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【スイニャンの心ゆくまでeSports】第3回 eSportsファンの私が人前に出て発信し続ける理由とは?

自分はもともと人前に出るようなタイプの人間ではないし、出るつもりもない―――。そう思っていた時期が、確かにありました。今でも本当は裏方のほうが向いているんじゃないか、と感じることさえあります。

そんな私ですが、今年から『League of Legends』の公式リーグ「LJL」にて韓国語通訳として配信で皆さんの前に登場しています。とは言っても、人前に登場するのはこれが初めてというわけではありません。実は以前から、意識的に表に出るよう努めてきたという経緯があります。今回は、表に出るつもりのなかった私に訪れた「心境の変化」からお話させてください。

人前に出て気づいた、人に知ってもらえるメリット

今でこそ女性のeSportsファンも増えましたが、10年前の日本のeSportsファンはまさに男性だらけ。「eSportsに女なんて都市伝説」、「女アピールしているのは全員ネカマ」だと考えられている世界でした。つまりネット上の活字のみの活動では、誰も私が女性であることを信じてくれないのです。どうすれば良いか真剣に悩んだ結果が、「人前に出ること」でした。

韓国にて観客席から日本人アピール(2014 HOT6 Global StarCraft II League)

そこから国内外のeSports関連イベントに積極的に参加したり、取材したりするようになりました。ところがそうして始めた「人前に出る」という行動には、自分の活動を大勢の人に知ってもらえるというメリットがあることに気づいたんです。やがて日本のeSports関係者の方々にも私の記事を読んでもらえるようになり、韓国でも「日本でeSportsを楽しんでいる人がいる」と知ってもらうことができました。

その後、執筆活動はもちろん、MCや通訳など表に出る機会も増えていきました。最近はeSportsの多様化によって私のゲーム知識が足りないことも多いのですが、「eSportsとは何かをイチから説明しなくても良い」という理由で、さまざまなオファーを受けるようになっています。執筆に関してはおかげさまで「よく知らないゲームタイトルでもスイニャンの記事ならとりあえず読んでみよう」と目を通してくださる読者の方々もいるようで、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。私は今も無理に人前に出ようとは思っていませんが、日本のeSportsの発展に一役買うことができるのなら、もう少し頑張ってみようかなという気持ちでいます。

活動を続けるために……ボランティアから仕事へ

引率通訳として国際大会へ。写真は『StarCraft』日本代表のnazomen選手(IEF 2009)

ところで私は以前から貿易事務に従事しており、実は今も週3日ほど商社に勤務しています。それもあって、「eSports活動はボランティアで構わない」と思い続けてきたのですが、そんな私がeSportsのお仕事を引き受けるようになったきっかけのひとつは、夫の存在でした。これまで海外渡航を含む私のeSportsにおける趣味活動をさまざまな側面で支えてくれた夫への恩返しとして、この活動を少しでもお仕事に変えていきたいと思うようになったのです。

『StarCraft』時代の経験を生かして臨んだ『League of Legends』取材(2015 SBENU LoL Champions Korea Summer)

一般的にボランティアにありがちなのが、活動が大きくなればなるほど負担が増えていき、やがて続けられなくなるというパターン。私も日本のeSports界でやりたいことが増えていくなかで、これ以上は仕事にしなければ続かないというところまできたのが、もうひとつのきっかけでした。さらに職業として日本のeSports業界の発展に尽力する方が増えていくのを目の当たりにしたことも、私もできる範囲で貢献したいという気持ちが芽生えるきっかけになったと思います。

eSportsライターという職業について

これまで一番たくさん書いたのは韓国『StarCraft II』の記事(2014 HOT6 CUP Last Big Match)

今eSports業界は全体的に人材不足と言われていますが、私が身にしみて感じているのはライター不足。イベントレポートなど「eSportsのことが書ける」ライターさんは結構いますが、「eSportsのことを専門的に書こう」というライターさんはそれほど多くないように感じます。私なりに考えた理由としては、あくまでもゲーム専門のライターさんが多いからだと思うんです。彼らの発想は「面白いゲームを記事にしたい、eSports大会があるならそれを書こう」という流れのような気がします。それに対し、私はどちらかと言えば「eSports大会を記事にしたい、ゲームタイトルは何があるかな」という流れに近いのです。

帰国直前、大好きだった「MBC GAME HERO」の選手たちとのファンミーティングにて

個人的に、プロシーンのファン層に身を置くライターがもっといればいいなと考えています。私はプロゲーマーの人柄を伝える記事を得意としていますが、競技シーンの分析やプロゲーマーという職業への憧れなど、私にはない感性を持つ方の記事も読んでいて楽しいです。さまざまな個性を持つ老若男女のライターが存在すれば読者の楽しみも増えますし、eSportsの発展にもつながることでしょう。

記事を書くには最低限の国語力は必要になりますが、正直私も文才があるタイプではないですし、難しい文章を書く能力はなくても大丈夫な気がします。私の場合、好きな分野に対して思いがあふれてしまうほうで、まわりの人に理解してもらえなかった韓国eSportsの楽しさをブログに書き綴っていたんです。そのあふれる思いが伝わったのか、ブログがeSports関係者の目に留まったことがライター業を始めたきっかけでした。最初はそういう感じで構わないと思うんです。我こそはという方は、この機会に勇気を出して筆をとってみませんか。

■【スイニャンの心ゆくまでeSports】
第1回 スイニャンって何者?に答えつつ、eSports観戦の醍醐味を語る
第2回 韓国プロゲーマー引退後の道は?eSports界を取り巻く光と影

■スイニャン氏のプロフィール
韓国在住時の2007年ごろからeSports記事の翻訳を始め、帰国後の2009年ごろから国内外のeSports取材を開始。さまざまなメディアで執筆経験を持ち、現在もeSportsライターとして活動を続けている。2016年からは日本eスポーツ連盟の事務局も担当。また、語学力を活かして韓国人プレイヤーのインタビュー通訳・翻訳や、国際大会の引率通訳なども行っている。自らはゲームをほとんどプレイせず、おもにプロゲーマーの試合を楽しむ観戦勢。
twitter:https://twitter.com/shuiniao?lang=ja

【連載】スイニャンの心ゆくまでeスポーツ

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