こんにちは。プロゲーミングチーム「SunSister」で運営を担当しているマネージャーの太田 桂です。今回は“プロゲーマーになりたい！”と考えている人へ、私なりに思っていることを書きたいと思います。他の媒体では「書いてもらいたかったですがちょっと記事には出来ない内容ですね（笑）」と断られた経緯もある内容です。

■SunSister出場大会レポ
意外な逆転劇の連続『オーバーウォッチ』頂上決戦「JCG Master 2016-2017 Winter Finals」レポート



予め言っておきますが、
「プロゲーマー最高！」
「夢を追って好きなゲームで生活しよう！」
といったポジティブな内容ではありません。
しかし
「プロゲーマーなんて辞めなさい！」
という内容でもありません。その“先”を見つめて夢を追って欲しい。そんな内容になっています。

長くチームで活動していると「プロゲーマーになりたい！」というプレイヤーさんに出会う事も少なくありません。私はその度に「大丈夫かな？」と心配になってしまいます。

チームへの加入希望者には、自分の気持ちを素直にぶつけてくる人もいます。
「お金を稼げるゲーマーになりたいです」
「お給料はいくら貰えるのですか？」
「チームに入ったらスポンサーから何か貰えますか？」
などといった事を聞かれます。

気持ちはわかります。誰だってお金が欲しい。ボクだって欲しいです！！！

しかし企業からお金や商品を頂くという事は並大抵の事ではありません。何かを頂くには何かをしなければなりません。何かが欲しいのならば、チームに対して有益なことを長期的に提供し、スポンサー企業様にとって貴方という存在がプラスでなければ貴方は何も得る事が出来ません。「俺はゲームが上手いから！」「優勝した事がある！」それだけでは大した理由にはならないのです。何かを得るために貴方はチームやスポンサーに対して努力を続けなければなりません。

プロゲーマーになるということ、そしてその後の現実

もし貴方がプロゲーマーとしてお給料を頂けるようになったとします。しかし、その先にも大きな問題が待っています。

私が知る限り、日本のプロチームでお給料が支払われているチームは極少数ですが存在します。例えば貴方のゲームプレイが評価され、毎月18万円が支払われるとします。今まで大変なアルバイトでお金を稼いできた貴方にとって、大好きなゲームをプレイするだけで18万円も頂けるというのは夢のようだと思います。
しかし、それは単に時間を切り売っている事だと思って欲しいのです。「俺はプロゲーマーになりたい」という人の年齢は20代前半か10代後半が多いように思います。今日から貴方は毎月18万円をもらって5年～7年間プロゲーマーとして生きていきます。その後、貴方が28歳になった頃、貴方のポテンシャルは衰え若手が育ち、貴方はとうとうスタメン落ちしてしまいました。当然、お給料も支払われなくなります。貴方は生活の為に仕事を探すことになります。

100%ではありませんが、貴方が望む職に就くことは非常に困難だと思います。同世代の貴方の友人は既に社会人として約5年～7年のキャリアを積んでいます。その大きな差が生まれてしまうのです。

プロゲーマーの実績を生かす職種は非常に限られます。ほぼ無いと言っても良いかも知れません。乱暴な言い方ですが、結果だけ見れば、貴方は1カ月18万円で社会人としての一番大事な時間を切り売りしてきたことになるのです。

では、日本のプロゲーマーに未来はないのか？
目指してはダメなのか？
現在給与を頂いて生活しているプロゲーマーに未来はないのか？

そんな事はありません。その先は貴方次第で希望あるものになります。

現状を冷静に見つめ、覚悟を持ってプロゲーマーの世界へ来て欲しい

プロゲーマーとしてのキャリアを終えた貴方は、就職というミッションに挑みます。ここを見据えて活動しているプロゲーマーの方は少なからずいます。しかし日本の市場では、一生プロゲーマーとして生活していくことはごく一部の方を除いてまだ叶いません。したがって、その後の就職を見据えなければなりません。
貴方の将来のために、そこまで考えてくれているプロチームも少数ですが存在します。しかし、貴方のプロゲーマーキャリアの中で、以下の5つのような事をすることがあれば、それは自分の未来を危うくするでしょう。

1. 心のコントロールが出来ず、プレイの苛立ちからすぐ暴言を吐く
2. プレイは上手いがチームメンバーの事を思いやらない
3. チームに協力的ではなかった
4. 挨拶などの社会人としての基本が出来ない
5. 結局ゲームが上手かっただけ

上記に該当してしまうような選手を、チームが大事なスポンサー企業や、繋がりのある企業に貴方を紹介しようと思いますか？つまり、貴方はキャリアの中で優れたゲームプレイを維持しながら、同世代の社会人と同じように人として成長していかなければならないのです。
もしそれが出来れば（出来ます！）、貴方の将来まで考えてくれている素晴らしいチームのオーナーならばきっと企業に貴方を紹介してくれるでしょう。

私はプロゲーマーを目指す方に「やめた方がいいですよ」と言いたいのではありません。
「ゲームをしていればお金が貰える」
「バイトより楽しいし楽だ」
「有名になれば目立ってちやほやされるかも」
と安易な考えで目指すべきではないとお伝えしたいのです。しっかりとしたチームを選び、ゲームプレイはもちろん、きちんと人間として成長して行けばその先のキャリアもきっと素晴らしいものになると思っています。

友人の有名プロゲーマーの言葉です。
「俺は日本のe-sportsがまだ未成熟な今、大金稼ぐ！とか思ってないです。俺は日本のe-sports発展の礎の一部になれれば良いんです」
これを読んでいる皆さんにもその覚悟を持って、ぜひこの世界で活躍して頂けたらと思います。

彼はこうも言っていました。
「日本のe-sportsが発展して、wikiのe-sports欄に俺の名前が載ったら嬉しいじゃないですか！」
ちょっと微笑ましいですね。

世界の華々しいプロ選手達を見て憧れる事は決して悪い事ではありませんし、素晴らしい事だと思います。しかし現状をもっと冷静に見つめ、覚悟を持ってこの世界に来て下さい。
この文章へのご意見・ご質問は私個人の配信でお受け致します。ご遠慮なくご意見頂けたら幸いです。

Good Luck, Have Fun!

この文を書いた私のチーム「SunSister」について

最後までこの文を読んで下さった人に感謝を申し上げるとともに、私のチームの事を少しだけ紹介いたします。
SunSisterでは「プロゲーマーとしてお金を稼ぎたい！」といった方はどんな優秀なプレイヤーでもお断りしています。なぜならば現状お給料は出ませんし、何よりもメンバーの将来までカバーしてあげる体制がないからです。
お断りする際には「名前は出しませんが、お給料が出て、しかもキャリアを終えた後の事も考えてくれるチームが少ないですがきっとありますよ。貴方はウチではなくそういったチームに行くべきです」とお話させて頂いています。
うちのメンバーは、ほぼ全員が社会人や学生です。そして仕事、学業を最優先にチームで活動しています。そういったチームでも魅力を感じて頂けるならば、ぜひ私たちのチームの門を叩いて下さい。お待ちしています！

最後に一言。
「悪い大人の食い物にされたらあかんで」

「SunSister」の成績

・国際大会
2014 AVAIFM国際親善試合：5位 （ニコニコ超会議2014 幕張メッセ）
2012 AIC国際大会 in China：4位 （China ShenzhenCity）
2011 IeSF国際大会 in Korea：準優勝 （Korea AndongCity）

・国内大会
2016 AVARST Season1 ：5位（東京・ALIENWARE ARENA in アイ・カフェAKIBA PLACE）
2016 AVAMST Season1 ：16位
2016 AVAODL season1 マスターリーグ゛：準優勝
2015 AVALMT season1 ：4位
2015 AVAODL season2 マスターリーグ：優勝
2015 AVAMST season1 ：3位
2015 AVARST season2 ：5位 （東京・秋葉原e-sports SQUARE）
2015 AVARST season1：準優勝（東京・秋葉原e-sports SQUARE）
2015 AVAODL season1 マスターリーグ：優勝

■太田 桂氏のプロフィール
2011年に「SunSister」に加入。現在はSunSisterの代表を務める。
ゲームは小学校5年生から始め、PCゲームは中学1年生から。
36歳でFPS『Alliance of Valiant Arms（AVA)』に出会い、37歳で日本一になり、「2010 IeSF国際大会」に出場。現在45歳。

■関連リンク
SunSister
http://www.sunsister.net/
太田 桂氏のTwitter
https://twitter.com/moru77777?lang=ja
太田桂氏のニコニコ生放送
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太田桂氏のTwitch
https://www.twitch.tv/moruchan