持ちを煽る“バトル曲”がイヤだという人もいるかもしれないし、音が鳴っていない方がいいという人がいるかもしれない。そこはお客さんを特定せず無料で始められるフリー・トゥ・プレイゲームだからできたことです。
松崎:開発を進めているときにも「いろんな曲調があって、それってゲームの世界観に合うの?」という議論がなされたことはありました。たしかに“ボス戦になったら曲が変わる”のはゲームの様式美ではあるけど、山岡は「そこを固めきる必要はないでしょ」と言ったのがすごく印象的で。
いざリリースしてみたらユーザーはすごく喜んでくれて、お気に入りの曲をSNSを使って拡散してくれたんです。こんないい曲があるという声がとても多く、トーンの統一にこだわらずともいいんだなと思わされました。
石川:とくに海外だと(音楽配信サービスの)Spotifyを聞きながらプレイしているユーザーがものすごく多いんですよ。最初のバージョンでは待合室でしかバンドの曲が流れない仕様だったんですけど、リリース後には「この曲をずっと聴いてたい」という声が多かったので、塔の中でも聴けるようにしました。濃いユーザーほど、ゲームの文化のあり方が、僕らが考えている固定概念からだいぶ変わってきているのかなと。それに、フリー・トゥ・プレイのゲームで100数十曲の音楽が聴けるって、それだけでお得ですよね(笑)。
――では最後に、このインタビューを機会に『LET IT DIE』に興味を持ってくれたゲーマーに向けてコメントをお願いします。
石川:フリー・トゥ・プレイですけどカジュアルさはなく、パッケージタイトルよりも長く遊べるタイトルです。しかもいわゆる課金ゲームとは一線を画していて、頑張れば無課金でもクリアまで遊べます。アクションゲームが好きな方は、ぜひ手にとって遊んでほしいです。日々進化して遊びがいが増えているゲームですので、AAAタイトルの合間にでも楽しんでもらえたらと思います。
松崎:運営が始まりまもなく1年ですが、ゲームの改善は日々行っています。一度プレイを始めたら、やめ時が見つけにくいゲームであると思っているので、そういう中毒性が好きな方はぜひプレイしてみてください。よりゲームが遊びやすく快適になっているので、一度離れてしまった方も戻ってきてくれたら。
山岡:開発を始めて3年以上、運営を始めて約1年が経過しています。その間のアップデートやユーザーの声も取り入れて、“1年かけて熟成されたゲーム”になっています。1周年を記念し『World of Tanks』とのコラボも実施予定ですし、これからも進化した『LET IT DIE』が続いていくことになります。フリー・トゥ・プレイでもあるのでぜひプレイしてみてください。
『LET IT DIE』基本情報
タイトル :LET IT DIE(レット イット ダイ)
ジャンル :サバイバルアクションゲーム
対応機種 :PlayStation®4
発売日:通常版 2017年2月2日(木)/パッケージ版 2017年3月9日(木)
価格:
通常版 108円
※価格分のデスメタル付き ※PlayStation®Storeにて販売
パッケージ版 6,900円(税別)
※デスメタルを含むお得なアイテム付き
※通常版、パッケージ版は同じゲーム内容です。
※別途ゲーム内課金あり。
オンライン:非同期型オンライン
CERO区分:Z(18才以上のみ対象)
公式サイト :http://letitdie.jp
発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
開発元:株式会社グラスホッパー・マニファクチュア
※「PlayStation」、「PS4」および「PS3」は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標です。
© GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
■関連リンク
グラスホッパー・マニファクチュア
http://www.grasshopper.co.jp/
『LET IT DIE』
http://letitdie.jp/
「100+BAND UNITE」
http://letitdie.jp/100band.html
ALIENWARE
http://alienware.jp
MEMBERS ONLY 独自視点の記事やお得なキャンペーン記事など配信
CULTURE RANKING カルチャーの人気記事ランキング!
-
「世界大会で1度はドン勝を獲りたい」【Crest Gaming Xanadu所属 Rio選手インタビュー】【シブゲーアーカイブ】
-
「ネスは人生のパートナー」『スマブラ』で1キャラにこだり続ける“Gackt”の競技者論・ストリーマー論【『スマブラSP』プロゲーマー ZETA DIVISION・Gackt選手インタビュー】
-
手の小さい女性に向けて、手の小さいプロゲーマーはつめのアケコンカスタマイズ【シブゲーアーカイブ】
-
『ストV』理論値最強? 物議を醸した"HitBox"、格ゲー大会のレギュレーションはどう順応していくべきか?【シブゲーアーカイブ】
-
ガチでゲームが好きな芸能人・アーティストはこの10名!【シブゲーアーカイブ】