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『The Ascent』PC版レビュー:密度の高い世界設定とビジュアルが見どころのアクションシューティングRPG! ゲームプレイには粗さを感じる部分も……
『The Ascent』は少人数体制のゲーム開発スタジオNeon Giantが手掛けたアクションシューティングRPGです。サイバーパンク × シューターRPGとして開発された本作は、サイバーパンクというジャンルへのリスペクト・オマージュを多く含みつつ、その膨大な世界設定や密度をグラフィックやドキュメントのボリュームなどで非常に色濃く描き出しています。
ソロプレイも最大4人までの協力プレイも楽しめる本作は日本語化されており、若干翻訳が固かったり未適用の場所はあったりしますが、アップデートで少しずつ改善されています。
ゲームプレイとしては見下ろし型シューターとしての爽快感と、RPGとしてのスキルポイントやアップグレード素材を使ったキャラクター強化を前面に押し出しています。しかし、本作の特徴として存在するカバーシューター要素は不必要な複雑化をしてしまっているような印象を受けました。
ほかにもいくつかバグや最適化不足などが散見されますが、凝りに凝ったビジュアルと世界設定をアクションシューティングRPGとして表現できた本作は一見の価値ありです。そんな本作を堪能したレビューをお届けします。
※本作にはCo-opモードが搭載されていますが、本稿ではソロプレイを中心としたレビューとなります。
『The Ascent』のポイント
大企業アセントはなぜ活動停止したのか!?
私はサイバーパンクの世界に目がなく、義体を用いたアクションや退廃的なネオン街、コンピュータや人体へのハッキングといった要素を含んだ作品を定期的に堪能したくなってしまう衝動に駆られています。そんな衝動をどうにか満たそうとした矢先、シューターに重きを置くサイバーパンクRPGとして『The Ascent』を見つけました。機械に囲まれさまざまな種族が暮らしている世界と美麗なビジュアル、ツインスティックシューターの要素をトレーラーから感じた私は、このゲームをプレイしたくてたまらなくなっていました。
『The Ascent』は、遥か先の未来に存在する惑星ヴィールスで物語が始まります。街を牛耳っていた大企業アセント・グループの原因不明の活動停止により、経済や生活システムなどが崩壊の危機にさらされているさなか、プレイヤーは1人の使い走り労働者として下水システムの修復や管理機械へのハッキング、邪魔な人物の処理や街に巣食う対抗組織へのカチコミなど、さまざまな“仕事”を請け負うことになります。
命の価値が非常に軽く、いつ死んでもおかしくない危険に満ちた生活の中で、プレイヤーは自身の価値を上げていくために、さまざまな思惑が絡み合う陰謀の渦へと足を踏み入れていきます。
美麗なグラフィックとデザインに彩られた、
本作はツインスティックシューターとRPGを組み合わせたものになっていて、敵を薙ぎ払う爽快感と密度の高い世界設定により深い没入感を感じられる作品となっています。
ゲームを始めてまず惹かれた本作のグラフィックは目を見張る出来になっており、魅力的なサイバーパンクの世界へとプレイヤーを即座にいざなってくれます。
プレイ中は「なぜフォトモードがないのか?」と何度も思ってしまうほどに写真を撮りたくなる風景ばかりで、既存のサイバーパンク作品をオマージュしたデザインと音楽により、人によっては街を歩くだけでも心地よく感じることでしょう。
このゲームにおける大まかなあらすじとしては、スタックボスと呼ばれる街を実質的に支配している者から依頼を受けながら、一見きらびやかな街の裏でうごめく大きな陰謀の渦へと足を踏み入れていくことになります。
メインクエストをこなしていくことでストーリーが進み、進捗状況によりサブクエストが徐々に開放されていきます。メインストーリーのみを進めることも可能ですが、ある程度のレベル上げや装備品・アップグレードアイテムの収集をしないとストーリー攻略が厳しくなる場面もあります。
プレイヤーは街で武器・防具を購入したり、敵からドロップしたアイテムを活用しながら戦い抜いていくことになります。武器にはハンドガン、サブマシンガン、ガトリングガンやエネルギーライフルなど数多くの種類があり、それぞれ個性的な能力を有しています。
防具は頭、上半身、下半身の3つのカテゴリで分けられており、それぞれ耐性値とスキルブースト効果が設定されています。敵の攻撃が痛いと感じたら、手持ちの防具を切り替えてみると耐えられるようになるかもしれません。
キャラクターは武器・防具のほかにも、エネルギーを消費して発動させる「オーグメンテーション」の使用に加えて、グレネードをはじめとした一定範囲に効果をもたらすことのできる「戦術」、身体能力そのものを強化する「モジュール」を装着することで新たな特殊能力を得ることができます。
「戦術」は特殊ゲージを消費することで発動できる戦況をサポートするもので、「オーグメンテーション」は攻撃・防御両面で役立つことが多く、銃器だけでは敵をさばききれなくなったときの切り札として効果的です。「モジュール」は回避モーションの変化、近接攻撃の反射ダメージ付与や基礎ステータスの上昇などさまざまな恩恵が得られるので、メイン・サブクエスト攻略はもちろん、道中に存在する宝箱や敵のドロップ品は見逃さないようにしましょう。
戦闘はツインスティックシューターよろしく、銃撃戦がメインで繰り広げられ、出現する敵たちをなぎ倒しながら道を進んでいくというオーソドックスなシステムになっています。敵からのドロップ品に関して、本作にはルートシューターの要素はないため、落とす品物はどれも一律で性能が決められています。このあたりのバランスに関しては、どちらかというとシューター寄り、そして少し前のJRPGらしいものになっています。
レベルアップにより獲得可能なスキルポイントを割り振ることで、最大体力増加やリロード速度アップ、集弾率アップなどプレイスタイルに幅を持たせることができるうえ、銃器に限りアップグレードシステムを利用することで武器を強化できるので、プレイヤー各々のお気に入りの戦闘スタイルを見つけられることでしょう。
カバーシューター要素を取り入れた戦闘は
先述したように、本作での戦闘は銃撃戦が主な方法となりますが、「遮蔽物に隠れながら銃を撃つ」というカバーシューターの要素が一部組み込まれており、右クリックまたはLTを押すことでエイム動作の代わりに腕を上げることができます。この動作により、道中に置かれているコンテナやテーブル、ベンチなどの物影に隠れながら腕を上げ、銃のみを覗かせての射撃が可能となります。
また、通常起立時でも腕を上げて少し高い場所から銃を撃つことができ、その場合は集弾性が下がるもののダメージ効率のアップ、クリティカルヒットの確率が少し上がる、階段や斜面の上にいるようなほんの少し高い場所にいる敵へも攻撃が当てられるようになるといったメリットがあります。
しかし、この要素は正直なところ本作の戦闘を不必要に複雑化してしまっている気がしました。プレイヤーはこの腕の上げ下げによって銃を撃つ高さを変えられるのですが、それと同時に攻撃を当てられる位置が変わってくるため、一部の敵には腕を上げて攻撃しなければ当たらず、また一部の敵には腕の高さを普通にしないと攻撃が当たらないといった具合に、戦闘時は敵の背の高さを考えながら戦うことになるのです。
本作で出現する敵の数は基本的に多めで、シナリオが進めば進むほどその数と種類は増えていくため、集団の攻撃力により圧殺されてしまうことがよく起きます。その際、敵の姿勢を考える余裕がないくらいには敵の攻撃力が高いので、慌てているうちにやられてしまうのです。
一番厄介な点として、本作ではカメラのズームイン・アウトが任意で行えないため、敵がどの程度の姿勢で動いているのかが確認しにくいことが挙げられます。敵の種類が多くなってくるゲーム中盤から後半にかけて、多数で攻めてくる敵の大きさや姿勢に合わせて自分のキャラクターはどの腕の高さで攻撃させれば良いのか? という判断を求められるのですが、視認性が悪くなりやすいこともあり、肝心なときに攻撃が当たらないという状況がよく起きていました。
後半には攻撃を無効化するバリアボットが敵の周囲に浮遊していることがあるのですが、ゲーム自体のライティングのせいもあって、どの位置にいるのかがわかりづらくなることもあります。
アクション要素としてこの腕上げ行動を操作系に取り入れていると思うのですが、いかんせんシューター要素とのかみ合わせがうまくいっておらず、当たるか当たらないかの判断を多勢の敵に対して行うには、現状のバランスでは忙しすぎるような印象を受けました。もし、弾は発射されているのに攻撃が当たらない! という状況に陥った場合は、まず自身のキャラクターの姿勢と腕上げ動作を確認してみましょう。
攻撃属性を見極めることにより、
物理、爆発、火炎、デジタルなど、攻撃行動の種類にあわせて属性が設定されており、それによる効果の有利・不利が存在します。ダメージアップ・ダウンが主な効果で、プレイヤー・敵を問わず装備している武器や防具(敵の場合はどのような存在であるか)によって決まっています。
敵の姿や攻撃時に表示されるダメージ表記を把握することである程度弱点を推測できますが、たいていの場合、生身のパーツがある生き物は物理的な弾丸や火炎、小型のモンスターは物理や爆発系、サイボーグやロボット系といった機械はデジタル属性といった弱点が割り当てられているようです。
プレイ中に攻撃を当ててみると、時折装備中の武器が実際に有している能力値よりも明らかにダメージ効率が悪くなることがあります。そうした状況に直面した場合は、一度手持ちの装備を見直してみると良いかもしれません。数値上での単発威力・DPSが低い武器であっても、その武器が持つ属性が敵の弱点であれば、それ以上の効果を望めることがあります。
また、プレイヤーが装備する防具にもおなじく属性のステータスがそれぞれ割り振られており、物理属性に強いもの、デジタル属性に強い物など特定の攻撃に対して効果を発揮するものがあるうえ、防具によってはプレイヤーのスキルポイントをブーストしてくれるものもあります。武器とは違いアップグレード要素はないため、さまざまな種類を所持しておくとどんな敵に対しても幅広く対応できるでしょう。
レビュー時のゲームバージョンは2.0.5.0、現在ではSteam版と同等のアップデート(バージョン2.1.4.0)が加わり、最適化も進んだおかげでゲーム内でのカクつきは少しずつではありますが減った印象を受けます。
しかし、そうしたアップデートを適用したにも関わらず、クエスト進行不能バグや戦闘中の爆破、建物・オブジェクト崩壊時などにカクつき、日本語翻訳がされていない箇所があったりするのは変わらないままでした。推奨スペックを満たしつつ、環境設定を最低にまで下げたとしても未だカクつきが起きてしまっています。
これがゲームプレイに関してさほど問題ないレベルであれば良いのですが、本作は一発の攻撃を食らうだけで命取りとなってしまう場面も多く、瞬時の判断が必要になるゲームプレイのため、戦闘時の爆発でさえカクつくとなるとストレスにしかなりません。
そして、本作に搭載されているオンライン・オフラインCo-opモードに関してはリリース当初からバグがいくつか報告されていたうえ、なかには所持している装備品が消失してしまうバグもあるようです。
実際に新しいキャラクターを作成してオフラインCo-opを試した際には、すでにゲームをクリアしたキャラクターをホストとして、新しく作ったキャラクターを呼び遊んでみたところ、クリア済み側の進捗状況が新キャラクターにも同様に適用・保存されてしまい、レベル1のままクリア後の世界に放り出されてしまいました。メインクエストはすでにすべて終えてしまっているため、新規ゲームを開こうにもキャラクターを削除しないと進捗度をリセットできないようになってしまいました。
これはバグなのか、そもそものゲーム側の仕様なのかは現在検証できておらず不明ですが、もしフレンドとCo-opする際はフレンドと同じタイミングで新しいキャラクターを作成するか、せめてゲーム攻略の進捗度が近い者同士でプレイすることをおすすめしたいです。
バグ取りや翻訳適用はもちろんのこと、最適化に関しても今後のアップデートは必須になるでしょう。
粗さが目立つものの、
本作はゲームプレイに関する戦闘システムの不和や、全体を通じたバグ・最適化不足を中心に粗さをどうしても感じてしまうものの、「サイバーパンク」というジャンルをこれでもかというくらいに表現できているビジュアルと世界設定に、いつの間にかハマってしまっている人も多いタイトルだと私は感じます。
個性的な装備とスキル、魅力的な登場キャラクターたち、プレイヤーがたどるストーリーはサイバーパンク体験として良質なものになっています。PC版においてもいくつかのプラットフォームで展開されているので、サイバーパンクが好き! という方はもちろん、シューターとしての爽快感を味わいたい方も本作をぜひプレイしてみてほしいです。
The Ascent (C) 2021 Neon Giant AB。版権元Curve Digital Publishing Ltd.
●タイトル:The Ascent
●ジャンル:アクションシューティングRPG
●発売元:Curve Digital
●開発元:Neon Giant
●プラットフォーム:PC(Steam、Microsoft Store)、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2021年7月30日
●価格:3980円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー:Intel Core i5-3470 または AMD FX-8350
メモリー:8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX 660 または AMD Radeon R9 390X
ストレージ:35GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー:Intel Core i7-6700K または AMD Ryzen 5 2600
メモリー:16GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX 1070 または AMD Radeon RX 5700
ストレージ:35GB
●公式サイトURL:https://the-ascent.games.dmm.com/
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/979690/The_Ascent/
Microsoft Store https://www.microsoft.com/ja-jp/p/the-ascent/c27ql5jbkq8m
ソロプレイも最大4人までの協力プレイも楽しめる本作は日本語化されており、若干翻訳が固かったり未適用の場所はあったりしますが、アップデートで少しずつ改善されています。
ゲームプレイとしては見下ろし型シューターとしての爽快感と、RPGとしてのスキルポイントやアップグレード素材を使ったキャラクター強化を前面に押し出しています。しかし、本作の特徴として存在するカバーシューター要素は不必要な複雑化をしてしまっているような印象を受けました。
ほかにもいくつかバグや最適化不足などが散見されますが、凝りに凝ったビジュアルと世界設定をアクションシューティングRPGとして表現できた本作は一見の価値ありです。そんな本作を堪能したレビューをお届けします。
※本作にはCo-opモードが搭載されていますが、本稿ではソロプレイを中心としたレビューとなります。
『The Ascent』のポイント
- 開発者の「サイバーパンク」好きが伝わってくるビジュアルと世界設定
- シューターとしての爽快感やレベルアップの楽しさはあるが、戦闘は複雑な部分も
- バグが散見されるが、サイバーパンクを表現した本作の魅力は大きい!
大企業アセントはなぜ活動停止したのか!?
陰謀渦巻くサイバーパンクの世界!
私はサイバーパンクの世界に目がなく、義体を用いたアクションや退廃的なネオン街、コンピュータや人体へのハッキングといった要素を含んだ作品を定期的に堪能したくなってしまう衝動に駆られています。そんな衝動をどうにか満たそうとした矢先、シューターに重きを置くサイバーパンクRPGとして『The Ascent』を見つけました。機械に囲まれさまざまな種族が暮らしている世界と美麗なビジュアル、ツインスティックシューターの要素をトレーラーから感じた私は、このゲームをプレイしたくてたまらなくなっていました。『The Ascent』は、遥か先の未来に存在する惑星ヴィールスで物語が始まります。街を牛耳っていた大企業アセント・グループの原因不明の活動停止により、経済や生活システムなどが崩壊の危機にさらされているさなか、プレイヤーは1人の使い走り労働者として下水システムの修復や管理機械へのハッキング、邪魔な人物の処理や街に巣食う対抗組織へのカチコミなど、さまざまな“仕事”を請け負うことになります。
命の価値が非常に軽く、いつ死んでもおかしくない危険に満ちた生活の中で、プレイヤーは自身の価値を上げていくために、さまざまな思惑が絡み合う陰謀の渦へと足を踏み入れていきます。
美麗なグラフィックとデザインに彩られた、
オーソドックスな見下ろし型シューティングRPG
本作はツインスティックシューターとRPGを組み合わせたものになっていて、敵を薙ぎ払う爽快感と密度の高い世界設定により深い没入感を感じられる作品となっています。ゲームを始めてまず惹かれた本作のグラフィックは目を見張る出来になっており、魅力的なサイバーパンクの世界へとプレイヤーを即座にいざなってくれます。
プレイ中は「なぜフォトモードがないのか?」と何度も思ってしまうほどに写真を撮りたくなる風景ばかりで、既存のサイバーパンク作品をオマージュしたデザインと音楽により、人によっては街を歩くだけでも心地よく感じることでしょう。
このゲームにおける大まかなあらすじとしては、スタックボスと呼ばれる街を実質的に支配している者から依頼を受けながら、一見きらびやかな街の裏でうごめく大きな陰謀の渦へと足を踏み入れていくことになります。
メインクエストをこなしていくことでストーリーが進み、進捗状況によりサブクエストが徐々に開放されていきます。メインストーリーのみを進めることも可能ですが、ある程度のレベル上げや装備品・アップグレードアイテムの収集をしないとストーリー攻略が厳しくなる場面もあります。
プレイヤーは街で武器・防具を購入したり、敵からドロップしたアイテムを活用しながら戦い抜いていくことになります。武器にはハンドガン、サブマシンガン、ガトリングガンやエネルギーライフルなど数多くの種類があり、それぞれ個性的な能力を有しています。
防具は頭、上半身、下半身の3つのカテゴリで分けられており、それぞれ耐性値とスキルブースト効果が設定されています。敵の攻撃が痛いと感じたら、手持ちの防具を切り替えてみると耐えられるようになるかもしれません。
キャラクターは武器・防具のほかにも、エネルギーを消費して発動させる「オーグメンテーション」の使用に加えて、グレネードをはじめとした一定範囲に効果をもたらすことのできる「戦術」、身体能力そのものを強化する「モジュール」を装着することで新たな特殊能力を得ることができます。
「戦術」は特殊ゲージを消費することで発動できる戦況をサポートするもので、「オーグメンテーション」は攻撃・防御両面で役立つことが多く、銃器だけでは敵をさばききれなくなったときの切り札として効果的です。「モジュール」は回避モーションの変化、近接攻撃の反射ダメージ付与や基礎ステータスの上昇などさまざまな恩恵が得られるので、メイン・サブクエスト攻略はもちろん、道中に存在する宝箱や敵のドロップ品は見逃さないようにしましょう。
戦闘はツインスティックシューターよろしく、銃撃戦がメインで繰り広げられ、出現する敵たちをなぎ倒しながら道を進んでいくというオーソドックスなシステムになっています。敵からのドロップ品に関して、本作にはルートシューターの要素はないため、落とす品物はどれも一律で性能が決められています。このあたりのバランスに関しては、どちらかというとシューター寄り、そして少し前のJRPGらしいものになっています。
レベルアップにより獲得可能なスキルポイントを割り振ることで、最大体力増加やリロード速度アップ、集弾率アップなどプレイスタイルに幅を持たせることができるうえ、銃器に限りアップグレードシステムを利用することで武器を強化できるので、プレイヤー各々のお気に入りの戦闘スタイルを見つけられることでしょう。
カバーシューター要素を取り入れた戦闘は
特徴的ながら不満点も存在
先述したように、本作での戦闘は銃撃戦が主な方法となりますが、「遮蔽物に隠れながら銃を撃つ」というカバーシューターの要素が一部組み込まれており、右クリックまたはLTを押すことでエイム動作の代わりに腕を上げることができます。この動作により、道中に置かれているコンテナやテーブル、ベンチなどの物影に隠れながら腕を上げ、銃のみを覗かせての射撃が可能となります。また、通常起立時でも腕を上げて少し高い場所から銃を撃つことができ、その場合は集弾性が下がるもののダメージ効率のアップ、クリティカルヒットの確率が少し上がる、階段や斜面の上にいるようなほんの少し高い場所にいる敵へも攻撃が当てられるようになるといったメリットがあります。
しかし、この要素は正直なところ本作の戦闘を不必要に複雑化してしまっている気がしました。プレイヤーはこの腕の上げ下げによって銃を撃つ高さを変えられるのですが、それと同時に攻撃を当てられる位置が変わってくるため、一部の敵には腕を上げて攻撃しなければ当たらず、また一部の敵には腕の高さを普通にしないと攻撃が当たらないといった具合に、戦闘時は敵の背の高さを考えながら戦うことになるのです。
本作で出現する敵の数は基本的に多めで、シナリオが進めば進むほどその数と種類は増えていくため、集団の攻撃力により圧殺されてしまうことがよく起きます。その際、敵の姿勢を考える余裕がないくらいには敵の攻撃力が高いので、慌てているうちにやられてしまうのです。
一番厄介な点として、本作ではカメラのズームイン・アウトが任意で行えないため、敵がどの程度の姿勢で動いているのかが確認しにくいことが挙げられます。敵の種類が多くなってくるゲーム中盤から後半にかけて、多数で攻めてくる敵の大きさや姿勢に合わせて自分のキャラクターはどの腕の高さで攻撃させれば良いのか? という判断を求められるのですが、視認性が悪くなりやすいこともあり、肝心なときに攻撃が当たらないという状況がよく起きていました。
後半には攻撃を無効化するバリアボットが敵の周囲に浮遊していることがあるのですが、ゲーム自体のライティングのせいもあって、どの位置にいるのかがわかりづらくなることもあります。
アクション要素としてこの腕上げ行動を操作系に取り入れていると思うのですが、いかんせんシューター要素とのかみ合わせがうまくいっておらず、当たるか当たらないかの判断を多勢の敵に対して行うには、現状のバランスでは忙しすぎるような印象を受けました。もし、弾は発射されているのに攻撃が当たらない! という状況に陥った場合は、まず自身のキャラクターの姿勢と腕上げ動作を確認してみましょう。
攻撃属性を見極めることにより、
戦闘を優位に進められる
物理、爆発、火炎、デジタルなど、攻撃行動の種類にあわせて属性が設定されており、それによる効果の有利・不利が存在します。ダメージアップ・ダウンが主な効果で、プレイヤー・敵を問わず装備している武器や防具(敵の場合はどのような存在であるか)によって決まっています。敵の姿や攻撃時に表示されるダメージ表記を把握することである程度弱点を推測できますが、たいていの場合、生身のパーツがある生き物は物理的な弾丸や火炎、小型のモンスターは物理や爆発系、サイボーグやロボット系といった機械はデジタル属性といった弱点が割り当てられているようです。
プレイ中に攻撃を当ててみると、時折装備中の武器が実際に有している能力値よりも明らかにダメージ効率が悪くなることがあります。そうした状況に直面した場合は、一度手持ちの装備を見直してみると良いかもしれません。数値上での単発威力・DPSが低い武器であっても、その武器が持つ属性が敵の弱点であれば、それ以上の効果を望めることがあります。
また、プレイヤーが装備する防具にもおなじく属性のステータスがそれぞれ割り振られており、物理属性に強いもの、デジタル属性に強い物など特定の攻撃に対して効果を発揮するものがあるうえ、防具によってはプレイヤーのスキルポイントをブーストしてくれるものもあります。武器とは違いアップグレード要素はないため、さまざまな種類を所持しておくとどんな敵に対しても幅広く対応できるでしょう。
バグや未翻訳、最適化不足などが未だ散見される
『The Ascent』はPC版だけでもMicrosoft Store版やSteam版と2つのプラットフォームで販売・配信されています。これはある程度プレイしたのちに発覚したことなのですが、じつは発売当時Store版とSteam版とでは実際に配信されているバージョンが違っていたらしく、前者でプレイしていた筆者は最適化不足に悩まされていました。レビュー時のゲームバージョンは2.0.5.0、現在ではSteam版と同等のアップデート(バージョン2.1.4.0)が加わり、最適化も進んだおかげでゲーム内でのカクつきは少しずつではありますが減った印象を受けます。
しかし、そうしたアップデートを適用したにも関わらず、クエスト進行不能バグや戦闘中の爆破、建物・オブジェクト崩壊時などにカクつき、日本語翻訳がされていない箇所があったりするのは変わらないままでした。推奨スペックを満たしつつ、環境設定を最低にまで下げたとしても未だカクつきが起きてしまっています。
これがゲームプレイに関してさほど問題ないレベルであれば良いのですが、本作は一発の攻撃を食らうだけで命取りとなってしまう場面も多く、瞬時の判断が必要になるゲームプレイのため、戦闘時の爆発でさえカクつくとなるとストレスにしかなりません。
そして、本作に搭載されているオンライン・オフラインCo-opモードに関してはリリース当初からバグがいくつか報告されていたうえ、なかには所持している装備品が消失してしまうバグもあるようです。
実際に新しいキャラクターを作成してオフラインCo-opを試した際には、すでにゲームをクリアしたキャラクターをホストとして、新しく作ったキャラクターを呼び遊んでみたところ、クリア済み側の進捗状況が新キャラクターにも同様に適用・保存されてしまい、レベル1のままクリア後の世界に放り出されてしまいました。メインクエストはすでにすべて終えてしまっているため、新規ゲームを開こうにもキャラクターを削除しないと進捗度をリセットできないようになってしまいました。
これはバグなのか、そもそものゲーム側の仕様なのかは現在検証できておらず不明ですが、もしフレンドとCo-opする際はフレンドと同じタイミングで新しいキャラクターを作成するか、せめてゲーム攻略の進捗度が近い者同士でプレイすることをおすすめしたいです。
バグ取りや翻訳適用はもちろんのこと、最適化に関しても今後のアップデートは必須になるでしょう。
粗さが目立つものの、
ゲームが持つ魅力は確かに存在している
本作はゲームプレイに関する戦闘システムの不和や、全体を通じたバグ・最適化不足を中心に粗さをどうしても感じてしまうものの、「サイバーパンク」というジャンルをこれでもかというくらいに表現できているビジュアルと世界設定に、いつの間にかハマってしまっている人も多いタイトルだと私は感じます。個性的な装備とスキル、魅力的な登場キャラクターたち、プレイヤーがたどるストーリーはサイバーパンク体験として良質なものになっています。PC版においてもいくつかのプラットフォームで展開されているので、サイバーパンクが好き! という方はもちろん、シューターとしての爽快感を味わいたい方も本作をぜひプレイしてみてほしいです。
The Ascent (C) 2021 Neon Giant AB。版権元Curve Digital Publishing Ltd.
●タイトル:The Ascent
●ジャンル:アクションシューティングRPG
●発売元:Curve Digital
●開発元:Neon Giant
●プラットフォーム:PC(Steam、Microsoft Store)、Xbox Series X|S、Xbox One
●発売日:2021年7月30日
●価格:3980円[税込]
●必須スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー:Intel Core i5-3470 または AMD FX-8350
メモリー:8GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX 660 または AMD Radeon R9 390X
ストレージ:35GB
●推奨スペック
OS: Windows 10 64bit
プロセッサー:Intel Core i7-6700K または AMD Ryzen 5 2600
メモリー:16GB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX 1070 または AMD Radeon RX 5700
ストレージ:35GB
●公式サイトURL:https://the-ascent.games.dmm.com/
●ダウンロードサイトURL:
Steam https://store.steampowered.com/app/979690/The_Ascent/
Microsoft Store https://www.microsoft.com/ja-jp/p/the-ascent/c27ql5jbkq8m
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