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プロシーンの観戦はこんなに面白い! 『LoL』キャスターkatsudion氏に聞く【前編】

インタビュアー●山口佐和子
写真撮影●岡野繁弘、山口佐和子

リーグ・オブ・レジェンド』(以下:LoL)が2016年に日本サービスを開始した時、開発運営会社Riot Games公認のもとに日本公式トップリーグになったのが「League of Legends Japan LeagueLJL)」だ。日本サーバーが存在しなかった頃からオンラインで有志が続けてきた大会を母体とするこのリーグだが、2015年のオフライン開幕戦時にはたった100人程度の観客しかいなかった。しかし公認トップリーグとなってからは開催規模を拡大し続け、2016年春からは全試合がスタジオでのオフラインプレイとなり、この夏の決勝戦である「LJL 2017 Summer Split Final」では幕張メッセイベントホールに何千もの熱気が充満する規模にまで成長している。

そんなLJLには、全世界で運用されている「二部制」システムが採用されている。一部リーグの下位チームと、二部リーグの上位チームが、一部リーグの参加権を賭けて毎スプリットの最後に戦うのだ。一部リーグのキャストは日本初の『LoL』専属キャスターであるeyes氏とアナリストのRevol氏が担当しており、数年来のコンビネーションから生み出される実況解説は、ゲームに明るくない初心者にとってもわかりやすいと評判である。

しかし、たった2人のキャスターで二部リーグの実況解説までこなすのはスケジュール的に到底無理な話。そこで2016年より二部リーグ「LJL Challenger Series(CS)」をキャストしているのがkatsudion氏となる。2017シーズンが終わろうとする中、eyes氏に続く2人目の『LoL』専属キャスターとしてすっかりおなじみになったkatsudion氏。編集部は8月26日に行われた決勝戦後、彼にインタビューを敢行した。『LoL』を心から愛するkatsudion氏の熱意がほとばしるロングインタビューを、2回にわたってお届けする。

『LoL』キャスターkatsudion氏

『LoL』試合観戦の楽しさ

──まず『LoL』の試合って、キャスターとして見ていて何が楽しいでしょうか。観戦したことのない人もいると思うんですけど。

katsudion:僕は結局プレイヤーだったので、プロの大会があるんだって言われて初めて見たんですけど、何にもわかんないじゃないですか。ただ、自分にできないことをやってのけてるのを見て「うわーすげえな!」というのが始まりなのは間違いないです。

そこから選手に入って……ああいうプレイをするあの選手が気になると注目してから、次はその選手のストーリーやチームの成り立ちに触れたりしていって、パーソナルな部分に触れていって、ファンになっていく。ゲームの中のキャラクターとして選手を見るんじゃなくて、ひとりの人間として見てさらに面白さを感じていくっていうふうに、段階がシフトしていきましたね。

──今、最初見始めた時は何が起こってるのかわからないっていう話が出たんですけども、何が起こっているかをわかり始めるために注目したらいいところってあります?

katsudion:プレイしている場合は2パターンあって、もっとたくさんゲームをするか、わからないことをわかるようになるか。前者は、もう本当に単純に、そのゲームをプレイすることですね。eSportsはプレイと観戦というのがどうしてもある程度つながってしまうんです。だから、全く知らない人にとってわかりづらいっていうところは、ひとつの側面としてあります。プレイをしてない場合も2パターンあって、ひとつは人が好きになっていくパターンで、LCK(韓国リーグ)とかそういうファンがたくさんいます。選手たちがかっこよくて仕方がないみたいな。

──アイドル化してるパターンですね。

katsudion:そう。もうひとつは、プレイせずに観戦がしたいからゲームのことを勉強していくパターンがあります。こっちはすごく難しいし、道のりが険しいと思うので、なかなかいないと思います。

今回のファイナルとかがそうだと思うんですけど、こういうオフラインのイベントってすごく入りやすいんです。
なぜかっていうと、何にもわかんないけど、みんなが熱狂してるっていうのはわかるんですよ。するとやっぱり気になるし「次も見に行こう」とか「なんでみんなこんなに熱狂してるんだろう?このゲームやってみようかな」とか、興味につながると思うんですよね。オフラインのイベントってすごく大事だと思っています。僕ものめり込む原因のひとつになったのが、プレイヤーとして参加したオフラインの大会です。

──なんにせよ、どんどん深くに飛び込んでいくと、どんどん面白くなるっていう。

katsudion:それは間違いないですね。

普段は配信画面の中で戦うプロたちと直接触れ合えるのも、オフラインイベントの魅力だ

プロの試合の魅力とは

──実際にプレイするプレイヤーがプロの試合を見てると、学ぶところが必ずあると思うんですけど、どんな点を見ていたらいいでしょうか。

katsudion:ものすごく単純なのは、アイテムビルドですよね。見ればわかるので。なんでこのビルドをしたのかっていうのは実況解説が解説してくれる。じゃあこれはこういう時に積めばいいんだってことになるし、今だったらキーストーンとか、細かい所の取捨選択をするところだけでも参考になるっていうのはあると思いますね。TwitterやSNSの情報もあるとは思いますけど、「ドランリングスタートのジン」をLJLで初めて知った人もいるかもしれない。「プロが使ったなら強いんだ」ということで、とりあえずやってみようという人もいると思います。

大会が終わった後は、そこで出てきた面白いピックって流行ったりするんですよね。細かいプレイは真似できないかもしれないけれど、こいつが強いんだというのがわかるだけでもいいですよね。プロの間ですらありますからね。Fakerが使ったから他の国で流行るみたいな。

──5人のチーム戦ならではの観戦の魅力っていうのは、どんなところがありますかね?

katsudion:僕がすごく魅力的に感じるのは、やっぱりメンバー同士の人としてのつながりですかね。あと、選手っていっても、みんな若いんですよ。僕もあれほど若くはないので(一同笑い)。そういう若い彼らががんばっているのを見るのはすごく楽しいですよね。

僕は単純にもともとプレイヤーだったからこそ、チームを組んでやってるっていうのが、とてもうれしいんです。チームを組むってことを自分がずっとやってきたので、チーム内でのつながりとか、そこで生まれるものがすごくわかるんですよ。一人ががんばっても勝てない、チームで一致団結して目的を達成していかないと勝てないからこそ、必ず団結が生まれるんです。団結なくして勝てるチームってほんとないと思います。

今の『LoL』における選手の実力っていうのは、全世界のトップ選手を比べても、個人レベルだけだったら本当に僅差って言われてるくらいなんですよね。そこで差がついてるのは、チーム内のコミュニケーションだったり戦略だったりという部分、つまり「5人」の部分なんですよね。たとえどんなにFakerっていう選手が目立っていたとしても、そこに付随する4人といっしょに、全員がチームにならないと結局勝てない。さらにスタッフであったりコーチであったり、本当に大勢のメンバーがチームとして戦っている、というのがいろんなところで垣間見えるのがいいんだと思いますね。

──そこを逆に活用して、ポジションを変えてみたり、ひとり入れ替えてみたりすることで、戦術をガラッと変えてくるようなチームもあったりして、とても面白いですよね。

katsudion:その中でも一番よかったのは、韓国の「SKT」というチームがやっていた方法です。去年のSKTにはBengiとBlankという2人のジャングラーがいたんですが、単に選手を使い分けるんじゃなくて、Bengiが出てる時に控室でBlankがその試合を見ておくんです。その次の試合に選手交代でBlankが出た時に、残りのメンバーにFakerがやられたガンクルートを彼が伝えるとそれが改善できて、相手に同じことをさせないっていうやり方です。

ただ入れ替わるだけじゃなくて「6人目として機能している」というのがすごい理想的なチームだなと感じたので、本当に難しいですけど、どのチームにもそのようになって欲しいなと思います。

世界最強のミッドレーナーの名をほしいままにするFaker選手だが、彼ひとりでは勝利をつかむことはできないだろう。
写真:LoL Esports Photos

今から見始める『LoL』プロシーン

──プロプレイ全般について聞いていきたいんですけど、今日「LJL」夏の決勝戦が終わりまして、今から『LoL』のプロシーン、日本を中心として見ていこうと思ったら、どんなところに注目していったらいいでしょうか。

katsudion:今から見るんだとするとたぶん、突然選手を見ろと言われてもきっとわかんないと思うんですよ。これから1か月以上に渡って開催される「WCS(世界大会)」があります。今回は時差が1時間しかないので、日本時間で見やすいんですね。日本代表チームを見るというのもひとつですけど、そこで行われる大会というのは間違いなく世界最高峰のレベルで、いろいろなピックやプレイが見られると思います。

本当に初めて見るんだったら、応援するチームを決めたりせず、とりあえず見てみてほしいですね。自分の気になるチャンプを使ってるプレイヤーから始めて、そのチームを知っていく。「これを見ろ」っていうんじゃなくて、とにかく面白いのは間違いないです。それに世界最高レベルのプレイが見られる大会なので、空いている時間に見てみたら、面白いポイントは自然に見つかるんじゃないかな。

始めから大会を見るというのはけっこうハードルが高いと思うんですよ。僕もそうだったんですけど、プロプレイヤーのソロキュー配信を見るのがすごくいいと思うんです。大会のゲームカメラっていうのは、試合の展開に合わせてシーンが進んでいくんです。でもソロキュー配信っていうのは、そのプレイヤーをずっと見ていられるんですよね。アイテムの購入からCSの取り方から、全部見られるんです。なので、そのプレイヤーにフォーカスして見ていられます。本当に参考になります。日本人プレイヤーだったら、質問すれば答えてくれる方もいますから、そういうところから入るのも僕はいいんじゃないかなと思っています。

それで、この間いろいろ教えてくれた人が出ている大会を見ようという入り方も、僕はすごくアリだと思うし、入りやすいんじゃないかなと。

──決して大会観戦だけが「見て楽しむLoL」ではない、と。

katsudion:僕がジャングラーの研究をずっとしてた時は、有名配信者のNightblueが次のパッチでどういうジャングルをするのかずっと見てたりしてました。今だったら、生配信で見なくていいんですよ。自分の使うチャンプの名前に「Challenger」ってキーワードを足して動画を検索すればいいんです。仮に英語を喋ってるとしても、何やってるかはだいたいわかりますし、得られるものはたくさんあります。

──むしろ、やってることや言ってることがわからない配信であっても、プレイを理解しようとすると自然とゲームに対する理解が深まっていきますよね。

katsudion:そうそう、だから何にもしない状態からそれを見てもわかんないと思いますけど、自分が使っているチャンピオンならある程度はわかるじゃないですか。それこそさっき言ったように、日本の選手の配信なら、普通に質問に答えてくれますよ。

好きな海外プロチーム「Fnatic」の魅力

──今年のWCS出場チームがだんだん決まってきてるんですけど、日本以外のチームだとどこのチームがお好きですか?

katsudion:EU LCSの「Fnatic」ですね。特に好きな選手はADCのRekklesです。僕、好きなチームはけっこういっぱいあるんですけど、Fnaticは特徴がすごくわかりやすいので特にオススメしやすいと思っています。

Rekklesはもともと17歳で天才だって言われてデビューした選手で、1回チーム移籍したこともありましたけど、Fnaticというチームを背負うところまで成長したんですよね。コーチと同じくらい発言力があるんじゃないかと。彼の象徴的なピックである「ケネンADC」は、まちがいなく彼が作ったもので、他のチームには真似できないんですよ。彼にしかできない。スプリットプッシュがうまいとかいろいろ技術の話もあるんですけど、EUっていう地域自体がけっこう、特殊なピックをするところなんですよね。現行のパッチにおいて挑戦的なピックをするんです。LCKはどちらかというとセーフティ、NAはなんていったらいいんだろう?

──カオス、かな。

katsudion:そうですね、混沌としてます。ただEU LCSというのは、先進的なピックを逆にLCKが取り込んだりする先進的な地域なんですよ。今のメタだとADCがキャリーとしては中心となってきてはいるんですが、Fnaticというチームは以前から常にRekklesを中心にゲームを作ってきたんですね。ケネンADCが飛び込んでシェンのアルティメットがあわせるとか、すごい特色のあるチームです。しかもそれに今年から、以前「Dark Passage」っていうトルコのチームで戦ってたCapsというミッドレーナーが17歳を超えたので入ってきた。サポートのJesizも今年頭からの加入なんですが、Fnaticの一員として実際にしっかり戦えてます。ピックも面白いし、戦い方も面白いし、配信もあるので、僕はあのチームがけっこうオススメですね。EU LCSは配信が0時スタートなので、がんばれば見られるかなと。

今年から毎週の対戦もオフラインスタジオからの配信となったLJL。欧米LCSのように毎週スタジオでの生観戦ができるようにはなるのだろうか

現在のメタゲームを見る

──katsudionさんの視点から見て、今のメタって簡単にどんな感じでしょう?

katsudion:基本的にはタンクメタですね。それを溶かすためのレイトキャリーがいて、それにカウンターとなるファイターピックがほんの少しだけいる。タンクメタを中心に回っていると思います。

──タンクメタで、見ていて面白いところってありますか?

katsudion:ドラフトはどのメタでも面白いしなあ。うーん……難しいのは、『LoL』って不要なポジションが皆無なんですよね。そんな中で注目するとしたら、ADCですかね。今日の第5試合がそうだったように、最終的に相手のチームを全て溶かしきる存在になるのはADCなんです。

──タンクを溶かしきれないADCはもうメタから完全に外れちゃっていますが、どうでしょう? たとえばエズリアルなんて、昔はけっこう強かったですけども。

katsudion:エズは難しいですね。割合ダメージとか、継続的にダメージを出せるものを持っていない。クリティカルビルドともあまり相性が良くない。

──ケイトリンもナーフ(弱体化)で完全に消えましたよね。一方で、タンクメタになると、コグ=マウやヴェインのような確定ダメージ持ちの「超ハイパーレートキャリー」が出てくると言われつつも、微妙に出てきてないような気もします。

katsudion:彼らは攻撃射程が短いんですよ。ただコグは今日もバンされてましたし、全然いけると思います。コグ=マウのいいところは、レイトキャリーの割には弱い時間があまり長くないところです。中盤にパワースパイクをある程度迎えるので。あとタンクメタに合わせて言及するのなら、アーデントセンサーメタですね。今後調整が入る可能性は十分にあると思うんですけど。

──7.17パッチの変更で終わると思います?

katsudion:まだ読んでないです。競技シーンは7.15でやってるんで、そこまでしか頭に入ってないんです。終わるかどうかは変更後のボーナスの内容によるかな。平均化されるんでしたっけ。難しいですね。積むしかないみたいなところもあるので、積むには積むと思います。昔アビサルがいくらナーフされても積み続けられたのと同じですね。攻撃速度が上がるのもそうですけど、ADCがライフスティールを積まなくていいっていうのが、むちゃくちゃでかいです。あれで回復を得られるので。

9月下旬から始まる世界大会、日本代表チームの結果を予想

──7月にあった国際大会「Rift Rivals」日本が優勝しましたよね。あの結果を見て、今回WCSでどこまで行けるとか、予想できますか?

katsudion:予想ですか。んー、今回のプレイインがかなりチーム数多いですよね。NAの第3シードとかもですよね。

Rift Rivalsの時は「GIGABYTE Marines(GAM)」に勝ちましたからね。あの時のGAMっていうのは、チームメンバーがMSIの時から変更されたんですけど、それによってボットレーンから作り出せるようになっていたので、パワーは増していたんじゃないかという気がするんですよ。そこに真っ向から勝つことができたので、かなり上に行くんじゃないかなと。とりあえずプレイインステージは抜けて欲しいなという希望がありますけどね。

──うまく乗ってプレイインを抜けて欲しい、願望込みで。

katsudion:抜けてもいいくらいの力はあるんじゃないかなという気がします。戦ってみないとどうしてもわからないところはあるんですけども。

──プレイインでぶつかるチームというか地域、強いところってどこだと思います?

katsudion:過去に戦ったことのあるGAMは、過去の成績からすでにグループステージ進出が決定しています。間違いなく強いですよね。あとはなんだかんだでNA、五大地域に含まれてるチーム……NA、EU、LMS、LPL、この4地域の第3シードは強敵でしょう。

GAM相手は勝ってはいるんですけど、GPL(東南アジア地域)とLMS(台湾・香港・マカオ地域)の速いゲーム展開についていけるかが問題になると思います。日本という地域全体の特色だと思うんですが、レイトゲームになってチームを作っていって、集団戦に勝つっていう構成を今日もRampageがやってましたよね。そういう展開って序盤が弱点なんですよね。ピックの傾向っていうのも「序盤に決めきる」のではなく「レイトゲームになったら勝てる構成を作る」という感じがあるので、そこを突かれなければいいのかなあというのが、一抹の不安としてあります。彼ら自身もわかっていると思うので、練習・対策はすると思います。

──Rampageはけっこう集団戦に依存している感じのチームなのかなと見ていて思うので、確かにそこは心配ですね。WCSの日本語配信はあるんですよね?

katsudion:はい、全試合の配信を予定しているので、皆さん楽しみにしていてください。



まもなく始まる世界大会WCSの配信には、katsudion氏も日本語配信のキャスターとして参加する見込みだ。ぜひ試合スケジュールを参照の上、公式配信をご覧いただきたい。

ロングインタビュー後編では、katsudion氏がキャスターになるまでと、キャスターになってからの道のりを聞く。

©2017 Riot Games, Inc. All rights reserved.

■後編はこちらから
eSportsキャスターはどこから来て、どこへ行くのか。『LoL』キャスターkatsudion氏に聞く【後編】

■関連リンク
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