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【スイニャンの心ゆくまでe-sports 第1回】スイニャンって何者?に答えつつ、e-sports観戦の醍醐味を語る
「スイニャンさんって名前はよく聞くけど、一体何者なの?」
最近、こういったたぐいの質問を受けることが増えてきています。そこで今回、その質問に答えつつ、私がこれまで楽しんできたe-sportsのことをご紹介できればと思い筆をとりました。おそらく私は、多くのe-sports関係者とはちょっと違ったアプローチでこの業界を見てきています。それは読者の大半を占めるであろう「e-sportsファン」としての目線です。
私がハマった韓国e-sportsの世界とは
『StarCraft: Brood War』の大会の様子(StarCraft Shinhan ProLeague 10-11)
私がe-sportsを本格的に見はじめたのは、韓国に住んでいた2007年ごろ。当時流行っていたのは『StarCraft: Brood War』で、プロリーグが毎日競技場で開催されるほどの人気でした。テレビのゲームチャンネルで試合を観戦し、e-sportsニュースサイトで勝利インタビュー読む、それが私の日課でした。さらにプロゲーマーのトーク番組や一緒にプレイする視聴者参加型の番組、e-sports情報番組などどれも夢中になって見ていた記憶があります。
やがてそれでは飽き足らず、競技場に通うようになりました。応援に来ているのは、ほとんどが私と同じように観戦を楽しむ女性ファンばかり。会場では毎回、勝利チームがファンミーティングを実施します。負けるとそのまま帰ってしまうので、ファンとしては勝ってご機嫌な選手たちとお喋りしたり一緒に写真を撮ったりしたいわけです。だから必死で応援しました。仕事で試合が見られないときは、観戦仲間にメールで戦況を聞いて勝ちそうだったら帰りに競技場に寄る、なんてこともしばしば。
大好きだったプロゲームチーム「MBC GAME HERO」(2012年解散)
観戦仲間は、会場で自然に増えていきました。彼女たちに誘われてネット上にある私設のファンカフェにも加入しましたが、やはりメンバーのほとんどが女性。ファンカフェ内にはクランがあったものの、私はプレイにはあまり興味がなかったので入りませんでした。女性ファンのなかでプレイをする人は少数派だったんですが、好きな選手のプレイを真似しながら和気あいあいとゲームを楽しんでいたようです。
e-sports観戦が好きすぎて…ライター活動を開始
ひょんなことから日本にもe-sportsがあることを知りましたが、当時は韓国の情報が日本にほとんど入ってきていませんでした。そこで、韓国記事の翻訳を始めたのです。今でこそその価値が高まり無断翻訳を禁止しているところがほとんどですが、当時はそういった規制がありませんでした。しかし時は流れ、プロシーンの『StarCraft II』への移行とともにグローバル化が進んだことで韓国メディアから警告が入り、更新は中止せざるを得ない状況に。韓国で現地記者に混ざって取材を敢行(2013 StarCraft II WCS KR Season1 MANGOSIX GSL)
それならば、と独自に取材し記事を書き始めました。そのころ私はもう日本に帰国していましたが、自分でアポを取って現地へ赴き、試合を観戦してプロゲーマーにインタビュー。それを記事にしているうちに、いつの間にかメディアから「うちで書かないか」と誘われるようになり、次第にお仕事になっていきました。
かつては憧れのプロゲーマーに仕事で会えるという感じでしたが、最近はお仕事として先にプロゲーマーの方と知り合ってから試合を観戦する、というパターンが増えてきました。でも実際に選手に会うと、やっぱりプロゲーマーの方々ってすごく素敵な方が多いんです。とくにトップレベルの選手って、ストイックだけど優しかったりトークが上手だったりするんですよね。だから、だいたいその場でファンになっちゃいます。そしてそんな彼らを画面の向こうから必死に応援している生粋のファンを当時の自分に重ねつつ、皆さんに喜んでもらえるようなお仕事をしようと心に誓ったりしています。
『LoL』の人気プロゲーマーFaker選手と(2015 SBENU LoL Champions Korea Summer)
もっと自由に!e-sports観戦について思うこと
現在、私は『League of Legends(LoL)』の日本公式リーグ「LJL」で執筆および通訳のお仕事をさせていただいています。むしろ、そちらで私のことを知った方のほうが多いかもしれないですね。近年は韓国でも『LoL』が人気ですが、韓国ファンのe-sportsの楽しみ方は私が住んでいた当時とさほど変わっていません。会場には相変わらず多くの女性ファンが詰めかけ、ファンミーティングで選手に会うことを楽しみにしています。もちろん韓国には昔から、男性のe-sportsファンも大勢います。なかにはプロゲーマー志望の人もいますが、たまに友達とゲームする程度のライトゲーマーや、プレイはやめてしまったけれど観戦は続けているという人も実は多かったりします。また、観戦デートを楽しんでいるカップルも韓国でたくさん見てきました。休日には、小学生グループや家族連れの姿もちらほら。
e-sportsに熱狂するファンたち(2015 SBENU LoL Champions Korea Summer)
個人的には、e-sportsをゲーマーだけのものにしてしまってはもったいない、と思っています。スポーツに例えるなら、プロ野球観戦を「プロを目指す学生や草野球をやる人だけが楽しむもの」にしてしまうようなものです。やらない人も、基本的なルールさえ知っていれば細かいことは分からなくても楽しめるのがスポーツ観戦の良いところ。日本のe-sportsも「老若男女がさまざまな観点を持って自由に楽しめる」、そんな文化になっていってほしいなと願っています。
■【スイニャンの心ゆくまでeSports】
・第2回 韓国プロゲーマー引退後の道は?eSports界を取り巻く光と影
■スイニャン氏のプロフィール
韓国在住時の2007年ごろからe-sports記事の翻訳を始め、帰国後の2009年ごろから国内外のe-sports取材を開始。さまざまなメディアで執筆経験を持ち、現在もe-sportsライターとして活動を続けている。2016年からは日本eスポーツ連盟の事務局も担当。また、語学力を活かして韓国人プレイヤーのインタビュー通訳・翻訳や、国際大会の引率通訳なども行っている。自らはゲームをほとんどプレイせず、おもにプロゲーマーの試合を楽しむ観戦勢。
twitter:https://twitter.com/shuiniao?lang=ja
【連載】スイニャンの心ゆくまでeスポーツ
- 【スイニャンの心ゆくまでeSports】第3回 eSportsファンの私が人前に出て発信し続ける理由とは?
- 【スイニャンの心ゆくまでeSports】第2回 韓国プロゲーマー引退後の道は?eSports界を取り巻く光と影
- 【スイニャンの心ゆくまでe-sports 第1回】スイニャンって何者?に答えつつ、e-sports観戦の醍醐味を語る