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【懐ゲー企画】『サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~』究極の様式美に敬礼! ― 連載:2001年 ゲームの旅―
1990年~2000年代の名作ゲームを紹介するこのコーナー。ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)、セガ(現セガゲームス)、任天堂の3社がしのぎを削る“次世代ハード戦争”の渦中にあったこの時期には、さまざまな名作が生まれてきた。今回は、その中からセガの家庭用ゲーム機、ドリームキャストでの懐かしのタイトルをセレクトしよう。
もともとアーケードゲームで名を馳せ、家庭用ゲームでも『ソニック』や『バーチャファイター』、『セガラリー』シリーズなどアクション系の印象が強かったセガが、新たなファン層の開拓を狙って投入したのが、1996年9月27日にサターンで発売された『サクラ大戦』だ。
開発はPCエンジンの名作RPG『天外魔境』シリーズの広井王子氏が率いるレッド・エンタテインメントが手掛け、キャラクター原案は藤島康介氏、シリーズ構成・脚本はあかほりさとる氏、音楽は田中公平氏、メカニックデザインは明貴美加氏が担当。
当時、多少のアニメ・ゲーム知識があれば誰でも知っているような、人気クリエイターたちが名を連ねていたのである。広井氏の作品ではおなじみの「発売延期」を何度もくり返しながらも、ゲームのクオリティーは素晴らしく、大ヒットを記録した。
以後、シリーズを通してのゲームとしての難度の低さや、ギャルゲー要素もありつつ女性受けもしやすいキャラクター設定、ゲームと同じキャストが演じる舞台“歌謡ショウ”の成功などもあり、コアなゲームファンとは違う幅広いファン層を獲得することになる。
そして、続編でもあるサターン版『サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~』を経て、販売台数で苦戦を強いられていたドリームキャストの“キラータイトル”として開発され、2001年3月22日に発売されたのがこのドリームキャスト版『サクラ大戦3』なのだ。
設定は“太正時代”。“大”ではなく“太”である。そのため、大正のように15年で終わらず『サクラ大戦4 ~恋せよ乙女~』では年号が“太正16年”に突入している。もともと、華やかなりし“大正浪漫”の古き良き世界観が描かれていたのだが、蒸気機関で動く空飛ぶ超大型戦艦が登場するなど、技術的にはほとんどSF作品となっている。
さらに、日本からフランス・巴里(パリ)へと舞台も移り、もはや些末な時代考証などに囚われることのない、自由な世界観が構築されたのが本作なのである。携帯用通信機もあるので、ほとんど現代感覚で楽しめる(笑)。
そんな中、メインヒロインとなるのは5人の女性たち。
メインヒロイン5人は、過去2作品の8人とキャラクター的な被りがほとんどなく、それでいてバランスがしっかりと取れている。このあたりは「さすが」のひと言に尽きるだろう。森鴎外の『舞姫』に着想を得たエンディングには異論があるユーザーもいたようだが、実際はシリーズ完結編である『サクラ大戦4 ~恋せよ乙女~』にて一応の決着が迎えられることになる。
そのほか、美少女秘書のメル(CV:小島幸子)&シー(CV:かないみか)、熟女好きには総司令のグラン・マ(CV:相沢恵子)などがおり、帝国華撃団と比べると人数は少ないものの非常に粒ぞろいなメンバーとなっている。ちなみに、彼女たちには個別エンディングこそないが、信頼度を高めることで終盤で特別なイベントを起こすことができるように。
そして忘れてはいけないのが、プレイヤーの分身となる隊長で主人公の大神一郎(CV:陶山章央)である。軍のエリート出身ながら、個性的なメンバーたちや、プレイヤーのムチャな選択肢によって何かと振り回されがちな苦労人なのだ。一方で、シャワールームや女性用のお風呂に近付くと、なぜか「体が勝手に……」と言いながらのぞきを始めるお茶目な一面も(笑)。
なお、歌謡ショウ(※)では大神も含めゲームと同じキャストが出演しているのだが、大神を演じる陶山さんはキャスト陣の中ではほぼ後輩にあたるため、何かとイジられる役割になっている。歌謡ショウならではの演目や、身長197センチの桐島カンナを同150センチの田中真弓さんが演じるギャップなども併せて、ゲームとは違う魅力が味わえるので興味がある方は一度観に行ってみることをオススメする。
※歌謡ショウ: ゲームと平行して1997年より展開されている、“帝国歌劇団”によるミュージカル仕立ての舞台。その他、ライブやコンサート、巴里花組、紐育星組による舞台なども含めて現在も公演が続けられており、2018年1月30日からは男性キャストを中心とした“ダンディー商会”主催の舞台「続・花咲く男たち」(脚本:広井王子)が開催予定。
前2作のヒロインたち8人も、じつは本作にスポット参戦する。ちなみに、その間のみ主題歌が『檄!帝国華撃団III』となる。別に不倫をしているわけでもないのに、帝国華撃団と巴里華撃団のメンバーの板挟みになってオロオロする大神は見ものだ。
ドラマパート(イントロダクション)
↓
移動パート(劇場や街を散策しながら、隊員たちや街の人々と交流を深める)
↓
ドラマパート(イントロダクション)
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移動パート(同上)
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ドラマパート(イントロダクション)
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戦闘パート
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エンディング
↓
次回予告
最初の移動パートの後、CMが入る……と考えると、アニメと同じように感じるはず。各話で多少の違いはあるが、だいたいこの形で1話が構成されており、ゲーム全体も10話前後で完結する。シリーズ構成と脚本を手掛けたあかほりさとる氏も、その点にはこだわって作ったそうで、テンポよく楽しめるのが特徴と言えるだろう。
その中でメインとなるのが、劇場や街の散策を行う移動パートだ。
マップ上にヒロインたちを始めとしたキャラクターが表示されるので、プレイヤーは大神をそこへ向かわせてイベントを起こし、正しい選択肢を見抜いて仲を深めていくことになる。
しかし、後の時代に登場する数多のアドベンチャー形式のギャルゲー、乙女ゲーと『サクラ大戦』シリーズが異なるのは、選択肢がただの3択、4択ではなく、時間経過で内容が変化したり、キー入力の強弱でニュアンスを変更できるものがある、ということ。これが非常に“ゲームっぽい”感じがして楽しい。『サクラ大戦』シリーズが各方面で評価されているのは、こうした万人が楽しめるゲーム性の高さがあるのだろう。
また、選択で1度や2度失敗しても大勢に影響はないので、気軽に楽しめるユルさも魅力と言えるかもしれない。とにかく、会話のバリエーションが豊富なので周回プレイも結構楽しめるのである。
なお、周回プレイでは条件を満たすと大神が“黒髪の貴公子”なる称号を獲得し、戦闘パートでシリーズ最強とも言える実力を発揮するようになる。各ヒロインのエンディングやミニゲームでのハイスコアなど、そんなやり込み要素も用意されているのだ。
ただ、難度は抑えながらも終盤に向けてだんだんと長くなっていくため、ゲームに慣れたプレイヤーほど飽きてしまい、いつしか作業的にこなしがちになる。だが、特定のキャラクターを近づけさせたり、あえてピンチを演出することで発生する会話イベントもあり、じつはやり込みユーザーにとっても気の抜けない要素なのだ。
なお、戦闘パートでの各ユニットの強さは、それまでに獲得した信頼度などが大きく影響するため、ウケ狙いの選択肢ばかり通過してきたプレイヤーは、若干後悔することになる。
そして、『サクラ大戦3』でもっとも画期的だったのは、“ネオCG”と名付けられたムービーシーンだ。今でこそ当たり前となったCGを駆使したアニメーションだが、当時はとんでもなくお金も手間もかかるものだったのである。
とくにProduction I.Gが手掛けたオープニングは、当時「制作費数億円!?」という噂が流れるほどのクオリティーの高さで、ゲームファンを騒然とさせた。主題歌の『御旗のもとに』も『檄!帝国華撃団』にも劣らぬ名曲であることも付け加えておく。
ドリームキャスト版ですごかったのは、これほどまでのクオリティーを実現しておきながら、ムービーシーンの前後で“Now Loading”の文字が表示されることなくつねにシームレスに通常モードにつながっていたこと(残念ながら、PlayStation 2版では若干もっさりしている)。やはりゲームはストレスなく遊べるのが一番だ。
ヒロインを総入れ替えしながらもまったく魅力を減じさせず、会話の多彩さ、演出のすばらしさを向上させ、思い出補正も手伝ってドリームキャストにおける最高傑作と言っても過言ではない『サクラ大戦3』だが、じつは発売時点でセガは家庭用ゲーム機事業からの撤退を発表しており、ドリームキャストにとっては“徒花”となってしまった悲運の作品でもある。
とは言っても、その後広井作品としては奇跡のような制作期間の短さ(約10ヵ月と言われる)でリリースされたシリーズ完結編『サクラ大戦4 ~恋せよ乙女~』が発売され、メインキャストや舞台を一新した新作『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』もPlayStation 2で登場している。さらに現在でも定期的に歌謡ショウが開催されるなど、シリーズそのものはまだ続いている。
『サクラ大戦3』は現行ハードでリリースされていないため、遊ぶのはひと手間いるものの、今遊んでもまったく色あせず楽しめる作品である。何より、キャストが非常に豪華で実力派揃いなので、演技面では最近の作品以上に楽しめるかもしれない。アーカイブスやSteamなどでもう1回リリースしてくれないかな。新作でもいいけど!
©SEGA
セガゲームス
https://sega-games.co.jp/
サクラ大戦
http://sakura-taisen.com/
豪華すぎるスタッフ&キャスト、そして“前妻登場”
今回は、(現在のところ)セガ最後の家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」を代表するタイトル、『サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~』(以下、『サクラ大戦3』)を振り返ってみる。もともとアーケードゲームで名を馳せ、家庭用ゲームでも『ソニック』や『バーチャファイター』、『セガラリー』シリーズなどアクション系の印象が強かったセガが、新たなファン層の開拓を狙って投入したのが、1996年9月27日にサターンで発売された『サクラ大戦』だ。
開発はPCエンジンの名作RPG『天外魔境』シリーズの広井王子氏が率いるレッド・エンタテインメントが手掛け、キャラクター原案は藤島康介氏、シリーズ構成・脚本はあかほりさとる氏、音楽は田中公平氏、メカニックデザインは明貴美加氏が担当。
当時、多少のアニメ・ゲーム知識があれば誰でも知っているような、人気クリエイターたちが名を連ねていたのである。広井氏の作品ではおなじみの「発売延期」を何度もくり返しながらも、ゲームのクオリティーは素晴らしく、大ヒットを記録した。
以後、シリーズを通してのゲームとしての難度の低さや、ギャルゲー要素もありつつ女性受けもしやすいキャラクター設定、ゲームと同じキャストが演じる舞台“歌謡ショウ”の成功などもあり、コアなゲームファンとは違う幅広いファン層を獲得することになる。
▲田中公平氏による楽曲はまさに神曲揃い。とくに主題歌の『檄!帝国華撃団』は、20年以上経った今でもカラオケのランキングでだいたい上位に入っている超人気曲だ。振り付けビデオ&DVDを持っているファンも多い(筆者含む)
そして、続編でもあるサターン版『サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~』を経て、販売台数で苦戦を強いられていたドリームキャストの“キラータイトル”として開発され、2001年3月22日に発売されたのがこのドリームキャスト版『サクラ大戦3』なのだ。
設定は“太正時代”。“大”ではなく“太”である。そのため、大正のように15年で終わらず『サクラ大戦4 ~恋せよ乙女~』では年号が“太正16年”に突入している。もともと、華やかなりし“大正浪漫”の古き良き世界観が描かれていたのだが、蒸気機関で動く空飛ぶ超大型戦艦が登場するなど、技術的にはほとんどSF作品となっている。
さらに、日本からフランス・巴里(パリ)へと舞台も移り、もはや些末な時代考証などに囚われることのない、自由な世界観が構築されたのが本作なのである。携帯用通信機もあるので、ほとんど現代感覚で楽しめる(笑)。
そんな中、メインヒロインとなるのは5人の女性たち。
●エリカ・フォンティーヌ(CV:日髙のり子)
底抜けに明るく前向きだが、ドジで天然ボケな見習いシスター。“おはようダンス”の破壊力は今世紀最大級(なぜそんなことをしたのかは、後にOVA『サクラ大戦 エコール・ド・巴里』にて明かされる)。●グリシーヌ・ブルーメール(CV:島津冴子)
バイキングの血筋である貴族の令嬢で、とにかくプライドが高く短気。時折見せる“素”の表情はかわいい。残念ながらツンデレとはちょっと違うのだが、それもまた良し。●コクリコ(CV:小桜エツ子(現:小桜エツコ)
幼くして家族を失い(後に母親と再会する)、サーカスで育った少女。明るく元気で、空気が読めるしっかり者でもある。アイリスと違ってロリッ子ではなく、ボクッ子。●ロベリア・カルリーニ(CV:井上喜久子)
殺人以外のあらゆる犯罪をこなし、懲役1000年を超える罪状を誇る大悪党。声優・井上喜久子お姉ちゃんの真骨頂が見られる、おっかなくてセクシーなお姉さん。●北大路花火(CV:鷹森淑乃)
まさに大和撫子を体現した、奥ゆかしい日本人留学生。グリシーヌの家に居候している。巴里華撃団加入後は少し明るくなり、すぐ「ぽっ」となる。もちろん、それがいい!メインヒロイン5人は、過去2作品の8人とキャラクター的な被りがほとんどなく、それでいてバランスがしっかりと取れている。このあたりは「さすが」のひと言に尽きるだろう。森鴎外の『舞姫』に着想を得たエンディングには異論があるユーザーもいたようだが、実際はシリーズ完結編である『サクラ大戦4 ~恋せよ乙女~』にて一応の決着が迎えられることになる。
そのほか、美少女秘書のメル(CV:小島幸子)&シー(CV:かないみか)、熟女好きには総司令のグラン・マ(CV:相沢恵子)などがおり、帝国華撃団と比べると人数は少ないものの非常に粒ぞろいなメンバーとなっている。ちなみに、彼女たちには個別エンディングこそないが、信頼度を高めることで終盤で特別なイベントを起こすことができるように。
そして忘れてはいけないのが、プレイヤーの分身となる隊長で主人公の大神一郎(CV:陶山章央)である。軍のエリート出身ながら、個性的なメンバーたちや、プレイヤーのムチャな選択肢によって何かと振り回されがちな苦労人なのだ。一方で、シャワールームや女性用のお風呂に近付くと、なぜか「体が勝手に……」と言いながらのぞきを始めるお茶目な一面も(笑)。
▲各作品でヒロインごとに用意された、シャワーorお風呂シーン。『ドラ○もん』のし○かちゃんのお風呂シーンから続く、永遠不変のお約束である
なお、歌謡ショウ(※)では大神も含めゲームと同じキャストが出演しているのだが、大神を演じる陶山さんはキャスト陣の中ではほぼ後輩にあたるため、何かとイジられる役割になっている。歌謡ショウならではの演目や、身長197センチの桐島カンナを同150センチの田中真弓さんが演じるギャップなども併せて、ゲームとは違う魅力が味わえるので興味がある方は一度観に行ってみることをオススメする。
※歌謡ショウ: ゲームと平行して1997年より展開されている、“帝国歌劇団”によるミュージカル仕立ての舞台。その他、ライブやコンサート、巴里花組、紐育星組による舞台なども含めて現在も公演が続けられており、2018年1月30日からは男性キャストを中心とした“ダンディー商会”主催の舞台「続・花咲く男たち」(脚本:広井王子)が開催予定。
前2作のヒロインたち8人も、じつは本作にスポット参戦する。ちなみに、その間のみ主題歌が『檄!帝国華撃団III』となる。別に不倫をしているわけでもないのに、帝国華撃団と巴里華撃団のメンバーの板挟みになってオロオロする大神は見ものだ。
▲「前妻参上!」とファンが湧いた、『サクラ大戦』メインヒロインの真宮寺さくら登場シーン
アニメと同じ形式で進行するストーリー
さて、ここからはゲームシステムについて紹介していこう。ゲーム自体は、シリーズを通じてアニメ作品のような形で進行していく構成になっている。ドラマパート(イントロダクション)
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移動パート(劇場や街を散策しながら、隊員たちや街の人々と交流を深める)
↓
ドラマパート(イントロダクション)
↓
移動パート(同上)
↓
ドラマパート(イントロダクション)
↓
戦闘パート
↓
エンディング
↓
次回予告
最初の移動パートの後、CMが入る……と考えると、アニメと同じように感じるはず。各話で多少の違いはあるが、だいたいこの形で1話が構成されており、ゲーム全体も10話前後で完結する。シリーズ構成と脚本を手掛けたあかほりさとる氏も、その点にはこだわって作ったそうで、テンポよく楽しめるのが特徴と言えるだろう。
その中でメインとなるのが、劇場や街の散策を行う移動パートだ。
▲劇場や巴里の街、ブルーメール邸などのマップが表示され、行きたい場所を指定して各地でイベントを楽しむことになる。ただし、時間経過の概念があり、特定の時間にしか発生しないイベントも……
マップ上にヒロインたちを始めとしたキャラクターが表示されるので、プレイヤーは大神をそこへ向かわせてイベントを起こし、正しい選択肢を見抜いて仲を深めていくことになる。
しかし、後の時代に登場する数多のアドベンチャー形式のギャルゲー、乙女ゲーと『サクラ大戦』シリーズが異なるのは、選択肢がただの3択、4択ではなく、時間経過で内容が変化したり、キー入力の強弱でニュアンスを変更できるものがある、ということ。これが非常に“ゲームっぽい”感じがして楽しい。『サクラ大戦』シリーズが各方面で評価されているのは、こうした万人が楽しめるゲーム性の高さがあるのだろう。
▲“LIPS”と呼ばれる、『サクラ大戦』シリーズ独自の選択肢システム。『サクラ大戦3』からは、アナログパッドの入力具合で選択肢に強弱を付けられる“アナログLIPS”が採用されている
また、選択で1度や2度失敗しても大勢に影響はないので、気軽に楽しめるユルさも魅力と言えるかもしれない。とにかく、会話のバリエーションが豊富なので周回プレイも結構楽しめるのである。
なお、周回プレイでは条件を満たすと大神が“黒髪の貴公子”なる称号を獲得し、戦闘パートでシリーズ最強とも言える実力を発揮するようになる。各ヒロインのエンディングやミニゲームでのハイスコアなど、そんなやり込み要素も用意されているのだ。
▲ミニゲームの数やクオリティーも特筆ものである。当時、多くのユーザーがトラップの如くここで引っ掛かり、“完璧プレイ”をするために本編が進まなくなっていたという……
シームレスで展開するムービーシーン
戦闘パートも、本作の柱のひとつ。たとえば戦隊もので最後の荒野のバトルがなかったり、時代劇で最後に悪をこらしめるシーンがなければ、何となく寂しく感じるはずだ。日本人特有の“様式美”というやつである。ただ、難度は抑えながらも終盤に向けてだんだんと長くなっていくため、ゲームに慣れたプレイヤーほど飽きてしまい、いつしか作業的にこなしがちになる。だが、特定のキャラクターを近づけさせたり、あえてピンチを演出することで発生する会話イベントもあり、じつはやり込みユーザーにとっても気の抜けない要素なのだ。
▲信頼度が上がることもあるので、パーフェクトプレイを目指すなら見逃せない
なお、戦闘パートでの各ユニットの強さは、それまでに獲得した信頼度などが大きく影響するため、ウケ狙いの選択肢ばかり通過してきたプレイヤーは、若干後悔することになる。
▲その話で獲得した信頼度によって、能力値に補正がかかる。その数値は戦闘前や幕間でも確認することが可能だ
そして、『サクラ大戦3』でもっとも画期的だったのは、“ネオCG”と名付けられたムービーシーンだ。今でこそ当たり前となったCGを駆使したアニメーションだが、当時はとんでもなくお金も手間もかかるものだったのである。
とくにProduction I.Gが手掛けたオープニングは、当時「制作費数億円!?」という噂が流れるほどのクオリティーの高さで、ゲームファンを騒然とさせた。主題歌の『御旗のもとに』も『檄!帝国華撃団』にも劣らぬ名曲であることも付け加えておく。
ドリームキャスト版ですごかったのは、これほどまでのクオリティーを実現しておきながら、ムービーシーンの前後で“Now Loading”の文字が表示されることなくつねにシームレスに通常モードにつながっていたこと(残念ながら、PlayStation 2版では若干もっさりしている)。やはりゲームはストレスなく遊べるのが一番だ。
ヒロインを総入れ替えしながらもまったく魅力を減じさせず、会話の多彩さ、演出のすばらしさを向上させ、思い出補正も手伝ってドリームキャストにおける最高傑作と言っても過言ではない『サクラ大戦3』だが、じつは発売時点でセガは家庭用ゲーム機事業からの撤退を発表しており、ドリームキャストにとっては“徒花”となってしまった悲運の作品でもある。
とは言っても、その後広井作品としては奇跡のような制作期間の短さ(約10ヵ月と言われる)でリリースされたシリーズ完結編『サクラ大戦4 ~恋せよ乙女~』が発売され、メインキャストや舞台を一新した新作『サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~』もPlayStation 2で登場している。さらに現在でも定期的に歌謡ショウが開催されるなど、シリーズそのものはまだ続いている。
『サクラ大戦3』は現行ハードでリリースされていないため、遊ぶのはひと手間いるものの、今遊んでもまったく色あせず楽しめる作品である。何より、キャストが非常に豪華で実力派揃いなので、演技面では最近の作品以上に楽しめるかもしれない。アーカイブスやSteamなどでもう1回リリースしてくれないかな。新作でもいいけど!
©SEGA
セガゲームス
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サクラ大戦
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【コラム】2001年 ゲームの旅
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