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eスポーツビジネスのお金の動き、コミュニティへの支援の現状は? 最前線の3人が語る【BACKSTAGE 2019 レポート】

8月29日、「体験型マーケティングに学び、出会う1日」と題したイベント「BACKSTAGE 2019」が、虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された。様々な分野の「バックステージ」で活躍する人たちが表舞台に立ち、彼らの台本のない体験談を聞けるというイベントだ。

昨年に続き、今回もこのイベントに「eスポーツ」をテーマとしたカンファレンスが設定された。「eスポーツのビジネスの裾野は現状どうなっているのか?」というテーマで、株式会社電通でプロデューサーを務める菊地英雄氏、株式会社ディー・エヌ・エーでeスポーツの大会運営などに携わっている齋藤亮介氏、株式会社ソフマップの代表取締役社長を務める渡辺武志氏(以下、渡辺)。それぞれの立場でeスポーツについて取り組んでいるお三方が、eスポーツのビジネスについて熱いトークを繰り広げた。

eスポーツスポンサーのお金の使い方

株式会社電通 菊地英雄氏(以下、菊地):昨年はeスポーツという言葉が流行して自分もたくさんの問い合わせを受けましたが、肝心の"スポンサーがどうお金を使うといいのか"ということに答えがないまま、今まで来てしまった部分があるように思えます。

▲電通の菊地氏

株式会社ソフマップ 渡辺武志氏(以下、渡辺):僕らは小売業なので、eスポーツに使う品物を売りながら参加できるのかというのが重要でした。そこで2017年にSofmapの中にパソコンやゲームデバイスを売る専門の場所を作りました。コミュニティイベントなども開催したのですが、最初の1年は中々結果が出ませんでした。

いろいろとプロゲーミングチームの方とも話をしたのですが、当時は正直ゲームだけではご飯を食べられないという状況で……。昼間は何かしら仕事をして、夜に集まってゲームを練習をするのですけど、1日中ゲームをしている人たちとは練習時間が違うので勝てない部分があって、どうすればゲームに集中できる環境を作れるかというのがあって、プロチームを支援しなければいけないなと考えました。

しかし、支援と言ってもスポンサードしてスポンサー料を払って終わりにするのでは意味がないので、プロチームのグッズを作って販売しようということになりました。そうしてチームが儲かるようになればプロゲーマーはチームからお金が出る。そういうシステムを作れるんじゃないかと思っています。

▲ソフマップの渡辺氏

株式会社ディー・エヌ・エー 齋藤亮介氏(以下、齋藤):eスポーツの昨今の取り組みとして一番大きいのは、「eスポーツ、来るか、来ないか議論」はもはやなくなったという点ですね。私がeスポーツに取り組み始めた3〜4年前は、本当に日本に来るのか、なんでまだ来ないのかという話をしていました。

しかし今DeNAでは、"どう取り組めばいいのか"ということをやっている最中なんです。DeNAはスポーツビジネスのノウハウやITプラットフォームを持っているので、それらをまず活用しています。ゲームについては、自前で作ったIPもあれば既存のコンテンツもあるので、様々なコラボをしたりもしくは海外のゲームを展開することもあります。

eスポーツに関しては、(一般的なゲームと比較して)プレイヤーをより長く引き留めることができるメリットがあることに注目しています。

また、DeNAはeスポーツについて3つの方向性を持っています。一番大きな話としては日本プロ野球機構の方々がeスポーツをやってみたいとおっしゃっていることです。野球の世界は伝統を守るのが大事なのですが、そういう組織が新しいことに取り組もうとしている。こういった事例を見ても、eスポーツが力を持ち始めたんだなと感じます。

▲DeNAの齋藤氏

もう一つ違う形が、「ニコニコ超会議」での取り組みです。『Arena of Valor』というタイトルの世界大会「Arena of Valor World Cup 2019」の日本代表決定戦をやらせていただいたんですが、ここで新しい取り組みとして、コミュニティ側でeスポーツシーンを引っ張ってもらったんです。2~3年前はそういうことは中々できなかったんです。今はeスポーツの知名度が上がってきたこともあって、週末を使って大会を開く社会人が出てきているんですね。そういう方と話をしてみて、良い人がいればこちらからもサポートしています。

そういった活動を続けていたら、この間はあるコミュニティ大会で60チーム約300人が参加して、YouTubeの配信を1万人ほどの方が視聴してくれました。今はスポンサーが付いたりして大会として、うまく回るように大会モデルになっているのが大きな成長だと思います。

協賛メリットは現状は赤字。だが、副次的効果も

菊地:Sofmapさんには設備がありますし、DeNAさんのようなパブリッシャーの方々はTwitterを通じてコミュニティと接することができます。これは自分からの質問になりますが、広告主のeスポーツへの協賛メリットは費用対効果としてどのようなものなのでしょうか?

渡辺:それは難しいですね。協賛をしてどうかと言われると、今までのものは全部赤字じゃないかなと思います。僕らはイベントに出展料として支援させてもらっていて、グッズを売っています。その収益をイベントに還元していかないとうまく回らないのではないでしょうか。

ただ、良い影響もあってeスポーツの仕事に携わりたいという人がたくさん入社してくれています。今は販売の仕事をしてもらっていますが、実力がある子はスタッフとして運営に配属したりしているので、取り組むべき仕事の中にeスポーツが関わっていれば、若い方々が就職先として選んでくれるというメリットがありますね。

齋藤:eスポーツをやってみたいという人はすごく多いですね。ゲームが好きだからという人もいれば、新しいビジネスを作っていきたいという人もいます。

菊地:齋藤さんは海外の大会もよくご覧になられていますが、今の日本でeスポーツをさらに定着させるときに、足りないところはどこだと思いますか?

齋藤:海外で成功している国、例えば韓国やベトナムでは、基本的にイベントの担い手がそのゲームタイトルを大好きでかつ慣れていて、運営するスキルを持っています。

それに対して日本では、eスポーツは去年すごくブームになって、ゲームはわかっていないけど応援したいですとか、儲けたいですとか、配信しますよといった動きがあって、ここが一番大きな違う点だと思います。


ゲーム&eスポーツコミュニティへの支援のあり方

菊地:eスポーツを日本で来年以降も広げていくためにはコミュニティとの関わりが重要だと思いますが、今後どのようにしようと考えていますか?

渡辺:今は秋葉原で主に活動していますが、いろいろな文化が交わっている街のためか、eスポーツの展開をとてもやりやすいです。少し前に、アキバに関わるいろいろな企業が集まって『ロケットリーグ』で大会を開いたんです。そうしたら下手なおじさんがゲームでわちゃわちゃやっているところを実況の方がすごく上手に回してくれて、意外と面白かったんですよ(笑)。普段はライバルの「DOS/V パラダイス」「TSUKUMO」という同業の会社さんとも、「eスポーツ」というキーワードを介すると手を取りあいやすかったですね。

とはいえ、"盛り上がるまで一緒にやろう"という感じでつながっているので、まだまだ成熟させる必要もあります。今はネットでいろいろと繋がりを持つことができますので、渋谷でも同じようなコミュニティを形成したり、もっと小さな規模のものも作ったりといろいろとやっています。

また、先日は徳島の「マチアソビ」というイベントで徳島県知事が「eスポーツをやりたい」ということで大会を開きました。街ぐるみでやると地元密着企業さんが入って来てくれるメリットがあります。ただお金をかけすぎると続かないので、公民館にパソコンを並べて大会を開いたりして、ファンコミュニティを繋げて数を増していくというやり方がいいと思います。

齋藤:ファンコミニティからの要望は、「認めてほしい」と「サポートしてほしい」の二つに代表されます。パブリッシャーとして、「認めてほしい」という要望にはいろいろできることがあって、海外のコミュニティに対しては「じゃあ大会を開いてくれますか」と呼び掛けて、優秀な成績を残した方は公式大会に招待しますよという形も可能になるんですね。

もう一つの「サポートしてほしい」については、小規模ですがスポンサーをやりたいという方は結構いらっしゃるので、これを繋げてあげることができます。日本のeスポーツは来年か再来年あたりが飛躍の時だと思っているので、DeNAとしては日本にいながらにして国際大会を世界各国で行い、それを同時に視聴できるような仕組みを作っていきたいですね。

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コミュニティとの関係がeスポーツ発展のカギ

ここでセッションは惜しくも終わりを迎えてしまったが、その後場所を移してアフターセッションが行われた。


ここでは菊地氏がeスポーツのスポンサードに関する現状として、ゲームコミュニティの草の根活動について理解不足があることを指摘。eスポーツの活動においてはコミュニティの理解を得ることが極めて重要であるにも関わらず、「そこまでスポンサー側がやる必要があるのか」という反応が多いことを嘆いていた。

さらに菊地氏はコミュニティの存在を無視すれば、どれだけ派手なプロモーションを行なっても肝心のeスポーツシーンを作り上げている方々からは、どこか別の場所でやっているただの派手な祭りとしか見てもらえない危険性を指摘していた。今後、eスポーツがどれだけ盛り上がるかは、このあたりも重要な取り組みのひとつになりそうだ。

■関連リンク
BACKSTAGE 2019
https://backstage.tours/

eSports Studio AKIBA - Sofmap
https://e-sports.sofmap.com/

伝説対決 -Arena of Valor- 公式サイト
https://www.arenaofvalor.jp/

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