GAME PCゲームで勝ち抜くための情報満載!
【懐ゲー企画】『ワイルドアームズ アドヴァンスドサード』口笛と荒野と銃声と「ッ!」のRPG ― 連載:2001年 ゲームの旅―
今回から連載がスタートする「2001年 ゲームの旅」は、1990年~2000年代の名作ゲームを紹介するコーナーだ。国内だけでミリオンセラータイトルは200本近く誕生し、さまざまな名作がファンを魅了していった。そんなあの時代の、ちょっと懐かしいあのゲームをいまいちど振り返るという企画である。「プラットフォーム問わず、幅広く、どんなゲームでもいい!」とのことなので、PCゲームではないタイトルも扱いたいと思っている。ということで、早速第1回はPlayStationタイトルからセレクトしよう。
プレステを代表する名作RPG
第1回で取り上げるのは、PlayStation 2向けソフト『ワイルドアームズ アドヴァンスドサード』(以下『WA3』)だ。『ワイルドアームズ』シリーズは、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)より発売されたRPGシリーズで、ナンバリングタイトル6作品(初代のリメイクである『アルタ―コード:F』も含む)と、外伝的作品であるシミュレーションRPG『クロスファイア』の合計7作品が発売されている。
そして『WA3』が発売されたのは2002年3月14日。ほぼ同時期にリリースされたタイトルには『キングダム ハーツ』の第1作などがある。
▲“口笛と荒野と銃声のRPG”を象徴する作品となった『ワイルドアームズ アドヴァンスドサード』
なぜ、第1回目にしてこの作品を取り上げたのか、疑問に思う方もいるだろう。それこそ、『キングダム ハーツ』はミリオンセラーになったし、そもそも「RPGなら『ドラクエ』か『FF』だろ!」、「むしろお前の趣味だろ!」と言われるのももっともな話。
趣味なのは間違いない(笑)。だがしかし、それだからこそ今はもう新作が出ていない、なおかつ2000年代を彩る名作だった『ワイルドアームズ』シリーズを、それもシリーズの象徴とも言える世界観を持つ『WA3』を取り上げるべきだと思ったのである。いつか再び、完全新作とともに復活することを願って……。
さて、話は戻って『WA3』へ。舞台は、徐々に滅びの道を辿り荒廃が進んでいる世界“ファルガイア”。水ではなく砂の海が地表を覆い、大地にもほとんど植物が存在せず見渡す限りの荒野が広がる、まさに終末の世界である。
主人公のヴァージニアたちは、銃を手に危険とロマンを求めそんな世界を渡り歩く“渡り鳥”として、冒険を繰り広げていく。強き者だけが生き残れる、殺伐とした、まさに西部劇のような世界。なるけみちこ氏が作曲を手掛けた、口笛の音色が鳴り響くフィールドやバトルの音楽も、その雰囲気をより濃く演出してくれる。
『ワイルドアームズ』シリーズには、“口笛と荒野と銃声のRPG”というキャッチフレーズがつけられているが、本作はシリーズでももっともそのフレーズにふさわしいタイトルだと言えよう。
大人こそ楽しめる痛快ストーリー
本作の最大の魅力は、不器用ながらもアツい魂を持ったキャラクターたちの存在だ。とくにライバルとして登場するも、義理人情に篤くむしろ頼れる仲間として何度となく主人公たちのピンチを救ってくれる“シュレディンガー一家”や、宿敵として幾度も退治することになるジェイナスなど、サブ&敵側にも魅力的すぎるキャラクターが揃っている。▲小説を読むことによってそのキャラクターになりきってしまうという、主人公を食うほどの個性の持ち主・マヤなど、サブキャラクターたちの尖り方は尋常ではない
また、PlayStation 2本体の内蔵時計と連動して、毎日異なる自作の記念日を教えてくれる少女アーメンガードなど、街の住人にもユニークなキャラクターがたくさんいるのも楽しい。
むしろ、ストーリー中盤までは自分の正義に固執するあまりすぐ周囲が見えなくなってしまう主人公ヴァージニアや、隠し事ばかりのジェット、クライヴなど主人公パーティーサイドのほうがプレイヤーをモヤモヤさせてくれるのである。そんな彼女たちも、ストーリー終盤になると別人のように大きく成長を遂げるのだが……。
▲主人公のヴァージニア。自己主張が強い割には空回りすることがほとんどな、残念ヒロインでもある。しかし、その伸びしろはとんでもなかった
その代わりと言っては何だが、個性的なサブキャラクターたちの存在が盛り上げてくれるので、ストーリーそのものの評価はかなり高い。ストーリー面ではシリーズ第2作の『セカンドイグニッション』を最高傑作に挙げる人も多いが、筆者は20代以上の人にオススメの作品を聞かれたら本作を推している。
主人公たちの未熟さ、身勝手なオトナの事情ばかりが飛び出してくる元凶など、プレイヤーに“大人であること”が必要とされるストーリーではあるが、それらを許容できるようになると、おもしろさが10倍くらい変わってくるからだ。とくに決してハッピーとは言えないエンディングで見せる彼女たちの最高にクールな反骨心は、10代の少年よりも、何かと抑圧されて鬱屈したものを抱えている社会人には痛快に感じられるのではないだろうか。
ちなみに、本作では後にいくつものアンソロジーコミックが刊行されている。関係者がマンガ好きだったから……という噂もあるが、二次創作しやすいキャラクターとネタの宝庫だったストーリーがその源泉にあったのは間違いない。
▲ぶっ飛んだキャラクターばかりなので、原作に遠慮なくイジれたのかもしれない
それらのキャラクターや、アツすぎるストーリーを作り出してきたのが、シリーズの産みの親でもある金子彰史氏。現在は、アニメ『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズの原作、シリーズ構成などを手掛ける“アニメの人”として活躍中だが、『ワイルドアームズ』シリーズをプレイすると、『シンフォギア』も根底に流れる魂が同じだと実感できるはず。
それを象徴するのが、“金子節”と呼ばれる独特のセリフ回し。語尾の「ッ!」は特に有名だが、敵との対決の際にこちらが恥ずかしくなるくらいの真っ直ぐな口上を斬り合うアツいやり取りが展開したり、時にクールな二枚目キャラが中二的な本音を覗かせたりと、ヒーローものっぽいのにどこか親しみやすさも感じさせるのが特徴だ。
▲これぞ“金子節”! 『シンフォギア』ファンなら『ワイルドアームズ』シリーズはぜひプレイしてみてほしい
また、各地の街の会話やイベントシーンなどで、シリーズ作品や、過去の人気映画、マンガ、アニメ、特撮などのパロディーネタが盛り込まれているのも金子作品の特徴。『フォースデトネイター』や『フィフスヴァンガード』など、本作以降の作品ではかなりわかりやすい形で出てくるので、興味がある人は確かめてみてほしい。
もちろん、本作の魅力はキャラクターやストーリー要素以外にもたんまりとある。
バトルは、オーソドックスなコマンド・ターン制のシステムをベースに、装備変更などによる敵との相性がモノを言う戦術的な内容となっており、慣れるとグンとラクになって楽しい。
ダンジョンに設けられた、パズル的な謎解き要素もかなり豊富。“グッズ”と呼ばれるアイテムを使って、随所に設置されたギミックを解いていくのが、ダンジョン攻略の楽しみのひとつとなっている。
▲ダンジョンを彩るギミック攻略。キャラクターを切り替えながら、それぞれに設定されたグッズを駆使して突破していくのだ
そして、シリーズ恒例の隠しダンジョン“ABYSS”や隠しボス“ラギュ・オ・ラギュラ”、マップ作成など、やり込み要素もふんだんに盛り込まれている。クリアーだけなら40時間はかからない作品だが、やり込み要素を全部こなしていくと、その倍近くは遊べるはず。
売上はミリオンに届かなかったが、本作は滅びゆく荒野の世界を舞台にした完成された世界観やすばらしいBGM、とにかくアツいキャラクターたちとストーリー、それらをつなぐバトルややり込み要素など、RPGに必要なものがすべて詰まっている作品だった。10年以上新作が出ていなかったのだが、このほどスマートフォンで新作が出るという。そちらも楽しみにしつつ、やっぱり家庭用ゲーム機でがっつり遊べる新作を願ってやまないのであった。
©Sony Interactive Entertainment
■関連リンク
WILD ARMS.net
http://www.jp.playstation.com/scej/title/wildarms/
【コラム】2001年 ゲームの旅
- 【懐ゲー企画】『ランブルローズ』プロレスもセクシーも全力で — 連載:2001年 ゲームの旅—
- 【懐ゲー企画】『サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~』究極の様式美に敬礼! ― 連載:2001年 ゲームの旅―
- 【懐ゲー企画】『ワイルドアームズ アドヴァンスドサード』口笛と荒野と銃声と「ッ!」のRPG ― 連載:2001年 ゲームの旅―