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『リーグ・オブ・レジェンド』2020シーズンの始まりに読んでおきたい、世界の『LoL』に関する10+1の出来事
目次
- 1. LECを支え、拡大を続ける欧州の競技シーン
- 2. 旧LMSと旧LSTが合体し、新リーグ「PCS」がスタート
- 3. OPLの拡大にブレーキ、チーム運営補助金などの面が厳しく
- 4. さらなる才能を求め、LCSで地域間移籍ルールが一部緩和
- 5. TCLより韓国人選手が大量離脱。給与不払いが多発
- 6. 順調にファン層を増やすCBLOL
- 7. Griffin問題で韓国での選手と監督の待遇に社会的な議論の嵐。変わりゆくLCK
- 8. 周辺地域の有力選手やコーチをどん欲に集め続ける最強地域:LPL
- 9. プロプレイと一般プレイのバランスの乖離問題
- 10. オフシーズン大会「Demacia Cup」と「KeSPA Cup」に見る2020シーズンの展望
- +1. 新型コロナウイルスによる影響
画像出典:LoL Esports Photos
いよいよ2020シーズンの『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)公式プロリーグが世界各地でスタートした。ゲームそのものは昨年のうちに10周年を迎え、「Worlds」の開催も今年で10回目を数えようとしている。小規模だった競技シーンも今では世界各地でプロリーグが立ち上がり、それぞれの地域が世界最強を目指してしのぎを削るようになっている。そして何年も続く競技シーンのなかで、地域の評価や規模は変化し続けてきた。
新たなシーズンを迎えるにあたって、2019シーズンの終わりごろから今までに海外の競技シーンで起きた(あるいは継続している)出来事をピックアップし、2020シーズンの行く先について考えてみた。
LPL(中国リーグ)の隆盛に目を奪われがちだが、2年連続で「Worlds」の決勝戦に進み、LPLチームと対峙していたのはLEC(欧州)チームだ。「MSI 2019」でのG2 Esportsの優勝は、LECがLCK(韓国リーグ)の背中を追う状況から、互角に戦う地域へと成長してきたことを明らかにした。そして2020シーズンの欧州において、競技シーンはさらに拡大する様子を見せている。
以前から欧州は、LEC以外にも各地域ごとにアマチュアのリーグが存在していた。欧州各地域で行われるリーグでは、トップリーグへのキャリアアップを目指すプレイヤーが、LEC参加組織のアカデミーチームなどを含めたチーム間で切磋しており、その各地域を勝ち上がったチーム同士による欧州最強のアマチュア決定戦として「EU Masters」へとつながっている。「EU Masters」はLECと同様に多くのファンを得ており、今シーズンからさらにオランダおよびベルギーで2つの公認地域リーグを開始すると発表されている。
これらのリーグを勝ち上がったチームには「EU Masters」出場の権利が与えられる。さらには「オープン・ツアー」の構想もあり、こちらは今年の早いうちに続報を予定しているとのことだ。競技人口が増加し、さらなる強豪地域へと歩みを進める欧州。LPLの覇権に待ったをかける地域の一つとして、今後さらなる盛り上がりと勇躍が期待される。
2012年の「Worlds」優勝以来、国際大会の舞台で一定の存在感を発揮してきたLMS(League of Legends Master Series。香港・台湾・マカオのリーグ)。だがその地域も、2019シーズンをもってその歴史に幕を下ろした。
そして2020シーズンより始まるのが、台湾・香港・マカオおよび東南アジア地域(ベトナムを除く)という広大な地域を統括した「Pacific Championship Series」(PCS)だ。J TeamやHong Kong Attitude(HKA)のように、LMSから引き続きリーグを戦うチームもあれば、Talon Esportsのような新たに作られたチームも参戦している。
Talon Esportsは2019シーズンにLJLチーム「V3 Esports」で活躍したBaby選手(River選手に登録名変更)や、「Worlds 2019」にも出場していたHKAのUnified&KaiWing選手のボットデュオと、強力なメンバーを揃えているし、タイのNova EsportsにはG4選手のようなベテランが名を連ねている。
地域全体が国際大会でどのような位置づけになるのか、「Worlds」で何チーム分の出場枠が割り当てられるのかは未発表で予想が難しいが、レギュラーシーズンは10チームがダブルラウンドロビン方式(全チーム総当たりを2回)で戦うという形式が発表されており、かつてのLMSやLST(League of Legends SEA Tour。東南アジアのリーグ)よりも日程はハードになっている。この戦いから勝ち上がってくるチームが国際大会に現れるのは「MSI 2020」となる。その姿はいったいどのようなものになっているだろうか?
残念なことだが、『LoL』プロリーグがある全ての地域で明るい拡大の話題、というわけにはいかなかった。オーストラリア・ニュージーランドの公認プロリーグであるOPL(Oceanic Pro League)は、2020年よりチームの運営補助が減額され、選手の最低給与が規定からなくなるとのアナウンスが出ている。大規模なリーグ運営と華々しい国際的な成果を収めている地域では、選手の給与など、チーム運営関連のコストは高騰する一方なのだが、OPLの現状は拡大とは言えないようだ。
プレイヤー人口や視聴者数といった面から見ると他の地域よりも条件が厳しいというのは否定できないが、ここ数年は資本の増強や選手の補強が行われ、「Worlds 2019」でも代表チーム「MAMMOTH」が敢闘するなど、新チームの台頭もあっただけに先行きが気になるアナウンスである。この状況を反映してか、トップチームの選手やコーチが海外へと移籍しており、2020シーズン前の移籍市場ではLECやLCS(北米リーグ)へ何人かの移籍発表が注目を集めた。
常に世界各地から才能ある選手を求め続けている北米リーグことLCSは、2020シーズンを迎えるにあたって地域間を移動する選手の扱い、いわゆるインポートスロットに関する変更の告知を発表した。
全世界で行われている各公認リーグは、一般に最大2名の地域外選手をスターティングメンバーとして登録することができる。この限られたスロットには他の地域で十分な実績を残しているベテランの選手や、出場機会を求めて技量一つで海外リーグにチャレンジする韓国人選手が加わることが多い。
今回の変更で、北米ではアカデミーチームのスターティングメンバーに3人目の地域外選手として、トルコ・ラテンアメリカ・オセアニア出身の選手を出場させることを認めるとの発表を行った。LCSではもちろん、北米以外の地域から最大で2名という制限のままだが、アカデミーチームを含めると最大5人の地域外の選手をチームに所属させ、必要に応じてLCSに出場させることが可能となった。すでに100TでのRy0ma選手(彼は最初からLCSに出場しているが)などオセアニアから加入したプレイヤーもおり、新たな地域からやってくる才能がどのような活躍を見せるのか注目されている。
一方で、地域外選手の移籍にはビザの問題が生じる可能性もある。特に昨今のアメリカ合衆国は就労可能なビザの認可が非常に厳しくなっているようで、例えばTeam LiquidのBroxah選手はチームへの合流が遅れている。また、アカデミーチーム入り予定だった選手が実績を認められず、ビザ申請を却下されて最終的にチームへの参加を断念するといった事例も発生している。チームへの参加遅れはチームの成績や本人の結果に直接影響を及ぼすものでもあり、早急な解決を望みたい問題である。
欧州に隣接する地域として、いわゆる強豪地域に次ぐ実力を持つとされているトルコ「TCL」。実際にLECやLCSへと移籍して結果を残しているプレイヤーも多く、EUサーバーで練習可能というメリットもあってマイナーリージョンでは一つ抜けているという評価が続いていた。
しかし2019シーズンの最後になって、TCLは選手の給与に関する問題が頻発するというトラブルを起こしている。チームの補強として参加していた韓国人選手の告発から、チームから少なからぬ選手に対する給与の不払いが発生していたことが明らかとなったのだ。
その結果として参加チームのひとつ「Galatasaray Esports」は、今年前半のリーグ参加を認められておらず、通常なら参加チーム数が10のところを、この春は9チームでのシーズン開幕となっている。サッカークラブや大学の名を冠したチームであっても、実態として資金確保が難しいという現状が現れたものではあったのだが、この影響か2020シーズンをTCLで戦う韓国人選手は激減(2月1日時点で確認できているのは1名)している。もちろん地域の選手を重用し、才能を発掘する事は重要なことではあるのだが、そこに至った経緯については首を傾げる流れでもある。
国際大会での結果は浮き沈みがあるものの、ファンの熱狂という点では、ブラジル地域ことCBLOLは圧倒的な存在感がある。「Worlds 2019」に出場した「Flamengo eSports」応援のためにベルリンまで駆け付けた応援団をはじめとして、その熱量が満ちたオフライン決勝の様子は、一度はこんな会場に行ってみたいと思わせてくれる。
▲ジンの「終演」から始まりライブ演奏を交えた選手入場まで圧巻の決勝戦開幕式
そんなCBLOLは現在もファンを順調に増やしており、2020シーズンは各チームともにかなりの補強を実施して新たな戦いに臨んでいるようだ。TCLから活動の場を移した選手や、LCKから移籍した選手の姿も見られる。地域を代表するADCであるbrTT選手が帰ってきたpaiN Gaming、昨年の覇者Flamengo eSports、選手層の厚いINTZ e-Sportsなど見どころも多い。
LCK 2018 Summer Split以来、国際的にも競技シーンで大きな注目を集めた新鋭チーム「Griffin」。2019シーズンの終盤にこのチームで発覚した問題は、そのままLCK全体まで広がる大きな議論を巻き起こすこととなった。
「Worlds」直前の監督解任や、海外へレンタル移籍していた選手に対する不平等な契約の強要など、組織内で生じていた問題が告発される事態となったのだ。現在も事実関係が調査中のものもあるが、例えば選手と組織間の不平等な契約内容についてはLCK全体に問題が波及し、いくつかのチームではチェックを実施し、ファンに向けて適切な契約を行っているとの発表が行われることもあった。
またGriffinについては、昨年までの経営陣は全て組織を離れ、その上で今年の夏までに親会社であるStill8はチームを別組織へ売却するように指示される結果となった。以前であれば「世界最強のリーグであるLCK」の選手として活動するためにやむなく不利な条件を飲むという側面もあったのかもしれないが、近年は国内大手のハンファ生命や海外資本の参入(Gen.GやT1)があり、国際的な地域間の関係の変化などに伴い選手を取り巻く環境も(少なくとも今回は良い方向に)変わりつつあるようだ。
2018~2019年と2年連続の「Worlds」制覇を経て、LPLは世界最強の地域・リーグであることを確固たるものにした。LPLにリーグに参加しているチームはなんと17チームで、毎日休みなしにBo3(2ゲーム先取)が2試合ずつ行われる過酷なリーグとして、単一のリーグ内でも熾烈な競争が行われている。上記画像のWeek 1スケジュールも英語配信の予定であって、記載のない1/16~17も試合は行われていた。
この過酷な国内リーグを勝ち抜くため、LPLのチームは周辺地域からあらゆるタレントを集めている。中国国内の選手はもちろん、LCKやLMSからもトップチームで活躍していた選手やコーチを招いてチームの補強を図っている。LPLチームへの地域間移籍そのものは2015シーズン開始前のKRエクソダスから多かったが、近年はLMSでもトップクラスの選手、さらには選手のみならずコーチも含めて集められる人材をひたすらに集めている。その中には元T1のkk0maコーチといったビッグネームも名を連ねており、東アジアの強豪リーグ全てから人材をどん欲に集めたと言えるだろう。
2020シーズンもLPLチームが覇権を握るのか、あるいはそれに待ったをかける地域・チームが現れるのか。記念すべき第10回大会となる「Worlds 2020」は、LPLにとっては地元開催だ。地元開催での優勝に対する期待は絶大だろうし、一方で過去の「Worlds」において開催地域のチームが優勝したのはたったの1度だけというある種のジンクスもある。今年の「Worlds」はこの一点だけでも忘れられない大会になりそうだ。
『LoL』は5人からなるチーム同士が戦うゲームである。勝利のためには個人のハンドスキルのみならず、マップ全体を俯瞰したゲーム理解や緊密な連携が必要となり、最高レベルの競技シーンにおいてそれはより顕著になっていく。ここまではトッププロの試合を観戦していると何となく感じとれるだろう。
さてここで問題になってくるのが、プロと一般の(比較的カジュアルな)プレイヤーのゲームが大きく乖離してくる傾向である。
プロの試合で華々しいシーンを演出し、バン/ピックの優先度も高いのに、ランク戦の統計上での勝率はそこまで奮わないチャンピオンは往々にしてみられる。もちろん使用人口が多いチャンピオンの場合、不慣れなプレイヤーの数も増えるので勝率は低下するのだが、それ以上にチーム内でのコミュニケーションが必須であるもの(ユーミ)や、能力を発揮する状況作りが個人プレイでは若干難しいこともあるものの、爆発すると手に負えないチャンピオンたち(アカリなど)が問題である。
ライアットゲームズはこの乖離を問題視しており、できる限りプロ/一般プレイのギャップを低減するように調整を行う方針を取っている。一方でこれらの調整は「メカニズムを知っていることで強力なパワーを引き出す設計」を除外する結果となることもあり、熱心に使っていたユーザーからは不評となりがちだ。また、習熟する楽しみが損なわれるとの批判もある。
一方でプロが選択するチャンピオンは「それが勝ちにつながる強力なチャンピオンである」とピックしているわけだが、「一般のプレイではとても真似できない」という見方が固まるのは避けたい。セトは比較的シンプルなブルーザーとして成功を収めつつあるが、今後の新チャンピオン実装やVGU(ビジュアル&ゲームプレイアップデート)による旧チャンピオンの変更に伴って、新たな(少し複雑な)メカニズムが登場するたびに直面する難題になりそうでもある。
すでに開幕している2020シーズンの公式戦だが、各チームの結果そのものについては多くを語ることはないだろう。メンバーの入れ替えやコーチ陣の刷新など、ほとんどのチームで大小はあれど何らかの変化が生じている。ここからシーズン中にチームとしての完成度を高め、各地域での優勝や「Worlds」出場を目指すので、現時点では改善点がはっきり見えているなら十分だ。
一方で、試合運びについては、現時点でも「Demacia Cup」(中国)と「KeSPA Cup」(韓国)では、異なる戦略が見いだされてきている。
2020シーズン開幕直前に行われた大会の結果では、ボットレーン側(ドレイクのコントロール)の優先度が高いように思われた。チームで4体目のドレイクを撃破した際に得られるドラゴンソウルが永続的な効果であるため、4体目のドレイクを獲得できるかを争う試合が多く、ボット側で勝っている方が有利、というのがシーズン開幕前の結果だったのだ。
しかし、シーズン開幕後に行われている競技シーンの試合では、ドレイクの獲得にこだわらずドレイクとの交換でタワーを破壊、視界を一気に確保しての勝利も見られる。ドレイクの獲得で得られるバフが戦闘を行わない限りはあまり意味がないため、どこで戦うかの主導権の方が重要という方向へ戦略が変わりつつあるようだ。
戦闘が起こりやすい試合ならドレイクの価値は比較的高く、視界管理を重視する展開であれば価値は下がっていくとなると、地域ごとに好んでいる戦略の違いの影響も大きくなってくるだろう。一般に戦闘が発生しやすいと言われるLPLなら価値が高く、リスクコントロールを重視するLCKではそれほどでもないといった具合だ。そしてどちらの戦略が強いのかは、春夏間国際大会「MSI」で明らかになるだろう。
今後の日程がどうなるのか、「Worlds」まで含めた影響も考えられる事態ではあるが、それらも選手・スタッフ・観客、すべての関係者の安全があってこそというものである。収拾を願いつつ、十分な睡眠・栄養に加えてせっけんを使った適切な手洗いなど基本的な感染症予防を行おう。
リーグ・オブ・レジェンド
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LoL Esports 公式YouTubeチャンネル(ライブ配信、英語)
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Leaguepedia(英語)
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いよいよ2020シーズンの『リーグ・オブ・レジェンド』(LoL)公式プロリーグが世界各地でスタートした。ゲームそのものは昨年のうちに10周年を迎え、「Worlds」の開催も今年で10回目を数えようとしている。小規模だった競技シーンも今では世界各地でプロリーグが立ち上がり、それぞれの地域が世界最強を目指してしのぎを削るようになっている。そして何年も続く競技シーンのなかで、地域の評価や規模は変化し続けてきた。
新たなシーズンを迎えるにあたって、2019シーズンの終わりごろから今までに海外の競技シーンで起きた(あるいは継続している)出来事をピックアップし、2020シーズンの行く先について考えてみた。
1. LECを支え、拡大を続ける欧州の競技シーン
画像出典:LoL Esports PhotosLPL(中国リーグ)の隆盛に目を奪われがちだが、2年連続で「Worlds」の決勝戦に進み、LPLチームと対峙していたのはLEC(欧州)チームだ。「MSI 2019」でのG2 Esportsの優勝は、LECがLCK(韓国リーグ)の背中を追う状況から、互角に戦う地域へと成長してきたことを明らかにした。そして2020シーズンの欧州において、競技シーンはさらに拡大する様子を見せている。
以前から欧州は、LEC以外にも各地域ごとにアマチュアのリーグが存在していた。欧州各地域で行われるリーグでは、トップリーグへのキャリアアップを目指すプレイヤーが、LEC参加組織のアカデミーチームなどを含めたチーム間で切磋しており、その各地域を勝ち上がったチーム同士による欧州最強のアマチュア決定戦として「EU Masters」へとつながっている。「EU Masters」はLECと同様に多くのファンを得ており、今シーズンからさらにオランダおよびベルギーで2つの公認地域リーグを開始すると発表されている。
これらのリーグを勝ち上がったチームには「EU Masters」出場の権利が与えられる。さらには「オープン・ツアー」の構想もあり、こちらは今年の早いうちに続報を予定しているとのことだ。競技人口が増加し、さらなる強豪地域へと歩みを進める欧州。LPLの覇権に待ったをかける地域の一つとして、今後さらなる盛り上がりと勇躍が期待される。
2. 旧LMSと旧LSTが合体し、新リーグ「PCS」がスタート
画像出典:LoL Esports Photos2012年の「Worlds」優勝以来、国際大会の舞台で一定の存在感を発揮してきたLMS(League of Legends Master Series。香港・台湾・マカオのリーグ)。だがその地域も、2019シーズンをもってその歴史に幕を下ろした。
そして2020シーズンより始まるのが、台湾・香港・マカオおよび東南アジア地域(ベトナムを除く)という広大な地域を統括した「Pacific Championship Series」(PCS)だ。J TeamやHong Kong Attitude(HKA)のように、LMSから引き続きリーグを戦うチームもあれば、Talon Esportsのような新たに作られたチームも参戦している。
Talon Esportsは2019シーズンにLJLチーム「V3 Esports」で活躍したBaby選手(River選手に登録名変更)や、「Worlds 2019」にも出場していたHKAのUnified&KaiWing選手のボットデュオと、強力なメンバーを揃えているし、タイのNova EsportsにはG4選手のようなベテランが名を連ねている。
地域全体が国際大会でどのような位置づけになるのか、「Worlds」で何チーム分の出場枠が割り当てられるのかは未発表で予想が難しいが、レギュラーシーズンは10チームがダブルラウンドロビン方式(全チーム総当たりを2回)で戦うという形式が発表されており、かつてのLMSやLST(League of Legends SEA Tour。東南アジアのリーグ)よりも日程はハードになっている。この戦いから勝ち上がってくるチームが国際大会に現れるのは「MSI 2020」となる。その姿はいったいどのようなものになっているだろうか?
3. OPLの拡大にブレーキ、チーム運営補助金などの面が厳しく
画像出典:LoL Esports Photos残念なことだが、『LoL』プロリーグがある全ての地域で明るい拡大の話題、というわけにはいかなかった。オーストラリア・ニュージーランドの公認プロリーグであるOPL(Oceanic Pro League)は、2020年よりチームの運営補助が減額され、選手の最低給与が規定からなくなるとのアナウンスが出ている。大規模なリーグ運営と華々しい国際的な成果を収めている地域では、選手の給与など、チーム運営関連のコストは高騰する一方なのだが、OPLの現状は拡大とは言えないようだ。
プレイヤー人口や視聴者数といった面から見ると他の地域よりも条件が厳しいというのは否定できないが、ここ数年は資本の増強や選手の補強が行われ、「Worlds 2019」でも代表チーム「MAMMOTH」が敢闘するなど、新チームの台頭もあっただけに先行きが気になるアナウンスである。この状況を反映してか、トップチームの選手やコーチが海外へと移籍しており、2020シーズン前の移籍市場ではLECやLCS(北米リーグ)へ何人かの移籍発表が注目を集めた。
4. さらなる才能を求め、LCSで地域間移籍ルールが一部緩和
画像出典:LoL Esports Photos常に世界各地から才能ある選手を求め続けている北米リーグことLCSは、2020シーズンを迎えるにあたって地域間を移動する選手の扱い、いわゆるインポートスロットに関する変更の告知を発表した。
全世界で行われている各公認リーグは、一般に最大2名の地域外選手をスターティングメンバーとして登録することができる。この限られたスロットには他の地域で十分な実績を残しているベテランの選手や、出場機会を求めて技量一つで海外リーグにチャレンジする韓国人選手が加わることが多い。
今回の変更で、北米ではアカデミーチームのスターティングメンバーに3人目の地域外選手として、トルコ・ラテンアメリカ・オセアニア出身の選手を出場させることを認めるとの発表を行った。LCSではもちろん、北米以外の地域から最大で2名という制限のままだが、アカデミーチームを含めると最大5人の地域外の選手をチームに所属させ、必要に応じてLCSに出場させることが可能となった。すでに100TでのRy0ma選手(彼は最初からLCSに出場しているが)などオセアニアから加入したプレイヤーもおり、新たな地域からやってくる才能がどのような活躍を見せるのか注目されている。
一方で、地域外選手の移籍にはビザの問題が生じる可能性もある。特に昨今のアメリカ合衆国は就労可能なビザの認可が非常に厳しくなっているようで、例えばTeam LiquidのBroxah選手はチームへの合流が遅れている。また、アカデミーチーム入り予定だった選手が実績を認められず、ビザ申請を却下されて最終的にチームへの参加を断念するといった事例も発生している。チームへの参加遅れはチームの成績や本人の結果に直接影響を及ぼすものでもあり、早急な解決を望みたい問題である。
5. TCLより韓国人選手が大量離脱。給与不払いが多発
画像出典:TCL(VFSL)公式アカウント欧州に隣接する地域として、いわゆる強豪地域に次ぐ実力を持つとされているトルコ「TCL」。実際にLECやLCSへと移籍して結果を残しているプレイヤーも多く、EUサーバーで練習可能というメリットもあってマイナーリージョンでは一つ抜けているという評価が続いていた。
しかし2019シーズンの最後になって、TCLは選手の給与に関する問題が頻発するというトラブルを起こしている。チームの補強として参加していた韓国人選手の告発から、チームから少なからぬ選手に対する給与の不払いが発生していたことが明らかとなったのだ。
その結果として参加チームのひとつ「Galatasaray Esports」は、今年前半のリーグ参加を認められておらず、通常なら参加チーム数が10のところを、この春は9チームでのシーズン開幕となっている。サッカークラブや大学の名を冠したチームであっても、実態として資金確保が難しいという現状が現れたものではあったのだが、この影響か2020シーズンをTCLで戦う韓国人選手は激減(2月1日時点で確認できているのは1名)している。もちろん地域の選手を重用し、才能を発掘する事は重要なことではあるのだが、そこに至った経緯については首を傾げる流れでもある。
6. 順調にファン層を増やすCBLOL
画像出典:Riot Games - Brasil国際大会での結果は浮き沈みがあるものの、ファンの熱狂という点では、ブラジル地域ことCBLOLは圧倒的な存在感がある。「Worlds 2019」に出場した「Flamengo eSports」応援のためにベルリンまで駆け付けた応援団をはじめとして、その熱量が満ちたオフライン決勝の様子は、一度はこんな会場に行ってみたいと思わせてくれる。
▲ジンの「終演」から始まりライブ演奏を交えた選手入場まで圧巻の決勝戦開幕式
そんなCBLOLは現在もファンを順調に増やしており、2020シーズンは各チームともにかなりの補強を実施して新たな戦いに臨んでいるようだ。TCLから活動の場を移した選手や、LCKから移籍した選手の姿も見られる。地域を代表するADCであるbrTT選手が帰ってきたpaiN Gaming、昨年の覇者Flamengo eSports、選手層の厚いINTZ e-Sportsなど見どころも多い。
7. Griffin問題で韓国での選手と監督の待遇に社会的な議論の嵐。変わりゆくLCK
画像出典:LoL Esports PhotosLCK 2018 Summer Split以来、国際的にも競技シーンで大きな注目を集めた新鋭チーム「Griffin」。2019シーズンの終盤にこのチームで発覚した問題は、そのままLCK全体まで広がる大きな議論を巻き起こすこととなった。
「Worlds」直前の監督解任や、海外へレンタル移籍していた選手に対する不平等な契約の強要など、組織内で生じていた問題が告発される事態となったのだ。現在も事実関係が調査中のものもあるが、例えば選手と組織間の不平等な契約内容についてはLCK全体に問題が波及し、いくつかのチームではチェックを実施し、ファンに向けて適切な契約を行っているとの発表が行われることもあった。
またGriffinについては、昨年までの経営陣は全て組織を離れ、その上で今年の夏までに親会社であるStill8はチームを別組織へ売却するように指示される結果となった。以前であれば「世界最強のリーグであるLCK」の選手として活動するためにやむなく不利な条件を飲むという側面もあったのかもしれないが、近年は国内大手のハンファ生命や海外資本の参入(Gen.GやT1)があり、国際的な地域間の関係の変化などに伴い選手を取り巻く環境も(少なくとも今回は良い方向に)変わりつつあるようだ。
8. 周辺地域の有力選手やコーチをどん欲に集め続ける最強地域:LPL
画像出展:LPL公式Twitter2018~2019年と2年連続の「Worlds」制覇を経て、LPLは世界最強の地域・リーグであることを確固たるものにした。LPLにリーグに参加しているチームはなんと17チームで、毎日休みなしにBo3(2ゲーム先取)が2試合ずつ行われる過酷なリーグとして、単一のリーグ内でも熾烈な競争が行われている。上記画像のWeek 1スケジュールも英語配信の予定であって、記載のない1/16~17も試合は行われていた。
この過酷な国内リーグを勝ち抜くため、LPLのチームは周辺地域からあらゆるタレントを集めている。中国国内の選手はもちろん、LCKやLMSからもトップチームで活躍していた選手やコーチを招いてチームの補強を図っている。LPLチームへの地域間移籍そのものは2015シーズン開始前のKRエクソダスから多かったが、近年はLMSでもトップクラスの選手、さらには選手のみならずコーチも含めて集められる人材をひたすらに集めている。その中には元T1のkk0maコーチといったビッグネームも名を連ねており、東アジアの強豪リーグ全てから人材をどん欲に集めたと言えるだろう。
2020シーズンもLPLチームが覇権を握るのか、あるいはそれに待ったをかける地域・チームが現れるのか。記念すべき第10回大会となる「Worlds 2020」は、LPLにとっては地元開催だ。地元開催での優勝に対する期待は絶大だろうし、一方で過去の「Worlds」において開催地域のチームが優勝したのはたったの1度だけというある種のジンクスもある。今年の「Worlds」はこの一点だけでも忘れられない大会になりそうだ。
9. プロプレイと一般プレイのバランスの乖離問題
画像出典:リーグ・オブ・レジェンド日本公式サイト『LoL』は5人からなるチーム同士が戦うゲームである。勝利のためには個人のハンドスキルのみならず、マップ全体を俯瞰したゲーム理解や緊密な連携が必要となり、最高レベルの競技シーンにおいてそれはより顕著になっていく。ここまではトッププロの試合を観戦していると何となく感じとれるだろう。
さてここで問題になってくるのが、プロと一般の(比較的カジュアルな)プレイヤーのゲームが大きく乖離してくる傾向である。
プロの試合で華々しいシーンを演出し、バン/ピックの優先度も高いのに、ランク戦の統計上での勝率はそこまで奮わないチャンピオンは往々にしてみられる。もちろん使用人口が多いチャンピオンの場合、不慣れなプレイヤーの数も増えるので勝率は低下するのだが、それ以上にチーム内でのコミュニケーションが必須であるもの(ユーミ)や、能力を発揮する状況作りが個人プレイでは若干難しいこともあるものの、爆発すると手に負えないチャンピオンたち(アカリなど)が問題である。
ライアットゲームズはこの乖離を問題視しており、できる限りプロ/一般プレイのギャップを低減するように調整を行う方針を取っている。一方でこれらの調整は「メカニズムを知っていることで強力なパワーを引き出す設計」を除外する結果となることもあり、熱心に使っていたユーザーからは不評となりがちだ。また、習熟する楽しみが損なわれるとの批判もある。
一方でプロが選択するチャンピオンは「それが勝ちにつながる強力なチャンピオンである」とピックしているわけだが、「一般のプレイではとても真似できない」という見方が固まるのは避けたい。セトは比較的シンプルなブルーザーとして成功を収めつつあるが、今後の新チャンピオン実装やVGU(ビジュアル&ゲームプレイアップデート)による旧チャンピオンの変更に伴って、新たな(少し複雑な)メカニズムが登場するたびに直面する難題になりそうでもある。
10. オフシーズン大会「Demacia Cup」と「KeSPA Cup」に見る2020シーズンの展望
画像出典:リーグ・オブ・レジェンド日本公式サイトすでに開幕している2020シーズンの公式戦だが、各チームの結果そのものについては多くを語ることはないだろう。メンバーの入れ替えやコーチ陣の刷新など、ほとんどのチームで大小はあれど何らかの変化が生じている。ここからシーズン中にチームとしての完成度を高め、各地域での優勝や「Worlds」出場を目指すので、現時点では改善点がはっきり見えているなら十分だ。
一方で、試合運びについては、現時点でも「Demacia Cup」(中国)と「KeSPA Cup」(韓国)では、異なる戦略が見いだされてきている。
2020シーズン開幕直前に行われた大会の結果では、ボットレーン側(ドレイクのコントロール)の優先度が高いように思われた。チームで4体目のドレイクを撃破した際に得られるドラゴンソウルが永続的な効果であるため、4体目のドレイクを獲得できるかを争う試合が多く、ボット側で勝っている方が有利、というのがシーズン開幕前の結果だったのだ。
しかし、シーズン開幕後に行われている競技シーンの試合では、ドレイクの獲得にこだわらずドレイクとの交換でタワーを破壊、視界を一気に確保しての勝利も見られる。ドレイクの獲得で得られるバフが戦闘を行わない限りはあまり意味がないため、どこで戦うかの主導権の方が重要という方向へ戦略が変わりつつあるようだ。
戦闘が起こりやすい試合ならドレイクの価値は比較的高く、視界管理を重視する展開であれば価値は下がっていくとなると、地域ごとに好んでいる戦略の違いの影響も大きくなってくるだろう。一般に戦闘が発生しやすいと言われるLPLなら価値が高く、リスクコントロールを重視するLCKではそれほどでもないといった具合だ。そしてどちらの戦略が強いのかは、春夏間国際大会「MSI」で明らかになるだろう。
+1. 新型コロナウイルスによる影響
残念なことだが、中国で発生した新型コロナウイルス流行の影響により、各地域のリーグ運営に影響が出ている。LPLは国内の移動制限や旧正月の延期などによって、Week 2以降の日程が不透明になってしまった。これは選手や関係者がそもそも移動できないこともあるし、人が集まるイベント全般を当面は自粛するよう行政からの指導もあるようだ。PCSも同様で、当面は開催延期が告知されている。LCKは日程としては予定通りスタートするものの、無観客試合を配信するとのアナウンスが行われた。LJL(日本リーグ)については現時点では予定通りで、中止の場合はホームページやTwitterで告知予定とのことだ。今後の日程がどうなるのか、「Worlds」まで含めた影響も考えられる事態ではあるが、それらも選手・スタッフ・観客、すべての関係者の安全があってこそというものである。収拾を願いつつ、十分な睡眠・栄養に加えてせっけんを使った適切な手洗いなど基本的な感染症予防を行おう。
執筆:ユラガワ
執筆協力:山口佐和子
リーグ・オブ・レジェンド
https://jp.leagueoflegends.com/
LoL Esports 公式Twitter(英語)
https://twitter.com/lolesports
LoL Esports 公式YouTubeチャンネル(ライブ配信、英語)
https://www.youtube.com/user/LoLChampSeries/featured
Leaguepedia(英語)
https://lol.gamepedia.com/League_of_Legends_Esports_Wiki)
【特集】『リーグ・オブ・レジェンド』2020春 海外プロシーン
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