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プロゲーミングチーム運営・太田が明かす「台湾プロリーグ参戦生活で思うこと」
私が書かせていただく記事も、とうとう3回目までやってきました。今回は「台湾でのプロリーグ参戦生活で思う事」を書いていきたいと思います。
プロリーグ参戦のため台湾へ
現在SunSisterは、Blizzard Entertainment主催大会『Overwatch』プロリーグ「Overwatch Pacific Championship」に参戦しています。なお、Blizzard Entertainmentより「出場しないか?」と打診いただいたのは、現在出場しているDeToNatorとSunSisterだけではありません(発表はされていません。私の知る限りです)。
つまり、出場する機会は複数のチームにありました。
他のチームはチームの方向性(例えば日本の大会重視)で辞退されたのか、資金面での理由で辞退されたのか、その他の理由なのか、私にはわかりません。もしくは、参加意思を示した複数チームから、DeToNatorとSunSisterを選んでいただけたのかもしれません。
ここで第1回目から私の記事を読んで下さっている方の頭の上には、「?」と出ているかもしれません。「SunSisterはお金無いんじゃないの?」と。
行きたい。
台湾、三ヶ月行きたい。
プロリーグ参戦したい。
当初は私のへそくりから200万円出して、貧乏生活しよう!という案でした。
物件を探し食費を計算し……出た結果は、
【毎週戦う大会会場から約300km離れた山奥の農村地帯に住んで泥水をすする生活】でした。
つまり200万円ごときでは、まったく無理だったのです。
勝つための台湾生活
しかしその話を聞いたとある企業様が「支援しようじゃないか」とおっしゃって下さり、今の台湾生活があるのです。今もその有難さを噛みしめながら、台湾で生活しています。
しかし選手は感謝しながらも、試合で負け続けると心が荒れてきます。私は「勝敗は二の次。楽しめ!」と伝えてきました。選手も「楽しみます!」と言ってくれていますが、選手はやっぱり勝ちたいですからね。どうしても心が荒んできます(笑)
「どうしたら良いのか」
「何が足りないのか」
日々話し合っているうちに、練習量もどんどん増えていきます。自分達の足りない部分を補おうと努力します。でも気が付けば、自分たちのキャパシティを超えてしまっていました。
元々、男子9名が一緒に住むのです。揉め事もあるだろうと予想はしていましたが、ここに来てチーム内が険悪な雰囲気になってしまったわけです。このままではいけない、と自分たちのペースを取り戻しつつ、少しだけ余裕を持った生活に戻すことと、不満点の話し合いでもって、この状況は改善されてきました。
台湾に来て思うことは、やはり集団生活の難しさです。選手のモチベーションの維持、各々の役割、共同生活の中での周りへの気配り。何かがどうしても欠けたり、配慮ができなくなってしまいます。そこをどう上手く説明して改善させるか、皆に思い返してもらうかが非常に難しいところですが、必ず各メンバーが考えなければならないことだと感じます。
私は管理する立場ですので、選手にうるさく注意します。
ダメなものはダメ。
これをやるように。
それはやってはいけない。
選手からすると、やっかいな存在だと思います。選手は自由にやりたいでしょうし、実際今も「好きにやらせて下さい!」と思っているかも知れません(笑)
私もうるさく言いたくないですし、選手もピーピー言われて嫌だろうなぁとは思います。しかし、それを面倒に思って放置してしまうと、何かが崩壊してしまう。だからこそ、うるさく口を挟みます。これはどこも同じですね。あのチームもあのチームもあのチームも。どこも、色々あるそうです。
かく言う私も、台湾に来て失敗をしています。その最たるものが、「MAXで怒った」ことです。内容的には間違っていないのですが、激しく叱ってしまったことは失敗だったと思っています。
その間違いに気付かせてくれたのも、選手です。
「もるさんの言ってる事は正しいです。なので怒っていいと思います。だけどお願いがあります。あいつは若くてしかもバカだし社会常識も何も知りません。何が悪いのかすら判ってないんですよ。それをもるさんから教えてやって下さい」と。
そう。私からすると、なぜそんなことをするのか?意味が判らない!と怒ってしまいますが、若い世代にはその常識が通じないのです(もちろん若い世代にも通じる人はいます)。
なので私はそれ以降、何かあるたびに滾々と意味を話すようにしてします。噛み砕いて嚙み砕いて話します。すると、理解してもらえるわけです。そんな出来事が日々起きます。毎日は言いすぎですが、本当によく起こります。
共同生活のしんどさの先にあるもの
海外の大会に出てみたい!と思っていらっしゃる方は、「何を贅沢なことを言っているんだ」「海外の大会に出られるだけで幸運に思うべき」とおっしゃるかもしれません。
まさにその通り。
しかし人間とは欲深いもので、それに慣れてしまうんです。慣れが出てくると今度は不満が溜まり、それがチームに悪影響を及ぼす。なので時折、日本にいる時に初めてBlizzard Entertainmentより「出場しないか?」と打診を受けた時の気持ちを思い出してみようぜ、とメンバーに話します。目ん玉キラキラさせながら、「もるさんなんとか俺たち出場できないっすか!」「もるさん結果まだ出ませんか! オレ台湾行きたい!」と、毎日の様に言っていた日々を思い出そうぜ、と話します。それで選手が少しでも初心を思い出して、台湾生活のしんどい部分を乗り切ってくれているのだと信じています。
なんだかここまで、台湾での共同生活の良くない部分ばかりを書いてしまいましたが、楽しくやっています。勝てなかった時は、試合後がっくりしてしまう時もありますが(笑)
三ヶ月のプロリーグ参戦台湾生活も、残すところあと一ヶ月。
なぜ、我々がここに来れたのか。
なぜ、我々がここにいるのか。
そこから何を得るのか。
その意味を噛みしめながら、しっかり楽しんで残り一ヶ月を過ごしていきたいと思います。
あと、たまに「帰国後どうするの?」と聞かれることがあります。帰国後ですが、就職活動等でチームを離脱する(もしくはチーム在籍のまま長期お休み)予定の選手もいるので、ちょこちょこメンバー変更を行うことになると思います。スターティングメンバーにも、入れ替わりが発生する予定です。その際には新規メンバーも募集させていただくかと思いますので、よろしければ是非ご応募下さい。お待ちしています!
ではこれにて、三回目の記事も終了と相成ります。最後までご覧いただき、有難うございました!
いつもの最後の一言。
「あと2年くらい台湾に住みたい」
■太田 桂氏のプロフィール
2011年に「SunSister」に加入。現在はSunSisterの代表を務める。
ゲームは小学校5年生から始め、PCゲームは中学1年生から。
36歳でFPS『Alliance of Valiant Arms(AVA)』に出会い、37歳で日本一になり、「2010 IeSF国際大会」に出場。現在45歳。
■関連リンク
SunSister
http://www.sunsister.net/
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