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『LoL』ヨーロッパ1部リーグ「EU LCS」あらため「LEC」開幕レビュー:変革を乗り越え、伝統のその先へ

目次
  1. おなじみの顔ぶれ。新たなLECを戦う6つの古参チーム
    1. Splyce (SPY)
    2. G2 Esports (G2)
    3. Misfits Gaming (MSF)
    4. Team Vitality (VIT)
    5. FC Schalke 04 (S04)
    6. Fnatic (FNC)
  2. コラム:欧州地域の競技構造と欧米の選手移籍事情
  3. 挑戦者あらわる。LEC新規参加の4チーム
    1. Excel Esports (XL)
    2. Rogue (RGE)
    3. SK Gaming (SK)
    4. Origen (OG)
  4. コラム:欧州へ流れ込む資金と外国人選手たち
  5. 新たな姿となった欧州リーグ。試合日程&配信情報
リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の国際競技シーンにおいて、中国と並んで韓国勢を追う位置につけていた欧州。2018年は欧州から世界大会「World Championship」に参戦したFNC・G2・VITが3チームとも事前の予想を大きく覆す活躍を見せ、2015年以来のベスト4入りが2チーム、さらにFNCはシーズン1以来の決勝進出を成し遂げた。悲願の優勝こそ成らなかったものの、韓国の背中を追うだけの地域ではないことを実力で示したのだ。

そして新たに迎える2019シーズン。2018年までは「EU League of Legends Championship Series(EU LCS)」の名を冠して開催されていた欧州トップリーグだが、2019年よりフランチャイズ化を果たし、「League of Legends European Championship(LEC)」と改称して新たな体制でのリーグに生まれ変わった。フランチャイズ化に際して2018年まで参加していた10チームの内4チームが刷新され、完全新規参加2チームと、LCS時代に参加歴のある名門2チームが2019シーズンの挑戦者として、LEC参戦チームのラインナップに加わっている。

昨シーズン、降格が無くなったというメリットを最大限に生かした北米チーム「Cloud9」が見せた飛躍は、欧米双方の関係者やファンを大いに沸かせ、勇気づけた。北米同様の新たなシステムで行われる戦いには、大きな期待がよせられている。

おなじみの顔ぶれ。新たなLECを戦う6つの古参チーム

Splyce (SPY)


2016年からEU LCSに参加しているチーム。リーグ参加1年目から世界大会出場を決める強さを見せたが、その後は成績が安定せず、世界大会まであと一歩及ばない状態が続いていた。フランチャイズ化にともなう参加組織基準の厳格化にともない、一度はLEC参戦が危ぶまれたが、外部増資を受けて最終的に参加を認められている。2019シーズンはミッドレーンにトルコやポーランドのリーグで活躍していたHumanoid選手を迎えており、2019シーズンの行方を左右する大型新人のひとりとして注目されている。

トップ:Viziscacsi
ジャングル:Xerxe
ミッド:Humanoid
ボット:Kobbe
サポート:Norskeren

G2 Esports (G2)


2016年にEU LCSへ参加して以来、常にFnaticとトップ争いをしているスペインチームの強豪。2018年は夏スプリットこそ不安定な状態もあったが第三シードで世界大会へと出場し、グループステージ突破を果たしただけでなく、ノックアウトステージで中国の最有力優勝候補「Royal Never Give Up」を破り、下馬評を覆す活躍を見せた。2019シーズンに向けてFnaticのミッドレーナーだったCaps選手を獲得し、元ミッドのPerkz選手がなんとボットレーナーへとコンバートしたことで話題となった。世界大会ベスト4入りしたほどの選手によるロール変更は前例が無く、この変更が吉と出るか凶と出るか、多くのファンが注目している。

トップ:Wunder
ジャングル:Jankos
ミッド:Caps
ボット:Perkz
サポート:Mikyx

Misfits Gaming (MSF)


2017年にEU LCSへ参戦したチーム。リーグの中ではトップグループに次ぐ位置を占めており、2017年世界大会では、ノックアウトステージで韓国のSKTを追い詰めるなどの活躍を見せている。2018年は目立った成績を収められなかったが、2019シーズンに向けて大きな補強を実施した。EU最高峰のベテランであるsOAZ選手や、2015年のFnatic躍進に一役買ったFebiven選手、さらにもう一人の世界大会決勝戦経験者でもあるGorillA選手を韓国から新たに獲得している。凶悪なウサギのマスコットは、着ぐるみとして登場することもある。

トップ:sOAZ
ジャングル:Maxlore
ミッド:Febiven
ボット:Hans Sama
サポート:GorillA

Team Vitality (VIT)


Gambit GamingのEU撤退に伴い、2016年からEU LCSに参加しているチーム。EUの中では多少上下のある中堅といったところを占めていた。2017年後半に名コーチのYamatoCannon氏を招き、さらに2018年の補強では最優秀新人賞のJiizuke選手らを獲得した結果、チームは躍進。年間成績に基づく第二シードで世界大会に出場し、前年チャンピオンのGENを破るなどの活躍でファンを沸かせた。2019シーズンに向けた補強は韓国からジャングルのMowgli選手を招いたのみで、主力メンバーは引き続きLECを戦う予定だ。

トップ:Cabochard
ジャングル:Mowgli
ミッド:Jiizuke
ボット:Attila
サポート:Jactroll

FC Schalke 04 (S04)


ドイツのプロサッカーチームとして長い歴史を誇る「FC Schalke 04」の『LoL』部門。2016年にLCSに初参加するも戦績が振るわず降格し、その後は2部からの入れ替え戦に敗れて一度は昇格に失敗したものの、粘り強くチーム運営を継続して2018年から再び1部へ復帰している。2018年を通してチームは成長を続け、夏プレイオフの決勝まで進むことができた。結果としてはFnaticに優勝を阻まれ、惜しくも初の世界大会出場は成らなかったのだが。2019シーズンはチーム生え抜きのボットレーナーであるUpset選手を残してメンバーを変更し、さらにコーチ陣の補強も行っている。今年は本格的に上位争いに加わってくる可能性が高い、期待のチームだ。

トップ:Odoamne
ジャングル:Memento
ミッド:Abbedagge
ボット:Upset
サポート:IgNar

Fnatic (FNC)


欧州リーグのトップ争いを常に続ける欧州の名門。2018年は世界大会決勝にも進み、欧米のファンを沸かせた。今回の移籍市場では昨年ミッドレーナーとして活躍したCaps選手がG2へ、LECでも最も経験あるベテランのひとりであるsOAZ選手がMisfitsへと移籍することとなったが、Fnaticは2015シーズン以降常にメンバーが変化しながら結果を出し続けているチームであり、むしろ新たなタレントの活躍に注目が集まるだろう。

トップ:Bwipo
ジャングル:Broxah
ミッド:Nemesis
ボット:Rekkles
サポート:Hylissang

コラム:欧州地域の競技構造と欧米の選手移籍事情

欧州地域には韓国LCKや中国LPLのような2部リーグが無く、また北米LCSのようなアカデミーリーグも存在しない。しかしEU諸国には地域別のリーグが存在しており、多くのアマチュア選手がしのぎを削っている。2017年まではこれらの各国リーグ上位チームが2部リーグへの参加権を賭けた戦いに参加し、そのトップチームが2部リーグへの参加を賭けて入替戦を戦った末に、2部リーグで最終的な1部昇格権を争う三段構造となっていた。

2018年からは欧州のアマチュアシーンのトップ大会となる「EU Masters」が設けられ、各国リーグの優勝チームが送り込まれるようになったが、同時に入替戦も消滅することとなったため、純粋なアマチュアシーンとして機能している。LECに参加しているチームもそれぞれの本拠地においてアカデミーチームを編成して、各国リーグに参加させている。アカデミーチームの選手は緊急時の代理や、環境の変化あるいは試合でのめざましい活躍によって交代要員として1部チームに加わる可能性があり、他チームの選手もリーグでの活躍によってトップリーグのチームの目に留まるべく戦っている。

欧州では地域内で名を挙げた選手が主に北米へと移籍することが多く、チームの主力が脱退という事も多い。だが心配は無用だ。地域内の各国リーグや隣接地域のトルコで腕を磨いている若手がひしめいており、毎年素晴らしい活躍を見せる新人が現れる、そんな才能の宝庫が欧州という地域なのだ。たとえば2018年はVITのJiizuke選手が世界大会で下馬評を覆す結果を収めている。今シーズン注目の選手としては、FNCのNemesis選手、SC04のAbbedagge選手、SPYのHumanoid選手と3人の新人ミッドレーナーが期待を集めている。

挑戦者あらわる。LEC新規参加の4チーム

Excel Esports (XL)


イギリスに本拠地を置く新参戦チーム。いち早く10人体制のロースターを発表しており、イギリスにおけるラグビーの聖地であるトゥイッケナム・スタジアムにホームを構える。チームのメンバーはEU LCS時代からのベテランもいれば、アマチュア上がりのプレイヤーも入り混じり、バリエーションに富んだラインナップとなっている。立ち上げたばかりの新規チームはいわゆる『1部リーグの洗礼』を受けるのが通例だが、新チームを立ち上げる中ではメンバーをまとめる能力が高いと評されるベテランサポートのKaSing選手の手腕に期待したいところである。

トップ:Expect
ジャングル:Caedrel
ミッド:Exile
ボット:Jeskla
サポート:KaSing

Rogue (RGE)


2019シーズンのLECフランチャイズ化に伴い参戦してきた新組織。母体組織は北米にあり、多くのシュータータイトルでプロチームを抱えている。チームの面々を見ると、EU LCSからLECへの移行時に不参加となった「Team ROCCAT」に過去在籍していた互いに馴染みのあるメンバーで構成されており、昨年末の韓国ブートキャンプも相まって新チームとは言ってもそれなりに経験を持った体制でのスタートとなる。他チームもフランチャイズ化により大きな補強を行っている中で、どのような戦いを見せられるのかは気になるところだ。

トップ:Profit
ジャングル:Kikis
ミッド:Sencux
ボット:HeaQ
サポート:Wadid

SK Gaming (SK)


EU LCS黎明期にFNCとトップ争いを続けていた名門。その後の競技シーン激化に取り残される格好で2015年を最後に2部に降格していたが、LECへの再編で帰ってきたチームのひとつとなった。今回の復帰に当たっては元SKTのPirean選手や、かつてGiantsやFnaticに所属しその後スペインの国内リーグで経験を積んだWerlyb選手を軸に、若いチームを作り上げている。復帰一年目にどんな結果を残せるのか、名門の新しい挑戦が始まろうとしている。

トップ:Werlyb
ジャングル:Selfmade
ミッド:Pirean
ボット:Crownshot
サポート:Dreams

Origen (OG)


かつてFNCで活躍し、EUにおいて伝説的な人気を誇るxPeke氏が設立したチーム。2015年のEU LCS参戦直後は台風の目となり、世界大会でもベスト4入りを果たしている。その後xPeke氏が選手を降りてからチームは低迷し、一度は降格したもののフランチャイズ化に伴って再びLCSへと帰ってきた。今回のLEC参戦にあたって、かつてOrigenが躍進していた時代のサポートであったMithy選手がチームに復帰しているのも、ファンにとっては期待が高まるポイントだ。

トップ:Alphari
ジャングル:Kold
ミッド:Nukeduck
ボット:Patrik
サポート:Mithy

コラム:欧州へ流れ込む資金と外国人選手たち

大資本投入による有名選手の加入が2019シーズンは目立つようになった。従来EUのチームに加入する韓国人選手は韓国で出場機会が無い状態よりも、海外リーグのチームに所属して上げた実績を手に、世界大会優勝などを目標としてLCKの1部チームに加わることを目指すケースが多かった。しかし2018年の国際大会結果から、韓国以外の地域でも世界大会優勝が狙えるという力関係の変化と、補強費用の増大によって韓国のトップチームから選手を招くケースも出てきている。これまでこういった移籍は北米がメインだったのだが、今年は世界大会決勝経験者で韓国でも引っ張りだこであろうビッグネームの、GorillA選手のような例も出てきている。

一方で、韓国人であってもずっと欧州を愛してきた選手たちが存在する。2017年にMSFのサポートとして世界大会に出場し、SKTとの死闘の中で大きな役割を果たしたIgNar選手。彼は2018年に韓国チームに参加したものの結果が振るわなかった。韓国チームの厳格な環境よりも外国チームの束縛が少ない環境が好きだとも口にしており、2019年はS04のサポートとして欧州に帰還することが発表されると、欧州のファンが喜びに沸いた。またRGEのWadid選手も、2018年にG2で出した結果を手土産に韓国へ戻るのではなく、欧州で新たに所属するチームを選んだひとりだ。欧州における韓国人選手は即戦力、すなわち傭兵としての側面が多分にあるものだが、居場所を確保して上を目指す彼らもぜひ応援してほしい。

新たな姿となった欧州リーグ。試合日程&配信情報

欧米2つの「LCS」という形から、確固たる欧州ブランド「LEC」へと生まれ変わった欧州リーグ。各チームが続々と新規スポンサーを獲得する一方で、リーグそのものも「起亜自動車」、「Shell(ロイヤル・ダッチ・シェル)」、「ラガルデール・スポーツ」などとの提携を発表しており、昨年までと比べて資金規模が跳ね上がっている。北米NA LCSが2018年初めにフランチャイズ化した時と同様、アマチュアに近いシーンからの脱却が欧州でも起こっているのだ。

シーンを囲む状況とは別に、2019年はリーグそのものの開催形式にも少し変更がある。レギュラーシーズンは全10チームによるダブルラウンドロビン(総当たり戦を2回行う)で、各対戦はBo1(1試合の勝敗のみで決着)と昨年同様だ。若干変更されたのはプレイオフの開催形式で、まずレギュラーシーズンの上位6チームが進出するのは変わっていないが、実際の進行が少し複雑になっている。ラウンド1は3~6位チームが戦うことになっており、3位チームのみが対戦相手を自由に選ぶことができる。1・2位チームはラウンド2から参加できる不戦勝を持っており、ラウンド2ではラウンド1の勝者同士と1・2位チームがそれぞれ戦う。1・2位チームの戦いの勝者はそのまま決勝戦へと駒を進められるが、敗者はラウンド2の勝者と準決勝で戦い、勝ったチームが決勝戦へと進むことになる。少々複雑な形式だが、1~2位チームにのみ敗者復活のあるダブルエリミネーション方式と考えればよさそうだ。春のプレイオフ優勝チームが春夏間国際大会「Mid-Season Invitational」へ参加見込みなのは、昨年と変わらない。またフランチャイズ制を取っているため、入替戦は存在しない。

試合スケジュールとしては、合計9週間にわたり日本時間の毎週金・土曜の深夜に試合が開催される。開始時刻は金曜夜が26時、土曜夜が25時となっている。相当な時差があるため、日本からは無理をせずに公式の試合録画アーカイブを利用してチェックするのがよいだろう。1月19日深夜の初日に行われる開幕試合のカードは「SK Gaming vs Fnatic」で、帰ってきたチームと昨年王者の対戦となっている。

2018年の記事でも言及したが、欧州地域は「新しい戦術を編み出すことが伝統」という特色を持っている。2018年に大きな変化が訪れたゲーム環境という要素も加わって、欧米では今、世界大会王座を切望するファンの願いが大きな渦となってきている。変革を乗り越えて伝統のその先の栄光をつかむことができるか? 欧州という地域の新たなる戦いが今始まる。

記事内画像出典:LoL Esports 公式Twitter

執筆:山口佐和子
執筆協力:ユラガワ

■関連リンク
リーグ・オブ・レジェンド
http://jp.leagueoflegends.com/
LoL Esports LEC試合スケジュール(英語)
https://watch.euw.lolesports.com/schedule?leagues=lec
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LoL Esports Stats(リアルタイムで試合統計についてツイートする公式Twitter、英語)
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LEC 2018 Spring データページ(Leaguepedia、英語)
https://lol.gamepedia.com/LEC/2019_Season/Spring_Season

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