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プロゲーミングチーム運営・太田が明かす「チーム維持のため心がけること」
前回の記事を予想以上に多くの方に読んでいただけたようで、嬉しく思っていると同時に、とても恐縮しています。ありがとうございます。
今回は、チームを作って維持していくための“維持力”について書きたいと思います。
チームの維持には選手が全て、と言っても過言ではないと思います。選手がいなければ何も始まりませんよね。しかし選手は…気まぐれなのです。
「相手の気持ちになる」という、簡単なこと
我々の場合ですが、前回の記事にも書いた通りSunSisterではお給料が出ませんので、お金で選手を縛ることは出来ません。お金以外の理由で「このチームに入りたい」「このチームにいたい」と思ってもらうしかありません。
そんなSunSisterに、今もなお参加の応募が来てくれることを考えると、初代メンバーの頑張りが活きているのだと感じています。初代メンバーの大会での雄姿や普段の姿を見て、「SunSisterに入りたい!」と沢山の方が応募してきてくれたのです。
初代メンバーが引退していった後も、「俺が次世代のメンバーになってみようかな」と応募してくれる方がいらっしゃいました。「昔のSunSisterが好きだった」とご意見をくださる方もいらっしゃいますし、「長く続いているSunSisterのプレイヤーになりたい」と言ってくださる方もいらっしゃいます。いずれも有難いことです。
では単純に、それだけでチームを維持できるの?と問われれば、そうではありません。肝心かなめの選手は、自己都合で脱退してしまうからです。
『就職活動が始まるので』(仕方ないです)
『受験勉強が始まるので』(仕方ないです)
『ゲームに飽きたので』(し、仕方ないです?)
『大会に負けて萎えたので辞めます』(え?)
たまに他のチームの方から、「脱退が相次いでチームが崩壊しそうです。どうしたら良いと思いますか?」と相談を受けることがあります。この相談に対して、単純にお答えする場合、「リーダーの貴方がチームの悪い部分を直させるしかない」と私は答えています。
受験や就職活動等の外的要因を除けば、脱退理由の多くが“チーム内の揉めごと”です。
私は『Alliance of Valiant Arms(AVA)』にしても、『オーバーウォッチ』にしても、チームの戦術・戦略に口を挟むことはありません。選手の方が上手ですからね!ですが私は、チーム内の人と人の付き合い方には結構うるさく口を挟みます。プレイが上手でも、何がどうなったらチームが割れてしまうのか、チームが壊れてしまうのかを分かっていないプレイヤーの方は多いです。
また、以下のような要因を持っている人が、揉め事の原因になることが多いかと思います。
- 自己中心的
- 自己顕示欲が強すぎる
- 集団スポーツの経験がない
- 今までゲーミングチームは何チームか渡り歩いたけど、言い合いになり揉めて辞めた
理由や事情、環境は人それぞれですので、上記の要因については手放しで全てが悪いとは思いません。しかし、それを差し引いても、“集団競技の中での人との付き合い方”が苦手なプレイヤーの方は多いように思います。では、どう心がけてもらえばいいのか。簡単なことだと私は思っています。全ては「相手の気持ちになれば良い」それだけで大丈夫です。小学校で習ったことそのままの、「自分が言われて嫌なことを相手に言うな」ということです。
ゲームで勝ちを目指す以上、議論は必要です。
「今のプレイは良くない。〇〇ではなく△△の攻め方を選択すべきだったんじゃないか?」
「いやそうじゃない。俺は□□だったので〇〇を選択したんだ」
建設的で、大いに結構だと思います。しかし言い方を変えれば、こうなってしまいます。
「“普通”に考えてありえねーだろ!なんで〇〇なんだよ…そんなんじゃ俺がいくら頑張っても勝てねーわ…はぁ萎えるわ!(溜息)」
こんな風に言われた相手は、勝因・敗因について考えることよりも「なんでそんな言い方されなきゃなんねーんだ!」という気持ちが先に出てしまい、頭に血が上り、議論になりません。議論にならないだけならまだマシです。最悪の場合ケンカが始まります。そうなれば終着点は見えてきます。どちらかの“脱退”です。すなわち、チームの崩壊の始まりを意味します。
ですので私は、以下のことをメンバーに常々求めています。
- 人の気持ちになって言い合って下さい
- 大会や練習の勝ち負けで萎えない、強い気持ちと意思を持って下さい(大会に負けて萎えて辞めるくらいなら、今辞めて良いよとも言います)
これは長い人生のなかでも、備わっていなければならないことだと思うのです。
自分自身の事しか見えなくて、気に入らないことには不平不満を巻き散らす。チームメンバーにはそんな人間になってほしくありませんし、酷なことを言わせてもらえば、そんな人はチームにいてほしいとも思えません。
仲間への思いやりこそ結束の始点
チームを維持していくために必要なことは、もちろんこれが全てではありません。しかし、選手同士がうまくやってくれてさえいれば、大会に負けても、就職でメンバーが一人欠けても、ちょっと熱い議論になってしまっても、また一緒に前を向いて行けるものだと思っています。そして、苦労や困難を一緒に乗り越えていけば、自然とチームとしてのまとまりや、結束が生まれていくのではないでしょうか。こうして、チームはおのずと維持していけます。少々のことでは折れない、芯のあるチームになっているのですから。
チームを運営されている方、これからチームを作ろうと考えている方、そして選手になりたいと思っている方。私の意見が全て正しいとは当然思っていませんが、仲間を思いやって言葉にすること、それだけは必ずやチームを良い方向に導いてくれると、私は信じています。是非、心の片隅にでも留めておいていただけたらと思います。
じゃあ、SunSisterはそれが出来てるの?と聞かれれば、答えは残念ながらNOです。だたし、完全なNOでも、完全なYESでもありません。
ダメな部分は伝え、修正する。7年間、ひたすら終わりのない繰り返しなのです。私は偉そうに“代表”と名乗らせていただいていますが、実質の日々の役目のほとんどは、この部分です。本当はマネージャーの役目なのですが、マネージャーがいないので私がやっています(笑)
そんな面倒そうな事を7年もやっているの?と聞かれることもあります。その面倒なことを続けられる理由の最たるものは、しんどいことばかりではなく、嬉しいことも楽しいこともあるからです。
それとは別に、もうひとつの個人的な理由があります。私はこのチームで、お金を稼ぎたいとはあまり思っていません。(そりゃ、おぜぜは欲しいけど!)
チームメンバーにも話しますが、私がこのチームで得たい物。それは“私が死んだら線香の一本でも置きに来てくれる仲間”です。実際に、線香や香典が欲しいわけではありません(笑)共に泣き笑いしながら苦労や喜び、忘れられない出来事を共有する仲間が欲しいのです。
7年間このチームでやってきて、そんな考えに同調してくれるメンバーも、少しずつですが増えてきました。今後もそういう仲間を増やしたいですし、チームを維持していくための努力を変わらず続けていきたいと思っています。
SunSisterは来月には無くなっているかもしれない、何が起きるか予想できない。そう思い、言い続けながら、なんとか7年間やって来ました。今後もどんな困難があるか分かりませんが、もっと“維持力”を身に付けて、できるだけ長くチームを存続させていきたいと思っています。
今回の最後の一言。
「やっぱ香典は多い方が嬉しい」
■太田 桂氏のプロフィール
2011年に「SunSister」に加入。現在はSunSisterの代表を務める。
ゲームは小学校5年生から始め、PCゲームは中学1年生から。
36歳でFPS『Alliance of Valiant Arms(AVA)』に出会い、37歳で日本一になり、「2010 IeSF国際大会」に出場。現在45歳。
■関連リンク
SunSister
http://www.sunsister.net/
「SunSister」のTwitter
https://twitter.com/SunSister_net
太田 桂氏のTwitter
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太田桂氏のニコニコ生放送チャンネル
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太田桂氏のTwitchチャンネル
https://www.twitch.tv/moruchan
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