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『LoL』欧州1部リーグ「LEC 2020 Spring Split」開幕レビュー:今、世界で最も勢いのあるリーグ
目次
2020年もいよいよ開幕している『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』世界各地のトッププロリーグ。すでに1月13日に中国の「LPL」が開幕しているが、他地域リーグに比べて開幕タイミングがかなり早く、Week 1を終えた後は2週間ほどの旧正月休暇に入っているため、プロシーン開幕の実感は少し薄いという方も多かったのではないだろうか。それもそうだろう、LPL以外のプロリーグの開幕は、1月24日の欧州リーグ「LEC」が最初なのだから。
2年連続で「Worlds」決勝戦に進出し、LPLチームに敗れこそしたもののそれ以前のLCK一強時代から追いついた地域の一つが、欧州ことLECだ。今でも拡大を続ける競技人口と、地域内各国でのリーグ運営により常に新たなプレイヤーが現れる地域でもある。
トップクラスの選手がLCS(北米リーグ)へと移籍していくことも多い中で、常にその席を埋める選手が見出されていくリーグであり、「未来のスター選手のゆりかご」、「尽きえぬ才能の源泉」といったフレーズを公式動画が掲げているのは伊達ではない。残念ながら公式な最強地域の称号はLPLに持っていかれてしまったものの、LPLの三連覇に待ったをかける最有力候補と言ってもいいはずだ。
▲競技レベルの高さもさることながら、番組制作面ではコミカルなテイストも確立しているLEC
2020年春のLECでは、一体どのチームが名乗りを上げるのか? 「Worlds」で見たあのチームも健在であるし、チーム名は変わらずとも中身がほとんど変わってしまったチームもある。引退した選手がコーチに転身していたり、アマチュアリーグから拾い上げられた新人がいたりも。さっそく今年の参加チームを紹介していこう。
Worlds決勝戦でこそFPXに敗れたものの、MSI優勝、トーナメントでのSKTに対する勝利と欧州チームの中でも歴代最強であろうチーム。2020シーズンを迎えるにあたって、メンバーの変更はない......のだが、なんとミッドレーナーのCaps選手とボットレーンのPerkz選手がポジションを入れ替えるとの発表が出ている。他のチームよりいち早くファンネリング戦略を実践したり、従来の戦略から見れば定石を外したようなチャンピオン選択を行い、さらには2018年の「Worlds」ベスト4入りという結果を持ち当時の欧州ではトップだったPerkz選手をボットレーンに配するなど、数々の「挑戦」をすでに行っているのがG2というチームでもある。欧州代表がLPLに対して2年連続で決勝戦で敗れるという結果を今年のWorldsでそそぐため、再びチームは変身しようとしている。
※公開時、G2の「Worlds」ベスト4入りを「2017年」と表記しておりましたが、正しくは「2018年」です。お詫びして訂正いたします。
チーム略称:G2
トップ:Wunder
ジャングル:Jankos
ミッド:Perkz
ボット:Caps
サポート:Mikyx
ヘッドコーチ:Grabbz
現在の欧州最強チームはG2だろうが、欧州において歴史と実績双方において名門中の名門といえばFnaticだろう。
2018年の「Worlds」では欧州チームとして久しぶりの決勝進出を成し遂げ、2019年は序盤こそ不安定な面が強かったものの、夏以降はG2を脅かすライバルとして死闘を繰り広げてきた。「Worlds」のグループステージ後半戦における見事なカムバックを記憶している人も多いだろう。
ジャングルのBroxah選手はチームを去ったものの、欧州1部復帰1年目のSK Gamingで奮闘したSelfmade選手を新たに獲得し、欧州を代表するサポートのひとりMithy元選手をヘッドコーチに迎えたFnatic。欧州王座の奪還、そして世界最強の称号を目指したチームの再スタートが始まろうとしている。
チーム略称:FNC
トップ:Bwipo
ジャングル:Selfmade
ミッド:Nemesis
ボット:Rekkles
サポート:Hylissang
ヘッドコーチ:Mithy
Worlds2019プレイインステージではLJL代表のDetnation FocusMeと戦い、グループステージではプレイインから参加のチームとしてグループ突破を果たしたSplyceが、リブランドしたチーム。現在のチーム名であるMAD Lions E.C.はスペインの地域リーグに参加していたチームのもので、両チーム(MAD LionsとSplyce)を傘下に収めた親会社による統合によって現在の形へと組織が改編された。メンバーとして昨年のSplyceから続投しているのはHumanoid選手のみだが、EUWやEUNEサーバーのランクで1位を達成していたり、EU Mastersで一定の経験を積んだ若手を集めており挑戦者としての新たなシーズンが幕を開けようとしている。
チーム略称:MAD
トップ:Orome
ジャングル:Shadow
ミッド:Humanoid
ボット:Carzzy
サポート:Kaiser
ヘッドコーチ:Mac
2016年夏から欧州1部リーグに参加しているチームで、ブンデスリーガのサッカークラブを母体としている、おなじみとなった感のあるチーム。母体が長い歴史を持つスポーツチームだけあって、2部への降格や昇格を賭けた入れ替え戦での敗北などを乗り越えてLECの一角を占めるに至っている。2019年は春~夏と調子を上げてきてはいたものの、昨年はSplyceに一つの目標となるチーム初のWorlds出場を阻まれた結果となってしまった。2020シーズンを迎えるにあたって、昨年までチームの看板選手でもあった生え抜きのUpset選手がチームを脱退、そしてなんとForg1ven選手が新たに加入している。彼は母国ギリシャの兵役に就くためここ数年は競技シーンから姿を消していたものの、その技術の確かさと本番でもまったくパフォーマンスがブレないメンタルで高い評価を得ていた大ベテランである。新体制において復帰した欧州きってのADCの活躍が注目される。
チーム略称:S04
トップ:Odoamne
ジャングル:Gilius
ミッド:Abbedagge
ボット:FORG1VEN
サポート:Dreams
ヘッドコーチ:Dylan Falco
EU LCSがLECへ生まれ変わった2019シーズンから参戦した新組織の一つ。2019年春はいわゆる一部の洗礼を受ける形で苦い初シーズンとなったものの、アカデミーチームからの選手の昇格によって次第にチームの形を整え、夏スプリット後半で追い上げて1年目にしてプレイオフ出場を果たした。春スプリットの成績とシステム変更によってRegional Qualifierへの出場はできなかったものの、最後の追い上げは多くの新たなファンを熱狂させてくれた。
2020シーズン開始にあたっては、2019年夏に頭角を現した若手メンバーはそのままに、Misfitsの看板ADCだったHan Sama選手を新たに獲得、全てのポジションにおいて戦えると自負できるラインナップで新たなシーズンを始めようとしている。
チーム略称:RGE
トップ:Finn
ジャングル:Inspired
ミッド:Larssen
ボット:Hans Sama
サポート:Vander
ヘッドコーチ:fredy122
2016シーズンからEU LCSに参加している中堅チームの一つ。2018シーズンはJiizuke選手を見出して躍進し、同年の「Worlds」で韓国の強豪Gen.Gを破ると活躍していたものの、2019シーズンは特に夏スプリットに調子を落としてしまい、ほぼ真ん中という位置でシーズンを終えている。
2020年を迎えるにあたっては、Splyceを率いていたDukeコーチがYamatoCannonコーチに代わって新ヘッドコーチとなり、ミッドレーナーとしてスペインリーグで活躍したMalica選手を加えている。コーチの変更がチームに与える影響は大きく、新シーズンには以前とは異なる姿を見せてくれるはずだ。
チーム略称:VIT
トップ:Cabochard
ジャングル:Skeanz
ミッド:Milica
ミッド:Saken
ボット:Comp
サポート:Jactroll
ヘッドコーチ:Duke
プロリーグが成立するより以前からFnaticと欧州で争ってきた古豪チームの一つ。一度はEU LCSを去ったものの、LECへのリブランドに際して参加権を獲得、復帰したチームでもある。復帰1年目となった昨年は1部の洗礼を浴びて苦戦し、完全な新規チ―ムと比べれば多少は良いものの下位に甘んじる結果でシーズンを終えている。
2020シーズンに向けては2部チームであるSK Gaming Primeから昇格してきた選手に加えてG2やS04での経験豊富なベテランであるTrick選手を獲得し、復帰一年目の苦境から脱出を図った補強を行っている。
チーム略称:SK
トップ:Sacre
ジャングル:Trick
ミッド:Jenax
ボット:Crownshot
サポート:LIMIT
ヘッドコーチ:Unlimited
画像出典:LoL Esports Photos
G2のオーナーであるOcelote氏とライバル関係にあったxPeke氏が立ち上げたチーム。設立当初は非常に強力なチームとして活躍し、2015年の「Worlds」においてベスト4入りという結果を残している。しかしその後は成績が低迷し、一度は2部に降格したがLEC参加権を獲得して復帰した組織という点で、SKと似たところがある古株チームだ。2019シーズンはSpringにおいて復帰したばかりとは思えない成績を収めてプレイオフ2位と結果を出したものの、夏スプリットは失速し下位に転落。Regional QualifierもSplyceに敗れてしまっている。
2020シーズンに向けての補強としては、元SplyceのジャングルであるXerxe選手、S04の看板ADCだったUpset選手と大型補強を実施しており、かつての存在感を発揮するための準備を進めている。
チーム略称:OG
トップ:Alphari
ジャングル:Xerxe
ミッド:Nukeduck
ボット:Upset
サポート:Destiny
ヘッドコーチ:Guilhoto
結成は2015年、EU LCSへの昇格・参加は2017年からとなる中堅チームの一つ。2017シーズンは昇格1年目にしてWorlds出場を果たし、グループステージ突破の上で韓国の強豪「SKT」とBo5で死闘を演じるなど目覚ましい結果を残している。しかし翌年以降は選手の移籍などによって当時ほどの結果を残せておらず、2019シーズンはEUオールスターとも言えそうな豪華なメンバーを揃えたもののシーズン途中で1部チームが事実上の解体という結末を迎えてしまっている。
2020シーズンは、2019シーズン終盤に出場していた元2部チームのメンバーと、欧州きってのミッドレーナーとして実績のあるFebiven選手でチームの再建を図っており、昨年とは大きく変わったアプローチの成否が注目されることになるだろう。
チーム略称:MSF
トップ:Dan Dan
ジャングル:Razork
ミッド:Ronaldooo
ミッド:Febiven
ボット:Bvoy
サポート:Denyk
ヘッドコーチ:Jandro
LEC開始に伴って新たに参入してきたチームの一つ。元々はイギリスの地域リーグに参加していたが、2019シーズンに合わせてLECの参加権を取得した。1部リーグ参加1年目となった2019シーズンはSpringの9位、Summerの10位と非常に厳しい結果に終わっている。
しかし今シーズンについては非常に大きな補強が発表されている。G2そしてFnaticという欧州の二大チームを率いて、2016~2018年の間欧州の王座を独占し続けてきたYoungBuckコーチがヘッドコーチとしてチームに加わっているのだ。まずはプレイオフに出られる順位が目標とのことではあるが、新生したチームがどのように変化していくのか、非常に期待が持たれるチームである。
チーム略称:EXL
トップ:Expect
ジャングル:Caedrel
ミッド:Mickey
ボット:Patrik
サポート:Tore(Norskerenより改名)
ヘッドコーチ:YoungBuck
LECは国際大会において優勝争いに加わる強豪リーグとしての地位を固めているが、欧州各国ではトップリーグに続く多くの独自リーグが欧州各国で開催中だ。各国リーグから勝ち上がってきた優勝チームたちは、欧州最強決定戦ともいうべき「EU Masters」に出場することとなっている。LEC参加組織の抱えるアカデミーチームをはじめとして多くのチームが集うこのシリーズは、欧州全体で行われている14の地域リーグの集大成となっており、競技シーンの加速と新たなタレントが現れる欧州の成長の一端が垣間見える大会となっている。今後もタレントの宝庫としての欧州に期待が寄せられる。
プレイオフ Week 1
マッチ1(ウィナーズ):レギュラーシーズン1位のチーム vs 1位のチームが対戦相手に指定する3位/4位チームのいずれか
マッチ2(ウィナーズ):レギュラーシーズン2位のチーム vs マッチ1で選ばれていない方のチーム
マッチ3(ルーザーズ):レギュラーシーズン5位のチーム vs レギュラーシーズン6位のチーム
プレイオフ Week 2
マッチ4(ルーザーズ):マッチ1・2で敗れた2チームの内でシードの低い方のチーム vs マッチ3で勝利したチーム
マッチ5(ウィナーズ):マッチ1・2で勝利した2チームの対戦
マッチ6(ルーザーズ):マッチ4で勝利したチーム vs マッチ1・2で敗れたチームの内でシードの高い方のチーム
プレイオフ Week 3
マッチ7(ルーザーズ):マッチ5で敗れたチーム vs マッチ6で勝利したチーム
マッチ8(決勝戦):マッチ7で勝利したチーム vs ウィナーズブラケットから上がってきた無敗のチーム
組み合わせの表記がややこしくなっているが、基本的には1~4位がダブルエリミネーション方式、5位、6位はルーザーズからのスタートで、レギュラーシーズンの順位が高い方が有利な配置になる方式となっている。上位4チームなら最短でBo5に2度勝利すれば決勝進出。一方で敗れたとしてもルーザーズを再び這い上がって決勝へ進出する可能性もあり、それは5位・6位チームであっても同様である。終盤のチームの勢い次第では予想外のドラマも期待できるだろう。
プレイオフ優勝チームはLEC代表として、春夏間の国際大会「Mid-Season Invitational(MSI)」に出場する見込みだ。今年の「MSI」も、LEC代表とLPL代表は優勝候補として注目の的となるだろう。
今年のLECのスタートダッシュを軽く見ていくと、一部チームでは選手のビザ取得問題による練習の遅れなどもあったことを踏まえた上での試合となった。チームによってはメンバーを大きく入れ替えたため、粗削りな印象のところも見られた。そういったチームではLECキャリアの長いプレイヤーが、視界の確保しきれていない状況下で無理をして一人で捕まるような場面もあった。
一方で、G2やRGEのようにメンバーの変更が少なく、選手間の関係の変化が小さかったチームは試合を進めやすかったようだ。Week2以降、新体制のチームが連携を仕上げ、順位で先行するチームを追いかける形でリーグが進んでいくことになるだろう。
初週から早くも2勝を挙げたのはG2・OG・RGEの3チーム。EXL・FNC・MAD・SKが1勝1敗で後を追い、1勝も手に入れられなかったのがS04・MSF・VITとなった。とはいえ9週間の最初の1週が終わったところで、3月下旬までの約2カ月半にわたる激闘の幕開けに過ぎない。ステージ上での試合をフィードバックし、練習を重ねてチームの強さを引き出し、得た強さステージ上で見せていく、これが各チームのもうひとつの戦いだ。
LEC Spring 2020 Finalの舞台は、ハンガリーの古都ブダペスト。まずはここを目指して、10チームがしのぎを削り合う。
LECの試合は日本時間で毎週金曜26時、土曜25時より、YouTubeおよびTwitchで配信される。『LoL』の観戦ミッションをこなしたい場合は、watch.lolesports.comからの観戦をお忘れなく。
『リーグ・オブ・レジェンド』
http://jp.leagueoflegends.com/
2020シーズンのLEC開催方式公式解説(英語)
https://eu.lolesports.com/en/articles/2020-lec-format-explained
LoL Esports LEC試合スケジュール(英語)
https://watch.euw.lolesports.com/schedule?leagues=lec
LoL Esports 公式YouTubeチャンネル(ライブ配信、英語)
https://www.youtube.com/user/LoLChampSeries/featured
LoL Esports VODs and Highlights(LCSおよびLECの試合動画アーカイブとハイライト動画集、英語)
https://www.youtube.com/channel/UCzAypSoOFKCZUts3ULtVT_g
LoL Esports 公式Twitter(英語)
https://twitter.com/lolesports
LoL Esports Stats(リアルタイムで試合統計についてツイートする公式Twitter、英語)
https://twitter.com/LoLEsportsStats
LEC 2018 Spring データページ(Leaguepedia、英語)
https://lol.gamepedia.com/LEC/2020_Season/Spring_Season
2年連続で「Worlds」決勝戦に進出し、LPLチームに敗れこそしたもののそれ以前のLCK一強時代から追いついた地域の一つが、欧州ことLECだ。今でも拡大を続ける競技人口と、地域内各国でのリーグ運営により常に新たなプレイヤーが現れる地域でもある。
トップクラスの選手がLCS(北米リーグ)へと移籍していくことも多い中で、常にその席を埋める選手が見出されていくリーグであり、「未来のスター選手のゆりかご」、「尽きえぬ才能の源泉」といったフレーズを公式動画が掲げているのは伊達ではない。残念ながら公式な最強地域の称号はLPLに持っていかれてしまったものの、LPLの三連覇に待ったをかける最有力候補と言ってもいいはずだ。
▲競技レベルの高さもさることながら、番組制作面ではコミカルなテイストも確立しているLEC
2020年春のLECでは、一体どのチームが名乗りを上げるのか? 「Worlds」で見たあのチームも健在であるし、チーム名は変わらずとも中身がほとんど変わってしまったチームもある。引退した選手がコーチに転身していたり、アマチュアリーグから拾い上げられた新人がいたりも。さっそく今年の参加チームを紹介していこう。
世界大会でもおなじみのトップチームたち
G2 Esports
画像出典:G2公式TwitterWorlds決勝戦でこそFPXに敗れたものの、MSI優勝、トーナメントでのSKTに対する勝利と欧州チームの中でも歴代最強であろうチーム。2020シーズンを迎えるにあたって、メンバーの変更はない......のだが、なんとミッドレーナーのCaps選手とボットレーンのPerkz選手がポジションを入れ替えるとの発表が出ている。他のチームよりいち早くファンネリング戦略を実践したり、従来の戦略から見れば定石を外したようなチャンピオン選択を行い、さらには2018年の「Worlds」ベスト4入りという結果を持ち当時の欧州ではトップだったPerkz選手をボットレーンに配するなど、数々の「挑戦」をすでに行っているのがG2というチームでもある。欧州代表がLPLに対して2年連続で決勝戦で敗れるという結果を今年のWorldsでそそぐため、再びチームは変身しようとしている。
※公開時、G2の「Worlds」ベスト4入りを「2017年」と表記しておりましたが、正しくは「2018年」です。お詫びして訂正いたします。
チーム略称:G2
トップ:Wunder
ジャングル:Jankos
ミッド:Perkz
ボット:Caps
サポート:Mikyx
ヘッドコーチ:Grabbz
Fnatic
画像出典:FNATIC公式Twitter現在の欧州最強チームはG2だろうが、欧州において歴史と実績双方において名門中の名門といえばFnaticだろう。
2018年の「Worlds」では欧州チームとして久しぶりの決勝進出を成し遂げ、2019年は序盤こそ不安定な面が強かったものの、夏以降はG2を脅かすライバルとして死闘を繰り広げてきた。「Worlds」のグループステージ後半戦における見事なカムバックを記憶している人も多いだろう。
ジャングルのBroxah選手はチームを去ったものの、欧州1部復帰1年目のSK Gamingで奮闘したSelfmade選手を新たに獲得し、欧州を代表するサポートのひとりMithy元選手をヘッドコーチに迎えたFnatic。欧州王座の奪還、そして世界最強の称号を目指したチームの再スタートが始まろうとしている。
チーム略称:FNC
トップ:Bwipo
ジャングル:Selfmade
ミッド:Nemesis
ボット:Rekkles
サポート:Hylissang
ヘッドコーチ:Mithy
MAD Lions E.C.(Splyceより改名)
画像出典:LoL Esports PhotosWorlds2019プレイインステージではLJL代表のDetnation FocusMeと戦い、グループステージではプレイインから参加のチームとしてグループ突破を果たしたSplyceが、リブランドしたチーム。現在のチーム名であるMAD Lions E.C.はスペインの地域リーグに参加していたチームのもので、両チーム(MAD LionsとSplyce)を傘下に収めた親会社による統合によって現在の形へと組織が改編された。メンバーとして昨年のSplyceから続投しているのはHumanoid選手のみだが、EUWやEUNEサーバーのランクで1位を達成していたり、EU Mastersで一定の経験を積んだ若手を集めており挑戦者としての新たなシーズンが幕を開けようとしている。
チーム略称:MAD
トップ:Orome
ジャングル:Shadow
ミッド:Humanoid
ボット:Carzzy
サポート:Kaiser
ヘッドコーチ:Mac
躍進を目指す中堅チームたち
FC Schalke 04
画像出典:LoL Esports Photos2016年夏から欧州1部リーグに参加しているチームで、ブンデスリーガのサッカークラブを母体としている、おなじみとなった感のあるチーム。母体が長い歴史を持つスポーツチームだけあって、2部への降格や昇格を賭けた入れ替え戦での敗北などを乗り越えてLECの一角を占めるに至っている。2019年は春~夏と調子を上げてきてはいたものの、昨年はSplyceに一つの目標となるチーム初のWorlds出場を阻まれた結果となってしまった。2020シーズンを迎えるにあたって、昨年までチームの看板選手でもあった生え抜きのUpset選手がチームを脱退、そしてなんとForg1ven選手が新たに加入している。彼は母国ギリシャの兵役に就くためここ数年は競技シーンから姿を消していたものの、その技術の確かさと本番でもまったくパフォーマンスがブレないメンタルで高い評価を得ていた大ベテランである。新体制において復帰した欧州きってのADCの活躍が注目される。
チーム略称:S04
トップ:Odoamne
ジャングル:Gilius
ミッド:Abbedagge
ボット:FORG1VEN
サポート:Dreams
ヘッドコーチ:Dylan Falco
Rogue
画像出典:Rogue公式TwitterEU LCSがLECへ生まれ変わった2019シーズンから参戦した新組織の一つ。2019年春はいわゆる一部の洗礼を受ける形で苦い初シーズンとなったものの、アカデミーチームからの選手の昇格によって次第にチームの形を整え、夏スプリット後半で追い上げて1年目にしてプレイオフ出場を果たした。春スプリットの成績とシステム変更によってRegional Qualifierへの出場はできなかったものの、最後の追い上げは多くの新たなファンを熱狂させてくれた。
2020シーズン開始にあたっては、2019年夏に頭角を現した若手メンバーはそのままに、Misfitsの看板ADCだったHan Sama選手を新たに獲得、全てのポジションにおいて戦えると自負できるラインナップで新たなシーズンを始めようとしている。
チーム略称:RGE
トップ:Finn
ジャングル:Inspired
ミッド:Larssen
ボット:Hans Sama
サポート:Vander
ヘッドコーチ:fredy122
Team Vitality
画像出典:LoL Esports Photos2016シーズンからEU LCSに参加している中堅チームの一つ。2018シーズンはJiizuke選手を見出して躍進し、同年の「Worlds」で韓国の強豪Gen.Gを破ると活躍していたものの、2019シーズンは特に夏スプリットに調子を落としてしまい、ほぼ真ん中という位置でシーズンを終えている。
2020年を迎えるにあたっては、Splyceを率いていたDukeコーチがYamatoCannonコーチに代わって新ヘッドコーチとなり、ミッドレーナーとしてスペインリーグで活躍したMalica選手を加えている。コーチの変更がチームに与える影響は大きく、新シーズンには以前とは異なる姿を見せてくれるはずだ。
チーム略称:VIT
トップ:Cabochard
ジャングル:Skeanz
ミッド:Milica
ミッド:Saken
ボット:Comp
サポート:Jactroll
ヘッドコーチ:Duke
虎視眈々と上を目指す昨年の下位チームたち
SK Gaming
画像出典:SK Gaming公式Twitterプロリーグが成立するより以前からFnaticと欧州で争ってきた古豪チームの一つ。一度はEU LCSを去ったものの、LECへのリブランドに際して参加権を獲得、復帰したチームでもある。復帰1年目となった昨年は1部の洗礼を浴びて苦戦し、完全な新規チ―ムと比べれば多少は良いものの下位に甘んじる結果でシーズンを終えている。
2020シーズンに向けては2部チームであるSK Gaming Primeから昇格してきた選手に加えてG2やS04での経験豊富なベテランであるTrick選手を獲得し、復帰一年目の苦境から脱出を図った補強を行っている。
チーム略称:SK
トップ:Sacre
ジャングル:Trick
ミッド:Jenax
ボット:Crownshot
サポート:LIMIT
ヘッドコーチ:Unlimited
Origen
画像出典:Origen公式Twitter画像出典:LoL Esports Photos
G2のオーナーであるOcelote氏とライバル関係にあったxPeke氏が立ち上げたチーム。設立当初は非常に強力なチームとして活躍し、2015年の「Worlds」においてベスト4入りという結果を残している。しかしその後は成績が低迷し、一度は2部に降格したがLEC参加権を獲得して復帰した組織という点で、SKと似たところがある古株チームだ。2019シーズンはSpringにおいて復帰したばかりとは思えない成績を収めてプレイオフ2位と結果を出したものの、夏スプリットは失速し下位に転落。Regional QualifierもSplyceに敗れてしまっている。
2020シーズンに向けての補強としては、元SplyceのジャングルであるXerxe選手、S04の看板ADCだったUpset選手と大型補強を実施しており、かつての存在感を発揮するための準備を進めている。
チーム略称:OG
トップ:Alphari
ジャングル:Xerxe
ミッド:Nukeduck
ボット:Upset
サポート:Destiny
ヘッドコーチ:Guilhoto
Misfits Gaming
画像出典:Misfits公式Twitter結成は2015年、EU LCSへの昇格・参加は2017年からとなる中堅チームの一つ。2017シーズンは昇格1年目にしてWorlds出場を果たし、グループステージ突破の上で韓国の強豪「SKT」とBo5で死闘を演じるなど目覚ましい結果を残している。しかし翌年以降は選手の移籍などによって当時ほどの結果を残せておらず、2019シーズンはEUオールスターとも言えそうな豪華なメンバーを揃えたもののシーズン途中で1部チームが事実上の解体という結末を迎えてしまっている。
2020シーズンは、2019シーズン終盤に出場していた元2部チームのメンバーと、欧州きってのミッドレーナーとして実績のあるFebiven選手でチームの再建を図っており、昨年とは大きく変わったアプローチの成否が注目されることになるだろう。
チーム略称:MSF
トップ:Dan Dan
ジャングル:Razork
ミッド:Ronaldooo
ミッド:Febiven
ボット:Bvoy
サポート:Denyk
ヘッドコーチ:Jandro
Excel Esports
画像出典:Excel公式TwitterLEC開始に伴って新たに参入してきたチームの一つ。元々はイギリスの地域リーグに参加していたが、2019シーズンに合わせてLECの参加権を取得した。1部リーグ参加1年目となった2019シーズンはSpringの9位、Summerの10位と非常に厳しい結果に終わっている。
しかし今シーズンについては非常に大きな補強が発表されている。G2そしてFnaticという欧州の二大チームを率いて、2016~2018年の間欧州の王座を独占し続けてきたYoungBuckコーチがヘッドコーチとしてチームに加わっているのだ。まずはプレイオフに出られる順位が目標とのことではあるが、新生したチームがどのように変化していくのか、非常に期待が持たれるチームである。
チーム略称:EXL
トップ:Expect
ジャングル:Caedrel
ミッド:Mickey
ボット:Patrik
サポート:Tore(Norskerenより改名)
ヘッドコーチ:YoungBuck
各国リーグ:拡大する欧州の競技シーン
▲2020年より欧州各国リーグに加わったオランダリーグ(ロゴ左)とベルギーリーグ(ロゴ右)。各国リーグの一部は2020シーズンよりプロリーグ認定も受けているLECは国際大会において優勝争いに加わる強豪リーグとしての地位を固めているが、欧州各国ではトップリーグに続く多くの独自リーグが欧州各国で開催中だ。各国リーグから勝ち上がってきた優勝チームたちは、欧州最強決定戦ともいうべき「EU Masters」に出場することとなっている。LEC参加組織の抱えるアカデミーチームをはじめとして多くのチームが集うこのシリーズは、欧州全体で行われている14の地域リーグの集大成となっており、競技シーンの加速と新たなタレントが現れる欧州の成長の一端が垣間見える大会となっている。今後もタレントの宝庫としての欧州に期待が寄せられる。
2020年も目が離せないLECを配信で観戦しよう
今年のLECと欧州リーグを簡単に紹介してきた。昨年行われたフランチャイズ化およびリブランド、システム変更が非常にうまく行ったためか、2019年のシステムに少しだけ変更を加えた形となっている。レギュラーシーズンは各対戦がBo1(Best of 1、すなわち1本先取)のダブルラウンドロビン(同じ対戦カードが2回ずつある総当たり戦)という点は変わらない。変更が加えられているのはプレイオフ形式だ。なお、プレイオフの対戦は全てBo5(3本先取)となる。プレイオフ Week 1
マッチ1(ウィナーズ):レギュラーシーズン1位のチーム vs 1位のチームが対戦相手に指定する3位/4位チームのいずれか
マッチ2(ウィナーズ):レギュラーシーズン2位のチーム vs マッチ1で選ばれていない方のチーム
マッチ3(ルーザーズ):レギュラーシーズン5位のチーム vs レギュラーシーズン6位のチーム
プレイオフ Week 2
マッチ4(ルーザーズ):マッチ1・2で敗れた2チームの内でシードの低い方のチーム vs マッチ3で勝利したチーム
マッチ5(ウィナーズ):マッチ1・2で勝利した2チームの対戦
マッチ6(ルーザーズ):マッチ4で勝利したチーム vs マッチ1・2で敗れたチームの内でシードの高い方のチーム
プレイオフ Week 3
マッチ7(ルーザーズ):マッチ5で敗れたチーム vs マッチ6で勝利したチーム
マッチ8(決勝戦):マッチ7で勝利したチーム vs ウィナーズブラケットから上がってきた無敗のチーム
組み合わせの表記がややこしくなっているが、基本的には1~4位がダブルエリミネーション方式、5位、6位はルーザーズからのスタートで、レギュラーシーズンの順位が高い方が有利な配置になる方式となっている。上位4チームなら最短でBo5に2度勝利すれば決勝進出。一方で敗れたとしてもルーザーズを再び這い上がって決勝へ進出する可能性もあり、それは5位・6位チームであっても同様である。終盤のチームの勢い次第では予想外のドラマも期待できるだろう。
So I always see a lot of people who don't get the format explainers and I think a big part of it is people get lost with the teams being 1,2,3,4,5,6 + the matches being 1,2,3,4,5,6 etc▲LECプレイオフのブラケット進行例
Here's an example bracket of what it could look like, hopefully this helps https://t.co/cpOE0IkLNe pic.twitter.com/2QVGwdqRgC— Shakarez (@Shakarez) January 21, 2020
プレイオフ優勝チームはLEC代表として、春夏間の国際大会「Mid-Season Invitational(MSI)」に出場する見込みだ。今年の「MSI」も、LEC代表とLPL代表は優勝候補として注目の的となるだろう。
LEC Spring 2020 Week 1を見て
この記事を書いているのはLEC Spring 2020 Week 1の終了後となる。1日に5試合を金~土の2日間行うので、最初の10試合が終わったところだ。今年のLECのスタートダッシュを軽く見ていくと、一部チームでは選手のビザ取得問題による練習の遅れなどもあったことを踏まえた上での試合となった。チームによってはメンバーを大きく入れ替えたため、粗削りな印象のところも見られた。そういったチームではLECキャリアの長いプレイヤーが、視界の確保しきれていない状況下で無理をして一人で捕まるような場面もあった。
一方で、G2やRGEのようにメンバーの変更が少なく、選手間の関係の変化が小さかったチームは試合を進めやすかったようだ。Week2以降、新体制のチームが連携を仕上げ、順位で先行するチームを追いかける形でリーグが進んでいくことになるだろう。
初週から早くも2勝を挙げたのはG2・OG・RGEの3チーム。EXL・FNC・MAD・SKが1勝1敗で後を追い、1勝も手に入れられなかったのがS04・MSF・VITとなった。とはいえ9週間の最初の1週が終わったところで、3月下旬までの約2カ月半にわたる激闘の幕開けに過ぎない。ステージ上での試合をフィードバックし、練習を重ねてチームの強さを引き出し、得た強さステージ上で見せていく、これが各チームのもうひとつの戦いだ。
LEC Spring 2020 Finalの舞台は、ハンガリーの古都ブダペスト。まずはここを目指して、10チームがしのぎを削り合う。
LECの試合は日本時間で毎週金曜26時、土曜25時より、YouTubeおよびTwitchで配信される。『LoL』の観戦ミッションをこなしたい場合は、watch.lolesports.comからの観戦をお忘れなく。
執筆:山口佐和子
執筆協力:ユラガワ
『リーグ・オブ・レジェンド』
http://jp.leagueoflegends.com/
2020シーズンのLEC開催方式公式解説(英語)
https://eu.lolesports.com/en/articles/2020-lec-format-explained
LoL Esports LEC試合スケジュール(英語)
https://watch.euw.lolesports.com/schedule?leagues=lec
LoL Esports 公式YouTubeチャンネル(ライブ配信、英語)
https://www.youtube.com/user/LoLChampSeries/featured
LoL Esports VODs and Highlights(LCSおよびLECの試合動画アーカイブとハイライト動画集、英語)
https://www.youtube.com/channel/UCzAypSoOFKCZUts3ULtVT_g
LoL Esports 公式Twitter(英語)
https://twitter.com/lolesports
LoL Esports Stats(リアルタイムで試合統計についてツイートする公式Twitter、英語)
https://twitter.com/LoLEsportsStats
LEC 2018 Spring データページ(Leaguepedia、英語)
https://lol.gamepedia.com/LEC/2020_Season/Spring_Season
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