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【『R6S』プロリーグ協賛特別対談・ALIENWARE × UBISOFT】「日本でも文化としてeスポーツが芽吹いてほしい」
2019年3月8日、ユービーアイソフト株式会社は『レインボーシックス シージ』(以下『R6S』)における国内限定リーグ「レインボーシックス シージ ALIENWARE JAPAN LEAGUE」の開催を発表。『R6S』は世界のみならず、日本のeスポーツシーンでも注目を集めていることから、約1年間と長期に渡って開催される本大会にも少なくない関心が寄せられている。
そこで今回は、ユービーアイソフト株式会社のEsportsシニアマネージャー宮田幸子氏と、冠スポンサーであるALIENWAREからマーケティングシニアマネージャー柳澤真吾氏を迎え、『R6S』のリーグ大会の開催にあたって大会の意義や協賛の経緯などを語り合っていただいた。
国内限定リーグ開催のきっかけは
ーー今回「レインボーシックス シージ ALIENWARE JAPAN LEAGUE」を始めるにあたり、どういう経緯で開催が進められたのでしょうか?
宮田幸子氏(以下、宮田):『R6S』は2015年12月に発売しまして、最初から不定期ではありますがPC版で「ジャパンリーグ」を開催していました。今年で4年目になるのですが、今年は年間を通して競い合ってもらうスタイルにすることでプレイヤーさんもより明確な意図をもって参加していただけるのではないかと思いました。
本年度の大会を決定した当初は、直接柳澤さんのことは存じ上げていなかったのですが、運営会社さんから柳澤さんとコンタクトを取っていただいたところ、スポンサードしていただけるというお話をいただきました。他のゲームのリーグもスポンサードされているので、どうして選んでいただけたのかなと思っていたので、今日は思い切って聞いてみたいです。
柳澤真吾氏(以下、柳澤):日本で流行しているPCゲームというと、まず一番大きなパイプとしてMMORPG系ですね。この他に核となるのがeスポーツで、日本だとFPS/TPS・MOBA・対戦格闘ゲーム、この3ジャンルの人気が高いので、我々としてもMMORPGを含めてこの4カ所に投資を分けていきたいと考えていました。
eスポーツでは、MOBAタイトルの『リーグ・オブ・レジェンド』で昨年からプロリーグの「LJL」に対してスポンサードしています。対戦格闘ゲームに関しては3年ほど前に、『ストリートファイター』シリーズで活動するネモ選手をスポンサーさせていただく形で、業界への浸透を図っていきました。
それで実は、この次はFPS/TPSということで、パートナーを探していたんです。中でも、ユーザーの方々に大きな影響を与えられるタイトルということで、『レインボーシックス シージ』には興味を持っていました。
宮田:ありがとうございます。『R6S』は本当にたくさんの人がプレイしてくれているだけなく、大会の視聴者数もかなり多くなっています。弊社のゲームの中でも過去にない、驚くような息の長い売れ方をしています。特にeスポーツ方面においては、最近ますます色々な方面からお声がけをいただいています。
柳澤:本当にすごい勢いですよね。我々もせっかく関わるのであれば、よりたくさんの人に見てもらいたいと考えています。
『R6S』で一番驚くのは、視聴者数が多いということ。加えて、個人的にYouTubeが主戦場というのは面白いなぁと思っています。他タイトルの大会動画というとTwitchやOPENREC.tvが中心ですが、『R6S』はYouTubeをよく使われている。そして、YouTubeを利用しているストリーマーさんやプレイヤーの方が『R6S』の大会に出ているので、その意味でも人気があって興味深いと思っていました。PS4版のユーザー数も多いですしね。
宮田:そうなんです。PS4版のeスポーツ大会の参加者は、多い場合で350チームが登録して下さっています。視聴数も重要ですが、これだけ多くの人が参加してくださっていることが嬉しいです。
私が子供の頃、デパートなどでファミコンの小さな大会があったんですが、ああいうふうに気軽に参加できるといいなという思いがベースにあるのかもしれません。
柳澤:特に日本では、PS4はPCと比べて親しみやすいですね。子供でも遊べますし、日本でいう「ゲーマー」は家庭用ゲーム機からスタートすることが多いので、我々もそこは大切だと考えているんです。
その上で、『R6S』を見て「我々にもビジネスチャンスがある」と感じた部分は、PS4版のユーザーを大量に抱えながらも、プロ層がPC版にいるという点です。本格的にのめり込んだときにPC版に移ってくるという話を聞きます。『R6S』というゲームのプレイヤーにはゲーミングPCを買う理由がシンプルに存在するんです。
それに、元々PCを持っていて『R6S』をプレイしている方はメーカーの好みもあるでしょうけど、PS4版からスタートしている方は、「さて、じゃあどのパソコンにしよう?」と、そこで初めてゲーミングPCを選ぶことも多いと思うんですよ。
宮田:その時に、大会公式スポンサーがゲーミングPCメーカーであれば、そのメーカーのPCを選んでくれるかもしれないですよね。
柳澤:そうなんです。我々は昨年からプロゲーミングチーム「CYCLOPS athlete gaming」(以下「CAG」)のスポンサーも務めているんですが、彼らの活動の中で「CAGが使っているゲーミングPCってALIENWAREなんだ」というふうに知っていただける機会が生まれています。
そういった状況も含めて、『R6S』はPS4版のユーザーでもPC版に入ってきやすい、というところがとても貴重だなと思っているんです。
ーーそうなんですね! それは日本においての特徴なのでしょうか?
宮田:はい、日本においてです。面白いことに、PS4版ユーザーは新コンテンツをリリースすると人口が伸びていくのですが、PC版ユーザーはeスポーツの盛り上がりのタイミングと共に伸びていく傾向があり、驚きました。
PC版の人口が特に伸びたのは2017年11月で、eiNsが初めてブラジルの世界大会に出場した時でした。2017年11月の1カ月間でざっとPC版ユーザーが1万人ほど増えました。
eスポーツに投資することが正解がどうかわからない中で『R6S』のeスポーツに取り組んできたのですが、これはもう正解だったのだろうと今は思います。
柳澤:世界大会などが開催されると、日本のeスポーツ市場は大きく伸びますよね。eスポーツに限らず、日本から世界チャンピンが出たり、オリンピックに出場したりすると、日本の方は興味を持ってくれますし。
実際、eスポーツに関して日本独自で何をするのか、とUS側と話し合った時にも、『R6S』って日本ですごく流行っているんだなぁと実感しましたよ。
宮田:同じタイトルを4年通して手がけている中で、コミュニティの皆様に支えられていることを実感しています。開発チームもオペレーターの数を100名まで増やすと話しているので、今後も期待してください。
宮田:そうなんです。女性限定イベントはずっとやりたかったのですが、ようやく実現しました。
柳澤:開催してみて、手応えとしてはどうでしたか?
宮田:すごくよかったです! 海外の開発チームからも好評でした。
女性プレイヤーは全体の5%くらいなので、最初はどれくらいの方が参加してくれるのかわからなくて少し不安がありましたが、参加枠に対して倍以上のご応募をいただきました。みなさんかわいくてオシャレで、なにより笑顔でプレイしてくださって、このような空気が広まって女性プレイヤーが増えてくれるといいな、と素直に思います。
柳澤:『R6S』特有のオペレーターの特徴とかその違いが、女性を入りやすくしたんでしょうか。
宮田:そうですね、キャラクターの特性も関係しているのかもしれません。コミュニティの方々がキャラクターに魅力を肉付けしてくれて、キャラクターの魅力を進化させてくれていると感じています。それにUBIの人間がリアクションするなど、海外の方も日本のコミュニティには特別注目してくれています。
ーーユービーアイソフトさんのタイトルには、熱心なファンの方が多いですね。
柳澤:強力なコスプレイヤーさんもたくさんいますよね。
宮田:『R6S』のコスプレイヤーさんはとても多いしユニークです。コスプレイヤーのみなさんが集まれる場所になればいいなという意味もあり、2018年には「東京コミコン」にも出展しました。日本のコスプレイヤーさんは本当にイベントを楽しんでくれていましたね。
柳澤:コスプレイヤーさんがいることで、写真イメージでの『R6S』の露出機会が増えますし、その写真を見て「このコスプレの元キャラは何だろう?」と調べる人が現れたり、色々な広がり方も出てきますよね。
全員が役割を持って試合に臨むというゲームのシステム自体も面白いですし、戦術の幅も広がります。
ただ一方で、ゲームバランスを整えるのが大変かなと思います。バランス調整を間違えたら環境が崩れちゃいそうですよね。
宮田:極端にバランスを崩すようなオペレーターは、『R6S』の大会では使用禁止になっていますが、そこは調整チームが日夜頑張ってくれています。
柳澤:その調整がうまく軸になっているところもいいなと思います。
宮田:はい、2018年4月にeスポーツの専任部署ができました。
ーーでは、『R6S』に限らず、現在は他のタイトルも含めてeスポーツ担当として動いているのですね。
宮田:そうですね。とは言え『R6S』や他のタイトルのマーケティングには今でも関わっています。他のオンラインゲームも同様に大会を開きたいと思っていまして、最近ですと『ザ クルー2』の大会を開催しますし、『フォーオナー』もまた機会があれば大会を行いたいと思っています。
オンライン系のゲームは長くプレイしてくださるお客様がいらっしゃるので、eスポーツ大会などのイベントを活性化することは大切だと思っています。
柳澤:我々も、せっかく大会スポンサードするのであれば、1年や2年といったある程度長い単位にしたいとは思っているんですよね。長いスパンで多少なりとも盛り上がりに寄与できた方が、ブランドとしての価値もあるのかなと。
宮田:そうですね、そういう面は私たちゲームメーカーにとっても大変ありがたいです。
柳澤:4月に開催された「シーズン9 APAC FINALS」に、野良連合さんだけでなくCAGさんも進出したことによって、ますますシーンが盛り上がっていきそうですよね。どのスポーツでも強豪が2チームくらいあるとさらに盛り上がる気がしていまして。そういった関係も含めて、我々も裾野を広げつつ、知名度が上げられるといいなと考えています。
宮田:今年だけでなく、来年はリーグをもっとパワーアップしようというアイデアも色々と出ておりますので、ぜひ来年もよろしくお願いいたします!
ーー先ほどのお話にもありましたが、『R6S』でのeスポーツ事業に関しては、比較的日本法人だけで自由にやっている感じなのでしょうか?
宮田:ローカルリーグに関しては、日本は日本で、世界は世界でという形で、各国で比較的自由にやっていると思います。プロリーグに関しては本社が主導となり、ローカルは自国においての活動をサポートをしています。
「流行から文化へ」
ーーゲーミングPCメーカーから見て、eスポーツが今後どうなっていくのか、どうなってほしいか、といった要望はありますか?
柳澤:ゲームそのものにも関わってくるんですけど、日本の中で文化として芽吹いてほしいと思っています。
今の子供の親御さんの世代は、まだまだゲーム=子供の遊びであったりとか、よくないことっていう先入観があると思います。このあたりのイメージを「eスポーツ」という形で、勝つためにゲームを真剣にプレイする姿から少しづつ浸透させていきたいんです。
同時に、ゲームで生計を立てられる、いわゆるスポーツ選手みたいな存在が徐々に広まればいいですし、我々がそういうことをお手伝いすることで、ゲームの未来が広がってほしいという願いもあります。「子供の遊び」という認識を脱却できないと、eスポーツが大きく伸びていくためにはつまずいてしまうかもしれませんから。
宮田:例えば、オンラインゲームで友達としゃべって遊ぶのも、トランプをしながらしゃべって遊ぶのも、コミュニケーションを取るという点で本質的には同じだと思います。インターネットでのトラブルに巻き込まれないように気を付ければ、ゲームをプレイすること自体は悪いことではなく、むしろプラスにもなる。「ゲームをするのは悪いこと」というイメージを払拭したいですね。
eスポーツに限って言うと、昨年の流行語大賞にもノミネートされていましたが、流行で終わってほしくないですね。理想を言うと、eスポーツ分野できちんとスポンサーがついてくださって、ゲームメーカーとしてもeスポーツ大会を健全に運営できるようになって、選手の皆様にもしっかり収入として保証されるようになるといいと思います。
視聴数も増えることで、スポンサーさんもハッピーになり、他のプロスポーツのように成長してくれればいいですよね。
柳澤:1社では難しいこともたくさんありますが、ゲームメーカーさんや他のハードウェアメーカーさんと協力しながら、プレイヤーさんとマーケットが活性化する機会をたくさん提供したいですね。
PCゲーム市場やeスポーツ市場もそうですけど、メーカー側から見るとみんなで細かいパイを取り合うほど市場は大きくありません。なので、もっともっと横のつながりを広げつつ、関係する企業の皆さんの考え方にも配慮しつつ、ALIENWAREとしてももっともっと協力していきたいと思っています。
今回の国内限定リーグ開催の背景に、世界大会における野良連合やCAGの活躍はもちろん、密度の濃いコミュニティを大切にしたユービーアイソフトの運営方針や、日本における『R6S』の人気上昇が深く関わっているのは明確だろう。
一方で、取材中に両人から語られた通り、PCやPS4を問わず「ゲーム」にはまだまだ一定数の人々から良くない印象を持たれていることも事実かもしれない。
しかし、ゲームタイトルの競技大会で勝利を目指すプロゲーマーたちの姿が広がれば、ゲームに向けられる視線もいいものに変わりうるはずだ。
いずれにせよ、ゲーミングPCを販売するALIENWAREとゲーム作品を手がけるユービーアイソフトが手を取り合い、成長の最中にあるeスポーツシーンに対して真摯に取り組む様子から、ますます発展して伸びていく可能性を感じることができた。
ALIENWAREとユービーアイソフトの協力関係により、『レインボーシックス シージ』のeスポーツシーンがプロアマ問わずどうなっていくのか、編集部としてもしっかりと見届けつつ、いちメディアとして盛り上げていきたいと思う。
■関連リンク
ALIENWARE
https://www.dell.com/ja-jp/gaming/alienware
ユービーアイソフト
https://www.ubisoft.co.jp/
レインボーシックス シージ
https://www.ubisoft.co.jp/r6s/
ALIENWARE JAPAN CHAMPIONSHIP
https://rainbow6.j-cg.com/pc/news/312
そこで今回は、ユービーアイソフト株式会社のEsportsシニアマネージャー宮田幸子氏と、冠スポンサーであるALIENWAREからマーケティングシニアマネージャー柳澤真吾氏を迎え、『R6S』のリーグ大会の開催にあたって大会の意義や協賛の経緯などを語り合っていただいた。
ユービーアイソフト株式会社のEsportsシニアマネージャー宮田幸子氏(写真左)と、ALIENWAREマーケティングシニアマネージャーの柳澤真吾氏
国内限定リーグ開催のきっかけは
「より長くたくさんの人に見てもらいたいから」
ーー今回「レインボーシックス シージ ALIENWARE JAPAN LEAGUE」を始めるにあたり、どういう経緯で開催が進められたのでしょうか?宮田幸子氏(以下、宮田):『R6S』は2015年12月に発売しまして、最初から不定期ではありますがPC版で「ジャパンリーグ」を開催していました。今年で4年目になるのですが、今年は年間を通して競い合ってもらうスタイルにすることでプレイヤーさんもより明確な意図をもって参加していただけるのではないかと思いました。
本年度の大会を決定した当初は、直接柳澤さんのことは存じ上げていなかったのですが、運営会社さんから柳澤さんとコンタクトを取っていただいたところ、スポンサードしていただけるというお話をいただきました。他のゲームのリーグもスポンサードされているので、どうして選んでいただけたのかなと思っていたので、今日は思い切って聞いてみたいです。
柳澤真吾氏(以下、柳澤):日本で流行しているPCゲームというと、まず一番大きなパイプとしてMMORPG系ですね。この他に核となるのがeスポーツで、日本だとFPS/TPS・MOBA・対戦格闘ゲーム、この3ジャンルの人気が高いので、我々としてもMMORPGを含めてこの4カ所に投資を分けていきたいと考えていました。
eスポーツでは、MOBAタイトルの『リーグ・オブ・レジェンド』で昨年からプロリーグの「LJL」に対してスポンサードしています。対戦格闘ゲームに関しては3年ほど前に、『ストリートファイター』シリーズで活動するネモ選手をスポンサーさせていただく形で、業界への浸透を図っていきました。
それで実は、この次はFPS/TPSということで、パートナーを探していたんです。中でも、ユーザーの方々に大きな影響を与えられるタイトルということで、『レインボーシックス シージ』には興味を持っていました。
宮田:ありがとうございます。『R6S』は本当にたくさんの人がプレイしてくれているだけなく、大会の視聴者数もかなり多くなっています。弊社のゲームの中でも過去にない、驚くような息の長い売れ方をしています。特にeスポーツ方面においては、最近ますます色々な方面からお声がけをいただいています。
柳澤:本当にすごい勢いですよね。我々もせっかく関わるのであれば、よりたくさんの人に見てもらいたいと考えています。
『R6S』で一番驚くのは、視聴者数が多いということ。加えて、個人的にYouTubeが主戦場というのは面白いなぁと思っています。他タイトルの大会動画というとTwitchやOPENREC.tvが中心ですが、『R6S』はYouTubeをよく使われている。そして、YouTubeを利用しているストリーマーさんやプレイヤーの方が『R6S』の大会に出ているので、その意味でも人気があって興味深いと思っていました。PS4版のユーザー数も多いですしね。
宮田:そうなんです。PS4版のeスポーツ大会の参加者は、多い場合で350チームが登録して下さっています。視聴数も重要ですが、これだけ多くの人が参加してくださっていることが嬉しいです。
私が子供の頃、デパートなどでファミコンの小さな大会があったんですが、ああいうふうに気軽に参加できるといいなという思いがベースにあるのかもしれません。
柳澤:特に日本では、PS4はPCと比べて親しみやすいですね。子供でも遊べますし、日本でいう「ゲーマー」は家庭用ゲーム機からスタートすることが多いので、我々もそこは大切だと考えているんです。
その上で、『R6S』を見て「我々にもビジネスチャンスがある」と感じた部分は、PS4版のユーザーを大量に抱えながらも、プロ層がPC版にいるという点です。本格的にのめり込んだときにPC版に移ってくるという話を聞きます。『R6S』というゲームのプレイヤーにはゲーミングPCを買う理由がシンプルに存在するんです。
それに、元々PCを持っていて『R6S』をプレイしている方はメーカーの好みもあるでしょうけど、PS4版からスタートしている方は、「さて、じゃあどのパソコンにしよう?」と、そこで初めてゲーミングPCを選ぶことも多いと思うんですよ。
宮田:その時に、大会公式スポンサーがゲーミングPCメーカーであれば、そのメーカーのPCを選んでくれるかもしれないですよね。
柳澤:そうなんです。我々は昨年からプロゲーミングチーム「CYCLOPS athlete gaming」(以下「CAG」)のスポンサーも務めているんですが、彼らの活動の中で「CAGが使っているゲーミングPCってALIENWAREなんだ」というふうに知っていただける機会が生まれています。
そういった状況も含めて、『R6S』はPS4版のユーザーでもPC版に入ってきやすい、というところがとても貴重だなと思っているんです。
eスポーツの盛り上がりでPC版ユーザー数が2.5倍に
宮田:現在の『R6S』のPS4版とPC版のユーザー比率について言いますと、PC版をプレイしている人はゲーム発売当時は10%以下だったのですが、今はもう25%くらいまで拡大しています。ーーそうなんですね! それは日本においての特徴なのでしょうか?
宮田:はい、日本においてです。面白いことに、PS4版ユーザーは新コンテンツをリリースすると人口が伸びていくのですが、PC版ユーザーはeスポーツの盛り上がりのタイミングと共に伸びていく傾向があり、驚きました。
PC版の人口が特に伸びたのは2017年11月で、eiNsが初めてブラジルの世界大会に出場した時でした。2017年11月の1カ月間でざっとPC版ユーザーが1万人ほど増えました。
eスポーツに投資することが正解がどうかわからない中で『R6S』のeスポーツに取り組んできたのですが、これはもう正解だったのだろうと今は思います。
柳澤:世界大会などが開催されると、日本のeスポーツ市場は大きく伸びますよね。eスポーツに限らず、日本から世界チャンピンが出たり、オリンピックに出場したりすると、日本の方は興味を持ってくれますし。
実際、eスポーツに関して日本独自で何をするのか、とUS側と話し合った時にも、『R6S』って日本ですごく流行っているんだなぁと実感しましたよ。
宮田:同じタイトルを4年通して手がけている中で、コミュニティの皆様に支えられていることを実感しています。開発チームもオペレーターの数を100名まで増やすと話しているので、今後も期待してください。
女性限定イベント&コスプレイヤーに見る新規ユーザー層の特徴
ーー先日(3月16日)、参加者女性限定の『R6S』イベント「レインボーシックス シージ GIRLS’ FESTIVAL」も開催されましたよね?宮田:そうなんです。女性限定イベントはずっとやりたかったのですが、ようやく実現しました。
柳澤:開催してみて、手応えとしてはどうでしたか?
宮田:すごくよかったです! 海外の開発チームからも好評でした。
女性プレイヤーは全体の5%くらいなので、最初はどれくらいの方が参加してくれるのかわからなくて少し不安がありましたが、参加枠に対して倍以上のご応募をいただきました。みなさんかわいくてオシャレで、なにより笑顔でプレイしてくださって、このような空気が広まって女性プレイヤーが増えてくれるといいな、と素直に思います。
「レインボーシックス シージ GIRLS’ FESTIVAL」の参加者。(写真提供:UBISOFT https://twitter.com/Rainbow6JP/status/1106854156550041601)
柳澤:『R6S』特有のオペレーターの特徴とかその違いが、女性を入りやすくしたんでしょうか。
宮田:そうですね、キャラクターの特性も関係しているのかもしれません。コミュニティの方々がキャラクターに魅力を肉付けしてくれて、キャラクターの魅力を進化させてくれていると感じています。それにUBIの人間がリアクションするなど、海外の方も日本のコミュニティには特別注目してくれています。
ーーユービーアイソフトさんのタイトルには、熱心なファンの方が多いですね。
柳澤:強力なコスプレイヤーさんもたくさんいますよね。
宮田:『R6S』のコスプレイヤーさんはとても多いしユニークです。コスプレイヤーのみなさんが集まれる場所になればいいなという意味もあり、2018年には「東京コミコン」にも出展しました。日本のコスプレイヤーさんは本当にイベントを楽しんでくれていましたね。
柳澤:コスプレイヤーさんがいることで、写真イメージでの『R6S』の露出機会が増えますし、その写真を見て「このコスプレの元キャラは何だろう?」と調べる人が現れたり、色々な広がり方も出てきますよね。
全員が役割を持って試合に臨むというゲームのシステム自体も面白いですし、戦術の幅も広がります。
ただ一方で、ゲームバランスを整えるのが大変かなと思います。バランス調整を間違えたら環境が崩れちゃいそうですよね。
宮田:極端にバランスを崩すようなオペレーターは、『R6S』の大会では使用禁止になっていますが、そこは調整チームが日夜頑張ってくれています。
柳澤:その調整がうまく軸になっているところもいいなと思います。
eスポーツ人気の拡大に伴い、専任マネージャーへ
ーーユービーアイソフトさんにeスポーツの部署ができたのは昨年からでしょうか?宮田:はい、2018年4月にeスポーツの専任部署ができました。
ーーでは、『R6S』に限らず、現在は他のタイトルも含めてeスポーツ担当として動いているのですね。
宮田:そうですね。とは言え『R6S』や他のタイトルのマーケティングには今でも関わっています。他のオンラインゲームも同様に大会を開きたいと思っていまして、最近ですと『ザ クルー2』の大会を開催しますし、『フォーオナー』もまた機会があれば大会を行いたいと思っています。
オンライン系のゲームは長くプレイしてくださるお客様がいらっしゃるので、eスポーツ大会などのイベントを活性化することは大切だと思っています。
柳澤:我々も、せっかく大会スポンサードするのであれば、1年や2年といったある程度長い単位にしたいとは思っているんですよね。長いスパンで多少なりとも盛り上がりに寄与できた方が、ブランドとしての価値もあるのかなと。
宮田:そうですね、そういう面は私たちゲームメーカーにとっても大変ありがたいです。
柳澤:4月に開催された「シーズン9 APAC FINALS」に、野良連合さんだけでなくCAGさんも進出したことによって、ますますシーンが盛り上がっていきそうですよね。どのスポーツでも強豪が2チームくらいあるとさらに盛り上がる気がしていまして。そういった関係も含めて、我々も裾野を広げつつ、知名度が上げられるといいなと考えています。
宮田:今年だけでなく、来年はリーグをもっとパワーアップしようというアイデアも色々と出ておりますので、ぜひ来年もよろしくお願いいたします!
ーー先ほどのお話にもありましたが、『R6S』でのeスポーツ事業に関しては、比較的日本法人だけで自由にやっている感じなのでしょうか?
宮田:ローカルリーグに関しては、日本は日本で、世界は世界でという形で、各国で比較的自由にやっていると思います。プロリーグに関しては本社が主導となり、ローカルは自国においての活動をサポートをしています。
「流行から文化へ」
eスポーツに懸けるメーカーの真剣な願い
ーーゲーミングPCメーカーから見て、eスポーツが今後どうなっていくのか、どうなってほしいか、といった要望はありますか?柳澤:ゲームそのものにも関わってくるんですけど、日本の中で文化として芽吹いてほしいと思っています。
今の子供の親御さんの世代は、まだまだゲーム=子供の遊びであったりとか、よくないことっていう先入観があると思います。このあたりのイメージを「eスポーツ」という形で、勝つためにゲームを真剣にプレイする姿から少しづつ浸透させていきたいんです。
同時に、ゲームで生計を立てられる、いわゆるスポーツ選手みたいな存在が徐々に広まればいいですし、我々がそういうことをお手伝いすることで、ゲームの未来が広がってほしいという願いもあります。「子供の遊び」という認識を脱却できないと、eスポーツが大きく伸びていくためにはつまずいてしまうかもしれませんから。
宮田:例えば、オンラインゲームで友達としゃべって遊ぶのも、トランプをしながらしゃべって遊ぶのも、コミュニケーションを取るという点で本質的には同じだと思います。インターネットでのトラブルに巻き込まれないように気を付ければ、ゲームをプレイすること自体は悪いことではなく、むしろプラスにもなる。「ゲームをするのは悪いこと」というイメージを払拭したいですね。
eスポーツに限って言うと、昨年の流行語大賞にもノミネートされていましたが、流行で終わってほしくないですね。理想を言うと、eスポーツ分野できちんとスポンサーがついてくださって、ゲームメーカーとしてもeスポーツ大会を健全に運営できるようになって、選手の皆様にもしっかり収入として保証されるようになるといいと思います。
視聴数も増えることで、スポンサーさんもハッピーになり、他のプロスポーツのように成長してくれればいいですよね。
柳澤:1社では難しいこともたくさんありますが、ゲームメーカーさんや他のハードウェアメーカーさんと協力しながら、プレイヤーさんとマーケットが活性化する機会をたくさん提供したいですね。
PCゲーム市場やeスポーツ市場もそうですけど、メーカー側から見るとみんなで細かいパイを取り合うほど市場は大きくありません。なので、もっともっと横のつながりを広げつつ、関係する企業の皆さんの考え方にも配慮しつつ、ALIENWAREとしてももっともっと協力していきたいと思っています。
* * * * * * * * *
今回の国内限定リーグ開催の背景に、世界大会における野良連合やCAGの活躍はもちろん、密度の濃いコミュニティを大切にしたユービーアイソフトの運営方針や、日本における『R6S』の人気上昇が深く関わっているのは明確だろう。
一方で、取材中に両人から語られた通り、PCやPS4を問わず「ゲーム」にはまだまだ一定数の人々から良くない印象を持たれていることも事実かもしれない。
しかし、ゲームタイトルの競技大会で勝利を目指すプロゲーマーたちの姿が広がれば、ゲームに向けられる視線もいいものに変わりうるはずだ。
いずれにせよ、ゲーミングPCを販売するALIENWAREとゲーム作品を手がけるユービーアイソフトが手を取り合い、成長の最中にあるeスポーツシーンに対して真摯に取り組む様子から、ますます発展して伸びていく可能性を感じることができた。
ALIENWAREとユービーアイソフトの協力関係により、『レインボーシックス シージ』のeスポーツシーンがプロアマ問わずどうなっていくのか、編集部としてもしっかりと見届けつつ、いちメディアとして盛り上げていきたいと思う。
■関連リンク
ALIENWARE
https://www.dell.com/ja-jp/gaming/alienware
ユービーアイソフト
https://www.ubisoft.co.jp/
レインボーシックス シージ
https://www.ubisoft.co.jp/r6s/
ALIENWARE JAPAN CHAMPIONSHIP
https://rainbow6.j-cg.com/pc/news/312