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【TGS2018】阿修羅のごとく、ときど選手が優勝! 「ストⅤ AE ジャパンプレミア大会」決勝トーナメントレポート
2018年9月22日、23日と東京ゲームショウ2018で開催された「ストリートファイターⅤアーケードエディション ジャパンプレミア大会』、その熱戦の模様をレポートする。
・ネモ(日本/ユリアン、G)
・NuckleDu(アメリカ/キャミィ、ガイル、ミカ)
・ふ~ど(日本/レインボー・ミカ)
・Oil King(台湾/ラシード)
■ルーザーズサイド(22日に一敗している)
・ときど(日本/豪鬼)
・とらっしゅぼっくす(日本/バーディ)
・NL(韓国/キャミィ)
・ZJZ(台湾/メナト)
トップ8初戦は衝撃の幕開け
これから繰り広げられるであろう激闘への期待を受けて始まった第1試合。この日最初の試合のこの試合に、我々観客は度肝を抜かれることになる。
対戦カードは本サイトでも連載を持つ日本の社会人プロゲーマー・ネモ選手と、アメリカのNuckleDu選手だ。会場に集まりネモ選手を応援する日本の観客からすると、これ以上ないくらいに手強い相手。ネモ選手がユリアンを選ぶと、NuckleDu選手が選んだのはガイル。このガイルが2016年にカプコンカップを制覇したのだ。いま現在の強豪ガイル使いの中でも、その戦略・立ち回りは世界一の安定感を誇っているのではないだろうか。間違いなく、この大会でも優勝候補のひとりである。
そんな安定感抜群のNuckleDu選手のガイルにネモ選手のユリアンが襲い掛かる。ネモ選手の持ち味である強引なまでの攻撃がヒット。しかし、NuckleDu選手も突き放して自分の間合いを作ろうとする。それでも攻めるネモ選手。それを捌こうとするNuckleDu選手。それでもネモ選手は攻める、攻める、引くと見せかけて、やっぱり攻める。何度、NuckleDu選手は距離を開けようと試みただろうか。そのたびにネモ選手は強引なまでに攻め返していった。
技を出していないときも、少しでも動いたらいまにも飛びかかろうかという距離でプレッシャーをかけ続け、結果、ネモ選手がNuckleDu選手を攻め切り、なんと3-0のストレート勝ち。ずっとプレッシャーをかけ続け、NuckleDu選手に一瞬たりともラクな時間を作らせなかったネモ選手。その戦略がハマったということなのだろうが、あのNuckleDu選手が手も足も出せず、攻め立てられ続けてストレートで勝負が決まる様はあまりにもインパクトのある光景だった。
石油王を黙らせるふ~どの読みが冴える
続く第2試合は、やはり自分の読みを信じて攻めまくるスタイルの台湾のOil King選手と、日本のふ~ど選手が激突。序盤戦はお互いの攻めがぶつかり合う乱打戦となり、Oil King選手の無敵技が決まりまくったが、勝ちを見据えた大胆な誘いはふ~ど選手もできないわけではない。
続く2セットめ、技の空振りで反撃を釣ってのクリティカルアーツで接戦をもぎ取ると、Oil King選手の行動を読み切ったのか、続く3、4セットは反応と読みで相手の反撃を潰しながらずんずん前に出る“重戦車”と形容されるふ~ど選手の攻めが冴え渡り、3-1でふ~ど選手が勝利した。
新人プロゲーマーにベテランの洗礼
じつはこの日の大会、日本eスポーツ連合(JeSU)が主催となって開催されており、トップ8に残った日本人プレイヤーにはJeSU公認プロライセンスが発行されることになっていた。ネモ選手、ときど選手、ふ~ど選手らはすでにJeSUからのライセンスが発行されていたため、この日、新たにプロライセンスが発行されたのが、とらっしゅぼっくす選手だ。第3試合はその新人プロゲーマーと、「eスポーツ」なんて言葉がないころから戦ってきたベテラン、ときど選手との対決となった。
結果はときど選手が確実な攻めでとらっしゅぼっくす選手を3-1で圧倒。誰に何を認定されようが、実力が変わるわけではない、壁の高さを感じさせる試合となった。
最強キャミィ使いが見せたメナト対策
今年のカプコンプロツアーでも大活躍している韓国の最強キャミィ使いNL選手の前に立ったのは、前日に藤村選手やボンちゃん選手ら有力選手を破って上がって来た伏兵、ZJZ選手のメナト。じつはこのZJZ選手、年間を通じて行われているカプコンプロツアーを回っているわけではないので『ストⅤAE』ファンにはあまり知られていなかったが、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズのトッププレイヤーで、『ストⅤ AE』でもオンラインランキング上位にいるバリバリの実力者。これに対し、NL選手が用意してきた対策は、ノーゲージ状態での連続技に乏しいメナトに対して、ゲージが溜まるまえに多少の無理をしてでも攻めるという戦略だった。しかもその戦略を実行しているのが強気な攻めのキャミィを得意としているNL選手だというのも功を奏してZJZ選手は追い込まれ、決定的に突き放すことができずに勝負は決した。
決めた東大式阿修羅閃空 紙一重からの生還
とらっしゅぼっくす選手に勝って生き残ったときど選手の次の相手は、ウィナーズサイドでふ~ど選手に敗れてルーザーズに降りて来たOil King選手。試合は予想どおり、Oil King選手の持ち味である強気の行動をときど選手が冷静に対処していく展開に。
しかしそのスタイルで数々の勝利を掴んで来ているOil King選手、少しくらい対処されても攻撃の手を緩めることはなく、2-1と先行していたときど選手を逆転。セット数を2-2に戻したばかりか先に1本を取り、あとはクリティカルアーツをガードさせるだけ。この状態でOil King選手は画面端に追い詰めたときど選手にとどめのクリティカルアーツを発動。
当たればもちろん、ガードしても敗北という絶体絶命のこのタイミングで、最適な解答に気付いていた人はどれくらいいただろうか。ラシードの竜巻が巻き起こる中を、豪鬼が悠々と抜け出してくる。ここでときど選手が選んだ選択肢は『ストⅤ AE』では実用されることはほぼ皆無の“死に技”と思われていた「阿修羅閃空」という移動技だった。絶体絶命のシチュエーションを切り抜けたときど選手はフルセット・フルラウンドの決着ラウンドで、Oil King選手にとどめをさすことに成功。『ストリートファイター』シリーズで長年、豪鬼を使い続けていたときど選手の年季を感じる名シーンだった。
英雄は死なず! 最強のキャミィを完封
ウィナーズサイドではネモ選手に圧倒されたNuckleDu選手だが、ここではその本来の力をいかんなく発揮した。ガイルを画面端に追い込んでキャミィ有利の展開に持ち込みたいNL選手の心理を挫くように目の前に技を置き、それを嫌った相手の攻撃が止めば攻勢に転じる。英雄の要塞を攻め崩せる気配を一切作り出すことができず、NL選手は5位タイでトーナメント敗退となった。
ここまで全勝同士のウィナーズファイナル
第7試合はこのトーナメントで一度も負けていない同士のふたりによる、ウィナーズサイドの最終戦。NuckleDu選手を圧倒して勝ち上がったネモ選手と、Oil King選手を黙らせて勝ち上がってきたふ~ど選手の試合となった。ここまで充実のふたりの試合はまさかのワンサイドゲーム。ネモ選手の守りを物ともせず攻め込むふ~ど選手が、すべての選択肢を読み切っているかのように1ラウンドも落とすことなく、3-0のスコアでネモ選手のユリアンを圧倒した。8月末にカプコンプロツアー公式大会を制覇して以来、好調を続けるふ~ど選手が無敗のまま、ウィナーズとしてグランドファイナルに駒を進めることとなった。
ルーザーズファイナルへの切符を懸けた日米英傑対決
ウィナーズファイナルでふ~ど選手に敗れ、ルーザーズサイドに降りて来たネモ選手に挑むのはどちらなのか? ルーザーズファイナルへの残り一枚の切符は、大暴れするOil King選手をフルラウンド・フルセットの薄氷の勝利で抑え込んで来たときど選手と、NL選手に何もさせずに完封してネモ選手へのリベンジを狙うNuckleDu選手の対決となった。
初戦、ときど選手のガイル対策の精度を警戒したか、NuckleDu選手はレインボー・ミカを選択するが、ときど選手はこれを一蹴。NuckleDu選手がキャラクターをメインキャラのガイルに戻すと互いに無理攻めをしないテクニカルな攻防となったが、ときど選手の攻略が上回り、3-1でネモ選手の待つルーザーズファイナルへと進出。NuckleDu選手が4位になったことで、トップ3は日本人選手が占めることが確定した。
栄光への帰り道、ルーザーズファイナル
ウィナーズファイナルでふ~ど選手に敗れ、ルーザーズからの復活を目指すネモ選手の前に立ったのは、前日ストーム久保選手に敗れ、トップ8ではずっとルーザーズサイドを生き延びて来たときど選手。栄光は間近、ここで負ければトーナメントは終わってしまう、その思いが緊張を生み、このレベルのプレイヤーとしては珍しい連続技の操作ミスなども誘発する。隙あらばお互いにせめぎ合う試合展開でネモ選手に先行されるも、逆転勝利したのはときど選手。3-1のスコアだった。
無敗vs最強の生還者 グランドファイナル
720人を超える参加者の中から選ばれた、グランドファイナルを争う2人は、ここまで一度も負けることなくトップ8トーナメントでも相手を圧倒してきたふ~ど選手と、Oil King戦で敗退寸前まで行きながら、試合をするたびにしり上がりに調子を上げて来たときど選手。
グランドファイナルでも、ダブルエリミネーション方式のトーナメントのルール通り、ここまで無敗のふ~ど選手は1度負けても敗退にはならない。一方、ときど選手が優勝するには、ここまで相手を圧倒し続けてきたふ~ど選手を2回倒さなければならない、つまり6セットを取らなければならないのだ。気迫十分のこの日のふ~ど選手の強さは会場で試合を見ている全員が知っている。だがときど選手は自分の勝利を信じ、やれることをすべてやり尽くす、自身のルーティーンをこなしていた。
試合が始まると、お互いの技をぶつけ合う展開からしだいにときど選手の豪鬼が勢いを増していく。ふ~ど選手の使うレインボー・ミカが守りの弱いキャラクターだというのを差し引いてなお、ときど選手の猛攻に対応できていない。この日あれほど乗りに乗っていたふ~ど選手が流れを取り戻せないほど、ときど選手の集中力は高まっているのだ。試合が後半に差し掛かる頃には、完全にときど選手のペースで、あっという間に3-0のスコアをつけてときど選手がまずは1勝をあげた。
続くグランドファイナル2戦めでもときど選手の勢いは止まらない。それどころかさらに勢いを増してふ~ど選手を追い込んでいく。ときど選手の動きに合わせて戦略を考え、キャラクターのコスチュームを変え、選択するVトリガーを変えてみても、覚醒状態にあるかのようなときど選手の豪鬼を捉えることができない。そのまま最後までペースを変えることはできず、グランドファイナル2戦めも、3-0のストレートでときど選手が勝利した。
そしてこの大会は、年間を通じて行われるランキングイベント「カプコンプロツアー」の中のひとつの大会でもある。この日の勝利でランキング1位を走るときど選手をはじめ、世界の強豪プレイヤーが最後に雌雄を決するのは、2018年12月14日~16日にかけて、アメリカ・ラスベガスで開催される「カプコンカップ2018」となる。この大会で勝つために、この日敗れたプレイヤーたちも、地球の裏側で練習しているプレイヤーたちも、まだまだ研究を進め、決戦の地を目指している。
今後も『ストⅤ AE』の戦いから目が離せそうもない。
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■関連リンク
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賞金総額1000万円のプレミアトーナメント!
上位入賞者に合計1000万円にものぼる賞金が用意され、参加人数も720人以上となり、国内の格闘ゲーム大会としては屈指の規模となったこの大会。大会二日目となる9月23日のトップ8プレイヤーによる決勝トーナメントには多くの観客が詰めかけ、『ストⅤ AE』とそのプレイヤーたちの人気をうかがわせた。▲現地は会場からあふれ、通路での立ち見客まで出るほどの熱気。椿彩奈さん、関根勤さん、歌広場淳さんら、芸能人もゲストとして招かれ大会を盛り上げた
大規模トーナメントを勝ち残ったトップ8はこのプレイヤー!
■ウィナーズサイド(22日に負けていない)・ネモ(日本/ユリアン、G)
・NuckleDu(アメリカ/キャミィ、ガイル、ミカ)
・ふ~ど(日本/レインボー・ミカ)
・Oil King(台湾/ラシード)
■ルーザーズサイド(22日に一敗している)
・ときど(日本/豪鬼)
・とらっしゅぼっくす(日本/バーディ)
・NL(韓国/キャミィ)
・ZJZ(台湾/メナト)
▲本大会は“ダブルエリミネーション方式”のトーナメントが採用され、選手は2回負けるとトーナメント敗退となる。「ウィナーズサイド」の選手はまだ一度も負けていない4人、「ルーザーズサイド」は前日予選で一度負けながらも勝ち残ってきた4人であと一度負けるとその場で敗退となる
トップ8初戦は衝撃の幕開け
【第1試合】ネモ vs NuckleDu
これから繰り広げられるであろう激闘への期待を受けて始まった第1試合。この日最初の試合のこの試合に、我々観客は度肝を抜かれることになる。対戦カードは本サイトでも連載を持つ日本の社会人プロゲーマー・ネモ選手と、アメリカのNuckleDu選手だ。会場に集まりネモ選手を応援する日本の観客からすると、これ以上ないくらいに手強い相手。ネモ選手がユリアンを選ぶと、NuckleDu選手が選んだのはガイル。このガイルが2016年にカプコンカップを制覇したのだ。いま現在の強豪ガイル使いの中でも、その戦略・立ち回りは世界一の安定感を誇っているのではないだろうか。間違いなく、この大会でも優勝候補のひとりである。
そんな安定感抜群のNuckleDu選手のガイルにネモ選手のユリアンが襲い掛かる。ネモ選手の持ち味である強引なまでの攻撃がヒット。しかし、NuckleDu選手も突き放して自分の間合いを作ろうとする。それでも攻めるネモ選手。それを捌こうとするNuckleDu選手。それでもネモ選手は攻める、攻める、引くと見せかけて、やっぱり攻める。何度、NuckleDu選手は距離を開けようと試みただろうか。そのたびにネモ選手は強引なまでに攻め返していった。
技を出していないときも、少しでも動いたらいまにも飛びかかろうかという距離でプレッシャーをかけ続け、結果、ネモ選手がNuckleDu選手を攻め切り、なんと3-0のストレート勝ち。ずっとプレッシャーをかけ続け、NuckleDu選手に一瞬たりともラクな時間を作らせなかったネモ選手。その戦略がハマったということなのだろうが、あのNuckleDu選手が手も足も出せず、攻め立てられ続けてストレートで勝負が決まる様はあまりにもインパクトのある光景だった。
▲自分の読みを信じてとにかく攻めまくったネモ選手。はね返されて体力が減っても、そのぶんVトリガーを使ってさらに攻める。あまりに圧倒的に見えるストレート勝利に仕上がりの良さがうかがえ、「このまま優勝してしまうのでは」とさえ思わされるほどのインパクトがあった。この敗戦でNuckleDu選手はルーザーズに
石油王を黙らせるふ~どの読みが冴える
【第2試合】ふ~ど vs Oil King
続く第2試合は、やはり自分の読みを信じて攻めまくるスタイルの台湾のOil King選手と、日本のふ~ど選手が激突。序盤戦はお互いの攻めがぶつかり合う乱打戦となり、Oil King選手の無敵技が決まりまくったが、勝ちを見据えた大胆な誘いはふ~ど選手もできないわけではない。続く2セットめ、技の空振りで反撃を釣ってのクリティカルアーツで接戦をもぎ取ると、Oil King選手の行動を読み切ったのか、続く3、4セットは反応と読みで相手の反撃を潰しながらずんずん前に出る“重戦車”と形容されるふ~ど選手の攻めが冴え渡り、3-1でふ~ど選手が勝利した。
▲序盤こそいつものように奔放に戦ったOil King選手だったが、反応の良さと鋭い読みに裏打ちされたふ~ど重戦車に踏みつぶされる形で3、4セットめは封殺された。ふ~ど選手がウィナーズのまま勝ち上がり、Oil King選手はルーザーズサイドへ
新人プロゲーマーにベテランの洗礼
【第3試合】ときど vs とらっしゅぼっくす
じつはこの日の大会、日本eスポーツ連合(JeSU)が主催となって開催されており、トップ8に残った日本人プレイヤーにはJeSU公認プロライセンスが発行されることになっていた。ネモ選手、ときど選手、ふ~ど選手らはすでにJeSUからのライセンスが発行されていたため、この日、新たにプロライセンスが発行されたのが、とらっしゅぼっくす選手だ。第3試合はその新人プロゲーマーと、「eスポーツ」なんて言葉がないころから戦ってきたベテラン、ときど選手との対決となった。結果はときど選手が確実な攻めでとらっしゅぼっくす選手を3-1で圧倒。誰に何を認定されようが、実力が変わるわけではない、壁の高さを感じさせる試合となった。
▲この日、JeSUが認定するプロゲーマーとなったとらっしゅぼっくす選手だが、ベテランは強かった。何を仕掛けても対応されてしまう壁の高さを見せつけられる内容に。この試合は前日予選ですでに1敗しているルーザーズ同士の試合だったため、とらっしゅぼっくす選手はここで敗退、7位でトーナメントを終えた
最強キャミィ使いが見せたメナト対策
【第4試合】NL vs ZJZ
今年のカプコンプロツアーでも大活躍している韓国の最強キャミィ使いNL選手の前に立ったのは、前日に藤村選手やボンちゃん選手ら有力選手を破って上がって来た伏兵、ZJZ選手のメナト。じつはこのZJZ選手、年間を通じて行われているカプコンプロツアーを回っているわけではないので『ストⅤAE』ファンにはあまり知られていなかったが、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズのトッププレイヤーで、『ストⅤ AE』でもオンラインランキング上位にいるバリバリの実力者。これに対し、NL選手が用意してきた対策は、ノーゲージ状態での連続技に乏しいメナトに対して、ゲージが溜まるまえに多少の無理をしてでも攻めるという戦略だった。しかもその戦略を実行しているのが強気な攻めのキャミィを得意としているNL選手だというのも功を奏してZJZ選手は追い込まれ、決定的に突き放すことができずに勝負は決した。
▲反撃の火力に劣るメナトにリスキーな攻めを展開しまくって火力勝ちを狙ったNL選手。メナトの強みであるVトリガーにも飛び道具に対して無敵のEXスパイラルアローなどで切り込んでいく。大物を撃破し快進撃を続けた伏兵ZJZ選手を3-1で下して、ルーザーズサイドで生き残り。ZJZ選手は7位タイという結果に終わった
決めた東大式阿修羅閃空 紙一重からの生還
【第5試合】ときど vs Oil King
とらっしゅぼっくす選手に勝って生き残ったときど選手の次の相手は、ウィナーズサイドでふ~ど選手に敗れてルーザーズに降りて来たOil King選手。試合は予想どおり、Oil King選手の持ち味である強気の行動をときど選手が冷静に対処していく展開に。しかしそのスタイルで数々の勝利を掴んで来ているOil King選手、少しくらい対処されても攻撃の手を緩めることはなく、2-1と先行していたときど選手を逆転。セット数を2-2に戻したばかりか先に1本を取り、あとはクリティカルアーツをガードさせるだけ。この状態でOil King選手は画面端に追い詰めたときど選手にとどめのクリティカルアーツを発動。
当たればもちろん、ガードしても敗北という絶体絶命のこのタイミングで、最適な解答に気付いていた人はどれくらいいただろうか。ラシードの竜巻が巻き起こる中を、豪鬼が悠々と抜け出してくる。ここでときど選手が選んだ選択肢は『ストⅤ AE』では実用されることはほぼ皆無の“死に技”と思われていた「阿修羅閃空」という移動技だった。絶体絶命のシチュエーションを切り抜けたときど選手はフルセット・フルラウンドの決着ラウンドで、Oil King選手にとどめをさすことに成功。『ストリートファイター』シリーズで長年、豪鬼を使い続けていたときど選手の年季を感じる名シーンだった。
▲一進一退の死闘に終止符を打つべく放たれたクリティカルアーツの竜巻。それを抜けて来る豪鬼の姿を見て普段クールな表情を崩さないOil King選手もこの表情。配信画面のスイッチャーも決着したと思い、プレイヤーを映すカメラに切り替えてしまう珍プレイ。この敗北でOil King選手は5位でトーナメント終了
英雄は死なず! 最強のキャミィを完封
【第6試合】NuckleDu vs NL
ウィナーズサイドではネモ選手に圧倒されたNuckleDu選手だが、ここではその本来の力をいかんなく発揮した。ガイルを画面端に追い込んでキャミィ有利の展開に持ち込みたいNL選手の心理を挫くように目の前に技を置き、それを嫌った相手の攻撃が止めば攻勢に転じる。英雄の要塞を攻め崩せる気配を一切作り出すことができず、NL選手は5位タイでトーナメント敗退となった。▲ウィナーズサイドではネモ選手の攻めの前に自身の強みを出せなかったNuckleDu選手が、今度はNL選手を圧倒。地上からも、空中からも近づくことができない要塞に阻まれるように、NL選手は試合をコントロールされ続けてしまった
ここまで全勝同士のウィナーズファイナル
【第7試合】ふ~ど vs ネモ
第7試合はこのトーナメントで一度も負けていない同士のふたりによる、ウィナーズサイドの最終戦。NuckleDu選手を圧倒して勝ち上がったネモ選手と、Oil King選手を黙らせて勝ち上がってきたふ~ど選手の試合となった。ここまで充実のふたりの試合はまさかのワンサイドゲーム。ネモ選手の守りを物ともせず攻め込むふ~ど選手が、すべての選択肢を読み切っているかのように1ラウンドも落とすことなく、3-0のスコアでネモ選手のユリアンを圧倒した。8月末にカプコンプロツアー公式大会を制覇して以来、好調を続けるふ~ど選手が無敗のまま、ウィナーズとしてグランドファイナルに駒を進めることとなった。
▲ネモ選手がミスをしたわけではない。ただただふ~ど選手が強かったこの試合。完璧な状況判断で相手の反撃の芽を丁寧に摘み取るように、しかし大胆に、ネモ選手にこの日最初の黒星をつけルーザーズサイドにたたき落とした。画面を通してふ~ど選手の気迫までもが伝わってくるような猛攻だった
ルーザーズファイナルへの切符を懸けた日米英傑対決
【第8試合】ときど vs NuckleDu
ウィナーズファイナルでふ~ど選手に敗れ、ルーザーズサイドに降りて来たネモ選手に挑むのはどちらなのか? ルーザーズファイナルへの残り一枚の切符は、大暴れするOil King選手をフルラウンド・フルセットの薄氷の勝利で抑え込んで来たときど選手と、NL選手に何もさせずに完封してネモ選手へのリベンジを狙うNuckleDu選手の対決となった。初戦、ときど選手のガイル対策の精度を警戒したか、NuckleDu選手はレインボー・ミカを選択するが、ときど選手はこれを一蹴。NuckleDu選手がキャラクターをメインキャラのガイルに戻すと互いに無理攻めをしないテクニカルな攻防となったが、ときど選手の攻略が上回り、3-1でネモ選手の待つルーザーズファイナルへと進出。NuckleDu選手が4位になったことで、トップ3は日本人選手が占めることが確定した。
▲NuckleDu選手がサブキャラクターを出して来ようが、ときど選手は意に介さず集中力を維持して一蹴。お互いにメインキャラを使っての総力戦に。状況対応力が極限まで研ぎ澄まされたときど選手が前例のないスーパープレイを試みると、豪鬼のクリティカルアーツとガイルの必殺技が相打ちになるという珍しい場面も飛び出した
栄光への帰り道、ルーザーズファイナル
【第9試合】ときど vs ネモ
ウィナーズファイナルでふ~ど選手に敗れ、ルーザーズからの復活を目指すネモ選手の前に立ったのは、前日ストーム久保選手に敗れ、トップ8ではずっとルーザーズサイドを生き延びて来たときど選手。栄光は間近、ここで負ければトーナメントは終わってしまう、その思いが緊張を生み、このレベルのプレイヤーとしては珍しい連続技の操作ミスなども誘発する。隙あらばお互いにせめぎ合う試合展開でネモ選手に先行されるも、逆転勝利したのはときど選手。3-1のスコアだった。
▲お互いに相手を倒す気持ちが見える、攻め合う試合展開。気持ちの伝わる好勝負を制したのはときど選手の豪鬼。この試合を終え、ネモ選手は3位となった
無敗vs最強の生還者 グランドファイナル
【第10試合】ふ~ど vs ときど
720人を超える参加者の中から選ばれた、グランドファイナルを争う2人は、ここまで一度も負けることなくトップ8トーナメントでも相手を圧倒してきたふ~ど選手と、Oil King戦で敗退寸前まで行きながら、試合をするたびにしり上がりに調子を上げて来たときど選手。グランドファイナルでも、ダブルエリミネーション方式のトーナメントのルール通り、ここまで無敗のふ~ど選手は1度負けても敗退にはならない。一方、ときど選手が優勝するには、ここまで相手を圧倒し続けてきたふ~ど選手を2回倒さなければならない、つまり6セットを取らなければならないのだ。気迫十分のこの日のふ~ど選手の強さは会場で試合を見ている全員が知っている。だがときど選手は自分の勝利を信じ、やれることをすべてやり尽くす、自身のルーティーンをこなしていた。
▲この日の解説を担当したハメコ。氏のツイートより。大一番の前にときど選手が行う、その場ダッシュでの心拍数調整「マーダーダッシュ」からの座禅。見る人によっては滑稽に映るかもしれないが、やれることをすべてこなしてことに当たるのがときど選手のスタイル。東大卒は伊達じゃない
試合が始まると、お互いの技をぶつけ合う展開からしだいにときど選手の豪鬼が勢いを増していく。ふ~ど選手の使うレインボー・ミカが守りの弱いキャラクターだというのを差し引いてなお、ときど選手の猛攻に対応できていない。この日あれほど乗りに乗っていたふ~ど選手が流れを取り戻せないほど、ときど選手の集中力は高まっているのだ。試合が後半に差し掛かる頃には、完全にときど選手のペースで、あっという間に3-0のスコアをつけてときど選手がまずは1勝をあげた。
続くグランドファイナル2戦めでもときど選手の勢いは止まらない。それどころかさらに勢いを増してふ~ど選手を追い込んでいく。ときど選手の動きに合わせて戦略を考え、キャラクターのコスチュームを変え、選択するVトリガーを変えてみても、覚醒状態にあるかのようなときど選手の豪鬼を捉えることができない。そのまま最後までペースを変えることはできず、グランドファイナル2戦めも、3-0のストレートでときど選手が勝利した。
▲この日これまでの好調がウソだったかのように圧倒され、悩むふ~ど選手に対し、瞑想をするかのように集中力を維持するときど選手。試合内容は完璧なまでに一方的なものとなった。
優勝の栄誉と賞金500万円は、ときどの手に!
かくして「ストⅤ AE ジャパンプレミア」優勝の栄冠は、ときど選手の頭上に輝いた。とらっしゅぼっくす選手、Oil King選手、ネモ選手、そしてふ~ど選手を破っての堂々たる優勝。大会全体を観戦し終えて改めて、世界から集まったプレイヤーたちの技量と研鑽に感動せざるを得ない大会だった。そしてこの大会は、年間を通じて行われるランキングイベント「カプコンプロツアー」の中のひとつの大会でもある。この日の勝利でランキング1位を走るときど選手をはじめ、世界の強豪プレイヤーが最後に雌雄を決するのは、2018年12月14日~16日にかけて、アメリカ・ラスベガスで開催される「カプコンカップ2018」となる。この大会で勝つために、この日敗れたプレイヤーたちも、地球の裏側で練習しているプレイヤーたちも、まだまだ研究を進め、決戦の地を目指している。
今後も『ストⅤ AE』の戦いから目が離せそうもない。
▲優勝したときど選手の口から語られた今後の目標はカプコンカップ優勝――ではなく、「格闘ゲーム業界を背負って立てるプレイヤーになること」だった。ときど選手にとっては大会の優勝も、その過程なのだろう。頂きはかくも高く険しく尊いものなのだ。格闘ゲームがeスポーツなどと呼ばれ始め、今後どう発展していくのかはまだ誰にもわからない。先人の築いて来たものを受け継ぎ、それを背負って立とうという、ときど選手の決意がこの大会の最後を締めくくった
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