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「LPL 2019 Spring」前半戦レビュー:世界王者を生み出した中国リーグは竜闘虎争の激戦区!
目次
『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の中国一部リーグ「LPL 2019 Spring」は、競技地域最大の16チームが参加している。レギュラーシーズンの試合形式はシングルラウンドロビン(1回総当たり)のBo3(2本先取)となっており、約2カ月半にわたって開催されるWeek1~10で120マッチと極めて多い。そして、上位8チームがプレーオフに進出し、「Mid-Season Invitational(MSI)」の出場権を争う。
Week5が終了した2月24日時点で、50マッチ118ゲームが消化されているわけだが、これはすでに「LJL 2019 Spling Split」の全試合数(84ゲーム)を超えている。
開催都市(上海・杭州・成都・北京・重慶・西安)への移動も含めた過密なスケジュールの中で、闘争本能むき出しの熾烈な戦いが日々展開されている。
そして、Week5終了時における順位表がこちら。
出典:https://twitter.com/lplenglish/status/1099686962749992960
昨年の「World Championship」で優勝したInvictus Gaming(iG)が3位、ベスト8のEDward Gaming(EDG)とRoyal Never Give Up(RNG)がそれぞれ5位、9位となっている。
この結果だけ見ても、LPLが群雄割拠の時代を迎えているということが、おわかりいただけるだろう。
今回は、Week5までの118ゲームすべてを余すことなくチェックしている私、Merrydayが、「LPL 2019 Spring」の前半戦、Week5までの結果を振り返り、メタの特徴や注目チームの現状についてお伝えする。
なお、旧正月の影響で、中国のパッチ事情はやや特殊となっている。Week1~3はパッチ9.1、Week4~5はパッチ9.2(ただし、パッチ9.3におけるサポートアイテムの修正は適用済み)で行われている。
パッチ9.1を語るうえで欠かせないのが、ミッドレーンを支配していたガリオ、リサンドラ、アーゴットというユーティリティ系のチャンピオンだ。純粋なダメージディーラーではないものの、優秀なCCなどで味方との連携面に優れ、攻めの起点役を担う。育てば強いのは当然として、育たなくても仕事ができるセーフティピックとして重宝されていた。
ジャングラーは序盤からガンクを狙いやすく、集団戦では後衛に対して圧力をかけられるカミール、シン・ジャオ、リー・シン、グラガス辺りが主流となっており、ジャングルとミッドの連携からゲームを展開するのがスタンダードな型であった。
あくまでも主役はボットレーン
ミッドの流行がユーティリティ系であったため、その分ボットレーナーがダメージディーラーとしての役割を引き受けることになり、集団戦におけるボットレーナーのパフォーマンスが勝敗に直結するケースも多かった。
特に、カイ=サを優先的に確保するチームが非常に多く、ピックされた46回のうち43回がドラフト前半での選択となっている。レーニングが強いチャンピオンではないものの、素早く接敵ができるアルティメットスキル(Ult)のおかげで、キルを拾ってスノーボールという展開が作りやすかった。
バフ:ジャーヴァンⅣ、ヨリック
ナーフ:ガリオ、ラカン、アーゴット、ジャングルキャンプの経験値
ミッドレーンのメタが急変
ナーフされたガリオとアーゴットはミッドレーンから追い出され、それぞれサポートとトップでの運用が一般的となった。これによって、残ったユーティリティ系ミッドレーナーはリサンドラのみ。しかし、そのリサンドラのカウンターとしてシンドラが台頭する。
シンドラ対リサンドラのマッチアップは、スキルレンジで優位に立つシンドラが一方的にハラスできる。さらに、キルラインで使用されたシンドラのUltに対して、リサンドラは自身にUltを使用しなければならない。Ultの交換を強制することによって、少数戦・集団戦におけるリサンドラの存在感は一気に削がれる。
コーキ、サイラスといった苦手なチャンピオンも採用されはじめ、リサンドラはもはや安定ピックと言えなくなってしまった。このような経緯で、ユーティリティ系ミッドレーナーは下火となり、代わってゾーイ、ルブラン、シンドラ、ジェイス、ライズといったキャリー系が支持されるようになった。
これに伴い、ボットレーンではカリスタの評価が上昇している。キャリー系ミッドレーナーのスノーボールを推進する上で、ボットレーンに求められているのは「レーニングの勝利」と「サポートがミッドレーンに介入すること」だ。
カリスタはパワースパイクが早く、ピック率の高いエズリアル、シヴィア、カイ=サに対してレーニングで有利を取りやすい。また、高い1対1性能と視界確保のスキルによって、敵のサポートにロームをためらわせる効果まで期待できる。
ジャングルはリスクを避ける方向にシフト
ジャングルキャンプの経験値が下方修正されたことによって、ガンクを失敗した際のリカバリーが難しくなってしまった。そこで好まれるようになったのが、オラフ、ジャーヴァンⅣ、リー・シンの3体だ。
獲得できる経験値が減ったのであれば、敵から奪ってしまえばいい。オラフは遭遇戦にすこぶる強く、ジャーヴァンⅣとリー・シンは視界チェックと逃走用のブリンクを兼ね備えている。積極的に敵陣へと侵入し、ファームを行うことが可能となっている。
加えて、ガンクを行う際のリスクが比較的少ないという共通点もある。オラフは基本的にカウンターガンクが中心のジャングラーであるから、読みが外れても少々時間が削られるくらいで、決まった時のリターンは大きい。ジャーヴァンⅣとリー・シンはUltの性能が優秀なので、取りこぼしが少ないというわけだ。
Week5終了時点で唯一の全勝チームであるFunPlus Phoenix(FPX)は、どのポジションからでも試合を展開できる柔軟性が持ち味だ。
ファーストタワー獲得率(86.7%)とタワー被破壊数(3.3/Game)が示している通り、序盤に作り出した有利を存分に活かし、丁寧な試合運びで勝利を積み重ねてきた。
チームを牽引しているのは、今季から加入したミッド・Doinb選手だ。15ゲームのうち14ゲームでユーティリティ系を使用しているにもかかわらず、ダメージ占有率(27.9%)はチーム内トップとなっている。プレイヤースキルもさることながら、エキセントリックなチャンピオンプール(e.g. クレッド、サイオン、ポッピー、レネクトン)を有しているのも特徴的だ。
しかしながら、Doinb選手は昨年からルブランとゾーイを全く使用していないプレーヤーでもある。ミッドキャリーのメタへと移行するにあたって、多少の影響はあるかもしれない。
Topsports Gaming(TOP)は、昨年末に行われた「Demacia Cup」で頭角を現したチームで、前評判通りの好位置につけている。血気盛んなソロレーナーと、チームファイトが得意なボットレーナー、そして堅実なジャングラーが調和している。
特筆すべきは、やはり「Golden Left Hand」と称されるミッド・Knight9選手だ。昨年、韓国サーバーでランキング1位に最も長く君臨した18歳であり、彼にルブランとゾーイを渡すことはすなわち敗北を意味する。ダメージ占有率も、32.3%と突出している。
しかし、そのルブランとゾーイに対してバン枠を割きやすい環境になっているため、やや向かい風とも受け取れる。
また、トップ・369選手のチャンピオンプールが狭いのも気がかりだ。得意としているアーゴットはナーフが確定しており、それに匹敵するのはジェイス、レネクトン、ジャックスくらい。17歳のルーキーに多くを求めるのは酷だが、攻略の足がかりにされるかもしれない。
昨年の世界王者であるInvictus Gaming(iG)だが、ヘッドコーチが抜けた影響か、ちぐはぐな印象が拭い切れない。それでも3位につけているだけあって、チームの底力は本物だ。
ここまでほぼすべての試合において、まるで狂ってしまったかのように闘争を求めている。キル数(17.4/Game)も多ければデス数(15.0/Game)も多く、DPMは2439(全チームの平均は約1810)という驚異的な数字を記録している。
実際の試合を通じてギリギリの感覚を養っているというポジティブな受け取り方もできるが、「とりあえず戦えば勝てるだろう」という雑な意思統一の結果にも見える。
Week2辺りから動きにキレがなかったミッド・Rookie選手は、幸いにも復調の兆しを見せている。あとは、序盤の存在感に欠け、浮き沈みの激しいジャングル・Ning選手さえ安定すれば、チームにまとまりが生まれてくるだろう。
Bilibili Gaming(BLG)というチームは、丁寧な視界管理が印象的であると同時に、良くも悪くもジャングルとミッドの出来が勝敗を左右している。トップとボットは淡々と仕事をこなすが、並外れているわけではない。
「LCK」から移籍してきたミッド・Kuro選手は、積極的なプレイスタイルが「LPL」の雰囲気とマッチしているようだ。BLGの好調は、彼の活躍に依るところが大きい。
ジャングル・Metoer選手(本来はMeteorのはずが、登録の際にスペルを間違えてしまったそうだ)はカミールを大変得意としており、Week4以降は常にターゲットバンされている。強気なプレイが持ち味ではあるものの、調子づいて勇み足を踏み、キャッチされてしまうことも多い。
試合日程の関係上、ラスト5試合がRNG・EDG・FPX・iG・TOPというボスラッシュになっている。なるべく高い順位でプレーオフを迎えるためにも、気を抜くことはできない。
Week4まで不調に苦しんでいたEDward Gaming(EDG)は、Week5でジャングラーを変更。若いHaro選手に代わり、ベテランのClearlove選手が出場する。
経験豊富なショットコーラーが加わったことで、チームの動きに一体感が生まれ、試合運びも見違えるほどスムーズになった。特に、トップ・Ray選手とボット・iBoy選手のパフォーマンスが大幅に改善され、両名はWeek5のMVPを獲得している。
ポテンシャルの高いプレイヤーがそろっていることは間違いないので、この調子を維持できるならば、プレーオフでもいい線に食い込めるだろう。Clearlove選手のプレイ・コールに幅を持たせるためにも、ミッド・Scout選手がレーニングで負けないようなピックを心がけたい。
開幕から4連勝とスタートダッシュを決めたSuning(SN)だったが、メタ変化の影響をもろに受けて失速してしまった。
Suningのプレイスタイルは一貫しており、LPL屈指のボットレーナー・Smlz選手を軸として、集団戦に重きを置いている。そのため、ミッド・Maple選手にはユーティリティ系(ガリオ、リサンドラ)を使わせ、補助的な役割を与え続けてきた。明確すぎる勝ちパターンに頼り切ってしまったがゆえに、メタ変化への適応が遅れてしまったようだ。
この状況を打破する方策として、考えられるのは2つ。ひとつは、トップ・XiaoAL選手にスプリットプッシュをさせる、またはMaple選手(あるいは控えのAngel選手)にキャリー系を渡すなど、チームのスタイルを大きく変えてしまうこと。こちらは、夏のシーズンに向けた先行投資的な意味合いも強い。
もうひとつは、ジャングルとミッドが積極的にボットレーンへと介入し、無理やりSmlz選手のパワースパイクを早めるということ。こちらは、うまくいけば素早くチームを立て直すことができるものの、応急処置にすぎない。
JD Gaming(JDG)は、スウェインやスカーナー、パッチ9.2で大幅なナーフを受けたラカンなど、枠にとらわれないドラフトが特徴のチームだ。
開幕前は、チームとしての完成度が高かった昨年のメンバーから、ジャングル(現SKTのClid選手)とボット(現TOPのLokeN選手)が抜けたことを不安視されていた。
しかし、ボットのimp選手とBvoy選手はプレイスタイルの違いから、うまく住み分けができており、両者ともに欠かせない存在となっている。ジャングルは、LPL3年目のFlawless選手をメインに起用しつつ、中国に来て日の浅いLevi選手にも、実戦経験を積ませることに成功している。
キープレイヤーは、昨夏のベストトップレーナーに選ばれたZoom選手。15試合で12種類のチャンピオンをピックしており、今後のメタ変化にも問題なく順応できるはずだ。同時に敵からのマークも一層厳しくなることが予想されるため、いかにその狙いを外せるかが重要になるだろう。
今季からの新規参入チームであるVictory Five(V5)は、経験豊富な選手が顔をそろえているものの、傑出したプレイヤーがいるというわけでもない。
ここまでのVictory Fiveは、トップ・Jinoo選手とボット・y4選手が主体となってチームを引っ張ってきた。この2ポジションがキャリーするスタイルは、他のLPLチームにはない珍しい組み合わせとなっている。
特に、Jinoo選手はリヴェン、ライズ、ブラッドミアといったキャリー系を使用した際のパフォーマンスが見事なので、今以上に活躍が期待される。
一方で、心配なのはミッド・Corn選手。序盤から中盤にかけての存在感が希薄で、蚊帳の外に追いやられていることが多い。レーニングで圧倒するタイプのプレイヤーではないので、ジャングルとの連携強化など工夫が欲しいところだ。
Royal Never Give Up(RNG)は、旧正月明けにボット・Uzi選手が合流したことで、チーム全体に活気が戻ってきた。昨年もシーズン途中から尻上がりに調子を上げてきたチームなので、今より順位を落とすということは考えにくい。
ジャングル・Karsa選手は、キル関与率がチームトップの79.7%と非常に高く、LPL屈指のゲームメーカーとして躍動している。ミッド・Xiaohu選手との連携にも文句のつけようがない。レーニングが強力なボットレーンからのロームも含め、前向きな材料は多い。
不安要素としては、トップレーンを任されたAmazingJ選手。昨年のRNGを支えたLetme選手(休養中)・Zz1tai選手(引退)に比べれば、やはり見劣りしてしまう。レーニングは無難にやり過ごしたいところだが、ファイターメタがそれを許してくれるだろうか。
さらにもうひとつ気になるのは、集団戦におけるUzi選手のパフォーマンスに陰りが見えるということだ。これが単なる不調であれば杞憂に過ぎないのだが、昨年末から続いているだけに心配ではある。
LPLは、日本語での実況解説が楽しめるLJLやLCKに比べれば、まだまだ馴染みのない地域かもしれない。まずは好きな選手、好きなチームを見つけて、少しずつ慣れ親しんでほしい。
英語配信は、月・水曜は18時、土・日曜は15時からTwitch(https://www.twitch.tv/lpl)にて放送されている(日本時間)。過去の試合は、公式YouTubeチャンネル「LoL Esports VODs and Highlights(https://www.youtube.com/channel/UCzAypSoOFKCZUts3ULtVT_g)」からチェックすることができる。こちらは、英語配信外の試合もアップロードされている。
本記事で、ひとりでも多くの方がLPLに興味をもっていただければうれしく思う。
■関連リンク
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LoL Esports VODs and Highlights
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Week5が終了した2月24日時点で、50マッチ118ゲームが消化されているわけだが、これはすでに「LJL 2019 Spling Split」の全試合数(84ゲーム)を超えている。
開催都市(上海・杭州・成都・北京・重慶・西安)への移動も含めた過密なスケジュールの中で、闘争本能むき出しの熾烈な戦いが日々展開されている。
そして、Week5終了時における順位表がこちら。
出典:https://twitter.com/lplenglish/status/1099686962749992960
昨年の「World Championship」で優勝したInvictus Gaming(iG)が3位、ベスト8のEDward Gaming(EDG)とRoyal Never Give Up(RNG)がそれぞれ5位、9位となっている。
この結果だけ見ても、LPLが群雄割拠の時代を迎えているということが、おわかりいただけるだろう。
今回は、Week5までの118ゲームすべてを余すことなくチェックしている私、Merrydayが、「LPL 2019 Spring」の前半戦、Week5までの結果を振り返り、メタの特徴や注目チームの現状についてお伝えする。
なお、旧正月の影響で、中国のパッチ事情はやや特殊となっている。Week1~3はパッチ9.1、Week4~5はパッチ9.2(ただし、パッチ9.3におけるサポートアイテムの修正は適用済み)で行われている。
Week1~3(パッチ9.1)について
メタの中心となっていたのはミッドレーンパッチ9.1を語るうえで欠かせないのが、ミッドレーンを支配していたガリオ、リサンドラ、アーゴットというユーティリティ系のチャンピオンだ。純粋なダメージディーラーではないものの、優秀なCCなどで味方との連携面に優れ、攻めの起点役を担う。育てば強いのは当然として、育たなくても仕事ができるセーフティピックとして重宝されていた。
ジャングラーは序盤からガンクを狙いやすく、集団戦では後衛に対して圧力をかけられるカミール、シン・ジャオ、リー・シン、グラガス辺りが主流となっており、ジャングルとミッドの連携からゲームを展開するのがスタンダードな型であった。
あくまでも主役はボットレーン
ミッドの流行がユーティリティ系であったため、その分ボットレーナーがダメージディーラーとしての役割を引き受けることになり、集団戦におけるボットレーナーのパフォーマンスが勝敗に直結するケースも多かった。
特に、カイ=サを優先的に確保するチームが非常に多く、ピックされた46回のうち43回がドラフト前半での選択となっている。レーニングが強いチャンピオンではないものの、素早く接敵ができるアルティメットスキル(Ult)のおかげで、キルを拾ってスノーボールという展開が作りやすかった。
Week4~5(パッチ9.2)について
パッチ9.2において、影響の大きかった変更点を抜粋してみた。バフ:ジャーヴァンⅣ、ヨリック
ナーフ:ガリオ、ラカン、アーゴット、ジャングルキャンプの経験値
ミッドレーンのメタが急変
ナーフされたガリオとアーゴットはミッドレーンから追い出され、それぞれサポートとトップでの運用が一般的となった。これによって、残ったユーティリティ系ミッドレーナーはリサンドラのみ。しかし、そのリサンドラのカウンターとしてシンドラが台頭する。
シンドラ対リサンドラのマッチアップは、スキルレンジで優位に立つシンドラが一方的にハラスできる。さらに、キルラインで使用されたシンドラのUltに対して、リサンドラは自身にUltを使用しなければならない。Ultの交換を強制することによって、少数戦・集団戦におけるリサンドラの存在感は一気に削がれる。
コーキ、サイラスといった苦手なチャンピオンも採用されはじめ、リサンドラはもはや安定ピックと言えなくなってしまった。このような経緯で、ユーティリティ系ミッドレーナーは下火となり、代わってゾーイ、ルブラン、シンドラ、ジェイス、ライズといったキャリー系が支持されるようになった。
これに伴い、ボットレーンではカリスタの評価が上昇している。キャリー系ミッドレーナーのスノーボールを推進する上で、ボットレーンに求められているのは「レーニングの勝利」と「サポートがミッドレーンに介入すること」だ。
カリスタはパワースパイクが早く、ピック率の高いエズリアル、シヴィア、カイ=サに対してレーニングで有利を取りやすい。また、高い1対1性能と視界確保のスキルによって、敵のサポートにロームをためらわせる効果まで期待できる。
ジャングルはリスクを避ける方向にシフト
ジャングルキャンプの経験値が下方修正されたことによって、ガンクを失敗した際のリカバリーが難しくなってしまった。そこで好まれるようになったのが、オラフ、ジャーヴァンⅣ、リー・シンの3体だ。
獲得できる経験値が減ったのであれば、敵から奪ってしまえばいい。オラフは遭遇戦にすこぶる強く、ジャーヴァンⅣとリー・シンは視界チェックと逃走用のブリンクを兼ね備えている。積極的に敵陣へと侵入し、ファームを行うことが可能となっている。
加えて、ガンクを行う際のリスクが比較的少ないという共通点もある。オラフは基本的にカウンターガンクが中心のジャングラーであるから、読みが外れても少々時間が削られるくらいで、決まった時のリターンは大きい。ジャーヴァンⅣとリー・シンはUltの性能が優秀なので、取りこぼしが少ないというわけだ。
プレーオフ、そしてMSI出場が期待される注目チーム
多くの方が気になっているのは、一体どのチームが「MSI」に出場してくるのかだろう。ここでは、16チームの中でプレーオフ当落ラインにいる上位9チームをピックアップし、各チームの特徴と今後の見通しを紹介する。1位 FunPlus Phoenix(6勝0敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583Week5終了時点で唯一の全勝チームであるFunPlus Phoenix(FPX)は、どのポジションからでも試合を展開できる柔軟性が持ち味だ。
ファーストタワー獲得率(86.7%)とタワー被破壊数(3.3/Game)が示している通り、序盤に作り出した有利を存分に活かし、丁寧な試合運びで勝利を積み重ねてきた。
チームを牽引しているのは、今季から加入したミッド・Doinb選手だ。15ゲームのうち14ゲームでユーティリティ系を使用しているにもかかわらず、ダメージ占有率(27.9%)はチーム内トップとなっている。プレイヤースキルもさることながら、エキセントリックなチャンピオンプール(e.g. クレッド、サイオン、ポッピー、レネクトン)を有しているのも特徴的だ。
しかしながら、Doinb選手は昨年からルブランとゾーイを全く使用していないプレーヤーでもある。ミッドキャリーのメタへと移行するにあたって、多少の影響はあるかもしれない。
2位 Topsports Gaming(5勝1敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583Topsports Gaming(TOP)は、昨年末に行われた「Demacia Cup」で頭角を現したチームで、前評判通りの好位置につけている。血気盛んなソロレーナーと、チームファイトが得意なボットレーナー、そして堅実なジャングラーが調和している。
特筆すべきは、やはり「Golden Left Hand」と称されるミッド・Knight9選手だ。昨年、韓国サーバーでランキング1位に最も長く君臨した18歳であり、彼にルブランとゾーイを渡すことはすなわち敗北を意味する。ダメージ占有率も、32.3%と突出している。
しかし、そのルブランとゾーイに対してバン枠を割きやすい環境になっているため、やや向かい風とも受け取れる。
また、トップ・369選手のチャンピオンプールが狭いのも気がかりだ。得意としているアーゴットはナーフが確定しており、それに匹敵するのはジェイス、レネクトン、ジャックスくらい。17歳のルーキーに多くを求めるのは酷だが、攻略の足がかりにされるかもしれない。
3位 Invictus Gaming(5勝2敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583昨年の世界王者であるInvictus Gaming(iG)だが、ヘッドコーチが抜けた影響か、ちぐはぐな印象が拭い切れない。それでも3位につけているだけあって、チームの底力は本物だ。
ここまでほぼすべての試合において、まるで狂ってしまったかのように闘争を求めている。キル数(17.4/Game)も多ければデス数(15.0/Game)も多く、DPMは2439(全チームの平均は約1810)という驚異的な数字を記録している。
実際の試合を通じてギリギリの感覚を養っているというポジティブな受け取り方もできるが、「とりあえず戦えば勝てるだろう」という雑な意思統一の結果にも見える。
Week2辺りから動きにキレがなかったミッド・Rookie選手は、幸いにも復調の兆しを見せている。あとは、序盤の存在感に欠け、浮き沈みの激しいジャングル・Ning選手さえ安定すれば、チームにまとまりが生まれてくるだろう。
4位 Bilibili Gaming(4勝2敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583Bilibili Gaming(BLG)というチームは、丁寧な視界管理が印象的であると同時に、良くも悪くもジャングルとミッドの出来が勝敗を左右している。トップとボットは淡々と仕事をこなすが、並外れているわけではない。
「LCK」から移籍してきたミッド・Kuro選手は、積極的なプレイスタイルが「LPL」の雰囲気とマッチしているようだ。BLGの好調は、彼の活躍に依るところが大きい。
ジャングル・Metoer選手(本来はMeteorのはずが、登録の際にスペルを間違えてしまったそうだ)はカミールを大変得意としており、Week4以降は常にターゲットバンされている。強気なプレイが持ち味ではあるものの、調子づいて勇み足を踏み、キャッチされてしまうことも多い。
試合日程の関係上、ラスト5試合がRNG・EDG・FPX・iG・TOPというボスラッシュになっている。なるべく高い順位でプレーオフを迎えるためにも、気を抜くことはできない。
5位 EDward Gaming(4勝3敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583Week4まで不調に苦しんでいたEDward Gaming(EDG)は、Week5でジャングラーを変更。若いHaro選手に代わり、ベテランのClearlove選手が出場する。
経験豊富なショットコーラーが加わったことで、チームの動きに一体感が生まれ、試合運びも見違えるほどスムーズになった。特に、トップ・Ray選手とボット・iBoy選手のパフォーマンスが大幅に改善され、両名はWeek5のMVPを獲得している。
ポテンシャルの高いプレイヤーがそろっていることは間違いないので、この調子を維持できるならば、プレーオフでもいい線に食い込めるだろう。Clearlove選手のプレイ・コールに幅を持たせるためにも、ミッド・Scout選手がレーニングで負けないようなピックを心がけたい。
6位 Suning(4勝3敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583開幕から4連勝とスタートダッシュを決めたSuning(SN)だったが、メタ変化の影響をもろに受けて失速してしまった。
Suningのプレイスタイルは一貫しており、LPL屈指のボットレーナー・Smlz選手を軸として、集団戦に重きを置いている。そのため、ミッド・Maple選手にはユーティリティ系(ガリオ、リサンドラ)を使わせ、補助的な役割を与え続けてきた。明確すぎる勝ちパターンに頼り切ってしまったがゆえに、メタ変化への適応が遅れてしまったようだ。
この状況を打破する方策として、考えられるのは2つ。ひとつは、トップ・XiaoAL選手にスプリットプッシュをさせる、またはMaple選手(あるいは控えのAngel選手)にキャリー系を渡すなど、チームのスタイルを大きく変えてしまうこと。こちらは、夏のシーズンに向けた先行投資的な意味合いも強い。
もうひとつは、ジャングルとミッドが積極的にボットレーンへと介入し、無理やりSmlz選手のパワースパイクを早めるということ。こちらは、うまくいけば素早くチームを立て直すことができるものの、応急処置にすぎない。
7位 JD Gaming(4勝2敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583JD Gaming(JDG)は、スウェインやスカーナー、パッチ9.2で大幅なナーフを受けたラカンなど、枠にとらわれないドラフトが特徴のチームだ。
開幕前は、チームとしての完成度が高かった昨年のメンバーから、ジャングル(現SKTのClid選手)とボット(現TOPのLokeN選手)が抜けたことを不安視されていた。
しかし、ボットのimp選手とBvoy選手はプレイスタイルの違いから、うまく住み分けができており、両者ともに欠かせない存在となっている。ジャングルは、LPL3年目のFlawless選手をメインに起用しつつ、中国に来て日の浅いLevi選手にも、実戦経験を積ませることに成功している。
キープレイヤーは、昨夏のベストトップレーナーに選ばれたZoom選手。15試合で12種類のチャンピオンをピックしており、今後のメタ変化にも問題なく順応できるはずだ。同時に敵からのマークも一層厳しくなることが予想されるため、いかにその狙いを外せるかが重要になるだろう。
8位 Victory Five(3勝2敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583今季からの新規参入チームであるVictory Five(V5)は、経験豊富な選手が顔をそろえているものの、傑出したプレイヤーがいるというわけでもない。
ここまでのVictory Fiveは、トップ・Jinoo選手とボット・y4選手が主体となってチームを引っ張ってきた。この2ポジションがキャリーするスタイルは、他のLPLチームにはない珍しい組み合わせとなっている。
特に、Jinoo選手はリヴェン、ライズ、ブラッドミアといったキャリー系を使用した際のパフォーマンスが見事なので、今以上に活躍が期待される。
一方で、心配なのはミッド・Corn選手。序盤から中盤にかけての存在感が希薄で、蚊帳の外に追いやられていることが多い。レーニングで圧倒するタイプのプレイヤーではないので、ジャングルとの連携強化など工夫が欲しいところだ。
9位 Royal Never Give Up(3勝2敗)
出典:https://lol.qq.com/news/detail.shtml?docid=5257087478978779583Royal Never Give Up(RNG)は、旧正月明けにボット・Uzi選手が合流したことで、チーム全体に活気が戻ってきた。昨年もシーズン途中から尻上がりに調子を上げてきたチームなので、今より順位を落とすということは考えにくい。
ジャングル・Karsa選手は、キル関与率がチームトップの79.7%と非常に高く、LPL屈指のゲームメーカーとして躍動している。ミッド・Xiaohu選手との連携にも文句のつけようがない。レーニングが強力なボットレーンからのロームも含め、前向きな材料は多い。
不安要素としては、トップレーンを任されたAmazingJ選手。昨年のRNGを支えたLetme選手(休養中)・Zz1tai選手(引退)に比べれば、やはり見劣りしてしまう。レーニングは無難にやり過ごしたいところだが、ファイターメタがそれを許してくれるだろうか。
さらにもうひとつ気になるのは、集団戦におけるUzi選手のパフォーマンスに陰りが見えるということだ。これが単なる不調であれば杞憂に過ぎないのだが、昨年末から続いているだけに心配ではある。
まとめ
今季のLPLでは、「メタへの適応力」が勝敗に大きな影響を与えている。試合数が多いため、同じパッチの中でもメタが停滞しにくい。また、シングルラウンドロビン形式は同じ相手と2度対戦することがないため、ポケットピックへの対応も迫られる。これらは他の地域では見られないLPL独自の特徴であり、「MSI」「World Championship」といった国際大会との類似点でもある。LPLは、日本語での実況解説が楽しめるLJLやLCKに比べれば、まだまだ馴染みのない地域かもしれない。まずは好きな選手、好きなチームを見つけて、少しずつ慣れ親しんでほしい。
英語配信は、月・水曜は18時、土・日曜は15時からTwitch(https://www.twitch.tv/lpl)にて放送されている(日本時間)。過去の試合は、公式YouTubeチャンネル「LoL Esports VODs and Highlights(https://www.youtube.com/channel/UCzAypSoOFKCZUts3ULtVT_g)」からチェックすることができる。こちらは、英語配信外の試合もアップロードされている。
本記事で、ひとりでも多くの方がLPLに興味をもっていただければうれしく思う。
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